多分2話目だと思います。
嘘です。
理想郷が復活しました。
とても嬉しいです。
管理人の舞氏にはいつもご苦労様ですの言葉とこれからもよろしくお願いしますという二つの言葉を捧げます。
こんなところを見ているわけがないのですが。
八神はやての夜は遅い。
いや、正確に言うと遅かったというのが正しい。なぜならば彼女の同居人が小学生の年齢にあるはやてが夜更かしすることにあまり好意的でないからだ。
一人で暮らしていた頃、彼女は眠るのが怖かった。
次の朝になったとき、もしかしたら自分はもう二度と目覚めないかもしれない。もしかしたら死んだはずの父と母が戻ってくるかもしれない。もしかしたら自分の足だけでなく腕までも動かなくなっているかもしれない。もしかしたら自分を誰か必要としてくれる人が現れるかもしれない。
希望と絶望が常にごちゃ混ぜになりはやてはいつも不安だった。誰にも言ったことはない。担当の先生にも、誰にも。
「このままでいるのが一番いい」「本当にこのままでいいんだろうか」
二つの異なる意思がはやてを蝕み、いつしか彼女は眠ることから逃げるようになった。
そうして彼女は本を読んだ。
空想の世界は優しいから。ほんのわずかな時間だけでも現実を忘れさせてくれるから。
しかしそこにほんの一つの異物が紛れ込んだ。
最初はただ可哀想だと思っただけだった。
もしかしたら人肌恋しかったのかもしれない。孤独はたやすく人を蝕むから。
でも、彼もまた孤独だった。
だから一緒にいた。いることを選んだ。
それによりはやての生活が劇的に変化したわけではない。
しかし長らく感じていなかった誰かと一緒にいることによる幸福、家族を心配する気持ち、家族と笑い合う喜びを彼女は再び得た。
はやては彼に感謝している。本人に問えば、「自分は何もしていない」などというだろうし、絶対に「自分のほうがはやてに感謝している」というだろうから言ったことはないがそれでもはやては彼に感謝していた。
だから、今は、眠るのがあまり怖くない。
だから、これは必然。
八神はやて誕生日当日夜のことである。
『Ich befreie eine Versiegelung』
『Anfang』
鎖に縛られた本が開き、黒い光が輝きだす。それに呼応してはやての胸のリンカーコアも輝く
「闇の書の起動を確認しました」
「我ら闇の書の蒐集を行い主を守る守護騎士にてございます」
「夜天の主の元に集いしヴォルケンリッター、何なりとご命令を」
そして現れる守護騎士達。
それは彼女らの存在理由。主に仕え主と共にある守護騎士達
「うるさいわ」
はやての寝起きは悪かった。
はやての部屋からもれる異常な気配に気づいた彼はすぐさまはやての部屋に駆けつけた。そしてそこにいるのは見たことのない4人の男女。一見かしづいているようにも見えるが、見知らぬ他人がいることに変わりはない。
「貴様ら、はやてに何のようだ……?」
彼にしては珍しいまでの怒気。
向こうもそれに気づいたのかただならぬ気配に表情が険しくなる。
「貴様…何者だ!?」
桃色の髪をした女性、シグナムが問いかける。目の前の存在からは歴戦の戦士を思わせる気配が漂っている。
「質問を質問で返すな。はやての誘拐ないし危害を加えることを目的と判断する。排除する」
瞬間、シグナムの目の前から彼の姿は消えた。
「っ!?」
慌ててレーヴァティンを取り出し掲げる。その瞬間高い金属音が響き渡った。
「賊の分際でいい動きだ。今のでしとめきれんとは」
(ためらいもせず首狙い、か)
間違いなく戦い慣れしている相手に、シグナムの背中を冷たい汗が流れる。
今の一撃を防げたのは相手に反応できたというよりも運や偶然の要素が強い。
(ここでは主に被害が及ぶやもしれん)
「おい、シグナム…」
赤い髪の少女、ヴィータも今の一瞬の攻防を見て相手が只者でないことを悟る。
「分かっている。シャマル、主を連れて下がれ。ザフィーラ、護衛を頼む。ヴィータ…我ら二人で片付けるぞ」
「シグナム、騎士甲冑もない状態なのよ?もし無理だと思ったら…」
金髪の女性、シャマルの言葉にシグナムも頷く。
「分かっている。無理と分かれば引く。主を頼む」
「戦闘中におしゃべりとは余裕だな」
(早い!!)
