旅禍侵入9日前(くもり)
と言うわけで、私こと金崎玄之丞は十三番隊の隊舎に来てルキア嬢ちゃん救出会議をやっております。
不機嫌そうな海燕さんや、奥さんの都さん、四席兼五席の虎徹清音ちゃんと小椿仙太郎も一緒です。
何でお前が要るんだよ見たいな目で見られてますが、良いじゃん、六番隊じゃ救出とか無理そうだしな。
お前が来ると碌な事にならないんだよなぁとは海燕さん、以前の愛人騒ぎのせいか実は嫌われてたりする。
まぁまぁ、愛しのルキア嬢ちゃんを助けるんだから協力した方が得だと思うんだ。
愛しのとか言うなと睨まれた、後ろめたくないなら堂々としてりゃいいのにな。
ちなみに、浮竹隊長は調子が悪いので寝てます、男の病弱キャラとかうぜーとか言ったら清音ちゃんと仙太郎に怒られた。
ドンだけ浮竹隊長が好きだよ、あと仙太郎は声でけーよ自重しろ。
海燕さんが牢破って逃がしたら良いんじゃねとか、むしろ俺が逃がすとか言っております、脳筋乙。
本妻の都さんとか置いて愛人と逃げるんですねわかりますとか言ったら都さん超怖いんですが。
いや、待て、都、俺が愛してるのはお前だけだとか、部下を救いたいだけなんだーとかやってます。
はっはっは、胸的にあんま羨ましくないけど幸せ者とか死ねばいいよ、そろそろ大魔法使い越えて超魔法使いとかになりそうな勢い。
本気で俺って結婚とかできんのかねぇ、夜一さんとかプロポーズ受けてくれんかな、砕蜂に刺されそうだからしないけど。
え? シリアスはどうした? いや、シリアス飽きた。
てか、方針はどうにかしてルキア嬢ちゃんを助ける以外の選択肢無いし、余裕は必要だと思うんだ。
妹助けるのに兄貴はどうしたよとか言ってきますが、まぁ、白哉君はね。
そんな話をしてたら、出待ちしてたかのごとく浮竹隊長が現れた。
白哉にとっては妹も、朽木と言う家も守らなきゃいけないものだから板ばさみになってるんだ察してやってくれ。
そんなこと言ってましたが、出待ちですね、判ります、話の前振り聞いてなきゃその返しは出来ん。
しかし、双極なんて使われたの見た事無いんだが、具体的にどういう感じになるのやら。
まぁ、折角、護廷十三隊の大先輩がいるんで説明してもらうとしよう、知っているのか雷電みたいな。
雷電は知らないがと前置きして(律儀だなぁ)、浮竹隊長に双極について教えてもらった。
斬魄刀百万本分の防御力と破壊力を持つ張り付け台と矛で罪人を焼却する刑らしい。
矛は火の鳥になるそうな、科学忍法火の鳥ってのは古いか?
しかしまぁ、百万本分か、青春嬢ちゃんの一撃とどっちがでかいかねぇ。
大雑把過ぎて威力が想像付かんのだがな。
浮竹隊長は、兎も角、軽率な真似はしてくれるなよと言って話を締めた。
四十六室に掛け合っては見るがなとかまぁ、最悪の状況を考えて刑が執行されそうになった場合どうこうできる手段はあるのだろうか?
