海鳴市。緑豊かな美しい自然に囲まれた町である。また、緑豊かな山々だけでなく近くには海もあり至れり尽くせりな町なのだ。自然が多くある中にも都市としてもかなり発展していたり温泉、スーパー銭湯が存在したりもする。そんな豊かな町において二台の車が温泉を目指し歩みを進めていた。普段休むことのない翆屋も連休に入り高町家は店をほかの店員にまかせ月村家、なのはの友人を伴って温泉に出かけることにした。家族として旅行に出かけることは久しぶりであったので皆の表情は明るく子どもたちも楽しく会話をしていた。「………。」士郎の運転するワゴン車の中で二列目に座っていたトレインがいつになく静かに窓の外をじっと見ていた。その様子を見て隣に座っていた美由希が心配そうに様子をうかがっていた。その後ろの席ではアリサとすずかが笑顔で話をしていたが隣にいるなのはどこか心ここにあらずというような感じでトレインと同様外を眺めていた。(なのは!!)その姿を見たユーノはすかさず念話でなのはに話しかけた。(なにユーノ君?)念話の中の会話や話しかけさえすれば普段と変わらぬ様子であるが目を離すとどこかうつろ気になっていた。そのことをとがめるようにユーノは言った。(旅行中くらいゆっくりしなきゃ駄目だからね。)(うん、大丈夫だよユーノ君。)ユーノに笑顔を笑顔を浮かべつつ答えるなのは。その様子にとりあえず納得したのかユーノは目線をなのはから外した。しかしなのはの頭の中にはあの少女のことが頭から離れなかった。(あの子は今はどうしているんだろう?)ジュエルシードのこともありいろいろと考えすぎてしまっているなのはだった。少し暗くなってしまいそうになったがユーノの言うとおり旅行中くらい楽しまなければと頭を切り替えアリサたちとの会話に加わる。「それにしても今日はトレインの奴いつになく静かね。」アリサがどこか不満げにつぶやいた。「そうだね。今日はなんか落ち着いてるね。」すずかもアリサに同調しつつトレインに目を向ける。トレインは手に顎をのせながら外の景色を眺めているようだった。その姿をなのはも見て心配になっていた。昨日の様子だけ見れば温泉に行くということを聞いて割と嬉しげにしており楽しみにしていたようだった。それだけに今日のこの様子は違和感があった。そしてなのははトレインに関してもうひとつ気になることがあった。あの日以来トレインが夜どこかに出かけ、帰ってきたときにはへろへろになって帰ってくるようになったのだ。心配になったなのははトレインに問いただすがうまくけむに巻かれてしまいごまかすだけだった。一人でジュエルシードを探しているのではないかとも思ったが彼には魔力を行使するすべがないことや戦っているような形跡がないのでそれ以上追及しなかった。ユーノはトレインの表情を窺うように見ていると急に頭をさげなのはに告げる。(なのは、心配する必要はないよ。トレインは寝ているだけだから。)(え、そうなの?)(うん、おおかた…)なにかを告げようとした瞬間ワゴンが大きく揺れトレインの頭を支えていた手がずれ倒れこむと(ってえぇぇーーーーーー!!!)そのままユーノに倒れこんできた。そして目をこすりながら寝ぼけ気味口を開いた。「ん~、もう着いたのか?」その様子を見て運転する士郎や助手席の桃子を含めてみな安心したようにほっと一息ついた。そして一息おいてアリサが咎めるようにトレインに食ってかかった。「なーに疲れ切った様子で寝てんのよ?まだ温泉についてもいないのよ?」「んなこと言ったってねみぃーんだからしょうがねーだろ。」「あんたはただでさえ気が抜けてるんだからこういうときくらい…。」「あ、アリサちゃん落ち着いて?」あくまでひょうひょうとするトレインに食いつくアリサ。それを必死に止めようとするすずか。その普段と変わらないどこかおかしい日常になのはすこし吹っ切れたのか笑顔を浮かべ笑った。