:原作と違い、とある勢力が仲良くなっており、約一名賢くなっています。
漢の皇帝…霊帝の死…。
それに伴い、黄巾の乱により発生していた権力争いが勃発…
というような堅苦しい内容はおいておいて民を苦しめている董卓を
ともに倒しましょう!
「以上がこの手紙の内容だ」
「過程いろいろ飛ばしてませんか…?」
勿論、この手紙以外にも、マトモな内容が書かれたのもある…
だが、あえて朱里はこの手紙を議題に取り上げたのだ。
「何か、裏があるやも知れぬ…」
「そもそも、このような手紙に乗る様な人は…」
「弱い人々をいじめたおすなんて許せないよ!」
「桃香様の言うとおりです!」
「そうなのだそうなのだ!」
…居た。
「ごめんなさい、ちょっとした冗談です…でも、苦しんでいる人たちを
助けたいのは本当だよ」
すぐに桃香が謝罪する…愛紗もそれに習って謝罪をする…鈴々も。
「…それはともかく、この召集に対しどう出るかだ…皆の意見を聞きたい」
「私は賛成、重税を課してるって聞くし、苦しめている人たちを放っては置けないよ!」
「鈴々も賛成なのだ!」
「私も同意見です!」
「ラオウ様、この俺も同意見です!」
桃香・愛紗・鈴々・瑞佳が賛成派として発言する……その一方で首を傾げる四人が居た。
「この手紙…全部が本当の事?」
「賛成したいのは山々だが…少し気になる点があるな…」
「もう少し考えるべきだと思います」
「(コクリ)」
小夜・星・朱里・雛里の四人は反対意見……というよりも疑問点を指摘する。
当然の事ながら天和は軍議には参加しない。
「漢の皇帝が去った以上、我らは理想を客観視し、現実を見据えねばなりませんからな」
「私達のような弱小(?)勢力は上手く位置を掴まないと
あっという間に激流に流されてしまいますから…その流れを打ち砕きそうな人が居ますけど」
「それに、これは各諸侯の嫉妬によるものが大きいと思われます」
「でも、だからと言って…」
「これは…ラオウ、様が決めること…もう…答えは出ているのでしょう?」
今までの話の流れを斬り、小夜がラオウを見る……他の面々も既にジッとラオウを見据えている。
ラオウはこの会議が始まる前から既に答えは出ていたのであろう……それでも、
議題にあげたという事は皆の意見を聞くためだろう。
独断専行の覇者には恐怖でしか人を縛る術が無い……哀しみを背負ったラオウは
恐怖での政治をする気はもう無い……本人の意思とは無関係に敵に恐怖を与えているが。
「朱里よ…兵はどれほど用意できる」
「えーっとですね…残った資金を考えると準備なども含めてこのぐらいかと…」
ラオウの前に一本と二本の指を立てる…その様子だと…
「一万二千か…仕方あるまい、その分を我らが補えばよいだけだ…雛里・朱里は
兵糧、補給の用意を、愛紗・鈴々・瑞佳・星は兵の配備を」
「…私は?」
「俺とともに馬舎へ向かうぞ…桃香は兵士の緊張でも和らげておけ」
「…なんか、私だけ役立たず?」
落ち込む桃香だが、その様子を瑞佳・愛紗らがフォローする……ラオウはほぼ単体で
軍として動けるが、他の面々は違う……そういう時に皆を纏め上げるのが桃香の役目だ。
特に今回は統率力の低い黄巾党などとは違い……正真正銘の軍が相手となる。
黄巾の乱の時のようなごり押し戦法では兵の負担が増えるだけだ。
「此度の反董卓連合では、各地の有力な諸侯が集まるであろう…名を上げるには
打ってつけともいえるな…」
「弱小勢力じゃないってところを見せる…か」
ラオウの言に瑞佳が反応する……確かに有力な諸侯の前で力を見せ付ければ弱小ではないと
見せることが出来るだろう…そのためには、兵の損失をイカに少なくし、
戦果を見せることが出来るのかが重要となる……。
「…此度の戦い、見事乗り切って見せようぞ」
『はい!』
そうして、各々が出撃に向けて準備を開始した。
余談だが…今回は天和はお留守番、瑞佳と一緒に行けないと駄々をこねていたが……
瑞佳の機転によりファンの方々と一緒に全員で町を守りますと息巻いていた。
