旅禍侵入六日目・早朝
この日の朝は最悪の目覚めだった。
それもこれも不機嫌の砕蜂が思いっきり腹を踏みつけてくれやがったからな訳だが、俺なんかしたか?
すまんな、隊舎に戻ろうと思ったらでかいのが邪魔でつい踏んでしまった……とかなんとか。
こんだけ広い状況で邪魔とかありえんわ、全く、なんで不機嫌なんだコイツ、アレか青春嬢ちゃんの事は話してなかったからか?
とりあえず、百歩譲ってなんだかんだで身内にツンデレな砕蜂だ(恐るべき事に本人は気付いてないかもしれんが大前田君にもツンデレだからな)、俺が青春嬢ちゃんの事を黙ってた事で水臭いとか思ったって所だろう。
そう当たりをつけたのはいいが言って無かったっけなぁ?
夜一さんと和解したときに一緒に話してそうなもんだが、あの時の事はまっぱでボインの事しか覚えてないし、言い忘れてたんだろうな。
わりぃ、巨乳に夢中で忘れてたわと思いっきりぶっちゃけたら瞬歩で距離詰められて白打で浮かされた。
いや、まてまて、昨日の酒がリバースするだろうが、辛うじて防御が間に合ってなかったら朝っぱらからエライ惨事になる所だった。
口元をひくつかせながら別にどうでも良いが貴様はもう少し言葉を選べとか言ってるが、言ってるのが砕蜂じゃ全然説得力ありません。
その後すぐにきびすを返して、今回の件のサポートはしてやる、精々キチンと準備しておく事だなと、そう言って去ってく砕蜂だった。
ハイハイ、ツンデレツンデレ。
ちなみに振り返ったら青春嬢ちゃんが後ろに居た。
滅茶苦茶笑顔で青筋浮かべてるんだが、コイツ大丈夫だろうか、何かの病気か?
思った事がそのまま口から出てたらしいのだが、ちょっとお酒飲みすぎたかもねと相変わらず笑顔で気持ち悪い。
そう言えば、尸魂界で合流してから妙に大人しい、偽物だろうか?
まぁ、正直、物足りない気もするが楽だし、変な顔で面白いのでしばらく放置して観察しとくと良いかもしれん。
適当に隠れ家でメシ食って平子さん等と午前中はオレンジ君の訓練眺めてたんだが。
何ぞ青春嬢ちゃんと何人かが円陣組んで相談してるようなのでこっそり玄海嬢ちゃんで話を聞いてみた。
鈍感な異性の落し方とか、デレたら良いんじゃねとか、ギャップ萌えってどうよとか、さっさと押し倒せとかまぁ、色々。
青春嬢ちゃん、誰か好きなやつでもいるのかねぇ……いや、判ってるんだが、知らない振りくらいさせてくれ。
嬢ちゃんは嫌いじゃないんだが、俺の心情的に胸部が足りない、もう少し、こう、アレだ、ボリュームがな?
もし手を出すとしたら、それこそモラルブレイク並みの衝撃が必要だよなぁ……ロリ巨乳ならなんとか……なるか?