今度は後ろに回りこまれる。体を捻り直撃をそらすがわずかに避けきれず首に傷がつき、一筋の血が流れる。
「グラーフアイゼン!!」
『Jawohl』
ヴィータはその体に似合わぬハンマーを振りかぶり床へと叩きつける。
爆発音が響き渡り床が衝撃で沈没する。
「大振りすぎるな。奇襲にしては温い。30点だ」
しかし彼は止まらない。叩きつけたはずのグラーフアイゼンの上に乗り余裕綽々で言葉を告げる。
「ってめぇ!!」
「騒ぐな賊が。ここは狭い。表に出ろ…殺してやるからかかって来い」
一切の感情を排除した声。先ほどまでの怒気が嘘のように消え、今はただ氷よりもなお冷たい気配が漂っている。
彼もまた相手が只者ではないと悟り、頭を冷静にしたらしい。猛る怒りをおさえつけ、状況を観察している。
「言ってくれるな、畜生風情が……!!」
「その『風情』にやられる貴様らは畜生以下だな」
「ほざけ!レヴァンティン!」
『Ja wohl!!』
「いくぞグラーフアイゼン!!」
『Explosion!』
瞬間、グラーフアイゼンのカートリッジがロードされ、薬莢が排莢される。
「そこをどけ!賊どもが!!!」
「うるさいゆーとるやろが!!!!!!!!!!!!」
「大体なぁ、にいちゃんは夜おそくおきとるんはよくない言いながらやな、自分は起きとるってどういうことや」
「こう見えてもあたしもな、あんまりうるさくいうの好きやないんやよ、でもな、夜にどんちゃかどんちゃかやられたらどう思う?寝よう寝よう思うても寝られへんやん。近所の皆さんにも迷惑やろ!?」
「にいちゃんはご近所さんに顔が効くからな、そら許してもらえるかもしれん、でもな、それに甘えるのはちょおちがうんやないかと思うんよ、甘えと寛容は違うんやで」
「いや、はやて、あのな…」
「口答え禁止!!」
「…はい」
「挙句の果てには何?友達をこんな仰山連れ込んであたしの部屋に大穴あけるなんて何考えとるんや。ええか、修理するのもただやないんやで。そらおじさんがお父さんとお母さんの遺産管理しとるしこれぐらいは何てことない。でもな、お金は無駄遣いしたらあっちゅうまにきえていってしまうんやで」
「にいちゃん!!きいとるん!!」
「はい、よーく聞いております」
「ええか、反省したな、反省したら、まずこの大穴何とかせなな、ほらそこの人らも手伝って」
てきぱきと開いた穴を修繕しだす、彼らの背中には哀愁が漂っていた。
「そんで何?この人ら。にいちゃんの知り合いか?」
一頻り片づけを終えた守護騎士たちはいまさらながらの問いに答える。
「私たちは・・・」
「不振人物だ。はやて、即刻追い出せ」
あっさりといわれた。
「違います!私たちは闇の書の主、その守護騎士です!」
あわててシャマルが訂正をするが彼の目は冷たいままだった。
「ふん、大方遺産か何かを目当てにはやてに取り入ろうとしているのだろう。百年早いぞ」
「にいちゃん、話が進まんよ、とりあえずこの人らの事情を聞こうや?」
「…ふん」
そして彼女達は聞いた。闇の書のこと、その主のこと、魔法のこと、そして……蒐集のことを。
「我らヴォルケンリッターは主の手足となり闇の書の蒐集をする事が目的です」
「…はやて、やはりこいつらは危険だ。即刻追い出せ」
「貴様!」
追い出せという言葉にシグナムが強く反発する。
「はやてがそんなことを望むはずがない。誰かに迷惑をかけるぐらいなら自分が犠牲になることを選ぶ。はやてはそういう奴だ。そんな優しいはやてに蒐集をさせるよう命令しろ?ふざけるのも大概にしろ」
しかし、彼も引かない。彼ははやてにそんなことは似合うに会わない以前にできるはずがないと知っている。
「…なんかよお分からんけど、とりあえず分かった事があるわ」
そんな二人を尻目にはやては何か納得したように告げる。
「あたしが闇の書の現マスターとしてみんなの面倒みなあかんゆうことや、蒐集云々はよくわからんもん」
「…やれやれ、やっぱりか…」
この日、八神家に家族が増えた。
やっと登場しました彼らヴォルケンリッター。まぁ今回は顔みせです。しばらくは日常編でもやってみようと思います。約半年の空きがあるので何話かそういう話を挟んでから本編突入です。
出して欲しいキャラやら何やらがあったらどうぞ。気が乗れば書くかもしれません。多分書きません。