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No.6264の一覧
[0] 真・恋姫無双伝説異伝 天の覇者【真・恋姫無双×北斗の拳】(打ち切り)[海野狸白](2009/09/16 17:01)
[1] 第1話:出会い[海野狸白](2009/02/05 09:07)
[2] 第2話:桃園の誓い[海野狸白](2009/02/09 14:37)
[3] 第3話:出陣 Apart[海野狸白](2009/02/05 09:14)
[4] 第4話:出陣 Bpart[海野狸白](2009/02/10 14:40)
[5] 第5話:幕間1[海野狸白](2009/02/08 13:44)
[6] 第6話:名軍師加入![海野狸白](2009/02/10 14:41)
[7] 第7話:獣死すべし…軍師の実力考査[海野狸白](2009/02/10 08:36)
[8] 第8話:曹操との邂逅[海野狸白](2009/02/12 08:33)
[9] 第9話:囮…だと…?[海野狸白](2009/02/13 13:52)
[10] 第10話:幕間2 黒龍現る Apart[海野狸白](2009/02/15 13:07)
[11] 第11話:幕間2 黒龍現る Bpart[海野狸白](2009/02/17 09:09)
[12] 第12話:反董卓連合結成!総大将はやはり奴が…[海野狸白](2009/02/17 09:08)
[13] 第13話:卵こそが正義(?)[海野狸白](2009/02/19 08:35)
[14] 第14話:華雄敗北[海野狸白](2009/02/19 08:48)
[15] 第15話:宿命の影[海野狸白](2009/02/20 08:13)
[16] 第16話:邂逅・宿命の兄弟[海野狸白](2009/02/24 08:23)
[17] 第17話:剛と柔[海野狸白](2009/02/24 08:29)
[18] 第18話:董卓保護[海野狸白](2009/02/26 08:50)
[19] 第19話:幕間3・休息[海野狸白](2009/03/02 09:51)
[20] 第20話:蜀領救出作戦[海野狸白](2009/03/04 08:28)
[21] 第21話:母子再会[海野狸白](2009/03/06 09:08)
[22] 第22話:新たな仲間![海野狸白](2009/03/07 16:15)
[23] 第23話:豚の陰[海野狸白](2009/03/11 08:14)
[24] おまけ[海野狸白](2009/03/11 08:15)
[25] 第24話:豚は地獄へ行け[海野狸白](2009/03/12 09:10)
[26] 第25話:猪突猛進作戦[海野狸白](2009/03/12 09:11)
[27] 第26話:汚物は消毒せねばなるまい[海野狸白](2009/03/13 10:04)
[28] 第27話:幕間4・親子交流[海野狸白](2009/03/16 08:34)
[29] 第28話:五胡の陰と南蛮平定[海野狸白](2009/03/17 09:56)
[30] 第29話:南斗の乱、魏呉墜つ[海野狸白](2009/03/28 12:07)
[31] 第30話:北斗長兄と次兄、共同戦線[海野狸白](2009/03/27 14:40)
[32] 第31話:救出作戦、首謀者の陰[海野狸白](2009/03/28 12:14)
[33] エイプリルフールネタ最終回:北斗万愚節[海野狸白](2009/04/24 08:02)
[34] 第32話:紅剛作戦[海野狸白](2009/04/24 08:04)
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[6264] 第31話:救出作戦、首謀者の陰
Name: 海野狸白◆f1c5a480 ID:69a68675 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/28 12:14
*直接表現禁止……な訳ではない、別に禁止要素では無いですよね?
 
  「今回はよろしく頼むわね孫策」
  
  「そうね…こちらこそよろしく頼むわ曹操」
 
 お互いに項垂れつつ書簡を交換し合い、項目に書き込んでいく…
 名目上は五胡と組み領土を脅かそうとする蜀に対抗する為の同盟となっているが…
 実際には桃香の拉致に失敗した南斗聖拳強硬派が曹操達を使って蜀を手中に収めようと
 しているだけだった。
  