アフロの人が言いました、でも既にフラグ立ってんだろお前らとかなんとか。
現実にフラグなんてありませんから、だからこの戦いが終わったら俺、婆ちゃんに会いに行こうと思うんだとか言えちゃうぜ。
フラグがなんだってんだ、現実は非情なのだよ。
旅禍侵入六日目・昼
とりあえず、何か進展が無いかと隊舎に戻ることにする。
この隠れ家にもハッチさんが妙な結界張ってるので俺も外に出ると戻って来れないらしい。
何が言いたいかと言うと、相変わらず嬢ちゃんがついてくるって事と、あと何故か外でうろうろしてる恋次君を発見した。
とりあえず面白いので少し観察してみたんだが、独り言を聞く限りオレンジ君の霊圧の残り香を辿ってここまで来たけど結界のせいで発見できなくて困ってるらしい。
嬢ちゃんが、そういえばこんなイベントあったあったとか頷いてるんだが、どうしたものか。
とりあえず、ほったらかしにするのも可哀想なので顔を出してみることにする。
顔を出したら、もう追手がとか言って臨戦態勢を取られた。
いや、違うから、ただの通りすがりです。
大体、ルキア嬢ちゃん助ける為に動く気があるなら手助けしても邪魔する気は無いからなぁ。
どう考えても隠し事とか苦手そう(偏見)だから特に何も言わなかったけどな。
折角なんで、現状を聞いてみたんだが、ルキア嬢ちゃんの処刑が明日に変更になって焦ってるようだ。
邪魔するなら、金崎さん、アンタでも……
とか滅茶苦茶シリアスしてたので、じゃあ邪魔しないからどうぞどうぞと言ってとりあえず去ってみた。
オレンジ君を探してるならついでにルキア嬢ちゃんの情報とかちゃんと伝えておくから好きにしていいよとか言って。
そう言ったら、知ってるんすか! とか驚かれたので軽く事情を説明してみた、旅禍匿ったりしてるとか。
説明の後、そうか、金崎さんは旅禍を支援してたのか、それを俺は……
とか言って、なんか少しだけ申し訳なさそうな顔をしていた。
これはアレか、ルキア嬢ちゃんの処刑に何の動きも見せないから少しだけ見損なってたとかそういう話か。
しかも、そうじゃないと言う事が判明して、見損なって多分のプラス補正ですねわかります。
間違っては居ないんだが、まぁ、あれだ、一瞬なんか嫌だなぁとか思ったんだが、正直、別に支障ないよな?
青春嬢ちゃんもなんか変な誤解されてないとか言いながら暑苦しいなぁと言わんばかりの顔をしてる。
いやいや、笑顔で青筋浮かべてるよりずっとマシですから、思わず口に出た言葉にまた奇妙な百面相をしている、面白いなぁ。
これからどうするのかと聞いてみたら、もう少しで何かが掴める気がするので何処か人気のない広い場所を探してるんだと。
オレンジ君が諦めるわけないからあいつもどっかで修行してるはずだ、だからルキア嬢ちゃんの事を伝えるついでにオレンジ君の霊圧を追えば隠れて修行出来る場所も見つかって一石二鳥とか考えて追ってたとかそんな話らしい。
なんか、通じ合ってるなぁ、君等……確かに系統同じだしな熱血バカ×2って感じで、正にその通りだったわけだ。
状況も判ったし、隠れ家に連れて帰るかね、平子さん等の事は大丈夫かと聞いてみたら想定内らしい。
俺らが出た後は結界の中にもう一個結界張ってそっちに籠もってるんだと。
そう言うわけで、恋次君を隠れ家に連れて行った。
経緯は省くが、オレンジ君のやる気アップ、恋次君の修行開始と相成りましたっと。
旅禍侵入六日目・昼過ぎ
ルキア嬢ちゃんの処刑が明日となって、何時までも隠れ家に籠もってるわけには行かなくなった。
青春嬢ちゃんは、予定通りだからこっちはどうとでもなるけどと言ってるので任せて置いていいだろう。
とりあえず、浮竹隊長と打ち合わせくらいはやって置いた方が良いだろうなと言う事で、十三番隊の隊舎の方にやってきた。
中に入ると、浮竹隊長と海燕さんと都さん、京楽隊長と、卯ノ花隊長が揃ってた。
そうそうたるメンバーでそのまま回れ右したくなったが浮竹隊長に丁度良い所にと手招きされたので自分で座布団をひいて座った。
ちなみに、青春嬢ちゃんは流石に呆然としてたが、すぐに俺に習って座り込んだ。
嬢ちゃんの顔を見て、髪の色変わってても流石に判るのか浮竹隊長が話に聞いてたけど、無事なのかとか嬢ちゃんに聞いてきた。
やはり、朽木家の一員で席官にもなったわけだから普通にこの三人と面識はあるよなぁ。
京楽隊長はしきりにリサちゃんの事を聞いてきた、昔の部下だったらしい。
後でゆっくり話がしたいねぇとか言ってる姿をみると、なんだかんだいってこの人が隊員に好かれてるのは良く判るなぁ。
ちなみに、君の所、何か面白い事やってるみたいだね、今度僕も混ぜてくれないかい? と聞かれたので全力で頷いておいた。
会長・副会長・会計とあるので、役職は名誉顧問でどうだろうか?
