「巴群城に行けばよいのか」
「はい、その城主である厳顔とその部下魏延の二人を仲間にすれば
成都へ向かう道の城の全てがラオウ様のものになることは確実です」
「それほどまでに人望厚き人物か」
「はい」
成都までいく為にどの道を通れば良いのかを紫苑に尋ねたところそのような意見が出た。
聞く限りでは確かに良い選択肢に思える。
「ですが…」
「何かあるの?」
「はい、本来なら力を見せてからの説得で澄む筈ですが…今では
四人の男がその城を牛耳っています」
苦虫をすり潰したような表情で言葉を発していく紫苑。
どうやら一癖も二癖もある者のようだった。
「その男達は?」
「残念ながら詳しい特徴は知りません…ですが、暴虐の限りを尽くしているそうです。
そして頭にこのような刺青をしてあるとだけ分かっています」
そう言うと、一枚の羊皮紙に四つの模様を書いていく。
桃香達は疑問があるように首を傾げつつ見ていたが…ラオウはその模様の意味を理解し
相手の特定をする事が出来た。
「シンの部下のあの四人か…」
「…知り合い?」
「いや、知り合いと言うほど親しくは無い」
「そう、ですか」
小夜とラオウの会話…ほとんど小声だったため誰にも聞き取られていない。
「そして、道をその方面に指定したのはラオウ様の力を知ったからです」
「…やはり、小夜との鍛錬を見ておったのはお前か」
「はい、いけませんでしたか?」
「禁止にはしておらぬ…だが、次からは堂々と見に来い」
「申し訳ありません、ですがあの戦いともなると誰も相手に出来るものが居ないでしょう」
『それは無いです!』
トキの事を知っているメンバーが全員で否定する。
トキ対ラオウの戦いはもはや語ろうとしても語れない領域にあるため
愛紗達は語ることが出来ないが、小夜とラオウの打ち合わせよりも
数段階…いやそれ以上のはるか高みにある決戦だった。
翠や蒲公英は残念ながら袁紹陣営にいた為目撃はしていない。
当然ながら留守番をしていた天和も…何故会議場に居るのか不明なのだが。
「桃香様、愛紗鈴々星朱里雛里瑞佳華雄白蓮様…紫苑様とラオウ様の話が続きません」
「省略したなそこの兵士!」
「それよりもこいつの言うとおり話ですよ…」
「そうであったな、字一色よ」
会議場に何気に入っている元賊の一人。
因みに最初に話した男はラオウ親衛隊の一人であり、黄巾討伐の際に加入し
今も行動を共にしている一番古い兵士だったりする。
どうでもいいがここでも彼は苦労する宿命を背負ってしまったようだ。
その代わり上司には恵まれているが。
「簡潔に言えばその者達を倒せば説得する機会があると言う事だな」
「はい、その通りかと…一人かなりの力と頑強さがありますが
ラオウ様なら問題ありません」
「ふむ、よかろう…だが、問題は兵士達だな」
いくらその四人が悪だとしても、厳顔達は町を守ろうとするために
兵を動かしてくるだろう…出来る事ならほぼ双方共に無傷で済ませたいが
そうはいかない可能性のほうが高い。
「だとすれば暗殺ですか?」
「いや、それでは力を示した事にはなるまい」
「正面決戦だとしても…その四人が出てくるかどうか」
「うーん、立て籠もられたらどうしようもないよねー」
「ここで問答を繰り広げても仕方あるまい…明後日には出撃する。
愛紗・星・翠・白蓮・華雄は兵士の準備を…朱里、雛里は兵糧の準備をせよ!」
『御意(はい)!』
「おい、ハート…黄忠の奴が敗北したそうだぜ」
「様をつけなさい、スペード君…これでも君達の主に当たるんですからね」
「ハート様の言うとおりだぞ、それにしても黄忠が敗れたか…」
「となると奴らはここへと来るのが定石でしょうね」
玉座に集まっている四人の男…かつてKINGと名乗っていたシンに仕えていた
スペード・ハート・クラブ・ダイヤである。
「ぶひひひひ…やったのは北斗の軍だそうですね」
「北斗の軍には若い美人の女が大勢居るとの事ですぜ」
