「ハァハァ。間、間に合わなかったのね…強く生きるのよ、綾子…。」
「うっうっ……慎二、あんたにだけは見られたくなかった…」
「あ、いや、その、美綴?似合ってるぞ?」
「バカ!そのフォロー逆効果!」
「ふ、また会いましたね、あのときの無礼な少年、いや間桐慎二!貴方のことは既に調べがついています!さあ尋常に_」
「うわあああああん!もう、もうお仕舞いよ!」
「あら。なかなかいい衣装だわ。こういうのもいいかも…。」
「貴女はキャスターですね。さあ尋常に_」
「い、いやほら、ちょっと魔法少女になっちまうくらいよくあることだよな!夏休み明けとか、休み前と比べてこのくらい変身してるやつよく居るし!」
「そ、そおよお。長い人生こういうことが一回や二回はあるわよお。」
「いや、二回はお前くらい__あべし!」
「じ、尋常に…。」
「ハーッハハヒヒヒヒ、クックッフハッハハッハヒ!もう勘弁してくれえ。俺の負けだって!」
「ランサー!貴方も真面目に!」
「んなこと言っても、こりゃ無理だぜマスター。ここからどんな勝負を始めるんだよ?宴会の余興大会か?なんなら俺の犬の物真似を披露するぜ?」
「くうっ。なんで、なんでこうなるのですか。こんなんじゃ、こんなんじゃまたあの人にあいそを尽かされてしまいます。うわあああん!」
「うええええええん!」
「あっ美綴!」「綾子!」
その日、冬木に、夜中に時速100キロで泣きながら走る女、
「ターボ泣き女」の都市伝説が誕生した。
流されたゆたうワカメのごとく 第七話
「とりあえず、どうする?」
白々しい空気が流れる。
「一戦やらかす雰囲気でもなくなっちまったな。
しかし、あの嬢ちゃんはなんだい?
俺がアーチャーの奴を仕留めようとしたら、いきなり変な名乗りを上げて割り込んで来て、魔術でもルーンでも外法や他のモンでもないような攻撃をかましやがった。
んで顔真っ赤にして恥ずかしがりながら名乗りをあげるわセリフを噛むわでな。
正直負ける気はしなかったが勝つ気もしなかったぜ。」
「えーと、」
説明すっと長くなるわけで、つか説明できんし。
「うっ、うっ、負けません。挫けません。いつか、いつかあの人が私に振り向いてくれるその日まで。」
「うちの相棒もこんなんなっちまったし、今日のところはアーチャーの奴をやっただけで引き上げとくぜ。次こそお前らんとこのセイバーとケリつけるところまでやりたいもんだがな。」
「ほう。止めを刺さずに見逃して行くのか。自分が死んだ理由を忘れたか?クランの猛犬よ。」
来てたのかアーチャー。流石に怒りを隠せないみたいだな。
「ハ。自分の性分のせいでいろんな目に会ったし死にもしたが、ただの一度も後悔しちゃいねえよ。」
こいつ。本当に強い。なんというかあり方が。これがアイルランドの英雄か。
しかも原作であったパワーダウン要因が「日本じゃ知名度が低い」ってだけかよ。
こりゃあバーサーカーより難敵かもわからんね。
「じゃあ、引き上げるとすっか。」
「今度はあんなふざけた乱入はさせません!完膚なきまでに格好よく貴方を地べたに這い蹲らせてあげます!私は、私は、ダメなんかじゃないんです!」
なんかダメという言葉にトラウマでもあったのか?
ランサー主従は去って行った。
「ランサーは去ったけど、美綴のほうはどうしようか。」
「ていうかアレ、柳洞寺にあったんじゃなかったの?」
「わからん。ただ、ここんとこ一成の様子がおかしかったらしくて、俺がそれを追ってたらなぜか美綴も一成を追い回してたんだ。」
「本当に何を考えてるのかしらアレ。それじゃ一成が何か知ってるかも…って駄目ね、アレは、」
「ああ、記憶をいじれるからな。」
「とにかく綾子を探しましょう。」
家に電話をかけたが、居なかった。
町中を探し回ったが、美綴の姿はなかった。
最後の望みを賭けて再び電話すると、
「ああ。今しがた帰ってきましたよ。エエ、トテモゲンキデス。ナンノモンダイモアリマセンシンパイナイデスヨ」
「実典くん。実典くーーん?」
「駄目だ。なんかされてる。なんかこう、色々と。多分帰ってきていないな。学校にも来るか怪しい。」
メディアさんはまだ上空から怪しいものを探してもらっている。
「綾子…。わたしがアレをもっと厳重に封印していたら。」
「いや。アレはきっとそんな封印をものともしなかったはずだ。俺があのとき宝箱を開けたばっかりに…。」
「一般人を聖杯戦争に巻き込んでしまうのは本意ではないわ。綾子をアレから解放するまで手を組みましょう。」
「ああ。こっちからも頼みたい。」
まさかこんな理由で手を組むことになるとは思ってもいなかったよ。
命の危険はない、と思いたいが、アレは本気で何をするか全くわからない。
アレも遠坂にあったものだ。ならばうっかり美綴を殺してしまわないとどうして言えよう。
必ず救い出さねば…。
そして今日の顛末の報告と改めて凛をセイバーやメディアさんたちと顔合わせするべく、メディアさんと合流し衛宮家へと俺たちは向かったのだが、
「桜とライダーはまだ来ないのか?」
「ええ。連絡もありません。」
「どうしたのかな。イテテ。」
士郎…。今日もしごかれまくったみたいだな。
でも、嘘みたいだろ?今日からさらに師匠が増えるんだぜ?
