町の就任早々…客人が訪れた。
「星ちゃんだ―…久しぶり―」
「おお、桃香殿。久方ぶりですな」
その客人は星であった…確か白蓮のところに居たはずだが、
半年の間に何があったのだろうか。
「星よ…ここに来た用件は何だ」
「わが剣を預ける人物を歩き探し…ここに至ったまでです」
「…そうか」
「大歓迎だよー♪」
「星がいれば百人力なのだ」
「共に戦わせて貰おう」
そして、星は辺りを見回し…瑞佳達と目が合った…
そういえば、瑞佳とはあっていたが、自己紹介はしていなかった。
他の三人も同様である。
「始めまして…と言っておこうか、俺は劉玄戒、真名は瑞佳と言う」
「…一見すれば男とも取れるが…女ですか」
その呟きに全員首肯する…髪の長さで誤魔化してはいるが…
口調といい物腰といい…男にしか見えないのである。
男に囲まれて育ったせいでもあるのだが…
「わ、私は諸葛孔明…真名は朱里といいます」
「あわわ、私は鳳統でしゅ、ま、真名は雛里でしゅ」
「…少女のカミカミ調とはいいものですな」
「…同意を求めるな」
どう見ても変態です、本当にありがとう御座いました。
ラオウは呆れた溜息を吐いたが、星はにやりと笑うだけでスルーした。
「私は劉角です!真名は天和だよー!」
「はて…随分と頭の弱そうなお嬢さんですな」
「むむー!」
桃香と似たような雰囲気を持つ少女、桃香との違いはおつむの弱さ…。
因みに、天和は主に町の人の一体感を高めるための催しをやっている…。
瑞佳を巻き込んで、何気にほとんどが恋愛系の演目なのだが…
瑞佳は主に…というより全て男役であり、天和との恋役が多い。
そのせいで、瑞佳は女性の支持者が多い…女性であると言う事は知れ渡っているのに…
ちなみに多いのは、ときたま喜劇を催すからだ。
「さて、仕事の割り振りだが…星は愛紗、鈴々とともに
兵の鍛錬を任せる」
「ふむ、任されました」
「頼んだぞ…俺は桃香と共に町の警邏にあたっている」
事件が起きる件数が急激に減っているのはラオウの影響です。
兵の鍛錬に参加しない理由は…付いて来れる者が居ないからである。
「朱里はいつもの通り市の管理、雛里は兵帖の管理を」
「はい」
「天和はいつもどおりで良い、瑞佳も護衛兼役者としていつも通りだ」
「はいはーい」
「…はい」
適材適所である…。
適材適所であると信じたい。
「では、解散だ…夜には星の歓迎会を開くぞ」
そう言って、ラオウは町の警邏へと繰り出した。
「巨大な馬だと…?」
「はい、なんでも近づく者を蹂躙しながら闊歩する黒い馬が居るそうなんです。
近寄らなければ害は無いのですが…その馬に挑んだ屈強な男たちが次々と
命を落としているそうです」
黒く強大な馬…話を聞く限りでは、まるで黒王を思わせる風格である。
ここが過去だという事を仮定すれば…黒王の先祖に当たる馬だろう…。
「すいましぇーん、やおやはでょこですかー」
「ん?それなら、そこの角を曲がった…おい、案内してやるぞ」
考えている途中で、子供が元気よくラオウに八百屋の場所を聞いていた。
おそらく、親に頼まれて使いにでも出たのだろう。
…それにしてもラオウを見て驚かないとは、将来大物になりそうである。
「…その馬の名は何と申す」
「確か、黒龍と…龍の如き強さから名付けられたそうです」
王ではなく、龍…おそらくは黒王と同等か、それ以上の力を持った馬なのだろう…。
「それと、その黒龍は何かを守っているとの噂です」
「…守る?」
それが何かは分からないらしい…。
ともあれラオウは、皆が落ち着いてから出向く事に決めた…。
そして…三日後、町の治安が安定したため、ラオウは黒龍のところへと向かった。
その山の裾にたどり着くと…そこには
何人かが命を落とした証である墓が立っている。
一人の少女がそこで墓を整地していた。
数十人の男が少女に対して言い寄ってきている。
「ここが黒龍のいる山とやらか」
「…あなたは?」
物静かに話す少女、儚げな雰囲気を持ち、同性であっても見とれるような美しさを持っていた
。
大方、回りに居る男はこの少女に目をつけたのだろう。
「北斗拳王…うぬは何故ここに居る」
「…黒龍が運んでくる…男達を供養…するためです」
そして、ゆっくりと正面を向く、ジーッとラオウの顔を見る。
すると、無視されていた男たち(ラオウに驚いて固まっていた)が憤怒し。
