アニメ『真・恋姫†無双』の前回のOP(歌:片霧烈火)を聴いていると『演義』の「関羽千里行」を連想しました。
その後で、こんな妄想を思い付いてしまいました。
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『―クロス短編『ゼロの使い魔』続かない―』
「誰なの?あんた“たち”」
彼女「ゼロのルイズ」の目前に出現しているのは、
見慣れない服装と見慣れない武器(長い柄の付いた片刃の剣)と見慣れない黒い髪の美少女、
そして、その少女の足元で目を回してヒックリ返っている、これも見慣れない青い服装と黒髪の少年の「2人」
周囲を取り囲んだ同級生たちも、余りに非常識な(2人という)結果に、何時もの揶揄(やゆ)すら忘れた様だった。
その中で最初に起動したのは、流石に元軍人であり、教師としても又ちゃんとした責任感の持ち主だった、と言うべきか。
「ミス・ヴァリエール!コントラクト・サーヴァントを」
「でも!どちらと?」
その時、黒髪の少女の方が、1歩進み出た。
「これは貴公らの仕業か?」
このセリフに「貴族とは、かくあるべし」という建前に自尊を賭けているルイズは反発したが、
「炎蛇」の方は、経験が教えてくれた。「この」相手は危険だ。
「お待ちなさい、ミス。(黒髪の少女に向き直って)貴女は軍人、それも百戦錬磨の強者(つわもの)でしょう」
「ほう、分かるか」かすかに機嫌を直した様だが、
ここまでのやり取りを聞いていたルイズが有頂天(うちょうてん)に成ってしまった。
「すばらしいわ!こんな使い魔を引き当てるなんて!最初は『どうして平民?』なんて思ったのに!」
「使い魔?」
聞き咎(とが)める相手に気付かず、有頂天のままに「使い魔と言うものは……」などと並べ立て始めたが、
「ふざけるな!」最後まで言わせ無かった。
動態視力を超えた速度に、かえって1瞬、何をされたのか気が付かなかったが、
気が付けば、大刀の切っ先を眉間に突き付けられていた。
流石に、その瞬間には絶句、硬直したが、
元々、気を突っ張らせて来た彼女だ。しかも、相手は“平民で使い魔”だと思い込んでいる。
「何よ!ご主人様に無礼な」
「無礼なのはどちらだ!この関雲長!!この命を!この武を!そして、わが真名を捧げる御主君はすでにある!!!」
「!?!」
「私が「ご主人様」などと呼ぶのは、主君たる「天の御遣い」様のみ!」
「だ…誰って?」
「今、御1人、主君たる御方はあるが、それは「同年同月同日に死せん」との誓いを分かち合った姉上だ」
未だ、大刀を付き付けたまま、
「もし、もしもだ!姉上でも無く「天の御遣い」様でも無い何者であろうとも、私と御主君を引き裂こうとするならば…」
元軍人の「炎蛇」で無くとも感じられる程の明確な殺気を感じさせ、
「わが主君の敵だ!わが前に立ち塞がるな!!私が御主君の下に帰ろうとする道を邪魔するならば…」
風メイジかと疑わせんばかりの旋風と共に振りかぶり、
「斬る!!!」
始めて、野次馬(やじうま)どもが騒ぎ始めていた。
「何て物騒なのを召還したんだよ」「迷惑過ぎるぞ。いつもの爆発の方がマシじゃないか」
迷惑どころか「炎蛇」が観察する限り、これは「メイジ殺し」だ。
ドットやせいぜいラインメイジが数を頼んでかかっても、何人かは死ぬ。
それこそ、必死になって対策を考えていたが、状況を見渡して気付いた。
「ミス・ヴァリエール!もう1度、サモン・サーヴァントを」
「は…はい?…宇宙のどこかに……」
空中に鏡の様な魔方陣が出現した。その位置は、
未だ、目を回していた少年を間に挟んで、黒髪の「メイジ殺し」の反対側。
「そ…そうでしたか」何故かホッとする「炎蛇」
「どうやら、ミス・ヴァリエールが召還したのは、あちらの少年の方でしょう。こちらの軍人は、何かの事故に巻き込まれた様です」
「そう…なんですか」
「兎に角(とにかく)!コントラクト・サーヴァントを」
未だ、目を回したままの少年だったが、左手に「使い魔のルーン」が刻まれるショックで覚醒した。
「ここ…どこ?あんた…誰?」
平賀才人は、先ずは目の前のルイズに赤面し、それから周囲を見渡して、
「やっぱりアキバ?どこのコスプレ会場なんだ…」とかブツブツ言っていたが、
やがて関羽を見付けた。
「やっぱコスプレかコミケの会場だな。いやあ、それにしても似合っている。だからって、いくら似合っていても…」