あるけど解放に手間取るんだよとか言われた、四大貴族の四楓院家の道具らしいのでホントは四楓院の者じゃないと正規に持ち出せないらしい。
じゃあ、そちらは任せて、白哉君のフォローでもしておくかね。
旅禍侵入5日前(晴れ)
隊首室がカオスです誰か助けてください。
白哉君が物憂げに仕事してるのは良いんだよ、しかし、ルキア嬢ちゃんを思ってか、例のクリーチャー水墨画が増殖しております。
スゲー勢いでSAN値が下がっていくんだがふんぐるい。
オーイ、恋次君よ、いあいあとかはすたぁとか言ってないで手を動かせー。
下界行ってた時の報告書が出てないんだよ、さっさと書けや。
う、すんませんと言ってしぶしぶ筆を動かしてる恋次君が、白哉君に聞えないように小声で俺に話しかけてきた。
ルキアが心配じゃないのかとか何とか、まぁ、あれだ、浮竹隊長が中心になって四十六室に掛け合ってるから大丈夫だ。
ダメでも何とかするさ、そう言った瞬間、ピクリと反応する白哉君、恋次君は気付いてないみたいだがな、ルキア嬢ちゃんの事となるとホント地獄耳だね。
そうっすか、別に心配してるわけじゃないですけど、まぁ、一応、ルキアの事たのんますとかさぁ、恋次君ほんとツンデレ乙だよなぁ。
そうそう、ルキア嬢ちゃんが地上でどんな生活してたか興味ないかとか言ってちょっとだけルキア嬢ちゃんに聞いた地上の話をしてやった。
泊まる所が無かったから押入れで寝泊りしてたとか、住んでた所の妹が可愛かったとか、まぁそんな感じのことを色々。
奥で白哉君があの男、やはり殺しておけばとか言ってるなぁ、俺としてはもっと素直にお前を助けるとか言ってルキア嬢ちゃんを攫っていっても良いと思うんだがなぁ、四大貴族ってのは面倒だね。
恋次君は割りと素直に、ルキアと同じ部屋で、あの野郎……とかぶつぶつ言ってる、はっはっは、結構むっつり少年だわ、今度、白哉君に内緒でおっぱいの会に連れて行ってやるか。
いざとなったら強行でルキア嬢ちゃん攫って行かんといけんからな、ルキア嬢ちゃんの好感度を高めておけば追っ手の追撃も鈍るってもんよ。
てな感じで地味にルキア嬢ちゃんに対する好感度を上げて救出の成功率を高める作戦、計画通り!
旅禍侵入当日昼(晴れ)
六番隊の隊舎で恋次君とお茶飲んでたら警鐘が鳴った。
なにやら地獄蝶を伴わない穿界門の突破があり、瀞霊壁が下ろされたらしい。
何者かは西流魂街に落ちたとか、とりあえず手は空いてるので見に行こう、命令は来てないけど。
恋次君も行くつもりらしく斬魄刀を探している。
なんか隊士の理吉少年が俺らのお茶のあてタクアン切ってたらしくて包丁見当たらなんだから手元にあった恋次君の蛇尾丸を使っちゃたらしい。
この少年、地味に物怖じしないなぁ、まだ新入りだし事務仕事仕込んだら良い感じに恋次君の秘書って感じになれるかも。
とりあえず、ルキア嬢ちゃん連れて逃げるなら事務仕事の引継ぎ書とか作っておいた方がいいな、今度作っておこう。
西の門に辿り着いたら既に三番と五番の隊が集まりかけていた。
丁度、オレンジの髪の死神の少年が市丸隊長に吹っ飛ばされてくシーンだった。
恋次君があの野郎とか言ってたし、知り合いだろうか?
もしかしたら、ルキア嬢ちゃんの死神能力を奪ったって言う人間かねぇ。
吹っ飛ばされたって事は防いだって事だから、まぁ、命に別状は無いだろうけど。
もしかして、仲が良かったらしいから助けに来たのか?
穿界門とかどうやって準備したんだろうな、滅茶苦茶浦原えもんくせぇわ。
こりゃ、ますますそのつもりで動いてた方が良いかもしれんな。
ここの警備は五番と三番がするようなのでうちはまだ少しだけ暇だろう。
とりあえず、砕蜂にあの騒ぎは浦原さんとこが関わってるかもしれんから何かあったら遊びに行くわと伝えとく。
砕蜂と顔近づけて内緒話してたら通りすがりの変な髪形の奴に睨まれた、始めてみる顔だが何処の誰だ?
