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No.6264の一覧
[0] 真・恋姫無双伝説異伝 天の覇者【真・恋姫無双×北斗の拳】(打ち切り)[海野狸白](2009/09/16 17:01)
[1] 第1話:出会い[海野狸白](2009/02/05 09:07)
[2] 第2話:桃園の誓い[海野狸白](2009/02/09 14:37)
[3] 第3話:出陣 Apart[海野狸白](2009/02/05 09:14)
[4] 第4話:出陣 Bpart[海野狸白](2009/02/10 14:40)
[5] 第5話:幕間1[海野狸白](2009/02/08 13:44)
[6] 第6話:名軍師加入![海野狸白](2009/02/10 14:41)
[7] 第7話:獣死すべし…軍師の実力考査[海野狸白](2009/02/10 08:36)
[8] 第8話:曹操との邂逅[海野狸白](2009/02/12 08:33)
[9] 第9話:囮…だと…?[海野狸白](2009/02/13 13:52)
[10] 第10話:幕間2 黒龍現る Apart[海野狸白](2009/02/15 13:07)
[11] 第11話:幕間2 黒龍現る Bpart[海野狸白](2009/02/17 09:09)
[12] 第12話:反董卓連合結成!総大将はやはり奴が…[海野狸白](2009/02/17 09:08)
[13] 第13話:卵こそが正義(?)[海野狸白](2009/02/19 08:35)
[14] 第14話:華雄敗北[海野狸白](2009/02/19 08:48)
[15] 第15話:宿命の影[海野狸白](2009/02/20 08:13)
[16] 第16話:邂逅・宿命の兄弟[海野狸白](2009/02/24 08:23)
[17] 第17話:剛と柔[海野狸白](2009/02/24 08:29)
[18] 第18話:董卓保護[海野狸白](2009/02/26 08:50)
[19] 第19話:幕間3・休息[海野狸白](2009/03/02 09:51)
[20] 第20話:蜀領救出作戦[海野狸白](2009/03/04 08:28)
[21] 第21話:母子再会[海野狸白](2009/03/06 09:08)
[22] 第22話:新たな仲間![海野狸白](2009/03/07 16:15)
[23] 第23話:豚の陰[海野狸白](2009/03/11 08:14)
[24] おまけ[海野狸白](2009/03/11 08:15)
[25] 第24話:豚は地獄へ行け[海野狸白](2009/03/12 09:10)
[26] 第25話:猪突猛進作戦[海野狸白](2009/03/12 09:11)
[27] 第26話:汚物は消毒せねばなるまい[海野狸白](2009/03/13 10:04)
[28] 第27話:幕間4・親子交流[海野狸白](2009/03/16 08:34)
[29] 第28話:五胡の陰と南蛮平定[海野狸白](2009/03/17 09:56)
[30] 第29話:南斗の乱、魏呉墜つ[海野狸白](2009/03/28 12:07)
[31] 第30話:北斗長兄と次兄、共同戦線[海野狸白](2009/03/27 14:40)
[32] 第31話:救出作戦、首謀者の陰[海野狸白](2009/03/28 12:14)
[33] エイプリルフールネタ最終回:北斗万愚節[海野狸白](2009/04/24 08:02)
[34] 第32話:紅剛作戦[海野狸白](2009/04/24 08:04)
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[6264] 第27話:幕間4・親子交流
Name: 海野狸白◆f1c5a480 ID:69a68675 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/16 08:34
:ケンシロウを出さないと言ったがそんな事なかったぜ!(夢だけど) おまけはグロ注意?
 今更ながら少し憶測が入った設定があります。