  「北斗は大切な者を守り通したみたいね」
  
  「それで私達を使おうとしているって訳よね…あいつらのあの表情が見れたのは
   いい気味だと思ったけど、こういう手段に出るのは感心しないわよね」
  
 二人で愚痴を言い合う…南斗の一派はいない為このような事が言い合えるのだ。
  
  「あーあ…本当ならこんな事で戦いたくは無かったんだけどね」
  
  「それは同感ね…私の意志であの頂点に君臨するような存在に挑むつもりだったんだけどね」
  
  「北斗は立ち向かってくるのかしら…?」
   
  「来るでしょうね…あの男は策を弄しようとしない限りは決して背中を見せないような
   誇り高い精神を持っているもの」
 
 今でも浮かんでくる…圧倒的な存在感を持つ覇王…共同戦線を張っていた時には
 頼もしさを感じた…だが、それが今度は敵対者という形で向かってくるのだ。
  
  「兵の量は三倍以上あるけど…あの男の存在は戦局をあっという間に覆すでしょう」
  
  「兵士の質も親衛隊クラスは三人がかりで関羽将軍を苦戦させるほどの
   力量を持っているっていう情報は何かの冗談かと思ったけどあの北斗なら
   ありえないことで3は無いわよね」
  
  「しかも三千でしょ?……簡単に説明すると関羽が千人以上の群れで襲い掛かってくるようなものよね」
 
 出来れば想像したくない光景だ…それがラオウの群れで無い分マシなのだが。
  
  「ぶつかり合いになるとおそらく互角…先に北斗をどうにかしなければ負けもありえる」
  
  「それがわかって無いのよねーあいつ等は…」
  
  「単純に数で押せばどうにかなるとでも思っているのでしょう?」
 
 兵法の基本は相手よりも多く兵を用意する事…純粋に考えれば十分な量なのだが、
 圧倒的な武力は時として数の差をものともしない事がある……黒龍の存在も考えれば
 決して圧倒的有利だと考えてはいけない。
  
  「死すならば戦いの最中で…もし死ねば一刀に渡すようにと比較的マトモな奴に渡したわ」
  
  「あら、恋人?って言うかマトモな奴いたのね」
  
  「そうよ…人質の一人でもあるけどね……強硬派も下種ばかりではなかったって話よ」
  
  「少なくとも私の所は下種ばかりだったけどね…」
 
 それから二人は酒を飲み交わし、延々と南斗の愚痴を語り合っていた。
 






























  「酷い有様だな」
  
  「そうですね…それより猫は見つかりましたか?」
  
  「いや、犬は見かけるのだが…中々猫は見つからないな」
 
 呉の国の一つの町で気配を消して探索しながら歩くトキと瑞佳…二人は旅商人に変装して
 入り込んでいた……町に入るときにかなりの額を請求されたが…路銀でかなり多く持ち合わせていた為
 払う事が出来た…その際、ギリギリだったという演技も忘れてはいない。
  
  「あ、居ました五匹の猫だ」
  
  「無駄に色が揃っているな…あれは違うだろう…黒ではないからな」
 
 赤・緑・青・黄・桃…猫とは思えない色をしていた……アミバの占いには色の指定があった為、
 付いていきたい誘惑にちょっと駆られたが、無視して見回すと今度は真っ黒な猫五匹が居た。
 その猫達はまるでトキ達を待っているかのようにジッと見つめていた。
  
  「…あれだろうな」
  
  「トキ様、ニコヤカにですよ」
  
  「それなら簡単だ…それにあのような可愛らしい猫ならば自然に頬が緩む」
  
 確かに黒猫は全て子猫であり、目がクリクリッとしていて可愛らしい。
 この場に愛紗が居ればいつもの面影は無くなり、ホワーッとした表情になるだろう。
 トキと瑞佳が近づくと、付いて来いと言わんばかりにトテトテと歩き出した。
  
  「案内しているような感じだな」
  
  「時折振り向く仕草が可愛らしいですね」
 
 重大な任務なのだが…猫達の愛らしさに和んで自然にニコヤカに笑いながら後を付いていく。
 ある程度人通りの多い場所なのだが、猫達は中々路地裏には入りそうに無かった。
 そして…周りに自然にそこにいるかのような男達の居る建物で座り込んだ。
 
  「……瑞佳、気をつけろ…二十人ほど居るぞ」
  
  「え…流石ですね、俺には五人ぐらいしか気配が感じ取れませんでした」
 
 近くの開いたスペースに座り込み、物売りの振りをしつつ…様子を眺めるトキと瑞佳。
 
  「こちらにはまだ気が付いていないようだ…孫権、孫尚香、周瑜…三人居るな」
  
  「読唇術ですか…」
  
  「よし、早速行動を起こす…瑞佳はこのまま売り物をしていてくれ、私が一人で乗り込む」
  
  「え、トキ様……消えた?」
 
 気配を断って、高速で移動をしていた…その速さは小夜にはわずかに劣るが流石としか言いようが無い
 スピードだった。
 
  「トキ様…置いていかないでください…」
 
 慌てて瑞佳も行動を起こした。















  「ねえ、冥琳…シャオ達いつになったら解放されるのかなぁ?」
  
  「聞かれても困ります…おそらくは死ぬまでは出られそうに無いですが」
  
  「シャオ、少しは落ち着いたら?」
 
 部屋の中で溜息をつきながら話す三人…三人は自分のせいで孫策に迷惑をかけていると
 考えている…孫策はそのような事は思っていないのだが…内側からしか見えない窓から見ると
 民の様子は活気が無いとしか言いようが無いほどに沈んでいた。
  