うーん、怪しまれたって事かねぇ? ま、大丈夫だと思うが、一応、頭の片隅にでも入れとこうか。
旅禍侵入当日夜(晴れ)
と言うわけで、再び十三番隊隊舎で晩飯食ってます金崎玄之丞です。
やっぱ、みんなで食うなら鍋だよね、夏だけど、いやいや清音ちゃんも仙太郎もそこで見てないで一緒に食おうぜ。
つかなんで居るんだよテメーという目で海燕さんが見てます、でも浮竹隊長と都さんの許可貰ったしなぁ。
あの二人は四十六室への働きかけの為に忙しいから今居ないけど、馬鹿な事しないように海燕さん見張っとけって言う事なんでひとつ。
あはははは、見抜かれてますねーとは清音ちゃん、俺らが付いてるんで大丈夫ですとは仙太郎、あと仙太郎声大きい。
ちぇ、餓鬼じゃねぇんだよとか言ってますが脳筋はガキと同じだと俺は思うんだ。
恋次君に確認したんだが、例の旅禍は下界でルキア嬢ちゃんの死神パワー奪った子らしい。
多分、嬢ちゃん助けに来たんだろうと言う事なんでバカじゃなければ瀞霊廷内に侵入くらいできるかもしれんね。
そうなったら、瀞霊廷は混乱するだろうからその隙に連れだしゃ良いんじゃないかって思うんだよね。
そう言ったら、海燕さんはそう言う事なら空鶴に手助けでも頼むかとか言ってる。
個人的に、浦原さん関係なら言わんでもどうにかすると思うけどなぁ。
よっしゃ、じゃあひとっ走り実家に戻って来るわとか、馬鹿なの死ぬの、とりあえず玄海嬢ちゃんで足を捕まえる。
直接行くな直接、ほんともう見張っといてくれこのナマモノ。
メシ食い終わってから、念入りに清音ちゃんと仙太郎に頼んでおいた、本気で心配だ。
旅禍侵入翌日(晴れ)
ルキア嬢ちゃんが懺罪宮に移送される事になった。
先導は恋次君、白哉君は見送りに来なかった、まぁ、仕方ないか。
憔悴したルキア嬢ちゃんと目が合った、どういう結果になるかは判らんが任せろ。
そういった意味を込めて頷く、ルキア嬢ちゃんも白哉兄様をお願いしますと言って懺罪宮に向かっていった。
この後、隊首会があり、副隊長はそのまま瀞霊廷内に待機と言う事になるらしい。
あちこちに飛んでいた隊長・副隊長はこの日の昼には瀞霊廷に帰って来ていたようだ。
午後に警鐘が鳴り旅禍侵入との連絡がうちにも回ってきた。
滅茶苦茶楽しそうに走り回ってる剣八のおっさんとか見かけたんだが、旅禍に同情を禁じえないなぁ。
せめて、おっさんにだけは捕まらないといいんだが。
結局、この日は旅禍は発見されなかった、いっその事、海燕さんとか野に放つか、都さんとか居なけりゃそうしてたものを。
全く、ゆっくり休める日は何時来るやら、全くもって面倒だな。
金崎玄之丞 旅禍が尸魂界にやってきた頃の日記より一部抜粋。
円乗寺辰房の憂鬱
我輩は護廷十三隊八番隊第三席副長補佐、円乗寺辰房である。
剣技は無双にして、敵は無し、隊長・副隊長の信頼厚く部下の尊敬を一身に集める男、それが我輩である。
しかし、我輩には気に入らない男が居る。
護廷十三隊六番隊第三席副長補佐の金崎玄之丞の事だ。
その男、己の領分も弁えず複数の隊を渡り歩き、目上である隊長・副隊長への敬意を見せない。
しかもだ、他の隊の仕事にまで横入りしているそうではないか。
他隊の仕事、それすなわち機密の塊、その機密にあろう事かどうどうと振れお咎めすらない。
朽木家の権力を笠に着た虎の威を借る狐とはまさにあやつの事を言うのだろう。
全く以って、気に入らぬ事甚だしい。
一度、あやつとは剣を交え己が分というものを判らせねばならぬ、そう我輩は思うのだ。
そう、未だ一度として破れた事のないこの円乗寺辰房の剣技『崩山剣舞』にてな。
そして、分を判らせた暁には、我輩こそが砕蜂隊長に頼りにされるに相応しい人間となるのだ。
先日も、砕蜂隊長と人目のある所で顔を寄せ合いおって、うらやま……ごほん、けしからん。
我輩も、砕蜂隊長にぶたれた……げふんげふん、あの男より頼りになると知って貰いたいものだ。
ふん、こたびの旅禍に対する警戒令、まさに好都合。
旅禍よ、我輩が本気になった時に現れるとは不運よ、我輩の斬魄刀、崩山の錆びにしてくれるわ。
さあ、恐れおののき逃げ隠れるがいい、何処に隠れようと見つけ出し我輩の手柄としてやろう。
ふっ、金崎玄之丞よ、好き勝手出来るのは今だけだと言う事を心して置くのだな、ふ、ふははは、ふははははははははははははは。
了
後書き
カラブリ+買いました。
凄い勢いで円乗寺辰房の好感度アップしました。
頭悪くて好きだ。
展開速いとか言われてますが、玄之丞の日記じゃ、関わらない所はスルーなので必然的に。
あっさりルキアとか見つけたら凄い勢いで話が終わりますしねぇ。