:囮…?
近くの町で義勇兵を募り、更に曹操の軍より兵糧を提供してもらう。
曹操軍の軍師、荀彧とラオウの仲間の朱里、雛里の三人により作戦が討議され、
その作戦にしたがって行動をしていた。
黄巾党の本隊はどうやら冀州にいるらしいとの事。
因みに一刀はこの軍勢で官軍に喧嘩売ったら勝てそうじゃない?
と冗談を言ったが…かなりの間があって否定された。
さすがに和が違いすぎるらしい…
そして、特殊部隊を内部に放ち工作をして敵抹殺を敢行する事となったのだが。
「で、だ…囮にすると言っておきながら何故貴様もいるのだ」
「さぁ?何ででしょうね?それなら、貴方も一群を率いる大将なのに
前線に立っているのは何故なの?」
「俺が敵を葬れば葬るほど…兵の損害は軽くなる、それに士気も上がるであろう…
大将だからと言って安全な場にいるなど愚の骨頂」
そう言って視線を敵のとりでの門に向ける。
曹操はただただしっかりとラオウの挙動を見ていた。
曹操の傍には一刀、夏侯淵、夏侯惇、許緒が控えており、
ラオウの傍には、愛紗、鈴々の二人が控える。
残りの主だった将たちは後方で本隊を率いて待機している。
瑞佳と曹の二人は特殊部隊として参加している…北斗神拳は暗殺拳。
潜入はお手の物である。
「まぁ、良い…一時の盟友とはいえ、守れぬぞ」
「ふ、そんなにやわじゃないわよ」
「俺は場違いなんだけどなー」
最後の呟きは一刀のもの…本来は本陣のはずなのだが…いつのまにか
前線に回されていた。許緒は主に一刀の護衛のために来ていた。
「ラオウ様…黄巾党が…」
『『ひゃっはー!!!!』』
「あれは乙団?」
「なんだそれは…」
夏侯淵の言葉に反応し、ラオウが敵に正面を向けたまま尋ねる。
「黄巾党の中でももっとも下種な集団よ…」
「蒔維怒と名乗っている者が将格なのよ、自ら真名を名乗っている愚か者よ」
「ふ…ならば、元より無いが容赦する理由は無いな…」
そう言い放ち、ラオウは気を集中させる。
「開戦の祝撃だ…北斗剛掌波!!!!」
黄巾党は吹き飛んだ…愛紗や鈴々は慣れたもので驚いていないが…
曹操側は華琳を除いて全員一時硬直した…すぐに気を取り直した。
「片手で十数人を吹き飛ばす噂は本当だったのね」
「華琳…動じないんだな」
そして…ラオウはおもむろに大木を抜き出す…そして、門に向かってぶん投げた。
当然、門はあっという間に破壊された。
そのまま、一気に剛掌波を撃ちはなっていく…
「鳳統達が策要らないといってた訳が分かったわ」
本陣にて荀彧が呟いた…朱里と雛里はもう泣きたい気分だった。
頑張れ…内政に成れば君達の力が役に立つから…それまで我慢だ。
「煙が上がったか…混乱が見られる、これならば後は楽だな…」
もとより楽にしか見えないんですけど…という突込みを諦めた。
今は目の前の敵を殲滅する方が大切である。
「北斗の兵達よ!!獣共はうろたえておる!!今のうちに殲滅せよ!!!!」
「わが精兵達よ!!!後れを取るな、獣共に明日など無いことを思い知らせよ!!!」
二人の覇者の号令に、曹操、ラオウの軍勢は士気を最高潮に敵へと雪崩込む…
当然ながら、戦闘ではなく掃討戦となってしまった。
「うおぉ――――――!!!!!」
闘気を込めた腕を振り回すだけで敵の賊達は、次々と蹴散らされていく。
もはや、歩く対軍兵器。
…策などいらず、普通に突っ込むだけで勝っていたのではないか…?