 ラオウはその日奇妙な夢を見た…それはケンシロウが
 こちらを見ながらやってくるといったものだった。

  「ケンシロウ」
  
  「ラオウ…一度死んだ身でもまた覇を唱えているのか」
  
  「あぁ、そうだ……この俺を倒しに来るのか?」
 
 ラオウが挑発的にケンシロウを見る。
 だが、ケンシロウは首を横に振りそのような事はしないとの意思を示す。
  
  「恐怖による支配じゃないからな」
  
  「そうか」
  
  「あの約束は果たしておいたぞ」
 
  「そうか…すまないなケンシロウよ」
 
 そして、カイオウを倒した時の事を話し出すケンシロウ。
 最後に人間に戻ったカイオウを思い浮かべラオウは笑みを浮かべた。

  「それと…これは奇妙な二人組みが言っていたことだが」
  
  「どうした?」

  「一日だけ、会ってやれ……自分の息子に」
  
 ケンシロウに聞き出そうとしたとき…そこでラオウの意識は覚醒してしまった。































  「ぬぅ…夢か…」
 
  「おはよう御座いますラオウ様」
  
  「んー、スースー」
 
  「桃香はまだ寝ているのか」

 同じ部屋に居る小夜が挨拶をしているのに対して軽く会釈し、桃香を見る。
 といっても寝台は別々である。
 ラオウが小夜と共に桃香の安全を死守する為に寝るときはこのようにすると
 提案したときはほとんどの人が驚きの声を上げたが…
 反対意見は無かった、というのもラオウだったらそういう事が起こらないと
 信頼しての事だった。
  
  「それは…一旦おきまして…ラオウ様、その子は誰ですか?」
 
 ラオウの布団に入っている人物に対して指をさして質問する。
 その動作でようやくラオウも隣に眠っている人物に気が付いたようだった。

  「スー…スー…」
  
  「……まさか、リュウか?」
 
 ケンシロウの言葉を思い出し、そして自分の子供の頃に似ている少年を
 見てそれが自分の息子である事を確信した。































  「やはり貴様らか…」
  
  「もう、そう邪見にしないでよ…その子が父親にどうしても会いたいと
   夜な夜な泣いていたから会わせてあげようかって聞いたら会わせてと
   大きな声で返事したのよ?」

 犯人はやはり貂蝉達であった…部屋に進入した事に気がつかなかったのは
 迂闊だった。

  「私達は部屋にははいっておらぬぞ…その子だけを転送したのだからな」
  
  「殺気が無いから気が付かなかったのか」
 
 ちなみにリュウはというと、女性や少女ばかりいるこの場所とラオウの存在に
 緊張しており黙っている。
 そして、周りの人物達は貂蝉の存在に驚いて開いた口が塞がらないという状況になっている。
 一部、包帯まみれの為、表情が窺えないものも居たが…
 
  「………」
 
 何故か桃香はリュウとラオウを見比べて頭を抱えながら何かを考えている為、
 貂蝉達には驚く暇も無いようだった。
  
  「夢でケンシロウが言っておったが…一日だけなのか?」
  
  「えぇそうよ…一日経てば帰るからその時まで過ごせなかった親子の時間を
   過ごしてあげなさい」
 
 そう言って貂蝉達は…窓から跳躍して何処かへと行った。
 
  「…」 

  「…」
 
 残ったもの全員が困った様子でリュウを眺める。
 ラオウはというとリュウを一回も見ることも無く目を瞑り
 黙祷状態になっていた。
 
  「と…父さん…」
  
  「…なんだ、リュウよ」
 
 返事をもらえた事にほっとして表情が緩むリュウ…
 しかし…それ以降は沈黙がずっと続いていく…ラオウは今更
 息子にどう接して良いのか分からず、リュウもまた何を話せば良いのか決まらず
 沈黙をしていた。

  「…」
  
  「…」
  
  (おい、桃香…どうにかならないのかこの空気)
  
  (無理だよー…あ、愛紗ちゃんはどう?)
  
  (私にも無理です…朱里達はどうだ)
  
  (無理でs…待ってください、良い案が浮かびました!)
 
 そして、ラオウとリュウ以外の面々が集まりひそひそと話し出し…
 桃香と小夜を残して全員が町へと繰り出していった。
 ラオウはその様子には気がついていたが、今優先すべき息子との
 交流に悩み放っておいた…守るべき対象である桃香も居るとの判断での
 思考である。
 
  「…」
  
  「…」
 
 そのまま、数刻の時が過ぎ去った…何故か外が騒がしくなってくる。
 普通は中にまで騒ぐ声が届かないものなのだが…
 
  「何が起こった…」
  
  「あ、ちょうど今日はお祭りなんだよ♪そうだ、ラオウ様もリュウ君と一緒に
   祭りに出てはどうですか?」
 
 そのような話は届いていないのだが…おそらく朱里達が過ごしやすいようにと
 手回しをしたのだろう……町の人々はかなり乗り気で実行に移したようだった。
 
  「……」
  
  (あうー、小夜ちゃんどうしよう?)
  
