*直接表現禁止
「何の用だトキよ…」
「何、ねねの放った密偵によって孫策と曹操の動きがおかしいと知ったからな…
故にラオウ、あなたに味方しようと思ったまで。
それに、この方の護衛の任もあったからな」
「護衛?」
ラオウの言葉と同時に呂布とトキの背後より一人の少女が現れる。
その少女を見て、小夜が驚きの表情を浮かべる…南斗聖拳の男に
遭った時以上の驚きようだった。
「お久しぶりですね、小夜」
「百合…何故ここに…?」
「知り合いか?」
「申し遅れました…私、南斗六聖拳の将の一人、慈母星の百合と申します。
姓は大和慈母…字は信濃、真名は先ほど申し上げた百合です」
「真名を?いや、それより大和とは…」
「はい、姉がお世話になっております…姉が許しているのであれば私も真名を許そうと」
姉妹揃って南斗六聖拳の一角を担っているとは驚きだ。
といっても慈母の星と言う事は拳士では無さそうだが。
「ふむ、やはり姉妹か…顔立ちが似ているからそうではないかと思ったが」
「姓は同じ者も大勢いらっしゃいますから」
劉備と劉焉の例もある…備や焉は名前に当たる為、姓が同じに当たる。
当然ながら血縁関係には無い。
「ここへ来た用件は何だ?南斗の一斉蜂起に呼応し、攻め入ってきたのか?」
「いえ、違います…私は南斗の乱を収めたいのです」
「収める、とは?」
「文字通りの意味で御座います…既に南斗は完全に蜂起しました……
ですが、私達穏健派はこのような争いを望んではいません」
「…」
「天帝に仕えるのが馬鹿らしくなった…北斗が南斗に敗れた…そういったものが
強硬派が決行した今回の乱の原因です」
時代が流れ、人が変わればそのような事が起きるのは必然…同じ一族による支配が
ずっと続かないのはそういう理由が多いのかもしれない。
「して、天帝は何と言ったのだ?」
「私達が動く事に賛同してくれました…といっても北斗神拳伝承者と元斗皇拳伝承者は
天帝守護の為動きませんでしたが」
「ここに来た理由はまだ手にかかっていないと言う理由からか」
「はい」
組織に立ち向かうには組織…国に立ち向かうには国が必要となる。
とはいえ、戦力が増えたところで不利な状況なのには変わりが無い。
「トキが来たからにはあの方法しかあるまい…」
「あの方法?」
「………ラオウ様……本当にするの?」
桃香が頭に大きなしずくを浮かべる表情で尋ねる。
小夜も同様の雰囲気でラオウの方を見やる。
「当然だ…むしろその方法が目を引くのには確実なのだ」
「……何か嫌な予感がしますが、その方法は何ですか?」
瑞佳が挙手しつつ尋ねる。
ラオウは不敵に笑い……
「黒龍と俺による蹂躙走覇作戦だ」
時が止まった……今この空間内で行動できるのはラオウのみ…
いくらなんでも猪突猛進過ぎる。
近距離は黒龍によって蹂躙し遠距離中距離はラオウの剛掌波……
移動砲台…いや、この場合は戦車が適切か。
そして、トキが我に帰り、同時に時が動きだす。
「本命は何だ?」
「ほう、気が付いたか」
「…もしかして、人質の救出ですか?」
「その通りだ朱里…派手な攻防を繰り広げ、それに完全に意識を傾けさせ、
本命の精鋭部隊が曹操と孫策の人質を救出するという作戦だ」
全員がホッとした…ラオウが袁紹の様な馬鹿になったのかと心配したからだ…。
それでもかなり無謀な作戦ではあるが…
「人質救出に適任だったのは小夜だけであったが、トキが居るのであれば
両国から救い出す事が可能となる」
「二国を同時に相手にする気かラオウ…」
「このまま大人しく降伏して、外道の軍門に下るのは愚の骨頂…
それに、事が早く済めばそれだけ我が軍の被害は少なくなる」
「ラオウ様の親衛隊もおりますし…正直時間を稼ぐのであればその方法が最善かと」
蜀の頭脳朱里の台詞…手詰まりなので確かにその方法しか無さそうなのだが…
援軍は期待できない代わりに敵の攻撃が無くなる。
「安心せよ…俺は死なぬ、例え千を超える矢が刺さったとしても、だ」
その顔は嘘を言っていない表情だった。
その表情に信頼してか全員が渋々作戦に賛同する。
「では、五車の星もお連れください」
「五車の星?」
「慈母の星は戦闘能力はほぼありません、それ故守護する為の
精鋭達がいるのです」
「まずは見せてみろ」
「では…皆さん、お願いします」
それと同時に五人の人間がババッという効果音と共に入ってくる。
「な…何?」
「束ね役にして青き知略の宿星を持つ男、海の星・青龍!!」
「圧倒的な巨体で守りの戦いを得意とする玄き要塞、山の星・玄武!!」
「自由気ままに生きる白き独立部隊、雲の星・白虎!!」
