アルフとともに味方であるユーノですらトレインの変化に驚いていた。「あ、あんた変化魔法を使えたのかい?」(いや彼が魔力を行使した感じはなかった。)「別に魔法を使ったわけじゃねえよ。自分の本当の姿をイメージしただけだぜ?」「本当の姿?」アルフは目の前に相手に警戒しつつ聞き返す。先ほどの少年の姿でも感じていた威圧感がさらに大きくなっていた。そう、身震いを起こすほど。「ま、いろいろと説明してやりてーがこの状態はそんなに長いこといられねえから手短に話すと俺はガキじゃないってことだ。」そしてハーディスに銃弾をリロードし右手で構えた。その様子をみてアルフもすぐさま構えをとった。「ふん!!あんたがガキじゃなかったからと言ってなにか変るのかい?魔法を使えないんじゃさっきと変わらない…よっ!!!!」そう言うと先ほどのように一気にトレインとの距離を詰めた。アルフは先ほどのような小細工をしてこないか警戒しつつ攻撃を加えた。しかし、トレインの反応速度は格段に上がっていた。横っ飛びでその場を離れるとアルフとの距離をとらずそのまま攻勢に出た。「おらよ!!!」アルフの横に回り込んだトレインはアルフの腹部に蹴りを打ち込むが「甘いよ!!」アルフの反応もなかなかでとっさに腕でガードしていた。しかしそれでも先ほどとは格段に違うトレインの動きに驚いているようだった。先ほどまでのトレインは完全に頭の中ではかわしているつもりでも体がついてこないため回避、攻撃がイメージとは程遠いものだった。しかし全盛期の体になったことでイメージ通りの動きが可能となったのだ。(ちっ、さっきとは段違いの動きじゃないか。さっきのガキの状態でも厄介な相手だったのに。)アルフは目の前の相手が魔力を使わない初めての強敵であることを認識せざるを得なかった。自分にはない戦法、あとは圧倒的に自分以上に戦いなれていること。フェイトの使い魔であることに誇りをもっているアルフにとって魔力を使わない相手に負けることは許されないことだった。アルフが憤りを感じている中ユーノも呆然とその戦いぶりを見ていた。(只者ではないとは分かっていたけどこれほどすごいなんて。)ユーノもトレインの戦いぶりには脱帽するしかなった。身体強化をせずにあそこまで反応、動きは常人では到底できないものだ。おそらく純粋な身体能力では自分やなのは、あの漆黒の少女も足元にも及ばないだろう。それに彼はあの姿が本当の姿と言っていたが容姿から判断するに彼は20代半ばの人間なのだろう。(魔法でなければいったいどうやってあの姿に?)アルフ、ユーノが思考を続けているなかトレインは相手をどうやって無力化する算段を付けていた。身体が元に戻ったことで圧倒的に有利になったことには間違いないが相手を傷つけずに倒すにはなかなか骨がおりそうなのであった。(あのアルフとかいうやつは単純だけどタフだし説得なんてまず無理だろうしな。)麻酔弾でも一発撃ち込むくらいしか方法がないかと考えているとふときがついたことがあった。外灯がないにしてはあたりが明るいことだった。もしやと思い振り向くと(満月か。)ふだんより大きめに見える満月が空に輝いていた。(ならこいつを十分に利用させてもらいますか。)トレインはその場から移動すると同時にユーノに呼びかけた。「ユーノこっちにこい!!」「え!?」「いいから早く!!!」よくわからないがトレインの指示に従うことにした。突然動きだしたトレインに反応するようにアルフも追いかけ始める。「いまさら逃げるつもりかい?逃がさないよ!!!」ある程度走り木がまんべんなく生えている場所になるとトレインは立ち止まり木に登り始めた。「何を考えているんですか?」「なーに、見てればわかるぜ。」そしてある程度高さにある枝の上にたってアルフがやってくるのを待った。すると地上にトレインを探すアルフの姿があった。それを見たトレインはアルフと月の位置を確認して上空に飛んだ。そして一発の銃弾をアルフの足もとに打ち込んだ。ガンッ!!「!?そこかい!!!」アルフの位置からだとつきが逆行となり姿を確認しずらいがシルエットはしっかりと捉えていた。「はん、あいかわらず目くらましをする算段かい?芸がないねぇ。」しかしその言葉にトレインは不敵な笑みを浮かべる。すぐさまトレインに攻撃をしかけようとしたアルフだったがガンッ!!!トレインが一発の銃弾を撃ちはなった。と同時にギンッ!!!金属同士がぶつかり合うような金属音が聞こえた。その瞬間アルフの周辺は煙に包まれた。「こ、こいつは!?」