  (ばれてるのは、承知の上です)
  
  「まあ、良い……リュウ、行くか」
  
  「う、うん」
 
 作戦は成功したようだが…その祭りには結局桃香達も参加する事になった。
  


















 祭りはかなりの盛り上がりを見せていた…子供たちは作戦に乗ったわけではなく、
 純粋に楽しんでいる為、違和感は感じられない。
 大人たちもほとんど楽しんでおり、演技で無いことが分かる。
  
  「盛り上がっておるな」
  
  「そうだねー(こんなにうまくいってるなんて)」
  
  「でしょうね(人は楽しいものには強く参加するものですよ)」
 
 ラオウには明らかに聞こえているヒソヒソ話。
 リュウはいろいろな物に目移りをして、楽しそうにしている。
 幾分平和になったとはいえ、このような祭事は始めての経験らしい。
 
  「あ!あれは何!?」
  
  「あれは…玉投げか…」
 
 球を投げて積み立てられている木の棒を倒す遊びらしい。
  
  「やってみるか?」
  
  「うん!」
 
 そして、金を支払って遊び始めた。
 代金は要らないと言っていたが…そのような事は無粋だとして
 きちんと払った。

  「えい!」
 
 リュウが投球する…球は命中したようだが…木の棒は二、三本しか倒す事が出来なかった。
 
  「景品は菓子か…」
  
  「次は俺がやろう」
 
 心なしか店員の表情が優れない様に見える…というか諦めているような感じだった。
 
  「ふん!!!」
 
 当然であるかのように全てが倒れた…特等の景品である金を加工した板を
 手に入れた、鎖も付いており、首にかけられる形状になっていた。
  
  「……純金か」
  
  「「えぇ!?」」
  
  「本当ですか?」
 
 あきらかに景品に出すような代物ではないのは確かである。
 その後もしばらく、町の祭りの散策に歩き回っていた。
 途中でラオウがリュウを肩車して歩き…その姿は親子にしか見えなかった。
  
  「ふ…リュウよ少し外に出るか?」
  
  「え…うん」
 
 そしてラオウとリュウは町の外へと出た。
 ついて行くのも無粋な気もしたので桃香と小夜は町に留まる…
 その周りに間髪入れずに愛紗達が集合した。

  「二人だけで過ごすのでしょうか…」
  
  「結構時間が経ちましたからね…おそらく残りが少ないのでしょう…」
 
 丸一日といっていたが…それはリュウがこの世界に着てからの時間…
 貂蝉の話によると昨夜の九時に当たる時間に送り込んだといっていた。
 今は丁度、八時に当たる時間である……。































  「そうか…今はバルガの下で暮らしておるのか」
  
  「うん」
 
 暗い暗い夜道を親子二人が歩く…空には雲一つなく星が二人を導くように
 大きな輝きを見せている。
  
  「ケンが言っていたよ…父さんの腕はケン以上だったって」
  
  「当然だ…だが、ケンシロウはそれを上回る心で俺に打ち勝ったのだ」
 
 天地を砕く剛拳でさえも一握りの心は砕けない。
 成長したケンシロウの姿にラオウは感銘を受けて…全てを託せると信じ…
 辞世の句を残したのだ。
  
  (一片の悔い無し…だが……悔いはあったな)
 
 ラオウはリュウを抱き寄せる…リュウは少し恥ずかしがったが…
 父の温もりにその恥ずかしさは吹き飛んだ。

  「成長したな…リュウよ…俺は赤子の時のお前を抱いてやる事が出来なかった」
  
  「知ってる…おばちゃんから聞いているから…」
 
 あの乱世の中ではそれどころではなく…さらにラオウには故郷の修羅の国を
 一刻も早く救う必要があったために、生まれたばかりの姿を見たことはあれど…
 一度も抱くような事はなかった。そのような情は捨て去る必要があったのだ。
 それ故に暴走し、止められぬ事を理解していたが…。
  