「疾風の如く戦う金色の風、風の星・金隼!!」
「五車の星、紅一点にして赤く燃える情熱、炎の星・朱雀!!」
「「「「「我ら南斗五車星戦士団!!!!!」」」」」
『『『『『………』』』』』
決めポーズと共にビシリと決まったという表情で得意げになっている、
南斗五車星戦士団……何処かの特選隊といい勝負かもしれない。
「一人だけ仲間外れだな」
「突っ込みどころそこなの!?」
「確かに金隼さん以外四聖獣ですが…」
「小夜ちゃんも!?」
ラオウと小夜は動じずに冷静に分析していた…桃香はラオウ達の的外れに近い
突っ込みに突っ込んだ。
「うぅ…やはり突っ込まれた…やはり南斗四車星の方が良かったんじゃないか?」
「何を言っている!それではこの態勢が成立しないじゃないか!」
「面白い方達ですよね?」
「まあ…確かに面白さはありますが正直引きますね」
「いやそれより、実力…あるのか?」
白蓮が至極まっとうな突込みをする……確かにこのままでは只のあ…ば…頭の弱い集団にしか見えない。
「ほう、ならばやってみるか?」
「止めておけ…仲間になるというのであれば余計な争いをしている場合では無いだろう」
「「そうだそうだ!瑞佳様の言うとおりだー」」
「愛紗らと互角か匹敵辺りといったところか…」
「作戦決行は早い方が良い…小夜は魏へ行き情報収集と人質の救助を補佐には瑞佳をつける」
「はい」
およそ二名ほど喚いていたが無視した。
「トキは呉の方へと向かってくれ、補佐はアミバだが構わんな?」
「承知した…仲は悪いわけではない、月の所に居た時はそれなりに良好だったからな」
「任せろ、占いと調査の二段構えで早急に終わらせてやる」
「今ここで占え、どのようにすれば見つかるかどうかをな」
「任せろ」
胸を叩く…何故かこの時だけは今この場に居る誰よりも頼もしい表情をしていた。
いくつかの札のようなものを取り出し、机に並べ…目を閉じる。
そして、口を開き始めた…おそらく、呪文の類なのだろう。
「ケスウチョノイメウキュウチョノーナコポンポノーピコポンポノイダンリーグ
ノンガンリーシュンガンリーシュノポイパポイパポイパジウコブヤノジウコラブヤ
ロコトムスニロコトルネウクツマイラウフツマイランウツマウギョイス
ノギョイスリジャイカレキリスノウコゴムゲジュムゲジュ」
「噛まずによく言えるよねー」
「私ならもう十回ぐらい噛んでますよ」
「ダイサンテワレオ!小夜の行動は黒い三匹連なって行動している悪魔について行けと出た。
トキは五匹の黒い猫の後ろをニコヤカな表情でついて歩け、だ」
黒い悪魔は台所に出てくる生物で、作者が人間が居なくなったらきっと支配者になっているだろうな
と思うランキング一位に輝いている虫である。
閑話休題…
トキは全然不自然じゃないから困る。
「あれを三匹追っかけろという事ですか…」
小夜がジッと一箇所を見たまま動かない…いや、時折キョロキョロと動きを追っているようだが。
その方角は愛紗の隣であった為愛紗が嫌な予感をしながら覗くと……黒い悪魔が居た。
「きゃあああああ!?」
可愛らしい悲鳴を上げて逃げる…いくら強いとは言え女の子…さすがに気持ち悪いものは気持ち悪いらしい。
「こっち来た―――!!!?」
星も甲高い声を上げて逃げる…武器で攻撃しろよという突っ込みは無かった、全員混乱している為である。
混乱していない一部の人間(ラオウトキアミバ小夜と五車星)はその様子をジーッと見ていた。
だが、中々混乱は収まらなかった為ラオウが
「後で修復するか…北斗剛掌波!」
北斗剛掌波を放ち命中させて黒い悪魔を仕留めた。
この世から綺麗さっぱりと。
「さて、そろそろこの部屋から出ておれ…明日より作戦を開始する。
各々準備を怠るな」
返事は無かった…既にほぼ全員がその命令と共に部屋を立ち去った為だ。
残ったのは小夜と小夜に抱きついている桃香とトキとアミバだけだった。
五車の星は百合の護衛。
「恋も苦手だったか…」
「…得意な人間など居ないであろうな」
「知ってるか?あの黒い悪魔にも秘孔がきちんとあるぞ?」
ラオウとトキの呆れた視線がアミバを貫いた。
そんな事まで実験していたのかこの男は…
ともかく、作戦は固まり…トキの補助に瑞佳・小夜の補助にアミバにするという
変更を伝えてこの日はお開きとなった。
翌日、人質救出組は朝早くから出かけた。
嫌なNG
黒い悪魔の動きを闘気で封じ込め、ラオウは一歩一歩しっかりと踏みしめ
歩いて行く。
そして、歩を止めて……拳を振り上げる。
闘気が一瞬消え去った。
「受けてみよ…我が全霊の拳を!!!」
:そこまでする必要ないですよ!?