何をしたのか尋ねたが、瑞佳は企業秘密だといっこうに答えなかったため、
それ以上は聞くことはしなかった。
そして、出撃の日…大勢の人々に見送られ、連合軍の居る陣地へと向かっていった。
「ここが連合軍の集う陣地か…」
陣地の至るところに天幕が張られ、諸侯の旗が所狭しと並べられていた。
色とりどりの軍服で身を包んだ兵士達があちこちでたむろしていた。
「ほわー…たくさん兵隊さんが居るね―」
「ふむ…陣地中央の大天幕の旗が河北の雄、袁紹の旗か」
「袁紹の従兄弟に当たる袁術、曹操・孫策・馬騰…あれは公孫賛殿の旗か?」
「白蓮ちゃんも来てたんだ―」
「これだけの将が一同に集結か……ふ、血がたぎってくるわ」
ラオウが覇者としての顔でかなりいい笑顔をしていた……見た兵士達が失神するほどに。
そんな時、金ぴかの鎧を纏った兵の一人が勇気を振り絞りながら近づいてきた。
「長旅ご苦労様です、貴公の名と兵数をお聞かせ願いますでしょうか」
「平原の相、北斗。兵を率いて参上した。連合軍の大将の元へ取次ぎ願いたい」
「は!しかし恐れながら現在連合軍の総大将は決まっておらぬのです……」
「……決まって、ない?」
小夜が首を傾げる……決まってないとはどういう事なのだろうか。
その時、聞き知った声が後ろから聞こえてきた。
「今、急ぎで総大将を決めているところさ」
「白蓮か」
「白蓮ちゃん!」
「よ、桃香。相変わらず元気そうだな……ラオウ、
あんたは相変わらずごついね……さらにはとんでもない馬まで」
黒龍の事を見ながら挨拶を交わしてくる……因みに黒龍が馬の居る領域に入った瞬間に
暴れていた馬達が大人しくなった。
「大将が決まってないってどういう意味なのだ?」
「あぁ、それは」
「諸侯の主導権争いが泥沼化しているんでしょうか…」
朱里が割って入ると、白蓮は首を横に振り…
「それがなぁ、逆なんだよ」
溜息とともに眉間にしわを寄せて心底困ったように言葉を続ける。
「一部を除いて、総大将など面倒だって人間がほとんどで……
軍議が全く進まん」
「そんなのやりたい奴にやらせればいいのだ―……違うのか?」
「実際そうなんだが……やりたそうにしている奴が自分から言い出さないんだよ」
つまり、やりたい奴がやれという状況になっているのに、やりたい者が
立候補せず、また推薦するにも責任を背負ってしまうのが嫌な為、誰も薦めようとは
しない……腹の探り合いが続いており、軍議が滞っているらしい。
その状況に疲れたため、息抜きに軍議を抜け出して来たところをラオウ達が来たという事だ。
「……ちょっと乗り込んでくる!?」
ずかずかと歩き出しそうな桃香をラオウが片手で抑える。
「落ち着け…これは権力争いの一端だ、発言力の弱い我らが言及したところで
何の意味ももたらさん」
そう言って、桃香を離す。桃香は納得がいかない表情で……俯いたまま黙り込む。
このままでは、もしも圧制自体が本当だった場合苦しむ人々が更に苦しみ……
董卓軍はますます軍備を強くしていくだろう。
「まずは、軍議に参加する事が重要だな……ラオウが入ればそれなりに
空気が変わるだろうさ」
そう言って、白蓮が少し前に出て案内する足取りで天幕へと入っていく。
ラオウは桃香の肩を一回叩き……
「まずは軍議に参加するぞ」
「……うん」
桃香を連れて天幕へと入り込んでいった……残された愛紗達は自分達の天幕を張りに
歩いていった……その後場所が決まった後で、小夜を中央の天幕の外へと派遣した。
「あら?誰か来ましたわね」
ラオウが天幕に入った瞬間、多少ざわめきがはしった。
曹操はラオウと眼が合ったため軽く会釈をする。
ラオウもそれに習った後。
「平原の相、北斗だ」
そう言ってラオウは空いている席を探し立ったまま腕を組む…椅子が合わなかったらしい。
その椅子には桃香が座っている。
「……コホン、さて軍議の続きですが、我々連合軍が効率良く兵を動かすにあたり、
