無印は終了、今回からA'Sに入ります。
原作どおりの時間の進み方ではないです。
まずはあいつら出さないとどうしようもないので。
完全シリアスです。ギャグは0です。
うちの猫は規格外だ。
この一言が八神はやてが彼女の飼い猫、にいに持っている印象である。
見た目はどこからどう見ても普通の猫である。多分万人が万人みて想像するおよそ猫という存在そのものといえる。
そのくせに全く猫らしくないのだが。
まず喋る。
それはもう流暢な日本語を話す。本人(?)曰く「パプワニューギニアの奥地で話される原住民の土着語とアマゾンに住むいくつかの部族のスラング以外ならとりあえず全ての言語が話せる」そうである。
この時点でおかしいと思われるが待って欲しい。こんなものは序の口である。
次に学校に通っている。
それもよく童話であるような動物の学校とか、猫の集会所に通っているわけではない。
本当に普通の小学校に通っている。話を聞く限りではクラスでの評判も上々らしい。猫の分際で。そのあたりのことを一度はやては聞き出してみた事があるのだが、うまくはぐらかされて終わってしまった。曰く、『企業秘密』だそうである。
どこが企業なのか聞いてみたいと思ったが止めておいた。主に自分の精神を守るために。
さらに不思議なのはこれでいて周りからよく慕われているところである。いつぞや温泉に行った時も大きな旅館の豪華な部屋に宿泊費無料で泊まった。そこの女将が言うにはなにやら多大な恩があるとかないとか……
この他にも一緒に町を散歩したときなどは大変である。商店街に買い物に行けば明らかに出した金額よりも多くの商品を譲ってもらえる。周りに子供達が寄ってきては尊敬のまなざしで見ている。猫を。あるときなど妙齢の女性に「私も八神君のようなナイト様が欲しかったわ」等と言われればいやがおうでも意識せざるを得なかった。
目の前で毛糸玉に戯れて糸が絡まって動けないでいるところを見ればそんな幻想も吹き飛ぶだろうが。
「……なぁにいちゃん」
「なんだはやて」
素で返すな。よく考えるとこの時点でおかしいだろ。
「にいちゃんはなぁ、ねこさんなんやよね?」
ついに聞いてしまった。もしかしたら禁断の質問。
「突然何を言い出すかと思えば…俺が猫以外の何かに見えるなら眼科に行ったほうがいいぞ」
やはり猫らしい。確かに魚が好物らしいし、「散歩」と称してなにやら外に出て行くことも多い。その「散歩」で一体何をしているのかは知らないが。
「急にどうした、また何か心配事でもあるのか?」
はやては心配といえば心配であった。主に自分の脳が。ついでに言えばこの町の人間の精神が。
「なぁ、にいちゃん、いや、にい、普通、猫は喋らんちゃうん?」
言ってしまった。正直自分もいつの間にかこの猫が喋れることを気にしなかった、というか最初からそんなこと気にしていなかったのだが、ここに来てとうとう聞いてしまった。
「はやて、いいか、よく聞け。これは俺の担任の先生が言っていた言葉だ。世の中にはいろんな人間がいる。それを差別してはいけないよ、と」
優しく諭すわが飼い猫。しかし問題はそこではない。
「いや、差別とかそんなんちゃうよ、ただな、猫が喋ったり学校行くのはどうなんかなっと」
しかしその言葉に彼はやれやれとため息をつくだけだった。
「はやては九官鳥を知らんのか?オウムやインコでもいい、あいつらは喋るぞ」
違う、何が違うのかはよく分からないが九官鳥と猫は違うだろ。
だがはやては大人だった。少なくとも意固地にならないほどは大人の対応ができた。
「まぁええわ百歩譲って喋るのはゆるすわ。じゃあ何で学校いっとるん?」
「?勉強のために決まっているじゃないか」
何をいまさらとでも言いたげに言われる。かみ合わない。
「そうやのうて、どうやって学校いっとるん?」
「徒歩だ。高町、クラスメートのことだ、なんかはバスで通ったり、リムジンで通学しているやつらなんかもいたな。あとは内緒で自転車に乗っている奴もいるとか…」
「そうやない!!どないして学校に入学したんかきいとるんよ!普通は入学を許してくれんやろ!」
ああ、なるほど、少し待て、そう彼は呟き、どこからか生徒手帳と聖祥大付属小学校の入学案内を持ってきた。
「まずこの入学案内をみろ、いいか、ここは私立だから多少他と差があるかもしれないが、まずこの入学願書を出すわけだ。そして試験に合格すればいい。はやての場合は編入になるから少々手間だが、まぁ概ねやることは変わらない。ただ、編入試験は少々むずかしめに設定されている事が多いから気をつけろ、次に守るべき校則についてだが……」
「にいちゃん。何言うとるん?」
「何って…編入手続きと校則についてだが。はやても学校に通いたいんだろ?足が治ったらなんてけち臭いことは言わなくていいぞ。そのあたりはどうにでもなるからな」
いつの間にか自分が学校に編入することになっている。
「へーそれはええなぁ、あたしも学校いけるんかー」
「うむ、はやても学校に通いたかったのだろう。そのことに考えが至らないとは俺が悪かった。なに、金や保護者のことなら心配するな。どうにでもなる」
「って違うゆーとんやろー!!!!」
切れた。切れてしまった。はやては生まれて初めて大声を出した。関西人の血だろうか。
「なんだはやて、大声を出すな。ご近所に迷惑だろう」