  「本当はもっとはやく抱いてやりたかった…」
  
  「うん…」
 
 ラオウもリュウもリュウの体が少しずつ透けてきているのに気が付いているが…
 そのことは無視した。
  
  「リュウよ…この俺を恨んではおらぬか?」
  
  「恨んでないよ…だって、ケンが言ってたんだ…覇道を進んでいる間も
   けっして僕の事を忘れる事ができなかったって」
  
  「ケンシロウめ…言いよるわ」
 
 リュウの事を忘れる事はなかったのは本当だ…それ故にその自分と戦っており…
 バランの保護行動に苛立ち、八つ当たり気味なことも行なった。

  「やっぱり…帰りたくないなぁ…」
  
  「それはダメだろう…お前はあの世界でまだやるべき事があるのだろう?」
 
 ケンシロウを除いて唯一の北斗一族の血を引くリュウ…ケンシロウはおそらく北斗神拳を
 絶やす事はしないであろうからリュウの存在は必要なのだろう。
 一度リュウと離れたのは、経験を更に積ませる為だと推測される。

  「う…うぅ…」
  
  「今は泣くなとは言わぬ…そしてこれからも泣くなとは言わぬ…
   その涙の数だけ自分を高めていくがいい」
 
 リュウが大きな声を上げて泣き始めた…初めて見る父の姿…
 その姿を見れるのは今日だけだと理解し始めて…
  
  「これを受け取れ」
  
  「う…これって…」
  
 屋台で取った鎖以外が純金の首飾りだ。
  
  「文字が…それにこの顔は…」
  
  「あの時代には写真などなかろう…それをこの父だと思って大切にしろよ」
  
 そして、ラオウが少し距離を置く…リュウは駆け寄りたい衝動に駆られるが…
 何とか押さえ込んで…涙を拭き…一番言いたい事を話しだす。

  「父さん!」
  
  「何だリュウ!」
  
  「ケンにも誓ったけど…父さんにも誓うよ!
   必ず父さんを超えてみせるって!!」
   
  「そうか!ならば超えて見せろ…最後に見ておけ
   この父の全霊の一撃を!!!」
 
 片手に強大な闘気を篭める…その闘気の量は天将奔烈の比ではない。
 
  「はあ!!!!!!」
 
 その一撃を天空に向かって打ち放った…闘気は目に見えるほど光り輝き、
 圧倒的な力の本流が風圧となってラオウとリュウの周りの地面を抉り取る。
  
  「凄い…」
  
  「リュウよ!寂しくなろうともけして会いたいなどと思うな!
   だが、どうしても会いたくなった時、天を見よ!!!
   俺はそこからお前をずっと見守っているぞ!!!」
 
  「父s……」
 
 最後にリュウが何かを言おうとしたが…リュウの姿は完全に消えてしまい…
 後にはラオウ一人が荒野の上に立っていた。

  「…リュウ…」
 
 その後、数刻ほどそこに立っていたが…すぐに城へと戻っていった。
 城に帰り桃香が心配そうな表情で見ていたが…その頭を撫でてやり、
 穏やかな笑みで大丈夫だと伝えた。






























  「…ここは…僕の部屋…?今までのは夢…?」
  
 リュウは一人ベットの上で目覚める…どうにもラオウと会ったという実感が沸かない。
 その時、部屋に一人の男性が入ってくる…バルガだ。
  
  「リュウ様…起きましたか?朝食が出来上がっております」
  
  「今行く…」
 
 そして、リュウは起き上がる…その時、ベットから何かが零れ落ちた。
  
  「おや、リュウ様これは…?」
  
  「!!」
 
 それはラオウから貰ったものだった…あの出来事は夢ではなかったのか…
  
  「ラオウ様の顔…」
  
  「バルガ!返して!」
 
 すぐさまバルガよりその首飾りを取る…そして窓の外を見る。
 空は晴れ渡っていた……そしてほんの一瞬だが…ラオウの姿が見えた気がした。
  
  「父さん…」
  
  「リュウ様…はやく朝食を食べてください…本日は来客があります」
  
  「誰?」
  
  「ケンシロウ様です」
 
 そして、リュウは北斗神拳伝承者の道を歩む事となる…
 修行の最中、リュウは一度も首飾りを離す事はなかった…そしてケンシロウも
 その事を咎める事はしなかった。
  
    :シリアスは疲れるなー…
 
 
 




































































