「おうおう…だったらそいつらを可愛がってやらないと
失礼ってもんだなー…」
くくくと笑いながら三人が舌なめずりをしている…その様子を見ながらも
どこか浮かない表情で北斗の軍の情報を見ているスペード…。
「どうしましたスペード君」
「いや…北斗の軍の君主はめっぽう強い拳法家って書いてあるからさ」
「ぶひひひ…殺す相手としては活きの良い獲物じゃないですか…
どのような拳法を使おうともこの私の肉体を破壊できませんよ。
南斗聖拳以外はね」
そう言って自分の腹を叩くハート…叩かれた場所から波が起こり腹が揺れている。
さらにこの…
「といっても、その南斗聖拳すらも恐るるに足らず…何せ刃物すらも
効かなくなりましたからねー」
「あぁ…しっかりと見ていたよ…」
この世界に落ちてより…ハートは自分達の主として君臨すると言い放ってきた。
実力的には順当だったため、逆らわなかったが。
そして、この城を攻めに来たのだが多量の軍が襲い掛かってきた。
ハートに大量の矢が刺さり、槍が突かれていたが…その全てが肉を突くには
力量が足りなかった…斬撃もきたがその斬撃すらも無効化しており…
ハートはそのまま蹂躙戦に持ち込んだ。
何故かは知らないが生前よりも特異体質が変化してしまったらしい。
「ま、俺たちも強いし兵士も居る…負けるわけ無いさ、そんな事より
お前も誰とやるか決めておけよ」
余談だが、彼らは世紀末でのラオウの事をすっかりと記憶からなくしていた。
「…そうだな、いざとなりゃこれがあるか…」
自身の武器を確認しつつ油断だけはしないように心に刻み込み酒を飲み始めた。
「桔梗様…いつまであいつらを放置しておくのですか?」
「仕方あるまい、劉璋の坊主が受入れ寄ったんじゃからな…はあ劉焉殿が
生きておったときならこんな事にはならなかったのになー」
「民は劉備を歓迎する方針のようです」
「ま、そうじゃろうな…少なくとも劉璋よりはましじゃろうな…」
ラオウの話題に触れていないのは、ラオウの噂がどうしても信用できない事ばかりだからである。
その一つとして…
「千二百で六万の兵士撃破…か」
「信じられると思いますか?」
「紫苑程の者が敗れるわけ無いだろう…もっとも、相手が相当の化け物だったら
話は別だがの」
そう言ってハート達の居るであろう場所を睨みつける…民の不満の多くはハート達に向けてのものだった。
クラブは大人を訓練と称して惨殺し、ダイヤは女を攫い…ハートは料理をたいらげている。
スペードの方は意外とちゃんと政治しているようだったが…。
「あのハートという怪物を倒せるならその話は本当だと認識するしかないな」
「桔梗様…」
「じゃが、わしらも戦人じゃ…戦って見極めたい気持ちの方が多いのう」
「そうこなくっちゃ…ただ状況を受け入れるわけにはいきませんしね…」
そう言って二人は兵士の準備をし始めた…。
NG
「簡潔に言えばその者達を倒せば説得する機会があると言う事だな」
「はい、その通りかと…一人かなりの力と頑強さがありますが
ラオウ様なら問題ありません」
「ならばその男は小夜で十分だな」
「…分かりました」
「残りの三人は愛紗達に任せる」
「ラオウ様はどうするのですか?」
「向かってくる雑魚をこの俺一人で無力化する…」
『『………』』
本人は本気で言ってそうだから困る、そして実現しそうだから困る。
「冗談だ、流石に体力が持たん…兵士を率い朱里達と合同で行なう」
「本気の表情で冗談を言わないで下さい」
『って体力持つなら可能なの(ですか)―――!?』
「当たり前だ、そのぐらいであれば小夜も可能となるぞ」
全員が一斉に小夜の方向を向く、あまりのシンクロ率にビクリと
肩を震わせていたが、すぐに
「まあ…一般兵士級や親衛隊級ならどうにか…出来ますが」
「つくづく規格外ばかりの軍だな」
「一緒にされると困るんだけどなー」
:あくまでNGです、あしからず…出来そうだけど