その後、軍師達の話し合いで一緒に行軍することが決まった。
目的地は敵の本拠地の一つらしい。
しかし、敵の兵数は多くないとか。
「なんか、楽勝っぽいな」
「あわわ、そんなことないですよ~」
「そうですよ。敵主力部隊が出陣中で敵兵が少ないとは言え、こちらもそれ程多いわけではありませんから」
ふむ、ちびーず曰くそういうことらしい。
まあ、オレ様がいれば負けることなぞ無いのだがな!がはははは!!!
「申し上げます。曹操軍から命令が参りました。
我が軍は横隊を組み、号令と共に敵陣に向けて突撃をせよとのこと。
曹操軍は後方より弓による援護の後、直ぐに後を追うとのことです!」
「やったー!鈴々先陣っ!」
「待てっ!その話は本当かっ!?」
「はっ!曹操軍が兵糧を焼くまで時間を稼げ……と」
「むかっ!つまりオレ様達に囮になれということか?」
「はっ!おそらくそうではないかと……」
オレ様を、英雄たるオレ様を囮にするだと……。
むがー!!!!許せんっ!
華琳はお仕置き決定っ!
縄で縛ったり鞭で叩いたり、ロウソクで……っとこの時代にロウソクはないか。
まぁ、マリアに作らせればいいとして……。
とりあえず、いじめ倒してくれるわっ!
「あっ……あのっ……」
「むっ、どうしたアールコートちゃん?」
「こっ、これは……その……あの……、たっ、試されているんじゃないでしょうか?」
「むっ、それはどういう意味だ?」
「えっと……あのっ、鈴女さんに調べていただいた情報によると、えっと、曹操軍と私達の軍の規模は同じくらいです。
こっ、こちらの方が小規模というならまだしも、同程度の規模の場合に片方に囮をやらせようとすれば、確実に意見が割れます。
そして、結果として作戦は成功に終わらないでしょう。
でっ、ですが、あの曹操さんのことです。あれだけの覇気を見せた人がその程度のこと分からないはずありません。
つ……つまり、考えられることは……えっ、英雄を名乗るならその程度のことはやってみせろ。
ということじゃないでしょうか……」
む、確かにそう考えられないこともない……か?
なんか小難しくてよくわからんが、アールコートちゃんが言うんだし間違いないんだろう、うん。
だが、あれだな。試されるだけじゃ面白くないな
「試されているとは言え、やられっぱなしは癪だかな。なにか華琳を驚かせたいものだが……」
英雄たるオレ様に相応しいような、なにかこう素晴らしい戦果を挙げつつ、華琳の考えの上を行く作戦が欲しい。
欲しいんだが……。
さすがに天才のオレ様であっても、こんなすぐさま作戦は考え付かない。
回りのちびーずもアールコートちゃんもなにも思い浮かばないようだ。
ちっ、しょうがない。とりあえずは、保留と言うことで、何か面白いこと思いついたらその時に実行することにしよう。
こうして、盗賊どもとの一戦が始まった。
始まったはいいんだが……
「あっけなさ過ぎないか?」
「む~、鈴々は不完全燃焼なのだ~」
「本隊が出払っていたとは言え、弱すぎますね……」
いかんせん、盗賊どもは弱かった。
徹底的に弱かったのだ。
本隊が出払っており、残っていたのは守備兵少数。
その守備兵達も、オレ様達の活躍を耳にしていたのか、士気が極端に低かった。
そんな状態で始まったこの戦。
特に何をするでもなく、いや、何かする時間すらなく城内から黒煙が上がり、盗賊どもは壊滅状態に。
後はまあ、混乱に乗じて突っ込んで終わりだった。
正直、戦の前に囮だとか騒いでいたのがアホらしい。
「おそらく、曹操さん達も自分達の力を見せておきたかったのでしょうね。
私達はこれほど早く自分達の仕事をこなせる……と」
後は城内に隠れている奴らを探すだけの状態になったので、オレ様はちびーずと共にゆっくりしている。
城内の細かいところなんぞに、オレ様がわざわざ動く必要などないのだ。
かわいこちゃんが隠れていればもちろん別だがな。
「さて、本拠地を落としたはいいがこれからどうするんだ?」
「このままここに居るのは、ちょっとマズイんじゃないかなぁ?」
「む、どういうことだ?」
盗賊どもの本拠地を落としたということは、前線基地としてそのまま使ってしまえるということではないのか?