おまけ:前回の愛紗のその後
 
 桃香が無事な事に対して安堵していたが、自分の不注意によって
 攫われたという事実が胸に突き刺さり愛紗はしばし放心した状態で
 フラフラとしていた。
 桃香が居なくなったときにはそれどころでは無いと自分に言い聞かせていたのだが
 見つかって救出された事により、自責の念が大きく出てしまったのだ。

  「あのハートという男に引き続き…またしても桃香様を危険な目にあわせてしまった…!」
 
 自分を傷つけるように壁に拳を打ち付ける…その痛みによって
 涙が溢れ出し…更に壁に拳を打ちつけていく。
  
  「そのどちらもラオウ様が助けてくださった…しかし、私は何だ!
   ハートの時には力不足のせい、今回の誘拐では私の不注意によって
   桃香様を…私にもっと力があれば…注意深く見ていれば…!!」
 
 ついには頭を壁に打ちつけていく…そうでもしなければ己の罪を清める事が出来ぬといわんばかりに
 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……
 そのたびに傷が増え出血も多くなってくる。
 いつもは冷静な愛紗なのだが、義姉妹の契りを結んだ守るべき大切な身内を二回も危険な目にあわせ、
 自分はたいして危険な目に遭っていない事が愛紗をこのような凶行にはしらせた。
  
  「そこまでだ…命を投げ捨てる気か愛紗」
  
  「離せ瑞佳!」
  
  「離さぬ!離せばまたお前は自分を傷つけるのだろうが!」
 
 北斗神拳の天龍呼吸法により力は常人より上であり…愛紗であろうと押さえつけるには問題ない。
 そして、瑞佳がやってきた訳であるが…ラオウの次に瑞佳が気が付き…
 ラオウが行っても逆効果になるだろうと判断してラオウを留まらせて自分が来たのである。

  「お前に何が分かる!出会った時より守り通すと決めた桃香様を
   二回も危険な目に遭わせてしまったのだぞ!」
  
  「そんな事で桃香様が喜ぶと思っているのか!」
  
  「思ってなどいない!喜ぶどころかあの方は絶対に笑って許す筈だ…
   誰よりも桃香様の事を知っているのは私だ!だが、それでは
   誰が私を罰するのだ…誰が私を責めるのだ!!」
 
 心の奥よりの叫び…出血状態もあわせてその迫力はかなりのものである。
 瑞佳も一瞬怯んでしまったほどだ。
 
  「…」
  
  「わかったなら離せ…私は……」
 
  「この阿呆が――――!!!」
 
 愛紗が瑞佳の沈黙を愛紗の意見の肯定したとみなし離させようとするが…
 その前に瑞佳により思いっきり殴り飛ばされた。
  
  「がは!?」
  
  「罰すると言っているがなー!それは結局自己満足に過ぎんだろうが!
   それほどまでに罰して欲しいのならこの俺が罰してやる!!!」
 
 そのまま愛紗の上に馬乗りになり拳に力を集中し殴りかかる…
 愛紗は訳も分からず殴られ続け…その内抵抗するようになった。

  「や…やめ…」
  
  「痛いか!苦しいか!これがお前の罰なんだろう!!」
  
  「ひ…」
  
  「ふう…結局恐がってるじゃないか…気は済んだか」
  
 一方的に殴った後で穏やかな言葉を吐き出す…瑞佳の両手は血で濡れていた…ただし、
 自分の血で…愛紗を殴ったのは最初の一回だけで後は愛紗に当たるか当たらないかの位置で
 何度も拳を突き入れていたのだ。
  
  「な…なん」
  
  「一つ昔話をしよう…あるところに小さな女の子がおりました」
  
  「は?」
 
  「黙って聞いておけ…その少女には二人の妹がおりました…両親は既に他界しており
   誰も面倒を見てくれる者が無く、少女は二人の妹の為に自分がこの二人を護っていこうと
   決意をしていました」
  