「今晩は。」
「失礼します。」
お、来たみたいだ。
「兄さん、大変です。」
「どうした?」
「お爺様が姿を消しました。」
来たか。そろそろ何かを始める気だな。直接対決はまだまだ先だろうが、
「お前の胸の刻印虫になにか干渉してきそうな気配は、」
「ええ、ありません。何かしてきても私でどうにかできそうです。もう、この子は私ですから。」
「そうか。」
少し複雑な気分だ。桜が小聖杯として出来上がりつつあるということでもあるんだからな。
だが、今桜を蟲から解き放って戦力を削ぐわけにはいかない。
「いいんです。私が自分で決めたことだから。兄さんを、みんなを、守るんだって。」
「桜…。」
「んんっ!慎二様?」
「慎二。その、そういうのは二人きりでやらないか?今はみんないるんだし。」
「場を弁えていただきたいものです、シンジ。」
「あら、なぜ邪魔をするのですセイバー?」
「……。ねえ。ここっていつもこうなの?」
「ふっ。羨ましいのかね?凛。」
「は。冗談。そんなの心の贅肉よ。早くごたごたを片付けて勝ち残ることしか考える暇ないわよ。」
おお。有名フレーズ来た!
「よし!とりあえず新メンバーも増えたことだし、みんなでメシでも作るか!」
「賛成です!」
「たっだいまー!きょーおーのごっはんはなーんじゃろげー♪」
真っ先に反応したライオンと変な歌とともに帰宅(?)したタイガーの腹ペココンビに続き、皆で料理をすることになった。
士郎に凛に桜にアーチャー。ここのシェフの充実度は異常だな。
ランサーあたりジャンクフードとマーボー漬けでブーブー言ってるんじゃないかな。食にこだわるサーヴァントの中じゃ多分あいつがセイバーの次だ(アーチャーは作ることに関してはこだわるが自分で食べるのはぞんざいそうだ)。
「いたっ!慎二様~、指を切ってしまいました。舐めて治してください。」
「いっそ切り落としてあげましょう。存外いい出汁など採れそうもないですけど。」
「はーやーくー!おっなかすーいたー!」
「日々おいしいご飯を食せる幸福。ああ、あの戦いの中、こんな日があればきっと皆生き残れた。べディヴィエール、ガウェイン、パーツィバル、トリスタン・・・貴方達にもこれを味あわせたかった・・・。」
「賑やかね。ていうか毎日こうなの?」
「大体な。」
「…苦労してそうね。」
「わかってくれるか。」
「まあ半分くらい自業自得そうだけど。」
「ぐ。」
「なんにしても、しばらく宜しくね。」
「ああ。」
つかの間の安らぎを感じた次の日、あんな危機が俺を待っていたとは、
このときはまだ思っていなかった・・・・・。
と、いうわけでカレイド絶賛失踪中です。一日の出来事を書くだけにだいぶ省略しても4回投稿ぶんもかかってしまいました。1~3話あたりまではもっと話の進みが速かったのですが。ペース落ちつつも相変わらずゆる~くいこうと思います。
小次郎さん大人気にフイタw
どうやら私のもっとやれへの認識はまだ甘かったようです。
こうなるとお蔵入りにしてしまったのが惜しまれる、かも。
おまけ
「えっくし!」
「どうしたのですランサー?」
「いや、なんでも。しかし今日もマーボーかよ。」
「あの人が手づから作ってくれたマーボーですよ?ありがたく頂きなさい。」
「じゃあせめて外食のときくらいまともなもの食おうぜ?」
「時間の無駄です。」
「つかなんだよこのマーボーカレーって!」
「美味しいではないですか。」
「(この女、味覚障害じゃないか?)マーボーうどん、マーボーおでん、マーボーピザ、…まともなもん食いてえ…。」