卯ノ花隊長はそんな俺等を見て上品な笑顔でお茶をすすってた。
この人はホントに傍に居て落ち着くなぁ、茶室の銀嶺元隊長とか山本総隊長とか髣髴とさせるわ。
そんなこんなで、色々と積る話を小一時間した後、明日の話になった。
なんと言うか、さすが護廷十三隊の中でも特に経験豊富な人たちだけの事はある。
卯ノ花隊長はなんと、浮竹隊長が藍染隊長の情報を伝える前から死体が偽物だろうとほぼ確信してたらしい。
ほんの僅かな違和感から、この死体は間違いなく藍染隊長の死体だが、何故か勘か何かで違う事を確信したとか、経験って奴だろうか?
京楽隊長は元々、浮竹隊長と協力して四十六室の命令をおかしいと考えてて、護廷十三隊の中の誰が怪しいかを内偵してたらしい。
浮竹隊長は隊長でいざと言う時の双極の破壊と、四十六室に対する支持撤回の働きかけをしていたと言うことだからなぁ、三人が三人とも打ち合わせ無しでこの連携に役割分担、本気で驚きだわ。
しかも、京楽隊長とか100年前から藍染隊長を怪しんでたとかどんだけだよ。
あの時、隊舎に居たのは彼の斬魄刀の能力だったんだねぇ、そう言って昔の事件では手を貸せなくてすまないねと嬢ちゃんに謝って居たのが印象的だった。
経験と直感と能力と人柄から真犯人に迫り、その邪魔をしてた人たちが、実際に詳しい事情を知る青春嬢ちゃんの情報を手に入れた。
そのおかげで現在の状況が在るというわけで、もしかして俺が何もしなくても何とかなったんじゃないか?
これだけ情報が揃えば、あの頑固一徹の山本総隊長を動かせるかもとか話している。
卯ノ花隊長は四十六室に向かい、最悪の事態に備え真犯人の動きが確認できたら全隊長格に連絡を取ることになり、三人の連名で前もって、死体が偽物で裏切者藍染惣右介を罠にかける計画を卯ノ花隊長の診断書付きで総隊長に伝えに行く事になったらしい。
青春嬢ちゃんの情報提供で判明した敵の目的がルキア嬢ちゃんであると言う情報(彼女の霊体の中に何かあるらしい)を元に、双極を破壊すれば確実に首魁が動くという事に確信を持てたのが良かったらしい、トントン拍子に話が決まっていって正直することが無い。
やっぱ、俺って正しかったなぁ、うん、困った時は相談する、これが一番だな。
ちなみに、俺も見てるだけと言うわけには行かないらしい。
恋次君に代わり、白哉君に就いて戦力を消耗しない程度に双極の丘から目を逸らすという役目を貰った。
で、青春嬢ちゃん他が例の結界(丘に直接張った奴)に待機して、主犯をタイミングを見計らって空間切断系の結界に捕らえるという形になった。
決戦は明日って言う事だな、とりあえず、俺が旅禍と組んだと言う情報は死神側には全然伝わってないそうなので(研究馬鹿のマッドに感謝するべきかな、忘れてるだけのような気もするが)隊舎に戻り白哉君の双極での付き人として処刑に立ち会おうかね。
それぞれ役割を決めた後、帰路に着く。
今日は隠れ家には戻らないので、全部終わったらまたなと青春嬢ちゃんと別れる。
とりあえず、背中に向かって、変な顔してないで何時も通りにすると良いぜ、百面相も面白かったけどなと声掛けておいた。
玄之丞のバカーとか叫び声が聞えたが前向きってのは振り向かない事さとさっさと帰った。