 その会話は…影よりこっそりと覗いていた鈴々達も聞いていた。
 ちなみにラオウと桃香と小夜は不在…ラオウは行くのを止められているし
 桃香が行ってしまえば愛紗は余計に自分を追い込む…小夜が居るのは
 見に行くのも野暮だと判断しての事である。
  
  「しかし…少女が少しの間働く為に家を空けていた時…賊がその村に侵攻した…」
  
  「…」
  
  「少女は逃げ惑う村人の間を必死に掻い潜り、何とか家に辿り着き妹達を連れて
   逃げ出そうとしましたが…その時に三人の賊が目の前に立ち塞がり少女達を
   押さえつけ…そしてその賊たちは少女の前で妹達を無残に斬り始めました」
  
  『!!!』
  
  「ま、まさか…」
  
  「少女達が殺される寸前…旅の拳士によりその賊たちは絶命し…他の賊たちも
   その拳士によって皆殺しにされた」
 
 淡々と昔を思い出すように語り始める瑞佳…まるで人事のように話しているが
 話している表情を見ている愛紗はその悲しみに満ちた瞳をしっかりととらえていた。
  
  「少女と一人の妹は一命を取り留めましたが…もう一人の妹は助かりませんでした。
   今でも偶に夢に出てくる「痛いよ、寒いよ」と手を伸ばしてこちらに手を伸ばして
   助けを請う妹の姿……おっと、これはその少女の話だぞ?」
 
 力なく笑いかける瑞佳…だが、余程の馬鹿で無い限りは今の会話で瑞佳の
 過去だと気が付かない者は居ないだろう。
 こんな事は袁紹ですらも分かる。
  
  「少女は妹を護れなかった事を悔いた…そして、もう一人の妹を護る為に
   力をつけようと、その拳士に拳を教えてくれと頼み込んだ……拳士は
   断ろうとしていたようだったけど、その少女の表情を見て断る事が出来なかったらしい。
   その少女が後で聞いた話によると、その少女はその拳法の伝承者の近縁の者だったらしい…
   その証拠が額の横にある北斗七星の痣さ」
  
 愛紗がちらりと額の横を覗き込むと髪で隠れて見えなかったが…確かに星を示すような
 痣が見受けられた。
  
  「その少女は女である事を捨て成長し…ついには伝承者候補の一角を背負うまでに
   腕を上げた…それでも、少女が女であるという事実と自分達を差し置いて伝承者候補に
   上り詰めた少女が気に入らなかったらしく…よく嫌がらせを受けた」
  
  ((誰だ!瑞佳様に嫌がらせした奴は!ぶっ殺す!!!))
  
  (お、落ち着け焔耶)
  
  (天和さん落ち着いて下さいー)
 
 隠れている場所でこのようなやり取りがあったが、割愛する。
  
  「その嫌がらせにもめげず…妹の存在を支えにその少女は嫌がらせに屈しなかった…
   意外に、紅柳が結構味方となってくれたし…紅柳を支持する派閥も
   結構気の良い連中だったからってのもあったんだがな、今の伝承者のあいつも
   俺の…少女の腕前を結構認めていたしさ」
 
 祟は…その時はトキの戦いを見る前のような性格だった為と言っておこう。
  
  「だが、それでも気に入らない連中は…遂には妹に手を出した。
   私が妹と町に買出しに言っている時に少し目を放した隙に攫っていったのさ…」
  
 似ている…多少の違いはあるものの状況が似ているのだ…力不足で大切な者を護れなかったのも
 目を離して攫われてしまったのも……
  
  「少女は我を忘れて探し回った…しかし必死の捜索もむなしく…妹が見つかったのは
   三日経った後だった……その時妹は身も心もボロボロになっていて見るも無残だった…
   でもな、こっちが一生懸命謝っても妹は笑顔で「お姉ちゃんのせいじゃないよ、大丈夫だよ」
   って言ったんだ…全面的に悪いのは私なのに、だ……その後妹はそれが原因で病にかかって
   一週間と経たない内にこの世を去っていった」
 
