正直に言って、甘かった。
バーサーカーのゴッドハンドのような、一度一度違う手段で倒す、といった攻略法に沿って戦わねばならない相手でもなければ、二対一で圧倒できる、そう思っていた。
バーサーカーやギルガメッシュのようにある種反則のような能力を持たないランサーこそ、単純に与しやすい、そう思っていた。
_だが、純粋に彼は強い。
二人に既にその真名を教えてもある。手管はわかっている。だというのに。
その実力に殆ど制限を受けていないクー・フーリン、アイルランドの英雄は強い。
その動きは早く柔らかく、一撃は強く重い。動じぬ巌の如くもあり、折れぬ柳のようでもある。
「相手を強さで上回る」それだけのことをこの武人に対してすることが、なんと難しいことか。
甘かった。
令呪を持たないメディアさんをここに呼ぶことは出来ない。
ここで全滅の憂き目にでも会えば、それはおれのせいだ。くそっ。くそっ。
どうすれば…。
流されたゆたうワカメのごとく 第八話 後編
こうなったら、俺に出来るのは何とかして残りのライダーの令呪を使ってでも全滅だけは_
「シンジ。」
セイバー?
「言ったでしょう。全てを抱え込むなと。困難なときなら頼れと。」
「そうですシンジ。あなたの味方はそんなに弱くない。」
ライダー。
わかったよ。諦めない。
アイツを仕留めるためには「わかっていても避けること、とめることが出来ない」そんな攻撃しかない。なら。
「ライダー!距離をとってくれ!」
「させるか!」
槍の一閃。それをセイバーが受ける。
この距離。令呪を使う。
「ライダー!」「わかっています!」
_ベルレフォーン。天馬の突進によるメドゥーサ最強の攻撃手段。そこに令呪を乗せたこの一撃、受けれるかクー・フーリン!
「騎英の手綱(ベルレ・フォーン)!!」
「ランサー!その一撃、必ず受け流しなさい!」令呪!?
「おおおおおっ!」
ドオオオオオオオン!
ベルレフォーンが通り過ぎた後、満身創痍になりながらも、
ランサーは眼光鋭く立ち、こちらを見据えていた。
まずい!今はライダーと分断されている!
「シンジ!」
「突き穿つ(ゲイ)_
セイバーが駆け寄ろうとする!違う!俺を守ろうとするな!ランサーはマスターを狙うような戦いをする奴じゃない!ランサーが狙うのは
_死翔の槍(ボルク)!」
「かわせセイバーーッ!」
「なッ!」
ゲイボルクの強さを「グングニルに匹敵する」とも称されていたが、正にそれに相応しい。
セイバーが吹き飛ぶ。
「セイバー!」
吹き飛ぶ?ならば多少なりとも流せたということ。ベルレフォーンが効いていたか。
ならセイバーの命にまでは届いていないかもしれない。
「ライダー!セイバーを連れてここを離脱だ!」
ありったけのウォリアーを投げつけ、叫ぶ。
「わかりました!」
ライダーが俺とセイバーを抱えて跳ぶ。
ランサーは_追って来れない!
頼むセイバー!もってくれ!
衛宮邸。メディアさんが駆け寄る。大規模な戦闘は観測されていた。手当ての準備はできている。
「慎二様!」
「セイバーを!」
擬似的ながら不死の薬すら作ってみせる魔女メディア。
今はその力に頼るしかない!
_果たして。
一命は取り留めた。だが状況は予断を許さない。
「ゲイボルクが万全な状態で放たれたものでなかったのが幸いしました。」
「しかし、ある種の呪いでしかセイバーの命を留めることが出来ませんでした。セイバーはあまりにも多くの祝福を受けています。それが、呪いとどんな干渉をしあうのか想像もつかないのです。」
そうか。
「セイバーさん…。」
「セイバー…。」
「士郎。すまない。おまえから信頼されてセイバーを託してもらっていたって言うのに。」
「いや。俺がそこにいたら、きっとセイバーを死なせていたよ。この戦争は俺が考えていたほど甘いもんじゃなかった。俺がもっと早く自覚を持って戦場に立って、令呪を使えたら。」
「互いに自分を責めてもしょうがないわよ。慎二。今日は桜とライダーと一緒に帰りなさい。」
「ああ…。」
夜。
「シンジ。やはり浮かない顔ですね。」
「そうか?そうだろうな。」
「兄さん。そんなに気になるのなら、セイバーさんについていてあげては?」
「でも、」
「私は今日の調査の成果を調べるために書庫にいます。
兄さんはセイバーさんの傍に居てあげてください。」
「サクラ。」
ライダー?