  「お姉ちゃんだって、落ち着いて無いじゃない…あの男の似顔絵ばかり見て
   溜息をついてさー」
  
  「そ、それは…」
  
  「蓮華様ももう少し素直になられた方が宜しいですよ…祟に好意を寄せているのは
   周知の事実なのですから」
  
  「べ、別に最初の頃は幼い子供しか狙っていなくていい加減な奴で好き嫌いがハッキリしてるなとか
   最近修行に打ち込んでいる姿が格好いいなとか思っていない!」
  
  「…」
  
  「…」
 
  「…」
  
  「な、何だ…言いたい事があるならはっきり言え三人と…も…?」
 
 そこで孫権が違和感に気がつき、恐る恐る人数を数える。
  
  「点呼」
  
  「いーち」
  
  「二です」
  
  「三だ」
  
  「うん、三人か……あれ?私を含めると…四人」
 
 もう一度数えてみる…どうみても四人だ。
 しかし、あまりにも自然に紛れ込んでいた為気が付かなかった。
  
  「お前は…劉璃か?」
  
  「そうだ、久しぶりだな周瑜…助けに参った…早速だがここを出るぞ」
 
  「へ?でも、外には腹は立つけど腕の立つ奴らが居る……ってどうして入ってこれてるの?」
  
  「これは周瑜に聞けば分かると思うが…トキ様と共に此処へ来た」
  
  「……なるほど、確かにあの男の力量ならあの実力で人数、たいした障害では無いでしょう」
 
  「トキって…お姉様達が話してた拳の腕が神の領域に達していた二人の内の一人?」
  
  「そこまで大げさなものではない…」
 
 そう言いつつ入り込んでくるトキ。
 その手には一人の男が気絶したまま引き摺られていた。
  
  「人質は貴方達三人だけのようだ…今すぐ孫策のところに行きたいだろうと思うが」
  
  「分かったわ、蜀に行けばいいのね?」
  
  「さすがねねや朱里が認めるほどの軍師だな、察しが早くて助かる」
 
  「むぅ、お姉様に早く会いたいのは山々だけど冥琳が言うんじゃ仕方ないね」
 
 約一名ほど、不服そうだったが…今後の事を考えて渋々合意した…
 
  「それと…暫くはこれに着替えて変装してもらいたい」
  
  「……鬘と服、まあ、仕方ないでしょうね」

 渋々と着替えてその家を後にした…町を出るときに門番の者達に町を出る旨を伝えたときには
 三人とも冷や汗ものだったが、トキが頭に指を突きたて…門番は
  
  「五人…入ってきた時も五人だったから問題ないな…よし、精々気をつけて他の町へ行けよ」
 
 記憶すら操る北斗神拳…と言ってもこのような簡単な事しか変える事は出来ないらしいが
 それでも凄いものだった。
 ちなみに、孫権たちが囚われていた家には三人の偽者を置き、孫権たちがまだ居ると認識させておいた。
 そうしてトキ達は馬車に乗り、蜀へと馬を走らせた。































  「町に入って早速ゴキブリ発見だな、さすが俺の占いだ」
  
  「…」 
  
  「やはり俺は占いの天才だ」
  
  「……」
  
 呉をトキ達が出立した頃魏の国の町で一人饒舌に喋り、一人寡黙にゴキブリの後を付いていく二人。
 奇妙な事にそのゴキブリは串が刺さっている状態だった。
 不気味な光景だが、ゴキブリの生命力の強さを垣間見た瞬間でもあった。
 リンゴにぶつかって串の先端が刺さったときに、ゴキブリに直に触っても平気なアミバも不気味だが。
  
  「傍から見ればゴキブリを追跡する変な二人組みに見えるだろうが
   そのような事は関係ない…ようは目立たなければ良いのだ」
  
 かなり目立っているのだが、小夜は突っ込まなかった…なぜならゴキブリの動きを追いかけるのに
 必死になっているからだ…ゴキブリはちょろちょろと動くので少しでも見失ってしまえば
 見つけるのは困難になってしまうだろう。
  