 騒いでいた天和達も沈黙した…そして、ここで聞き耳を立てている事に後悔の念を感じ始めた。
  
  「妹が亡くなり…俺は一月の間誰にも会おうとはせず…また、何も口にしなかった…
   時折思い出したかのように水を飲んでいたがな」
 
 少女という代名詞がなくなっていた…だが、今この状況でそれを指摘するのは野暮である。
  
  「その時には俺の家の前に何度も食事が置き…何度も持って帰っていく師父の姿があった…
   と言っても俺は気が付いていなくて、紅柳に聞いて始めて気がついた事なんだけどな」
 
  「…」
  
  「その後、愛紗がやっていた通り自傷行為をして…同じ様にあいつに殴り飛ばされた」
  
  「あいつ…?」
  
  「宗家にして北斗神拳伝承者…真名は知っているが話すのは失礼に当たるから字の
   颯と言っておこう」
  
 そう言って、自らの頬を撫でる…傷や痕はついていないが…おそらくそこが殴られた箇所なのだろう。
  
  「その後両方で取っ組み合いの喧嘩さ…秘孔の突きあい、秘孔封じの応酬…今思えば
   命がけの取っ組み合いになっていたけどな」
 
 笑い話のように話しているが…実際にはかなり危険な行為である事は北斗神拳の知識が
 無い方々も分かった。
 陰に潜んでいる者達はアミバより講義を受けて…余計に恐ろしい行為になっている事に
 顔を引きつらせていたが…すぐに持ち直し、話の続きを窺っていた…。

  「と、言うわけで…愛紗、殴り合いは得意か?」
  
  「え…まあ、武器を壊された後のことを考えてそれなりに…」
  
  「この話の続きは言葉より行動…だ!」
 
 愛紗の実力に合わせて拳を突き出す…愛紗は訳も分からず…だが体は戦闘行動に
 反応し、受け止め反撃に出る。
 そのまま二人は殴り合いを行なった…結果は常に拳で戦っている瑞佳に分があり
 当然のように瑞佳の勝利に終わった。
  
  「どうだ?結構すっきりしただろう?」
  
  「…お前と一緒にするな…」
  
  「そうか、それはすまんな…」
  
  「だが…罪の意識は軽くなったな…」
 
 瑞佳の哀しみの前では自身の悩みなどちっぽけに思えてくる…と愛紗は思い始めていた。
 瑞佳にはいざと言うときに助けてくれるものが傍に居なかった…いや、少なかったと言うべきか。
 だが、今の愛紗には瑞佳を含め、小夜やラオウ…それに鈴々達が居る…。
  
  「いろいろな面でお前に負けてしまったよ…」
  
  「ふ…そうか」
  
  「だが、胸の大きさでは勝ったがな…」
  
  「減らず口を…」
 
 そう言って愛紗の額を軽く叩く…愛紗はわざと痛がる振りをしようとして…
 自身の出血を思い出して苦痛に顔をゆがめた。
  
  「ぐ…」
  
  「む、いかんな」
 
 そう言って瑞佳は自身の服を破き、近くの水場を探して布に浸し愛紗の血をふき取って
 清めた布で愛紗を治療していく。
  
  「応急処置はこんなものか…」
  
  「すまん…」
  
  「きにするな…立てるか?」
  
  「お前が何度も殴りつけてくれたお陰で立てないのだが?」
 
 ジト目で瑞佳を睨む愛紗…瑞佳は困ったように頭をかき…

  「仕方ない、責任を取って運ぼう…よっと」
  
  「な!お前この運び方は!」
 
 俗に言うお姫様抱っこ状態である…その言語を愛紗は知らないが。
 この状態ではかなり恥ずかしいものがある。
 普通に負ぶって運んでくれるものだと思った愛紗は慌て始める。
 
  「どうした?顔が赤いぞ?」
  
  「なななな…なんでこの運び方なんだ!!」
  
  「大人しく運ばれていろ、俺の責任なんだからな」
 
 下手な男よりも男らしい態度…愛紗はその表情に見惚れてしまい
 顔が余計に赤くなってしまった。
 その後、全員と合流し…やはり桃香は笑って許していたが…
 愛紗の心には罪の意識がそれ程残る事にはならなかった。
 そして、瑞佳に愛紗のフラグが立ってしまったのは別の話。

                 :ちょっと無理矢理感…シリアスにしようとすると疲れる。


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