たった一つ足りないものがありますの」
金髪のドリルヘアーをした少女がいち早く場を静め、沈黙する軍議の中で
一人喋っていた。
「兵力、軍資金、装備……全てにおいて完璧な我ら連合軍。
しかしただ一つ足りないもの……さてそれは何でしょう」
口元に手を当てて不敵に笑う少女……近くにいた白蓮の話ではあれが袁紹らしい。
話し方からしてその袁紹が大将をやりたがっているというのは馬鹿でもわかることだ。
もし仮に推薦したとしても援助はけして貰えないだろう……態度からして
なって当然という雰囲気を纏っているのだから。
まあ、もとより援助など必要が無いが。
「まず第一にこれほど名誉ある目的を持った軍を率いるには、相応の
家格というのが必要ですわ。
そして、次に能力。気高く、誇り高く、優雅に敵を殲滅できる、
素晴らしい能力を持った人材こそがふさわしいでしょう。
最後に、天に愛されているかのような美しさと、誰しもが溜息を漏らす
可憐さを備えた人物……そんな人物こそ、この連合軍を率いるに足る
総大将だと思うのですが、どうかしら?」
ペラペラとよく喋る口だ、とラオウが呆れ気味に呟く。
聞こえていた周りの諸侯達は同意するかのように軽く首を縦に振る。
「で、この連合軍の中に貴方の挙げた条件に合う人間は居るのかしら?」
「さあ?それは私が知ることではありませんわ。
けれど、世に名高いあなた方なら誰かお知りじゃありませんの?」
「そうね。……案外身近にいるかもね」
曹操が溜息をつきつつ言を返す。
袁紹は笑ったまま……はっきり言って鬱陶しいだろう。
そんな中……
「じゃったら、突っ立っておるその男にやらせたらどうじゃ?」
袁紹の近くに居た袁術が発言し、場は騒然となった。
「(のう雪蓮……あの北斗という男は何者じゃ?)」
「(最近現れた天の御遣いと噂されている人物よ)」
ラオウがこの場に現れてからひそひそと会話する少女達……
袁術と孫策の二人である。
この二者は同盟関係にあり、客将というわけではなく
友人のような関係を築いていた。
袁術の下に来たとある男が袁術のアレな性格を矯正した
と言われているのだが……そのため、孫策の母が倒れた時に
吸収ではなく同盟として組み込んだそうだ。
「(ほう……ちと、袁紹を困らせてやろうと思うのじゃがどうだ?)」
袁術の企みに気が付いた孫策は、ラオウのほうを見やり……
了承した。
孫策の反応に満足したのか、袁術は曹操が呆れて袁紹が高笑いしている
間に割り入るかのように……
「じゃったら、突っ立っておるその男にやらせたらどうじゃ?」
袁紹は口を高笑いした状態のまま固まり、曹操も一時固まったが……
すぐにその企みに乗ることにした。
ラオウは不意打ちに対して多少驚いた、まさかまだ弱小勢力である自分に
指名が飛んでくるとは思わなかったからである。
桃香も驚いて袁術の居る方向を見ている。
「なななな何をおっしゃいますの!袁術さん!」
「だってのう……このままでは軍議が進まぬからさっさと総大将を
決めたほうが得策じゃろう?」
「そうね……このまま不毛な議題を続けるよりもさっさと決めて
次にいった方が得策よ」
孫策が袁術に同意するように言葉を続ける。
袁紹は慌てていたが、すぐに冷静さを取り戻し……
「でも、その男では条件には……」
「あら結構合致してると思うわよ」
「んなあ!?」
今度は曹操が言を挟む……ラオウは袁術達の企みに気が付いたが
無理に口を挟んで議題が延長に持ち込むことをよしとしないので
黙ったまましっかりと見据えている。
……ラオウの分まであたふたしている少女が近くに座っているが。
「まず家格は関係ないわ、あの男は今噂の天の御遣いと称されている男よ」
その言葉に各諸侯の視線が集まった……英傑の覇気にラオウは動じる事無く
しっかりと立っている。
「次に、能力だけど雄々猛々しく、誇り高く、豪快かつ圧倒的に敵を
殲滅できる腕を彼単体で持っているわよ……これは黄巾の乱の時に
一緒に戦った私が保証するわ」