  「どれ、歌でも歌って…」
  
  「…」
  
  「Y○UはSH○CK!愛で空が、落ちてくーるー…」
 
  「……着いたみたいですよ」
 
 ようやく辿り着いたようで小夜がようやく言葉を発する…町の中の酒場のようだった。
 昼間だがかなり賑わっている。
  
  「私は顔が割れている…アミバ、後はお任せして宜しいですか?」
  
  「ふむ、いいだろう…ところで中にはどれ程の数が居るのだ?」
  
  「南斗聖拳の使い手は二十ですね…でも、全員六聖拳の一角どころかその候補でも無いです」
 
 行動を起こした理由は知らないが、実力の程に関しては二千人近く居る拳士全員の実力を
 把握しきっている。
 故に、アミバでも問題無いと判断したわけだ。
  
  「別にあいつらを全て倒してしまっても構わんだろう?」
  
  「……急に不安になったから付いて行きます」
 
 妙な直感が働き、軽く変装してその酒場へと入っていた。
 














  「親父、神殺しを頼む」
   
  「私は龍殺しを」
  
  「そんな酒等無い!」
 
 二人とも冗談で言ったようで冗談だと笑い、店主も分かっている様で
 軽くあしらった。
  
  「で、本当の注文は?」
  
  「…人質の在り処を」
 
 その途端、辺りは静まり返り…小夜とアミバの周囲にこの店に居る南斗強硬派全員が
 集まった。
  
  「ほう、よく嗅ぎつけたようだが口を滑らせたな…ここに居る事は確かだが
   この人数を相手に勝てると思っているのか?」
  
  「勿論、勝て、ます!!!」
 
 小夜の姿が掻き消えた…そしてその一瞬の間に南斗の男一人を残して全員気を失った。
  
  「な!?」
  
  「南斗鳳凰拳に構えは無い…あらゆる状況を千差万別に対応できる南斗聖拳最強の拳法」
 
  「…さぁて、貴様にはいろいろと話してもらおうか…秘孔・新一!!」
 
 そして、その男から人質の人数を聞きだし…すぐさま救助へと向かっていった。















  「下が騒がしいと思ったら、お前達だったのか」
  
  「曹操の所に戻りたい?」
  
  「あ、あぁすぐに華琳のところに!!?」
  
  「落ち着け一刀…華琳様の周りにはまだ仲間がいる筈だ…」
  
  「そのような状況で戻ろうとしてもまた捕まる可能性が高い」
 
  「ここの者達には記憶の改造を施した…暫くはばれないだろう…一旦蜀へときてもらうぞ」
 
 一刀は悩んでいた表情をしていたが…すぐさま納得し…蜀へ行く事を了承した。
  
  「決まりましたね…その前に…いつまで戸の前で突っ立てるつもりですか?」
  
  「……大和将様…お久しぶりです」
  
 部屋の中に入ってきたのは一人の男だった…その手には一枚の手紙が握られている。
 強硬派の中でマトモな部類に入ると華琳が言っていた男である。
  
  「…まさか、貴方までこの騒ぎに居たとは思わなかった」
  
  「……言い訳は申しません…それと、北郷殿これを」
  
  「俺…?」
 
 男は丁寧に一刀の下へと手紙らしきものを投げ渡す…投げている地点で
 丁寧ではないのだが…
  
  「華琳から!?」
   
  「……筆跡も華琳様のものだな」
 
  「………大和将様…こちらへは来て頂けないのでしょうか?」 
  
  「無理…今の私には居場所がある……とても大切な」
 
 両者視線を外さず、しっかりと相手の表情を見ている……すると、男が諦めたかのように
 拳を構える。
  
  「南斗水鳥拳第三席…たとえ敵わずとも阿修羅となりて貴方をここでし止める」
  
  「……そう」
 
 小夜もジッと相手の挙動を見る…それなりの覚悟で向かわなければ倒せない強敵だと
 認識しているのだろう。
  
  「え…待てよ、話し合えば……?」
  
  「北郷殿…貴方は曹操殿を裏切れるのか?」
   
  「華林を裏切るなんてそんな事出来る訳ないだろ!?」
  
  「それと同様だ…例え悪人であろうとも私はあの方に仕えた……
   人に愚かだと言われようとも…私は…あのお方を裏切ることなど出来ぬ」
  
  「……忠星の宿命…か」
 
  「その宿命がなくとも…私はあのお方に仕えていた……話はここまでです!!」
  
 男が飛翔する…誰もがその飛翔に見惚れてしまった…決して外道が至る事が出来ない
 美しい技の構えに…
  
  「南斗水鳥拳奥義、飛翔白麗!!!」
  
  「南斗鳳凰拳、極星十字拳」
 