「そのお嬢ちゃんとは俺たちが話しているんだよ!」
「デカブツはどっかいきな!」
いかにも柄の悪そうな男たちである…ラオウは無視して…
「黒龍とやらはこの山の奥か?」
「…いえ、もう、来る頃だと…思います…皆さん、逃げてください…」
そう言って、その場を離れようとする…すると、男の一人が少女の腕を強引に引く。
「つれねーな…もうちょっと相手してくれてもいいじゃんよ」
「…はな、して…」
「馬が来るからってか?馬如き、この十人がかりで槍で…」
そこまで言ったところでラオウが引き剥がす…
「なんだ、てめ…」
「黙っていろ」
世紀末覇者の覇気を纏う…男たちは動けなくなった。
少女は驚いて、ラオウを見る。
「黒龍と同じ…いえ、それ以上…」
その時…
【ギュオオォォォ―――――!!!!!!】
巨大な咆哮が聞こえてきた…それは最早生物の咆哮ではない。
まるで、龍の咆哮とも取れる。
その咆哮に、男達はもしかしたら、とんでもない化け物を
相手にしているのではないかと震え上がる。
だが、その男達の中の首領格であろう一人が…
「へっへっへ…来やがったか…このお姫様の守護者がよ―」
見るからに屈強な男である…腕はそれなりに立つであろう…
もっとも、ラオウからすれば赤子に等しいが…
「そこのデカブツ…よーく見てな、この俺様の力を!」
『さすが兄貴だ!そこに痺れる、憧れる―!』
ラオウはただ黙って、咆哮の聞こえてきた先を見据えた…
既にそこには…馬とは思えぬほどの屈強な体つきをした巨大な馬が
やってきていた…。
その視線は、ラオウの後ろに居る少女を優しく見た後…
ラオウの前に居る男達に威嚇をしていた…。
「お、みえやが………」
兄貴と呼ばれた男は後悔した…目の前に居るのはどう見ても馬ではない。
まるで…龍だ。
一歩歩くたびに地響きがし始め、あたりの動物達は逃げ惑う。
「にげ…ないの…ですか?」
男達に関してはもう死んだ者として扱っているのだろう…だが、ラオウに関しては
何か感じるものがあったのか…横に並んでジッと見据えている。
「逃げぬ…俺は奴に会いに来たのだ…成る程、名は体を現すというが…
まさに龍そのものだな…」
ラオウの言葉に我に帰ったのか、男が斧を構える。
そして、異様な構えをとりだした。
「お―!兄貴の究極最強絶対無敵天下無双斧乱舞の構えだ!
あの馬も終わりだ―!!!」
名前だけを見れば何処の厨二病だとしか突っ込めない…
ラオウから見れば隙だらけにしか見えない…
現にラオウの仮想戦闘では既にその男は千回から先は覚えきれないぐらい
死んでいる。
そして、黒龍は静かに歩き出した…一歩一歩に力を込めているのか、
その踏み込みだけでこの周囲一帯が地震が起きている感覚に囚われる。
男達はバランスを崩していたが、ラオウは地面にしっかりと根を張る巨木のように
全く動じていない…近くの少女は慣れているのか多少ふらつく程度で特に
倒れるようには見えなかった。
「ふん、くらえー!!!馬野郎!!!俺流究極最強絶対無敵天下無双斧乱舞奥義…
斬撃!!!!!!!!!!」
ラオウがずっこけかけた…隣の少女は首を傾げていた。
もう少しマシな名前は無いのか…どう考えても通常技にしか聞こえない。
その男は空中に一回飛び上がって縦に回転しながら切りかかっていった。
それを黒龍が後ろ足を上げておもいっきり蹴り上げ迎撃をする。
「ぐぎょん!?」
『兄貴―――!!?』
その男は数百メートルほど吹っ飛んで…地面に激突した。
ラオウはこの集団は漫才集団かと溜息をついていた…だとしたら全く
琴線に触れていないが…因みに男はまだ生きていた…しぶとい男だ…。
しかも立ち上がって、再び黒龍に立ち向かっていた。
他の子分と一緒に。
「死にやがれー!!!!」
『うおおおおおおおおお!!!!!』
数分後…男達は全滅していた…その死に顔は何かやり遂げたような顔だったという。
「ぎゅるるるる…」
そして、ラオウと黒龍は相対していた…近くには少女がラオウにお茶を持ってきて切り株に
お盆ごと置いていた。
先ほどからラオウと黒龍は互いを見たまま微動だにしない…。
「…」
「…」
「…」
二人と一頭は先ほどから言葉を全く発しない。
静かに少女が男達の墓穴を掘る音が聞こえる。
今回はかなりの人数なので時間が掛かるのだろう…ゆっくりとしかし
しっかりとつくりあげていく。
それから…数時間後。
「…ぐる」