「敵の本隊が引き返してくると、今の戦力ではいささか不安が残りますからね……」
「私も愛紗さんに賛成です。本隊の規模がどれほどのものかは分かりませんけど、
黄巾党の全勢力から推察すれば、十万はくだらないと思います」
「ふむ、正確な数が知りたいな」
すぅーっと息を吸ってー
「うまは乗り物っ!」
「もっこは乗る人!っでござる」
「うむ、近くに居たか鈴女」
どこからとも無く現れる鈴女。
周りのみんなもそれなりになれたのか、最初の頃ほどは驚かなくなってきている。
まぁ、はじめてみたのかちびーずはびっくりして固まってるみたいだが。
「そもそも拙者は傍を離れてなかったんでござるがね~。というか、この合言葉そこはかとなくエロスを感じるのでござるが?」
「うむ、もっこちゃんというエロエロな女の子がいたのだ」
「なるほど、そうでござったか。で、必要なのは黄巾党の情報でござるか?」
「うむ。調べは付いてるか?」
「もちろんでござる。さすがに戦う相手の情報くらい言われなくても調べるでござるよ。
で、情報でござるが……。
今出払っている本隊の総数が大よそ十一万といったところでござる。
今まで叩き潰しまくってたおかげで、それ程増えてるわけではないようでござるな。
で、その黄巾党を率いているのは、女の子の三姉妹みたいでござる」
「女の子?それは美人かっ!?」
「3人とも美人でござる。しかもそのうちの一人は、桃香に負けず劣らずおっぱいが大きいでござる」
「何だとっ!?」
「爆乳でござる」
「爆乳だとっ!」
む、これはなんとしても捕まえておしおきせねばなるまい。
正義のためにも、オレ様のためにも、なんとしてもおしおきをしなければならないのだ。
だが、となると十一万もの兵を相手にしなきゃならんのか……。
対するこちらは2万ちょい。うーむ……
「後手に入った情報だと、盗賊の寄せ集めなのでまともな装備をしていないとか、
率いている3人は、元は旅の芸人だったということくらいでござるかね」
「鈴女、敵の本隊はどのくらいの時間でここまで来るんだ?」
「そうでござるね~……距離はそれ程離れてないでござるから、早ければ一日で来るかもしれないでござる」
「ウルザちゃん、こっちの兵糧は?」
「そうですね、多めに持ってきていますし、ここで手に入れた分を合わせれば1週間から2週間はもつかと」
ふむ、それだけもてば十分……か?
後は……
「マリアっ!」
「ん、な~に、ランス?」
「この間作ってた…セイランだったか、あれとか投石機はここにあるもので作れるか?」
「ん~……。投石の方は岩とか特殊な植物とか必要になるから難しいかもしれない。
でも、セイランならここにある材料で作れると思うよ」
セイランは作れるのか。
もしかしたらこれなら……。
「あっ、あのっ!」
「む、なんだ?オレ様は今考え事で忙しいのだが」
「あわわわわ、もっもしかして、ここに残って防衛しようなんて思ってませんか?」
「うむ、その通りだ」
「はわわ!さすがにそれは無理ですよっ!城を盾にしたって大よそ5倍の兵力差があるんですよっ?」
「何を言う。ここで首謀者を討ち取れば、これで盗賊退治はおしまいだぞ?
こんなまたとない機会を逃すわけにはいかんだろう」
そう言って周りを見る。
どうも、周りの奴らも乗り気じゃないみたいだな。
だが、こう言われたらどう反応するかな?
「考えても見ろ。弱小勢力ならまだしも、オレ様達は今や巨大な勢力だ。
盗賊退治で稼いだ名声やらなにやらで、いまやすげー勢いなのだ。
なのにここで盗賊から逃げたという噂が立ってみろ?どうなると思う?」
「そっ……それは……」
「今までの評価は地に落ち、人心は離れていくだろうな。
そうすると、お前らの夢が遠ざかっていくことになる。
逆にここで敵の本隊を叩けば、オレ様達の評価は最高潮になり、黄巾党騒動も終わる。
どちらを取るべきかは、わかるだろ?」
ふふふ、これで逃げ出すわけにも行くまい。
逃げれば今までの苦労が水の泡。逃げなければ束の間かもしれんが平和が戻ってくる。
こう言われて逃げるような人間は、ここにはいないだろうよ。
「そうですね、戦いましょう」
「愛紗ちゃんっ!?」
「桃香様、ランス殿の言うとおり、ここで逃げ出すわけには行きますまい。
私達の望んだ平和が、直ぐそこまで顔を覗かせているのです。
ここで逃げ出すようでは、私は私の思いを信じられなくなってしまいます」
「愛紗ちゃん……」
「それに大丈夫ですよ。ランス殿という英雄がいらっしゃいますから。ね、ランス殿?」
「当たり前だ。オレ様が負けるわけなかろう。それに関羽ちゃんも劉備ちゃんもまだいただいてないからな。
傷一つ付けさせんさ」
「ということです、桃香様。戦いましょう、我々の理想の為に」
「……ん、そうだねっ!目の前に、平和があるのに逃げるわけにもいかないもんねっ!」
そう言って顔をあげる劉備ちゃん。その顔は、やる気に満ちていた。
そしてそんな劉備ちゃんに影響を受けたのか、周りの面々も顔つきが変わってくる。
ちびーずとアールコートちゃんなんかは、早くも作戦を練りだしたようだ。
くくく、これでいい。
待ってろよおっぱいちゃん!必ず捕まえて、おしおきをしてやるからな!
――――――――
正直、ランスがシリアスすぎたりしないかと思わないでもなかったり。
そして、白蓮の空気っぷりが異常