ただ、その場合は兵の損失が増大するだけだったのだが…
そして、ラオウ達は敵陣地内に居た。
「うぬが蒔維怒か…」
一般兵数人がかりで捕縛した男を睨みつけるラオウ…。
その男は…周りで死んでいるものの死に方を見て…かつて自分を殺した男
の事を思い出していた。
何故ここに生き返ったのか、知らないが…世紀末の世と似ているため好き勝手やって
暴れていたが…まさか、同じ様な男が目の前に再び現れるとは…
「こ、このやろう…な、何を!?」
ラオウがとある位置に指を突きいれていく。
その位置は…頭維、実質死刑である。
しかも、それ程強く押していないため、通常より死ぬのに時間が掛かる。
「…もはやその男はあと十五秒で死ぬ」
それだけ言い放ち、ラオウはズンズンと、立ち去っていく。
曹操も何かを施したと理解して、さっさと立ち去る。
全員が立ち去った後、蒔維怒…ジードは誰にも知られずに死に絶えた。
「ふ、終わったな…ところで瑞佳よ…その娘は誰だ…
そして、その格好はどうした」
その言葉を聞き、特殊部隊に参加していた兵士達が凄い表情で
ラオウを睨んでいた…が、ラオウには通用しない。
瑞佳は額に青筋を少し浮かべたが…すぐに落ち着きを取り戻し…
「……少しお耳を~~です」
その名を聞くとラオウは呆れた目を見せた…まさか、このような娘が
黄巾の乱の首謀者とは…しかし、瑞佳の話を聞く限りでは…原因ではあるが
理由は乱を起こすためではなかったらしい。
ちなみにその娘はすやすやと幸せそうに瑞佳の背で眠っている。
「歌でこの大陸一になる為…か、呆れた理由だな」
「…ラオウ様」
「…瑞佳、うぬの配下として扱っておけ、俺は張角という名など聞かなかった」
そして話はそれまでだと立ち去っていった。
瑞佳の言を聞かずともどうして欲しいのか分かったのだろう…。
ラオウは張角は別の人物を立てて置けばよいと考えていた。
曹操の話を聞く限りでは角が生えていて腕が八本で身長が九十九尺ある
化け物となっていたが…
瑞佳はラオウの姿が見えなくなるまで礼をして…背に抱えたまま自身の暗幕に向かった。
その途中、兵士の一人に服の手配を頼んでいた。
勿論、天和の服を変えておくためである。
「どう…桂花、あの男は…」
「今はまだ………………………………………………
弱小(?)勢力ですが、率いる北斗という男は
龍をも超える獅子といったところ、また仕えている将達もどれも一角のもの…
人気も集まっているようですし、眠れる龍王といったところでしょうか」
途中の長い間にどれほどの葛藤があったのか、曹操は察する事が出来た。
「ふむ…巨龍が死に体の今、新たな龍が目覚めるか…楽しみね」
「…華琳、楽しみって…」
「一刀、困難無き覇道など何の意味も無いのよ?
障害無き覇道を邁進するよりも、難敵が待ち受ける茨の道をいく。
それでこそ覇道に望む張り合いが出るというものよ」
「さすが華琳ってとこか…けど、随分とデカイ障害だよなー…」
「感服いたしました!」
「ふふふ、感服なんてしてないで感じてもいいのよ」
百合百合な雰囲気になってきたので、一刀はそそくさと立ち去った。
人が見ている前ではじめないで欲しいと思う一刀だった。
「敵の本拠地を落とした…が、これからの行動はどうするのだ」
「そうね…渠師の一人が率いる部隊を蹴散らすつもりだけど、
出来れば同行してくれると助かるわ」
兵の損失も少なくなりそうだしね、と付け足す。
ラオウたちにしても、兵糧を提供してくれる者が同行してくれるのであれば
兵の離反も少ないと踏んでいる為、同行する事には反対しない。
「ふ、ならばこのまま同盟軍として行動させてもらおう」
「そうね…物資提供分の働きは見せてもらうわよ」
そして、会話は終わりを告げ…早々は自らの軍へと戻っていった。
「朱里よ…曹操軍の動きを盗めるか」
「…何とかやってみます」
正直、軍の行動力は無いよりもあったほうが良い…曹操の軍ほど動ける軍は
そうは多く無いだろう。
ならば、その動きを参考してもらうのも軍制御には役に立つだろう…。
そして、曹操と過ごして半年後…張角のいる(とされる)主力軍を打ち破り…
