「ここはどこ?私は誰」
いや、待て。落ち着け、俺。
うん。落ち着いた。
俺は俺だ。自分の名前も覚えている。
『聖フランチェスカ学園』の学生だった事も覚えている。
それでは「ここはどこ?」
どうみても、フランチェスカではありえない。いや、そもそも日本なのか怪しい。
はるか地平線まで続く、黄色い大平原。そのど真ん中で、昔の人が言った「泰山悠然」とばかりに、デンと居座った山の上の、
その洞窟の中で俺は意識を取り戻した。その洞窟の出口から、黄砂の舞う地平線を見渡して、俺は途方にくれていた。
… … … … … … … … … … … … … … … … … …
ところが、俺が途方にくれている間に、誰かがやって来たらしい。
やって来たのは、結構、可愛らしい女の子。こんな状況でなければ、いや、わが悪友ならこの状況下でも、ナンパしたくなるくらいの美少女だが、
何とも、コスプレっ娘だった。「何とか無双」とか何かの武将の。
その武将コスプレ美少女は、いつの間にか、ふもとに用意していた「お神輿」に俺を押し込むと、別のどこかへ連行して行った。
… … … … … … … … … … … … … … … … … …
連れて行かされたのは「紫禁城?映画のセット?テーマパーク?コスプレ会場にしては豪華だな」
そう、その「紫禁城?」は、昔の中国風のコスプレ(?)であふれ返っていた。
しかも、あちらこちらに、武将や軍師らしきコスプレ美少女がチラホラしていた。
そして「お神輿」から降ろされた俺は、玉座に鎮座する、皇帝の面前まで連れて行かれた。
「ようこそ、わが後輩。それとも、新しい犠牲者かな」
はっきりと、日本語で語りかけられ、思わず俺は、反論しそこなった。その間に、“皇帝”は語り続けた。
「北郷一刀。この名前に聞き覚えは無いかな」
ある。名高い「お嬢さま学園」だったフランチェスカが、最初に受け入れた男子学生の1人。
何も無ければ、俺たちの入学と入れ替わりに卒業していただろうが、ある夜、寮を抜け出したまま、失踪した。
手がかりといえば、同じ夜、校内の歴史資料館が荒らされ、展示品が無くなっていた事。
立派に強盗拉致事件だから、当局も動いたが、迷宮入りになった。
「その北郷先輩がここで何をしているんです。そもそもここはいったい……」
「ここは「三国志」の世界だよ。」
「??」
「この言い方で通じないか。今、というか、君の居た時代では、中国の後漢王朝末期の歴史はどうなっていた?」
「ええと?」
この先輩(?)は何を言いたいんだ…
…後漢末期。現代日本でも「水滸伝」や「西遊記」と並んで、有名な時代だ。
動乱の時代。無双の英雄たちが活躍し、俺たちでも格闘ゲームのキャラとかで知っているぐらいの時代。
ただ、特徴的なのは、その英雄たち、無双の武将や、知略の軍師の多くが、伝説の美少女でもある時代。
てっ?俺は、周りのコスプレっ娘たちを、見回した。
「どうやら、自分がどこに居るか、思い付いたようだな」
「しかし、先輩。だとしたら、先輩はいったい…」
そもそも、俺より2つかせいぜい3つ年上のはずなのに、俺の倍ぐらいに見えている。
「この時代のオチはどうついたことになっている?」
確か…ある時、光り輝く、誰も見た事もないような「天の衣」を着た「天の御遣い」が流星とともに落ちて来て、
そして、時代の英雄でもある美少女たちを、片っ端から、自分の後宮に入れてしまったんだっけ。
しかし、結果として、戦乱は数年で収まって…
「じゃあ、先輩は」
「その「天の御遣い」の役目のため、この世界に召喚されたんだよ。向こうでは失踪になっているかも知れんが」
失踪になっているも、その資料館で肝試しでもやろうと、誰かアホな男子寮仲間が、言い出したんだ。
で、あの事件の時の、銅鏡のカケラらしきものを、植え込みの中で見つけて……
「それは災難だったな。まあ、君も女難の運命と思って、あきらめてくれ。2代目」
「今、最後になんて言いました」
「この帝国は、成立した時の事情が事情だからな。「天の御遣い」を必要としているんだよ。安心しろ。俺の娘たちは、母親似だぞ」