旅禍侵入六日目・夜
隊舎に戻り、白哉君の執務室に向かった。
静かに佇む白哉君に明日の嬢ちゃんの処刑には恋次君の代わりに俺が付いて行くよと伝えた。
白哉君はそれに一度だけ頷いて、ルキアは……そう言い掛けて止めた。
まぁ、あれだ、なんだかんだ言って、話せない事も多いが、ちょっと位、白哉君の傍に居てやっても良いかなと思う。
もう、俺の出来る事は無いしな、後は出来るだけ長く、この不器用な青年の傍に居るとしよう。
とりあえず、一番良いお茶と取って置きの茶菓子でも出してくるか。
伊達に銀嶺元隊長とか山本総隊長の茶席にしょっちゅう顔出してるわけじゃないぜ。
茶と茶菓子を出して、俺もそのまま部屋の隅で茶を頂いた。
これで少しだけでも、肩の力でも抜けりゃいいんだけどなぁ。
金崎玄之丞 佳境に入ってきた頃の日記より一部抜粋
【京楽春水の憂鬱】
京楽、そう叫びながら浮竹が八番隊の隊舎に駆け込んできた。
ルキアちゃんの事だろうけど、これだけ焦って飛び込んでくるのは珍しいねぇ。
そう思って居た僕は、落ち着くように浮竹に声を掛けて奥の座敷に向かった。
だけど、彼が持ってきた情報はアレだけ焦る気持ちが判るくらい、重要な情報だった。
その時、僕の心によぎったのはやはりだったのかまさかだったのか……
そして何より、リサちゃんが正気を失わず今も生きている。
これはきっと朗報なんだろうね、彼女にすれば僕は彼女を守れなかったダメ隊長って事になるんだろうけど。
100年前の事件の顛末はこっそり卯ノ花隊長から聞いている。
リサちゃんたちに治療を試みたのは彼女だったからね。
虚化、治療法はなく、このまま殺さず放置したとして、正気を保てる可能性は現状ゼロ。
それが彼女の下した結論だった。
それを受けて、四十六室は彼女達の処分を決定し、山じいはそれを執行した。
そして僕はそれを仕方ないと受け入れてしまった。
彼女達は僕の僕たちのことを恨んでいるだろうか?
恨んでいるんだろうな、それでも、協力を申し出たと言う事は、誰かまだ死神にも彼女達の信頼を受けている人間が居るという事だろうか?
浮竹は、玄之丞の事だなと言い、彼の話をしてくれた。
六番隊の第三席か、そういえば噂を聞いたことがあるね。
うちの円乗寺君も噂していたし。
登山愛好友の会、そんな楽しそうな会の噂も聞くし、僕も少しお邪魔させてもらえるかな?
うん、七緒ちゃんの胸の話とか、色々彼とは話し合ってみたいものだね。
兎に角、彼には感謝すべきなんだろうね。
出来ればそんな彼の力になってあげたいものだけど、どうなるかねぇ。
了
あとがき
随分お待たせしました。
花粉の季節も終わり、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
こちらは奏楽のレギオスが面白すぎたのでレギオスのSSを書いたり、PSP買ってジルオールをプレイしたり、フレアとかかなり良いよねとかジルオールのキャラに萌えたりしておりました。
なんとなく、次回辺りで本編が終わり、その次にエピローグがありそうな感じです。
次はもう少し速く更新したいものです、いや、もう、ホント遅くなってすみませんorz