今回はオリジナルな展開が多めになります。
仕方ないね。
次の話の伏線というか布石なので諦めてください。
そのおかげでいままでで一番出来がひどいです。
親友達と大喧嘩をしてしまったなのは、その日の放課後、二人はこの間温泉であったことを話し合っていた。
「そうか……そんな事が……」
「うん…ジュエルシードもとられちゃったし……」
この間の温泉旅行のときにあったことを説明しているなのは。その表情は暗い。
「それで、それは本題ではないだろう?」
確信しているような声。それは彼女の心情を察したものなのかそれともただの勘なのか―なのはには判断する事が出来なかった。
なのはは意を決して話す。
「あの子、悲しい顔してた。わたし、あの顔知ってるんだ」
それは少し前の記憶。彼女が一人でいた記憶。彼女もまた孤独を知っていた。だから思う。
「友達に、なりたいんだ」
言ってみて自分の心にストンとその言葉が落ちてきた。誰よりも優しく誰よりもさびしがりやな少女は誰にもそんな顔をさせたくなかった。
「答えは出たようだな。そのフェイト・テスタロッサだが…金髪に赤い目か……?」
「知ってるの?」
フェイトとあったことのないはずの彼の発言になのはは気色ばむ。
「少々以前に、ね。これも運命という奴か」
もしもこれが運命というのならば運命の名を持つ相手に神は何をさせようというのか。
「フェイトちゃんには、きっと何か事情があるんだと思う。だから」
その先を促す。彼にはその言葉の先が想像できていた。
「だから?」
「お話をしたいの。ユーノくんには、頼めないから。ユーノくんのジュエルシードを集めるって目的に私の我侭をつき合わせられないから」
「お願い、力を貸してください」
再びのお願い。
それは彼女にとってとても珍しい選択。彼女はまず人に頼らない。それでも彼には頼った。それは信頼や友情といったものかもしれない。が、もう一つ秘密を共有している唯一の存在であるという要因が強く作用していた。
つまりこれは彼女には自分の心情をありのままさらけ出せる相手がいないということでもあった。
例えば家族には魔法のことなど話せないし、ユーノに対してはお互いが持つ引け目(この場合は両者とも賢すぎる点が災いした)から彼女と話をするという我侭を押し通すことは出来ない。そこにきて彼はそんな事情とは全く無関係である。何せ単なる猫だ。しかも事情を知っている。なのはが彼に自分の心情を吐露したのも仕方のないことであった。
「……わかった。それでは選べ。ジュエルシードの封印と、テスタロッサとの話し、お前はどちらを優先させる?」
それは彼女に突きつけられた選択。どちらも優先することは出来ない。彼はいつも現実を見据えている。そして彼女に問う。どちらがより大事か?
「……分からない。でも、あの子とお話をする!ジュエルシードの封印もする!どっちが大事なんて考えないよ!」
それは理想。自分のやりたいことは全部やるというある種傲慢な考え。それでもその答えに満足した一匹の猫は―
「プ、くくく、高町らしい答えだな。何、任せろ。君の友人にも頼まれていることだしな。弾除けぐらいにはなってやる。戦うのは男の仕事だ」
とても楽しそうに笑うのだった。
話は少し遡る。なのはたちが大喧嘩をした、その日の昼のことである。
「八神君……」
彼は珍しく月村すずかから話しかけられた。
「なんだ?」
「ちょっと、来て」
そういい彼を抱きかかえたまま教室をでていくすずか。少々居心地が悪そうだ。
屋上まで来た彼女は彼を地面に降ろした。
「それで、こんなところまで呼び出して何のようだ」
無理やり連れてこられ不機嫌になる。しかしむこうはそれを意に介せず話を始めた。
「なのはちゃんのことなんだけど、何をしてるの?」
「……なぜ俺に聞く?知りたければ本人に聞け。俺は彼女の恋人でもなんでもないぞ」
「なのはちゃんは、きっと何も話してくれないと思う。それに、今一番なのはちゃんに近いのは八神君だから」
彼は彼女の推理、いや恐らくは勘というものなのだろうがそれに舌を巻いた。彼女は何かをうすうす気づいている。それが危険なものであるということも。
「答えられないものは答えられない。それでよければ話してやる。それが精一杯だ」
予想以上の返事があっさりときたことにすずかは驚くが質問をすることにする。
「それじゃあ、八神君はなのはちゃんがやってることを知ってるんだよね。それが危険だって言うことも」
質問というよりは確認、そんな意識が見えた。
「ああ、知っている。但しその具体的な中身については言えない」
「じゃあ、私に出来ることって……」
「ない」
にべもない言葉。彼は発言を続ける。
「君達は今のままでいればいい。今の日常を彼女に与えてくれればそれでいい。君達は俺が見る限り親友だ。俺のような付き合いが浅い奴にも分かるくらい親友だ。だから待て。高町はいつかきっと必ず話してくれる。それを俺が言うことは出来ないし、してはいけないことだと思う」