誤解と言うものが、命に関わる場合が有るとは「平和ボケ」した現代日本の高校生は経験していない。
「他の作品の会場に入っちゃマズいだろ。ここは「ハリポタ」の会場じゃないの?「恋姫」じゃ無くってさ」
「今度は何だ。また訳の分からぬ事を」
「いや、そっくりだよ。愛紗ちゃん…わっひゃああ!?!」
主人公補正、恐るべきと言うべきか。さも無かったら、ルイズは召還のやり直しが出来ていたかも知れない………。
……。
…紆余曲折(うよきょくせつ)が在って、現在、関羽は宝物庫の前に居た。
兎に角、前代未聞の事態ではある。
1同が学園長の前に出頭して話し合った結果、ルイズと契約してしまった才人は兎も角、
関羽に対しては「送り返す方法を探してみる」と約束はした。
当然、才人は「自分も返せ」と主張したが、年の功で言い包(くる)められてしまった。
ルイズは、と言うと、
流石に、あんな危険物よりはマシで、この上に逃げられては堪(たま)らないとでも思ったか、
関羽に言いかけた内容よりは、少しばかりはマシな待遇をする事にした様だった。
さて、関羽雲長という武人は、敵や強い相手には容赦しないが、
弱者や「礼」や「義」をもって約束する相手には、自分もまた「礼」も「義」も守る。
そこで、警備の手伝いを申し出た。
正し、こういう相手はダマして利用したら、バレた時が余計に恐ろしい。
オスマン老人ほどの大ムジナが、その程度の経験値も無い筈も、無い筈だか?
「土くれのフーケ」にしてみれば、方針転換を検討する羽目に成っていた。
ただでさえ、てこずっていた宝物庫に「メイジ殺し」の番人まで、とは。
そこで立てた新方針とは、
「アンタはダマされている」と関羽に吹き込んで協力させる、と言うものだったが。
根っからの武人であっても『伏竜鳳雛』と『乱世の姦雄』のダマし合いを見続けていれば、学習位する。
結果は、大立ち回りだった。
「メイジ殺し」と見抜いた「炎蛇」は正解だった。
関羽の大刀は、怪盗の巨大ゴーレム相手に、負けを見せない。
おまけに、騒ぎに成れば当然だが、野次馬が駆け付けて来る。
その野次馬の中に「神の左手」と未覚製ながら「虚無の爆発」が混じっていた。
これだけ誤算の上に誤算が重なっては、もはや“チェックメイト”だった………。
……。
…とりあえずフーケを監禁しておいて、さて事後処理のため、1同は学園長室に集合していた。
「ところで、あのコソ泥は、何を狙ったんだ?」話の合間に、そんな疑問を提出した誰かが居た。
「『破壊の杖』と『世界扉の銅鏡』らしいの」
「?銅鏡?」関羽が何故か反応した。
「どうかしたかの」
「もしや…以前、ご主人様から、うかがった…老師、その鏡を見せて欲しい」
ここで関羽を怒らせては、流石に恐ろしいオスマン老人は、鏡を持って来させた。
実のところ『恋姫』というゲームのある「世界」から来た才人にも、何と無く見覚えがある様な鏡。
その鏡を手中で捏(こ)ね繰り回していた関羽だったが、
何かの拍子に、窓から差し込む双月が、鏡面に写った。
突然、鏡の中の虚像の双月が、天空の実像を無視する如く動き出し、
互いに接近した瞬間、鏡が眩(まぶ)しい白光を発し始めた。
「な…何だよ、この光」
「おお!これは」関羽は白光の中に何かを見付けていた。
「ご主人様…姉上…鈴々…みんな。私の…私の帰るべきところが…」
1瞬、白光に視界が眩(くら)んで、次の瞬間には関羽の姿は無く、
そして、2つに割れた鏡だけが残っていた。
「そんな。・・・コンチキショー!」
割れた鏡の片割れを拾い上げた才人は、
事態を悟ると、がっくりと膝を付き、恥も外聞も無く泣き始めた。
消える直前の関羽の歓喜。そして、いま失望の中で泣き続ける才人。
その姿に、ルイズですら、
「貴族とは平民に対して、あるいはメイジは使い魔に対して、かくあるべし」と思い込んでいた彼女にすら、
どれ程、才人に対して残酷な事をしてしまったか、という事実を付き付けていた。
そして、少しだけ気付いていたかも知れない。
そんな建前よりも、目の前の少年の方が大切だと。
関羽が消えてから後、少しだけルイズは、才人に優しく成った………。
……。
…数年後、ふと関羽の事を、ルイズは回想していた。
すっかり重くなった身体を才人に預(あず)けて甘えながら。
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この短編は、これから後は続きません。
正し、才人とルイズは、少しだけ仲良く成っているかも知れません。