「今、当て字みたいな事を言っておりませんでした!?」
曹操は、推薦する人物が袁紹であればこのように推薦することは無かっただろう……
だが、戦いを共にした事のあるラオウとなれば話は別らしい。
かなり活き活きとした表情で語りだしていく。
八割以上本気でラオウを総大将に立てる気満々である。
袁術は予想の斜め上をいく展開に驚いていたが……袁紹が総大将を張るよりマシだろうと
傍観した。
「最後に天に与えられた圧倒的な体格と覇気、誰しもが命を預けられるような頼もしさ……
最後の条件が変わってしまったけれどそれに取って代わるかのような素質はあると思うけど?」
確かに概観だけ見れば圧倒的な力を感じる体格……そして抑えてもにじみ出る覇王の気質。
総大将の条件をかなりの部分満たしている上に、袁紹と双璧を成す曹操の言だから
誰も文句は言わない。
「あとは、北斗が決めることだけどね……」
「お待ちください!総大将は私がやりたいのです!!!!」
袁紹が大声でぶっちゃけた……この会話の流れでは自分が総大将になる事が出来ないからだろう。
最大の敵は曹操であったが、その曹操が推薦するような男……ラオウも敵と認識したのだろう。
「まったくやりたいのなら、最初からそう言えばいいのよ……でも、私は北斗を
推薦したままよ?」
「ならば、総大将を二人にすればいいのです!これで文句は無いでしょう!!」
机をバン!と叩いてさっさと続きを促す……。
結局この日は総大将が決まり、どちらの陣営に付くのかを決めるだけ決めてこの日は終了した。
進展があっただけでもマシだと思ったが……いざ、自分達の天幕に戻り、詳細を伝えると……
「総大将が二人……その内の一人がラオウ様……はう」
朱里は驚きのあまり寝込んでしまった。
他の面々も口を開けて固まった……そのような展開になるとは思っても居なかったようだ。
「総大将ではあるが、俺の立場は総副将、実質的な将は袁紹だ」
二つに分裂してしまっては勝てるものも勝てなくなる……そう考えたラオウは
推薦した曹操の面子を潰さぬように……そして、誰しもが納得するようにと、
副将としてならたつと宣言した。
曹操は一瞬苦い顔をしていたが、会議が進行する度合いを考えるとその方が
得策だとして(主に袁紹がらみ)円滑にするために口を挟まなかった。
ちなみに、実質的な分派としては……ラオウサイドには曹操、孫策、袁術、白蓮……。
その他の諸侯は流石に軍力が少なそうなラオウには味方をしなかった。
「ともかく、明日より作戦が練られる……朱里、雛里……この資料を用い
案を練るがよい……今日のところは各自しっかりと休め……」
そうして、この日の軍議は終わりを告げた……。
翌日、策など入らぬとして袁紹が
「作戦は唯一つ![退かぬ!媚びぬ!省みぬ!]ですわ!」
などと言い出したため、ラオウ・曹操・孫策・袁術・白蓮は独自に動くことを決意した。
いざとなれば袁紹を盾として使うことを決めて進軍した。
最初の難所は汜水関である…
おまけ:馬の言葉を人間のものとして解釈しています。
「おい、新しい軍が到着したみたいだぜ?」
「は!何処の田舎ものだ?」
そうやって喚き散らしているのは袁紹のところに居る馬達である。
豪華な装飾をつけており、威張ってばかりいる馬である。
「何でも北斗の軍の馬らしいですぜ」
「は!雌は連れて来い、雄は適当に立場を分からせてやれ」
『へい!』
いざ行動を起こそうとした時
「仲のいい事だな」
黒龍がゆったりとした足取りで入ってきた。
馬とは思えぬ圧倒的な覇気……馬の王と言っても過言では無いだろう。
馬達は全員沈黙せざるを得なかった。
「どうした、思い知らせるのではなかったのか?」
その瞬間、袁紹の軍の馬は一斉に頭を下げた。
『すんませんでした―――!!!!!』
馬係のものは馬達が大人しくなったのに安心したが……
黒龍の世話をどうしようかと悩む羽目になった。
その後、小夜が来て黒龍だけは小夜が世話をすることになったが。