黒龍が頭を垂れた…ラオウを認めたということだろう。
ラオウは黒龍の頭を軽く撫でると…少女の手伝いをしに行った。
「手伝おう…」
「ありがとう…御座います……」
「姓は北斗、字は拳王…先ほども名を言ったと思うが…」
「北斗…さん…わ…私は……姓は、大和…字は、武蔵…真名は、小夜…です」
「真名を言うか」
「黒龍が…認めた、から…」
そう言って、黒龍の方を見る…その目はまるで父を見るかのような眼差しだった。
「…あの黒龍とうぬは家族なのだろう」
「わかる…のですか…?」
「覇者同士…言葉にせずとも伝わる…」
「…そうです…」
「…我が真名はラオウ」
少女はそうですか…と言いながら作業を始めようとしていた。
ラオウは…両手を構えると、次々と穴を作り上げていった。
そして…小百合が驚いている間に、次々と男達を運び込んでいく。
…その作業は数分で終わった。
「さて…小夜よ」
「…黒龍を、連れて行くのですか…?」
ラオウは首肯する…小夜は静かにラオウと黒龍を見やり…
「私は…あなたの実力を計ります…」
…そして、ラオウと間合いを取った…。
「やはり、拳士か…流派は何処だ」
「南斗鳳凰拳…私はその伝承者です」
構えを取らず制圧前進を得意とする南斗聖拳最強の拳法。
おそらく黒龍が来ずとも
どうにかする腕前は持っていただろう。
「天帝に許可を貰い私は、この山で世の情勢を見ていました」
「この俺と戦う理由は何だ」
「拳士としての宿命です…勝負は一本…」
そう言って両手を前で合わせて礼を取る。
天帰掌では無いが…ある種の礼儀のようなものだろう。
「一撃を入れた地点で勝負あり…そういう事だな」
「(コクリ)…黒龍が合図です」
黒龍がしっかりと歩き出し、前足の片足を上げる…。
踏みしめた時が合図なのだろう…ラオウにも緊張が走る…恐らくは実力は
瑞佳以上のものだろう…。
そして、黒龍が脚を踏みしめた…!
:戦闘は次回…ラオウの勢力がどんどん強くなる(苦)
NGシーン
「お、みえやが………」
「やめておけ…貴様如きの腕でこの俺を倒すことは出来ん」
兄貴と呼ばれた男は後悔した…目の前に居るのはどう見ても馬ではない。
まるで…龍だ…というか喋っていた…
ラオウは驚いた…黒龍の話す声が…義弟のケンシロウに似ていたからだ。
「にげ…ないの…ですか?」
男達に関してはもう死んだ者として扱っているのだろう…だが、ラオウに関しては
何か感じるものがあったのか…横に並んでジッと見据えている。
「逃げぬ…俺は奴に会いに来たのだ…成る程、名は体を現すというが…
まさに龍そのものだな…喋るとは思わなかったが…」
ラオウの言葉に我に帰ったのか、男が斧を構える。
そして、異様な構えをとりだした。
「お―!兄貴の究極最強絶対無敵天下無双斧乱舞の構えだ!
あの馬も終わりだ―!!!」
「ほう、面白い技だ…撃って来い」
名前だけを見れば何処の厨二病だとしか突っ込めない…
ラオウから見れば隙だらけにしか見えない…
現にラオウの仮想戦闘では既にその男は千回から先は覚えきれないぐらい
死んでいる。
そして、黒龍は静かに歩き出した…一歩一歩に力を込めているのか、
その踏み込みだけでこの周囲一帯が地震が起きている感覚に囚われる。
男達はバランスを崩していたが、ラオウは地面にしっかりと根を張る巨木のように
全く動じていない…近くの少女は慣れているのか多少ふらつく程度で特に
倒れるようには見えなかった。
「ふん、くらえー!!!馬野郎!!!俺流究極最強絶対無敵天下無双斧乱舞奥義…
斬撃!!!!!!!!!!」
ラオウがずっこけかけた…隣の少女は首を傾げていた。
もう少しマシな名前は無いのか…どう考えても通常技にしか聞こえない。
その男は空中に一回飛び上がって縦に回転しながら切りかかっていった。
それを黒龍が後ろ足を上げておもいっきり蹴り上げ迎撃をする。
「北斗迎空後脚!!!」
『兄貴―――!!?』
その男は数百メートルほど吹っ飛んで…地面に激突した。
ラオウはこの集団は漫才集団かと溜息をついていた…だとしたら全く
琴線に触れていないが…
「ぬぅ…あれは…北斗神拳…」
「あ…新記録…」
ラオウは馬が北斗神拳を使ったのに驚いた…足技しか使いそうに無いが。
少女は羊皮紙に何か単位を書き綴っていた…どうやら、見ただけで
距離を図ることが出来るらしい…凄い才能だ。
:無想転生使いそうな馬だ…