そうこうしているうちに目的地に着き、宿の部屋についた一行はさっそく温泉に入ることにした。「温泉なんて久しぶりだな。」トレインが何気なくつぶやいた。もともとトレインが育った国では湯船につかるような習慣がなかったのと普段はシャワーだけで済ましていた生活が長かったせいか温泉とは無縁だった。一度だけジパングに行った時にものは試しとスヴェンと入ったことくらいだった。「トレイン君は温泉はあまり行かないの?」なのはがトレインに聞いた。なのはとしてみればトレインのことについて詳しいことを何も知らない、というよりトレインがあまりしゃべらないので知りたかったというのがある。家の中ではトレインの過去について問いただすことはタブーになっているようでこういう機会でもない限りチャンスはないとなのはは思っていた。「ん~、まーな。おれんとこはたいていシャワーで済ます程度だったしな。」「へー、そうなんだ。じゃあ…。」と話を続けようとするとアリサのせかす声が響いた。「そこの二人!!なにのんびりしてんのよ?早くしなさいよ。」「アリサちゃん、そんなに急かさなくてもいいと思うよ?」すずかがそう言うが「なーに言ってるのよ。こんな機会は年何回もないんだから時間は有効に使わないと!!」すずかに熱弁をふるうアリサの姿をみてトレインは苦笑しつつなのはの背中を押し「ほれほれ、アリサ様がご立腹だ。いそがねーと?」「って、そんなに押さないでよーーー!!!」そして浴場の入口のところでトレインは恭也とともに男湯へ、なのはたちは女湯のほうへ入って行った。するとトレインはなにか違和感を感じつつ女湯を見ていた。その様子を見ていた恭也がトレインに話しかけた。「どうした?男湯はこっちだぞ。」「いや、そいつはわかってるんだがユーノのやつ…。」「ユーノ?あいつはフェレットだし問題ないだろう?」「いや…まあそうだな。」恭也の言うとおり特に気にする必要はないだろう。奴がムッツリスケベというだけである。とトレインは認識した。ユーノはこのことをネタに今後トレインに脅されることになるとは夢にも思っていない。いざ浴場の中にはいると広々とした空間が広がっていた。「おー、こいつはなかなか解放感があるな。」「なんだ温泉は初めてではないんだろう?」先ほどの会話を聞いていたのか恭也が聞いてきた。「ここまで広いのは初めてだな。おしっ!!」「お、おいまずは体を洗え…」恭也が体を洗うように促す前に駆け足で湯船に飛び込んだ。飛びん込んだあと恭也に連れられ周りにいたお客に謝らさせられた。周囲の客も子供のやったことだからそれほど気にするなとやんわりと叱る程度だった。しかし恭也はトレインを監視するように終始そばで湯船につかっていた。温泉から出た後はトレインは浴衣に着替え一緒に出てきた恭也と別れ施設内を散策することにした。土産物屋でしばらくの間物色していたが手持ちがないことに気がつきしぶしぶ引き払った。施設内をあらかた回ったところで中庭に面した廊下でなのはたちと合流した。「あ、トレイン君。」トレインの姿を見るとすずかが嬉しそうに手をふりつつ呼びかけた。さすがにトレインもここで逃げ出すようなことはせずそのまま三人の所に向かった。「あんた!!いったいどこに行ってたのよ?」開口一番アリサはトレインに突っかかってきた。「ん?建物の中を一通り見てきただけだが。」「えと、今ね卓球をしようかなって話だったんだけどトレイン君もどうかな?」卓球か。いままで娯楽、とりわけスポーツとは無縁なトレインとしては興味はあったので了承しようとしたらそこに大きな女性の声が入り込んできた。「ヘイ!!おチビちゃんたち。」四人が何事かと目線を向けると浴衣を着た女性らしい体つきをした、美人といえるであろう女性がいた。トレインは三人の様子をうかがう限り顔見知りではないことはわかった。