Arcadiaメイン掲示板『雑談板[4712]【恋姫†無双シリーズ】璃々ちゃんの立場について』にて、楽しい議論に参加させて頂いている間に、
以前この短編集にて投稿させて頂きました「黄叙の成人」の続きを書いてみたく成ってしまいました。
勝手ながら、同スレッドのスレ主様ならびに投稿された皆様へ、厚く御礼を申し上げさせて頂きます。
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黄忠(真名)紫苑の最初の子である黄叙(真名)璃々は成人を迎えた。
年齢的には丁度、年頃だったろう。
張飛(真名)鈴々とか袁術(真名)美羽とかが、益徳とかの字を名乗り始めた年頃からしても。
その途端、妙な言い方だが、縁談が来放題に成った。
まあ、求婚してくる側が何を計算しているか、が読み取れなくも無い。
義妹たちが幼過ぎるのだ。
皇帝に成った「天の御遣い」の実子の内、皇后でもある蜀王との長女、阿斗ですら、
ようやっと、黄叙の実母である紫苑が初めて現在の主君に仕えた、その当時の璃々ぐらいの幼女。
他の妹たちに至っては更に幼いか、下手をすれば赤子だ。
縁談など論外である。
少なくとも、父親である皇帝が「天の国」の恋愛認識を引きずっている限りでは。
一方で、阿斗をはじめとする、皇帝が実父で三国の王や黄忠よりも位の高い妃を生母にしている義妹たちと、
全く分け隔てなく「天の御遣い」の正式な養女も同然に育てられている。
実際、成人した黄叙に与えられた官職は「執金吾」だった。
後に後漢王朝の初代皇帝になる青年が、まだ無名の末端王族だった頃、こう公言して憧(あこが)れていたと伝えられる。
「仕官するなら執金吾。妻をめとらば(彼の初恋の人で後の第2代皇帝の母)」
この「執金吾」とはそれほど華やかな官職でもあり、大げさに言えば王朝の威信を示す官職でもあった。
帝都の巡察・警備を司る官であり、その「パトロール」はそのまま、帝国の威信を示す「パレード」でもあった。
その執金吾の「パトロール」が都の大路を「パレード」して行く、その執金吾が黄叙であること自体、
彼女が、皇帝でもある「天の御遣い」を父親として育てられた「娘」である事を、そのまま見せていた………。
……。
…ある日「天の御遣い」は、友人でもある相談相手の曹仲徳に、ハッキリ言って愚痴をこぼした。
「十常時の類は、何時の時代でも居るものですね」
皇帝と言う絶対権力者の心の弱点に付け込もうとする「小物」は、どんな名君の下でも後を絶たない。
そうした小物の1人が、さぞ手柄顔に密告して来たのである。
「黄叙将軍に縁談を持ち込んだ事がある者どもの間に、恐れ多い流言が流れております」
「流言?」
「はっ。恐れ多くも、陛下が御返答に消極的であられるのは、何れ黄叙将軍を後宮に御入れに成られる御積りだと」
皇帝は、怒るよりも呆れてしまった。
「それで?北郷はどういうつもりなんだ」
「先輩には聞かれたくないですね。ようやっと、玉羽ちゃんが袁望月を名乗る年頃に成ったばかりでしょう?」
「これとそれの話は別だぞ。彼女の中身は」
「(禁則事項)ですか。だけど、璃々ちゃんには中身も見かけも無いでしょう。俺は、あの子が7つの時から「父親」をして来たんです」
「あの娘本人は、どう想っているかな?まあ「天の国」にだって『源氏物語』もあるしな」
「光源氏は先輩と玉羽ちゃんの方でしょう」
結局、この時は、愚痴を聞いて貰っただけの結果に終わった。
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実の処、この時点での「天の御遣い」は、実母の紫苑には璃々目当ての縁談の大半に付いて話してもいない。
もっぱら、紫苑の旧友でもある厳顔(真名)桔梗を相談相手にしていた。
そういう態度も、またトンデモない流言飛語の発生源に成ってしまったのかも知れない。
曹仲徳には愚痴を聞いて貰っただけに終わった(それでも「天の国」の言葉で話せるだけでも貴重だった)結果、
今度は「天の御遣い」は、桔梗に相談を持ちかけた。
「ほう」
今までとは異なって、というのも、自分の産んだ小桔梗が未だ幼女(年の差母娘?失礼)のせいか、
今1つ璃々の縁談に対しては真剣味が少な目に見えていたのだが、今回は奇妙に真剣そうだった。
「お館様こそ、真面目に考えた事があるのか?幼くても女は女」
「桔梗にも覚えがあるの?」
「自分も娘を産んでみれば、あの頃の璃々の気持ちも紫苑の気持ちも分かったわい」
恋人の曹仲徳から聞いたのか、袁望月(真名)玉羽が、やっと役に立ちそうな(?)助言をしてくれた。
見た目は黄叙と大差の無い新進文官に見えても、中身は「天の国」での社会人経験まである(禁則事項)である。
「結局は、璃々ちゃん本人次第でしょう?彼女の幸せが大切なんじゃないの」
確かにその通りだった。