すぐさま動き出そうとするがアルフの体は重かった。「な、なんでだい。か、からだが重いよ。」体が重いのだがどこか気持のいい感覚。満腹で寝て視界そうになるような感覚であった。(ま、まさか!?)「こんな方法使うの趣味じゃねーんだけどな。ワリーけど少し寝ててくれや。」「く、くそっ!!こんな方法でやられるとは……ね。」その一言を最後にアルフは意識を手放し眠りについた。トレインの近くで戦いを見ていたユーノはトレインの戦いぶりに感心しきりだった。一発目の銃弾を撃ったあとトレインが爆弾のようなものをアルフに向かって放り投げたがアルフはそれに気づくことがなかった。それはトレインのシルエットにかぶるようにトレインが絶妙なタイミング強さで投げ込みぎりぎりのタイミングで催眠弾が爆発するように銃弾をうちこんだからである。あらためてユーノはトレインの強さを認識することになった。魔力を使わない人間がここまで戦えるとはユーノからすれば非常識極まりないことだった。またユーノは一つのことにうすうす気が付いていた。トレインには魔法資質がないというわけでないこと、ただでさえ高い戦闘能力が魔力の行使をできるようになればおそらく管理局の中でも指折りの使い手になれることを。そんなことは露知らずトレインはアルフが眠りについたのを確認するとアルフを抱きあげた。気が抜けたせいかオオカミの形態ではヒト型に戻り気持ちよさそうにいびきをかきながら眠りについていた。「おいユーノ、なのはたちのとこまで運んでくれや?」「いいですけど彼女は置いて行ったほうがいいのでは?」「しばらくは起きねーから大丈夫だろう。それより放っておいて後で不意打ちでもされたほうが厄介だ。」「はあ、わかりました。」ユーノは魔法陣を展開して移動魔法でトレインと一緒になのはたちのもとに向かった。なのはとフェイトの戦いは互いの砲撃の打ち合いになっていた。「レイジングハート、お願い!!」“Yes Master”その瞬間なのはの砲撃の威力が高まりフェイトの砲撃を押し切り始めた。「す、すごい。なのは強い!!」ユーノは若干興奮気味になっていたがトレインは冷静にそのようすを見ていた。なのはのピンク色の砲撃がフェイトの砲撃を完全に押し切った。撃ち切ったなのはは息遣いを少し荒くしつつその場にたたずんでいた。しかしトレインの眼はフェイトが回避していたのを捉えていた。「バカ!!油断するな、かわしてるぞ!!!」トレインの一言に反応するなのはだったがすでに遅かった。フェイトは魔力でできた刃を振りかぶりなのはの首筋にあてていた。「あっ!?」茫然自失といった感じで動けずにいるなのは。ユーノも呆然としていた。するとレイジングハートが反応した。“Put out”「レイジンハート、なにを!?」ジュエルシードの一つをフェイトのほうに吐き出される。「きっと、主人思いの、良い子なんだ」フェイトは吐き出されたジュエルシードを受け取ると地上に降り立った。そして背後にいるトレインたちに目をやるとそこにいたのは先ほど少年ではなく自分よりも成熟した青年だった。「やっぱりおめーはつえーな。」層いながらフェイトの頭に手をやりなでるように動かした。フェイトは戸惑いつつも聞き返した。「あ、あなたは?」トレインは自身の姿を改めて見直すと「あ、ワリーワリーこの姿は初めてだったよな?」ニカッと笑いつつ再びしゃべりだす。「一応これが俺の本当の姿なんだわ、よくわからねえけどガキの体になっちまってな。」「え?」驚きを隠せずにいるフェイトの後ろに同じく驚いたようなかおで降り立つなのはがいた。「と、トレイン君?」「おう、また負けちまったみたいだな。」「う、うん。それもそうだけどどうして大きくなってるの?」「訓練の賜物ってやつだ。」「あの~それだけじゃよくわからないのですが?」戦いの後にもかかわらずゆる~い空気が流れるなかフェイトの目にはいったものがあった。トレインにいわゆるお姫様だっこという形で抱きかかえられているアルフであった。「アルフ!!」一転緊迫した表情になるフェイトだったがトレインは微笑みつつ答えた。「心配すんな、催眠ガスで眠らせただけだ。殺さずに相手を制するの掃除屋の本分だからな。」そういうとフェイトの前にアルフを下ろした。フェイトは笑顔を浮かべ眠っていることを確認すると安堵の表情を浮かべた。「よかった。」「どうすんだ、そいつはしばらく目を覚まさねえぞ。お前じゃ運ぶのはつらいだろ?」「ご心配なく、大丈夫ですから。」そう言うとフェイトは多少つらそうにしながらもアルフを抱えながら空中に移動した。