かといって自身も見覚えのない相手だった。女性はそのままこちらに近づきなのはの前に立ち顔をなのはに近づけると「ふ~ん君かね、うちの子にアレしてくれちゃってるのは…。」「え?」突然のことで戸惑っているなのはを気にすることもなく値踏みをするように見ていた。「あんま強そうでもないしかしこそうでもないし…。ただのガキんちょに見えるんだけどな~。」(コイツ、もしかすると…。)トレインはこの女性が以前なのはと相対した少女の関係者であること確信した。なのはを性格を考えれば普段の生活で他社とトラブルになることは考えにくい。例外としてはジュエルシードに関することぐらいだ。それにこの女性は血の匂いまではしないまでも戦いに身を置いているものの持っている雰囲気がしていた。なのはの後ろにいる二人に目を向けるとすずかは心配そうにみているが、アリサは爆発寸前の状態だったので助け船を出すことにした。「あー、あんたが誰かしらねーけど俺達これから卓球しに行くからどいてくんねーか?」トレインがなのはと女性の間に立ちそう言い放つと女性は少し驚いた表情をしつつ今度はトレインを見つめた。「君もうちの子にあれしたのかな?」「あれじゃわかんねーし、うちの子ってだれかもしらねーーよっと!!」そういうと女性のおでこにでこピンをかました。「きゃん!?」思わぬ攻撃に後ろにたじろきつつおでこを抑えつつトレインを睨む。(あんま騒ぎには起こしたくねーんだけどな。)そう思いトレインは声は出さず唇だけ動かした。(ここであんたとやる気はねーから引いてくんねーか?)「!?」女性は驚いたような表情をした。トレインのほうは読唇術が通じたことに確信をもちそのまま口を動かした。(そのうちいやでもやりあいそうだしな。理由もねえのに他人と戦う気ねえから)しばらく見つめあっていると女性は突然笑顔を浮かべ「あははははははははっ、ごめんごめん。人違いだったかな?」そう言うとそのまま四人のそばを通り過ぎると(とりあえず今のところはあいさつだけね。)((!?))発せられた念話はトレインにも聞こえていた。なのはとユーノの二人はとまどっていたがトレインは冷静に耳を傾けていた。(忠告しとくよ、こどもはいい子にしておうちで遊んでなさいよ。オイタが過ぎるとがぶっといくよ?)「あ!?」立ち去ろうと歩き出したが突然立ち止まり(そこのボーヤは少しはやるみたいだけど魔法も使えない人間がしゃしゃり出ないほうが身のためだよ?)ウインクをトレインにしつつ立ち去って行った。トレインはその後ろ姿を少し鋭い目線で見つめていた。そしてふとなのはのほうに目をやるととまどいがはっきりと表情に表れていた。一方なのは以外の二人はすずかは心配そうになのはを見て、アリサはあまりにも失礼極まりない女性の行動に腹を立てていた。「いったい何なのよ!!」「落ち着けよアリサ。一応一発かましてやったんだしよ。」「一発ってでこピンじゃない!!!でもまああんたにしてはよくやったわ。」珍しくトレインのことをほめていた。それにトレインは驚きつつも「ほれ、気分を入れ替えるためにも卓球しに行こうぜ?」「うん!!ほら行こうよアリサちゃん、なのはちゃん。」女性用の大浴場にリラックスながら温泉を満喫している一人の女性がいた。しかしただリラックスするだけでなく念話での会話を行っていた。(あー、こちらアルフ。フェイト~?)(うん、どうかしたの?)(さっきフェイトが言っていたやつに会ってきたよ。)(白い服の子と……。)(見たところフェイトの敵じゃないね特に気にしなくても大丈夫だよ。でも…。)(でも?)(片方のぼさぼさ頭のボーヤは実力はどうか知らないけどただの甘やかされて育ったがきんちょとは違うね。)(そう……だね。)(フェイト?)(ううん、なんでもない。それよりいい知らせだよ、次のジュエルシードの位置がだいぶ特定できたよ。)(ほんとかい?