張三姉妹は全員討ち取られたと言う…。
張角の代理は、ラオウが黄巾党の一人を似顔絵どおりに改造したからである。
アミバも顔の骨格を変えて変装したのだからこの程度は容易い。
残りの二人については焼き尽くされて骨しか見つからなかったという…。
もっとも、張角はラオウ軍…残る二人は曹操の軍に保護されているのだが、
それは別の話である。
尚、張三姉妹はそれぞれ、姉や妹達が生きている事を知らない。
ちなみに曹操の軍とラオウの軍の活躍を聞いて…ようやく他の諸侯が本腰を入れたという。
そして、この黄巾党の乱により、今の王朝の弱さが目の当たりとなり…
巨龍である事には変わりが無いものの…もはや骨と皮だけしか無い状態となっていた。
しかし、ラオウは動くでもなく…恩賞として与えられた平原というところの相に任命され…
治政を行なっていた。
…余談だが、雛里と朱里がようやく活躍の場が持てたと歓喜していたと言う…。
ひとまずは…大陸に少しの平安が訪れた……。
おまけ:潜入部隊
瑞佳は敵の陣地内に居た。
「…これほど楽に入り込めるとはな…」
「…瑞佳様、紅柳様…嫌に静かですね」
「門前で北斗殿が大暴れしているからだろう…
正直、あの野郎より強くないか?」
あの野郎とは今代の伝承者の事である。
その時、近くの小屋らしきものが衝撃で吹っ飛んだ。
「…今のはなんだ…」
「ラオウ様の剛掌波だ…」
工作部隊に冷や汗が落ちる…敵にではなく、味方に殺される可能性のほうが高い。
洒落にならない事態に陥っていた。
「も、門が破壊された―――!!!」
「大木投げてぶっ壊しやがったあの化け物…全員でかかれ―――!!!」
遠くで聞こえてくる、怒号…正直作戦はいらなくね?と特殊部隊は思った。
そして、衝撃が飛んできた。
「ぐは!?」
「瑞佳―――!!!?」
剛掌波が飛んできた…距離があったため威力が抑えられているとはいえ…
常人が当たっていたら間違いなく
死んでいる威力だ。因みに、大声を出しているのに、敵は気が付いていないようだ。
どう考えてもそれどころではないからだろう。
瑞佳は咄嗟に体中の気功を制御し、事なきを得た。
「は、早く火をつけるぞ…」
その後、火をつけた後…潜入部隊は即座に脱出した。
その脱出劇は、鬼気迫る勢いであったという。
何故なら後方辺りで剛掌波の流れ弾が鳴り響いていたから…
その途中…
瑞佳は別行動(はぐれたともいう)を取っていたのだが…何かを踏んだ。
「ぎゃぴ!?」
「む?女?」
脚をどけてみると…歳の同じぐらいの桃香よりも薄い桃色の髪の毛の少女が
伸びていた…髪には黄色のリボンをつけている。
おそらく黄巾党の一派だろう。
その近くには黄巾党の賊が数人ほど見られる…少女を縛っているところを見ると…
楽しむつもりだったのだろうか…
「殺すか」
「なんだ、この気障野郎!やっちまえ!!!
「遅い…」
あっという間に片を付け、少女の縄を解く…黄巾党に組したとはいえ
このような目に遭ったならば同情するしかない。
少女の顔を見た…何故か顔が赤いようだが…
「お主、名は?」
「ちょちょ、張角です!真名は天和です!天和と呼んでください!」
今、凄い名前を聞いてしまった。
張角と言えば、黄巾党の首領格ではないか…何故こんな所に。
「何故このような場所に居たのだ」
「い、妹達とはぐれちゃって…それで、捕まっちゃって…
そんな時に貴方が颯爽と現れて~」
妹とはぐれた…まで聞いて考察する…因みに天和は踏まれた事を記憶の彼方に追いやって
いた。
やがて…戦場の音が消えた。
そろそろ戻らなければならない、が…。
「…」
「~~~///」
先ほどから流暢に話す少女…連れて行けば殺されるのは必至だろう…。
だが、何故か好意を向けてきている少女を殺すのは抵抗がある。
そして…おそらく男に勘違いされていると見当をつけて…
「…俺は女だぞ」
「え………それでもいいです!むしろ禁断の恋!?」
熱は過熱してしまったようだ…見逃すから妹の下へ向かえと言う言も聞き入れず…
無常に時間が過ぎていき…結局、ラオウ軍に連れて行くことにした。
…あとは本編どおりである。
:キャラが変わってね?