「この子を傷つけないでくれてありがとうございます。」「別に感謝されるようなことじゃねーよ。」「あとできれば、私たちの前にもう現れないでください。もし次があったら、今度はとめられないかもしれない」層冷たく言い放つとなのはが気丈にに問いただした。「名前――――あなた達の名前は?」「お前がフェイト、その女がアルフ。だろ?」「ええ、私の名前はフェイト・テスタロッサ。あなたは………。」なのは、そしてトレインに視線を動かし何かを聞こうとしていたがそのまま飛び去ってしまった。「あの、私は――――」なのはがいいかけるが少女はすでにいなくなっていた。少しの間フェイトの向かった先を見ていたなのはたちだが突然それは起きた「ぐっ!?」「と、トレイン君?」いきなりトレインの体が光り出しトレイン自身が苦しみ出したのだ。心配し駆け寄るなのはだがトレインがそれを手で制した。「し、心配すんな。元に戻るだけだ…。」「も、元にっていったい?きゃっ!!!!」あたりが光に包まれるとそこにいたのは青年の姿でなくなのはがよく知る少年の姿だった。「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、やっぱり5分ちょっとが限界か。」「大丈夫かい?」ユーノが駆け寄りトレインの様子を見る。ひどく疲労した様子で息も荒い。しばらくの間うずくまったままだったが「トレイン君?」息が少し整ったところで立ち上がりトレインは説明をすることにした。「ナノマシン?」「ああ、予測の範疇でしかないし専門家でもない俺じゃ詳しいことは分からねえけど多分な。」トレインは自身の体の変化はナノマシンと言われるものが原因であると説明した。かつてどこかの馬鹿にナノマシンを撃ち込まれたこともあり同じような変化をしたことがあることも経緯も話した。「じゃ、じゃあトレイン君は…じゃなかったトレインさんはなのはたちよりも…。」「年上も年上、お前んとこじゃ士郎や桃子が一番年が近いだろうな。」「ちなみにいくつだったんですか?」ユーノが好奇心から質問続ける。「25だな。」「「………。」」二人は驚いていたがこれでトレインの戦いぶりにも少しは納得できた。「ガキの体でも戦えるんだがどうにも体がついていかなくてな。試しに俺の元の姿をイメージしてみたらうまくいったわけだ。」「その服とかはどうして?」「あー、たぶんナノマシンが変化したんじゃねえのか?さっきも言ったろ俺も原理までよくわかってねーんだよ。」トレイン自身も驚いている部分があった。以前から訓練と称して何度かトランス!?を繰り返していたが以前は服装までは変化しなかったにもかかわらず今回は服装までも自身がイメージしたものに変化していた。「と、トレインさん?」「別に呼びにくかったら今までどおりでいいぞ?このことを士郎たちに説明しても面倒なことになりそうだしな。」「わ、わかりました。」「敬語もいらねーよ。」軽くなのはのあたまにチョップをいれつつ笑いながらトレインは言った。それになのはは嬉しそうに笑顔で答えた。「うん!!」こうして温泉旅行で起きたひと騒動は取り合えす終結した。フェイトは自室にもどって白い服の少女、なのはのことを考えていた。自分に懸命に呼びかけていた少女。魔法の才能にあふれ自分と対等の戦いを演じていた。といっても明らかに戦いに向いていなさそうな優しい子だった。でも私は止まることはできない。最後に名前を言いかけていたみたいだがあえて聞こうとは思わなかった。知ってしまえば戸惑いが生まれてしまいそうだったから。しかしフェイトにとって気になることはなのはだけではなかった。「あの人はいったい何者なんだろう?」フェイトはトレインと呼ばれた男のことを考えていた。白い服の少女とは違った力強いまなざしをした少年であり青年でもあった男。ふとアルフのほうに目をやると相変わらず気持ちよさそうに眠りについていた。確認してみてもこれといった外傷は特に見られなかった。言葉通り彼は自分の大切な使い魔を傷つけることなく倒しこちらに引き渡した。どこかひょうひょうとしていてつかみどころのない感じがする人だったが悪い人には思えなかった。敵対しているはずの私にもまぶしいくらいの笑顔を浮かべそしてあたまに残る彼の手の暖かさを思い出していた。(頭をなでてもらうなんていつ以来だろう?)そしてベランダに立ちまちを眺めた。「ジュエルシードを探していればまた会える……会うことになるのかな。」憂いを帯びていた少女の瞳の中にもわずかながら希望、期待に満ちたものが浮かびつつあった。