あくまでマイペースを崩さないこの猫。やんわりと大声を出したことを注意してくる。
「だーかーらー!そうやのて、なんで猫が学校通えるかきいとるんよ!!」
もうなんかしっちゃかめっちゃかだ。ヒートアップしているのは少女だけだが。もう片方の当事者は全く動じない。
「なんだ、そんなことか。いいかはやて、この入学案内をよく読め」
そういわれてはやては入学案内の「編入資格について」の部分を見る。
「どこにも猫は入学してはいけないなんて書いてないぞ」
はやては目の前が真っ暗になった。
この猫は規格外である。
これが高町なのはが彼女のクラスメートに持っている印象である。
見た目は誰がどう見ようとただの猫である、およそ猫というものを想像したときに全ての人間が頭に思い浮かべるような猫である。
全く猫らしくないのだが。
まず強い。
とにかく強い。もう強いという言葉では言い表せないくらい強い。
なのはは春先にあったひょんなことから魔法を使えるようになり、それ以後、少しずつ魔法の練習をしている。
そしてその事件のとき彼が戦うのを見た。
強かった。魔法も何も関係なく強かった。自分が魔法で封印せざるを得なかった相手を一瞬で引き裂いた。
同じ魔法使いの子と戦って一歩も引かないどころかどこか余裕すら感じられた。
一度彼女の兄に、彼についての印象を聞いてみた事がある。
兄はこう答えた。
「あいつはきっと強い。多分父さんや俺が全力で戦っても勝てるかどうか…」
家で古流剣術を習得している兄をしてこの言葉である。なのはにとってはどれほどの強さなのか想像もつかない。
修行を見てもらうことを口実にどれくらい強いかを調べようとしたこともあったが、
「強さとはひけらかすものではない、高町、強くなるために修行することは悪いことではないが修行を人の強さを知ろうとするダシに使おうとするのは感心しないぞ」
一発で見破られた。
まぁとにかく彼が強いということは分かっていた。
次に頭がいい。
試験で百点を取るとか、物知りだとか言う頭のよさではない。
強いて言うならキレモノという言葉が近い気がする。
人の機微に敏感で、頼まれたことは決していやといわない。ただのお人よしだ、と本人は言っているが、間違いなく彼がクラスの中心として動いているのは確かである。猫の分際で。
しかし、なのははこうも思った。
(こんなにすごいのなら、八神君の弱点って何だろう?)
確かに子供らしい問いである。何かしらの弱点があるのは生物である以上当然といえた。しかし、なのははそんものは見たこともなかった。
まず食べ物、好き嫌いがあるかである。
しかし嫌いなたべものについての調査は難航した。
とにかく持ってきたお弁当はもとよりもらったり交換したものは全て平らげている。猫は葱やにんにくチョコが駄目だと聞いたがそんなことお構いもせずぺろりとたいらげている。
「八神君?嫌いなものってないの?」
「好き嫌いすると大きくなれないぞ」
次に水。
夏が近くなると学校でもプールの授業があるのだがこれについてはどうだろうか。
一般的に猫は水が嫌いである。
「八神君、プール入れるの?」
「任せろ、海鳴の青い流星とは俺のことだぜ」
微妙に痛い名前をつけてプールに飛び込む彼の姿を見てもしかして弱点はネーミングセンス?そんなことを考えた。
「は?俺の弱点?」
帰り道、たまたま一緒になったなのははここに来てとうとう本人に問いただすことにした。
「うん、八神君はなんでもできるけどさ、なにかできないことって言うか…弱点とかあるのかなぁ、って」
「そうだなぁ……」
うーんと唸りながら考え込む彼の姿を見て、そんなに自分の短所がない人なのかな、とかなり失礼なことを考える。
「あ、弱点って言うほどでもないが、箸を持つのが苦手だ」
弱点以前の問題だった。
「それは、弱点ていうのかな…?」
ある意味生物学的な問いに考えながら歩く。するとふと隣を歩いていたはずの彼が立ち止まる。
「八神君?」
「高町、この道は通れん。別の道を行くぞ」
見たこともない真剣な表情。まさか、なにか異常事態が?なのはは周りを見渡すが何も以上は見当たらない。その間に彼はずんずんと違う道を進んでいく。
「え、ちょっと、八神君?」
一本道をはずれどんどん進んでいく。その目には全く躊躇というものがなかった。
しかし、また少々進んだところで彼は立ち止まった。
「く、まさかこっちも通れぬようになっているとは・・・。昨日までは通れたというのに」
やはり真剣な表情。なのははなぜ彼がそんな表情をしてるか分からない。
「八神君?どうしたの?なんか変だよ?」
「すまないが高町、俺はここで特殊なルートを使って帰らせてもらう。申し訳ないがここでさらばだ」
そう告げると猫は塀を飛び越えてどこかへ去ってしまった。
「なんなの?もう……」
なのはの20m前には、水の入ったペットボトルがおいてあった。
「なあにいちゃん」
「なんだはやて」
「展開おかしない?」
「俺が知るか」
A'S一話目です。今回のお話は試験的に恋愛要素を入れてみようと思います。僕は恋愛ものとか書けるはずは無いと思うのですが何事も経験です。だから今回は恋愛要素が入ってくることになります。何かカップリングの要望があればドウゾ。別にそれは反映されませんが。