正論だ。吐き気がするくらい正論だ。しかし、彼女は割り切れない。親友の力になれない自分の無力さを嘆く。
「私は、なのはちゃんの役に立たないのかな」
「違う。俺の話を聞いていたか?高町はきっといつか話してくれる。それを待つのも親友の役目だ。そのときは俺ごときよりよっぽど役に立つ」
「分かった。じゃあ、一つだけ頼んでもいい?」
本当は分からない、分かりたくない。しかしその感情を無理やり押さえつけた。
「何だ?」
「なのはちゃんをよろしくお願いします」
「……任せろ」
屋上から一匹の猫が飛び降りていった。
「さて、任されたわけだが、これは一体どういう状況だ?」
あちら側にいるのはいるのはこの間のフェイト・テスタロッサとでかい犬、こちら側には高町なのはとねずみもどき。すでに結界を張っている。
『sealing form set up』
『sealing mode set up』
発動したジュエルシードに向かって二人の光が伸びる。片方は黄金色、そしてもう一方は桜色の奔流。
だが、二人の光はぶつかり合い、互いに相殺された。
そのうちの片方、フェイトがこちらに気づいたらしく告げる。
「……やっぱり彼女の仲間だったんですね」
「仲間、とは少し違うかもしれないな。フェイト、いや、テスタロッサと呼ぶべきか?」
隣からは八神君?と呼ぶ声が聞こえるがそれをあえて放置する。ここは自分が出張るところだ。
「2対2、いえ、2対3ですが負けない。勝負です、にいさん」
デバイスを構える。
「やってみろ、テスタロッサ」
瞬間足元が爆ぜる。強靭な脚力によって一瞬で空中まで飛び上がりそのままフェイトへと肉薄する。
『scythe form』
フェイトは近接戦闘形態に特化した形状にバルディッシュを変化させそれを迎え撃つ。
瞬間、両者の間に火花が飛び散る。黄色い、赤い火花。
「いい反応だ」
どこか余裕が感じられる声。
「あなたも…!」
片方の表情に笑みが浮かぶ。楽しい。愉しい。
しかしそんな二人に水を差す声がかけられた。
「やめて、八神君!!フェイトちゃん!!」
「高町、邪魔をするな!先にジュエルシードを封印してろ!こいつの足止めは俺がしておく!」
その声を聞いてユーノには彼の意図が読めた。
「なのは、今のうちにジュエルシードを封印するんだ!あの子とはその後話しをしても遅くない!」
そう、彼は単独で時間を稼ぎ、まず高町にジュエルシードを封印させる。その後、それをだしにするなりなんなりしてフェイトとの会話の場を設けようとしているのだ。
その意図を汲んだユーノはなのはに向かって封印を求める。しかしなのははそれに応じようとはしなかった。
「二人とも、戦っちゃ駄目だよ!ぶつかり合うのは仕方ないかもしれない!でも、二人が戦うのは、なんか、嫌だ!」
「話すだけじゃ分からないかもしれないけど、何も分からないままぶつかり合うのは、私嫌だよ!!」
なのはが叫ぶ。相手のことをもっと知りたい。戦うにしても相手のことをもっと知りたいという純粋な願い。そしてそれに彼は応えた。
「高町、役割変更だ!こいつの相手はお前がしろ!ユーノ、お前がジュエルシードの封印だ!俺は…あの犬っコロを倒す!」
『device mode』
「フェイトちゃん!私の名前は高町なのは!私立聖祥大付属小学校三年生!行くよ!フェイトちゃん!」
『flier fin』
そして少女は空を駆けた。
フェイトとの戦闘を一時なのはに預け、アルフのところに降りてくる。ここに二匹の獣がにらみ合った。
「アンタ、何者だい?」
純粋な問い。白い魔法使いの味方であり、ジュエルシードを確保するのが目的でもあるらしい目の前の猫。
魔力反応はおろか肉体的にもただの猫とかわりがないはず。それでも彼はフェイトと互角に打ち合った。あの余裕を見るに近接に限れば彼女の敬愛するご主人様を上回っていたかもしれない。白い魔法使いと協力すれば間違いなく自分のご主人を倒していただろう。(最も自分がそんなことはさせないという自負がアルフにはあるが)
しかし、フェイトを倒すのが目的ではない。
純粋な疑問。相手は猫だ。自分は狼だが使い魔だ。しかしこいつは違う。どっからどう見てもただの小さい猫だ。そのくせ余裕綽々で不適。こいつはいったいなんだ?だから問うた。
「アンタ一体何者だい?」
答えはあっけないほど簡単だった。
「通りすがりのクラスメートさ」
このお話はテンプレといえるようなテンプレがないので自分でお話しを作るしかありませんでした。すごく難産でした。だから完成度はいままでで一番低いです。多分修正すると思います。でも色々伏線張ってあるのでめんどくさくなってしないかも知れません。
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