「私も、今日はセイバーのところへ行っても構いませんか?」
「うん。そうしてあげて。」
桜。ありがとう。
_衛宮邸
セイバーの意識はまだ戻らない。
「なあ、セイバー。
俺、まだまだお前と話したいことがあるんだよ。
人の上に立つ心構えとか、戦場に立つものの覚悟とか、いっぱいさ。」
__騎士として、それに応えましょう。よろしくお願いします。
__私は生涯抜き身の剣だった。自らが納まりともに安らぐ、鞘を持たなかった。
__あなたには、わたしがついているのですから。
「くそ。くそ。くそ…。」
!?突然セイバーの体が光を放つ。
「セイバー?」
セイバーがむっくりと起き上がる。
「良かった!セイバー!せい・・・ばー・・・?」
おもむろにセイバーが服を脱ぎ始める。? ??
「お、おい…? って、なあああああ?」
なんで、なんでなんで、なんでセイバーの股間に、
ぶ っ と い エ ク ス カ リ バ ー が あ り や が り ま す か ?
そっそういえば、読んだことがある。
原作でのセイバーのフェラのシーンで、「扱いには慣れておりますれば…」ってセリフ、
あれはセイバーとギネヴィアが結婚したときマーリンがセイバーを擬似的に一時男にしたから(ピー)の扱い知ってたんだっけ?
メディアさーん!? 以前の祝福がどう干渉しあうかわからないって、これはないでしょ!
ガシッ
「せ、せいばあ…?」
「(ハァハァ)シンジ(ハァハァ)。」
「お、落ち着け。いや落ち着いてくださいお願いします。」
「体が熱いんです。」
ドサッ
「ギャーーー!」
「大丈夫です。」
「よっよかった、止めてくれるんだな?ね?そうでしょ?そうだと言ってよセイバー!」
「扱いには慣れています。」
ちょ、あてがってる!先っちょが、先っちょがあああ!
「ちっがあう!そういうセリフが聞きたいんじゃない!」
「ああ、シンジ、」
「なっ、なんだ?」
「 あ な た が わ た し の 鞘 だ っ た の で す ね ♪ 」
「やめてー!エクスカリバー収めないで!」
ドサッ
はわわ、はわわ、な、なんだ?
「危ないところでしたねシンジ。」
「ラ、ライダー。」
思わず抱きつく。
うわあああんもっとはやくきてよおおおおんもぉばかばかばかぁ。
ほんとにもうだめかとおもっちゃったんだからね!
「らいだぁぁぁぁぁん」
「はっ」
気づいた。
「ライダー!どうしたんだその鼻血!」
「いえコレは。」
「まさか敵が?」
「え、ええ。己の内なる巨大な敵と戦っていました。おかげで危うく間に合わないところでした。」
「?そうか。とにかく、勝ったんだな?」
「ええ。もう惑わされたりしません。わたしの正義(ジャスティス)はひとつ(シロウ×シンジ)なのですから。」
「他のみんなは無事なのか?」
「そこにキャスターが倒れています。」
「メディアさん!」
「大丈夫。鼻血の海に沈んでいるだけです。」
「キャスター相手にそんなすごい精神攻撃を?いったいどんな強敵だったんだ…。」
「大丈夫です。それがわたし達に立ちはだかることはもうないでしょう。」
「そうか。やっぱりライダーは頼りになるなあ。」
抱きつく腕にも力がこもる。
「いえ。それほどでも。」
さらに鼻血が溢れる。よっぽど激しい精神戦だったんだね。
ガシッ
「へ?」
「ハァハァ」
セイバー復活―!
あ、よかったエクスカリバーはもう無い。
「シ、シンジ…私のほうが鞘で構いません。あなたのエクスカリバーを!」
「こうなったらもう致すしかないのかもしれませんね。」
ライダー!裏切るのか!だでぃあなざあああああん!
アッー
2時間後。
すー。すー。
ライダーとセイバーは全裸で満足げに寝息を立てている。
「か、帰ろ…」
ガシッ
「慎二様♪」
アッー!
「た、ただいま…。」
「兄さん…。看病をしにいったんですよね?
なんで干からびて帰ってきているんですか?
す ご く 知りたいです。」
ワカメの夜は、終わらない。
いやあ実に尻ASSな展開でしたね。この(貞操の)危機を乗り越えた慎二くんは大きく成長しました。やはりこういうのは外せないところだと思うんです。
この物語に足りなかったのはきっとそういう部分であると絶対の確信を持って判断し、今回のエピソードを挿入しました。
ナニか私は間違っていたでしょうか?