 ただ一人、小夜を除いて…両者が技を終え沈黙が流れる…
 小夜の服が僅かに割れ…男は胸を十字に切り裂かれていた…。
  
  「さようなら…碧忠」
  
  「名前を……覚えていただいて…光栄、で…」
  
  「忘れるわけが無い…あなたのように真っ直ぐな人は」
  
  「……やはり、あなた達には…」
 
 ―――――敵いませんよ―――― 

 安らかな表情で男は崩れ落ちた…壮絶な様に誰もが言葉を失った…。
 小夜は少し黙祷した後…何かに気が付いたかのように一方向を見て…
  
  「アミバ…ごめん、記憶の細工…無意味だったみたいですよ」
  
  「……何故だ?」
 
  「ごめんなさいね…もう少し時間があれば…ちゃんとしたお墓に入れれたのに…」
  
 そうして、むなしい雰囲気のままに小夜たちは蜀へと戻って行った。
 一刀は男から渡された手紙を読んで…生きて華琳に会わなければという気持ちを強くした。
 そして蜀へと辿り着く一日前に…蜀と魏・呉の全面対決が始まっていたのだった。




































































































 ある男の死に際に見た幻想
 



 
  「ねえ、君の名前は?」
  
  「え、わ、私は碧忠と申します!」
 
 これは…私の過去の記憶か…
  
  「私はね大和―――って言うんだよ?」
 
 あぁ、大和将様に似ていらっしゃる…あのお方との最初の邂逅か…
  
  「なんで君は、皆に避けられているの?」
   
  「あ…それはボクのお父さんが…」
 
 この時には、話してしまえばこの子もボクを見捨てるんだろうな、と怯えていたっけ…
  
  「あぁ、気にしない方がいいよ…だって君は君でしょ?」
 
 この子は全てを知った上でボクに話しかけてきたんだ…そう思うと急に心が楽になった。
  
  「凄いじゃない!伝承者候補に残ったんだって?」
  
  「う、うん」
 
 この方はまるで自分の事のように喜んでいましたね…あまりのはしゃぎように私は
 恥ずかしくて顔を赤くした記憶が残っている…。
 そのこともからかわれて余計に赤くなった事も覚えている…。
 もう私は死ぬしかないんだろうが最後にこの甘い幻想に浸れて……
 なんだろう…この暖かい感触は…最後の力を振り絞り眼を開けると……。
 
  「あぁ……大和――様…」
  
  「…」
  
  「すいま、せん…失敗してしまい…」
  
  「…よい、もともと三国に全面対決させる予定だったのだ…もはや人質は
   要らぬものとなったのだ」
 
 小夜とは違う声色で話す少女……血の匂いがする…自分のものではないなにかが…

  「それでも失敗は失敗だ…やつらは処断した」
  
  「そう…ですか……私も…ですか…」
  
  「いや…もうお前は死ぬのだろう…ならば止めを刺す必要は無い…精々失敗したことを悔やんで
   痛みを受けているが良い」
 
  「…はは、手厳……しい」
 
 致命傷である筈なのに…まだ話すことが出来る…少し手心を加えられていたようだ。
 それと同時に冷静になって今の状況を確認する…膝を枕にして眠っていたようだった。
  
  「あ…」
  
  「気にするな…お前の死に顔を見ようとする為にこうしただけだ…気にする必要は無い」
  
  「……そう、ですか…」
  
  「そうだ、別にそれ以外の感情など無いぞ?」
 
 いつもいつも手厳しい…この乱を起こした時からこのお方はいつも私にだけ
 特別に厳しかった…
   
  「…ふぅ…」
  
  「どうした、もう死ぬのか?」
 
 意地が悪い声が聞こえる…目を開いている筈なのに…何も見えない……
 体が冷たくなっていく……感じるのは頭の後ろに感じる暖かさだけ…。
 ……仕置きの筈なのに…このような幸せを感じる自分を恥じた……
 それが、私の最後の思考だった…。
  
  「…」
  
  「おい………逝ったか…ふん、死に際だというのに随分と幸せそうな奴だ」
  
  「…」
  
  「………直に…私も逝くだろう……地獄の前で……待っていろ……龍剣…」
 
 そうして、少女は暫くその男の亡骸の髪を撫で…男を抱えて何処かへと立ち去った。
 
                :シリアスは難しい……


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