さっすが私のご主人さま♪)(じゃあまたあとでおちあおう)(りょーかい)女性ははーっと一息つくと獣らしき耳が飛び出した。「おっと!!」なのはあれからすずか、アリサ、トレインの四人で遊んだりしていたが今日会った女性のことが気になっていた。布団の中に入っても天井を見つめつつ思うのはこの前戦った少女のことばかりだった。(ユーノ君が言っているようにあの女の人もあの子の関係者みたいだし…。)警告ともとれる女性の発言を思い出すとまたため息が出てしまうなのはだった。その様子を見ていたユーノが話しかけてきた。(なのは…)(ユーノ君!!それ以上言ったら怒るよ?)なのはは起き上がりユーノをとがめるように見つめる。(これからは僕一人でやる、これ以上なのはを巻き込めない。とか言うつもりだったでしょ?)(うん…。)(ジュエルシード集め、最初はユーノ君のお手伝いだったけど今はもう違う。今は自分やりたいと思ってやっているから。)なのははうなづくユーノを優しくなでつつ決意を新たにした。最後までジュエルシードを集め、あの子と…ふとなのはあたりを見回すとトレインの蒲団がもぬけの殻になっていることに気がついた。(ユーノ君トレイン君はどうかしたの?)(いや、僕が起きた時にはもういなかったけどトイレにでもいっているのかな?)(どうだろう、最近よく夜に出歩いてみたいだし。)トレインの蒲団を見つめていると二人の表情が急変した。(なのは!!)(わかってるよユーノ君。)二人はすぐさま行動を開始した。一方のトレインは河原でハーディスを構えていた。あの日以来必ず行っている訓練だった。そしてあの日のように光に包まれつつあると自身以外の発光物があることに気がついた。「なんだ?」向こう岸にあるようだがまばゆいばかりの光を放ちながら水面に浮くように存在していた。(こいつはたしかなのは達が探しているジュエルシードとかって言うやつか?)トレイン自身それほどジュエルシードに興味はないが放っておいて以前戦った化け猫のような奴が出てくるの勘弁なので持ち帰ることにした。川の真ん中にあるジュエルシードを手に入れようと川の中に入った。「うわっ!!つめてーな。」これから夏に入ろうとする季節だがまだまだ夜になれば冷え、川の中は一段と冷え切っていた。そしてジュエルシードをその手に握った瞬間「おーっとそこまでだよボーヤ。」「!?」ふと視線を声の方向に向けると漆黒の少女と昼間会った女性が橋の上にトレインを見下ろすように立っていた。「おめーらは……。」いきなりハーディスを構えるようなことはせず相手と相対するトレイン。対する少女たちも特に警戒することもなくただそこに佇んでいた。「私は親切に警告してあげたよね?いい子にしないと…「あいにく俺はいい子とは程遠い存在だからなお仕置き受けてもかわんねーぞ。」トレインは挑発するように女性に言い放った。女性はきょとんと驚いた表情をみせたが一転すぐさま大きく口をあけ笑い始めた。「あははははははははははっ、やっぱりあんたはおもしろいね~けど…。」表情を厳しいものに変え「魔力もろくに扱えない人間がしゃしゃり出るなって言わなかったっけ?」普通の人間ならたじろぐか腰を抜かしてしまいそうな殺気をトレインはもろに受けた。が、あいにくトレインはそれほど脅威を感じるほどのものではなかった。良くも悪くも死と隣り合わせの世界で長い時間を過ごしたトレインにとってまだまだ生易しいくらいだった。トレインと女性が視線を交わしていると沈黙を保っていた少女が口を開いた。「できれば手荒な事はしたくないの。それを私に渡してください。」言葉は命令しているようだが口調でこの少女が他者を傷つけることをそれほど望んでいないことはわかる。トレインは何も言わずに黙ってその言葉を聞いていた。「あんたは魔力もろくに使えないし腰に下げているそいつで戦おうとしても無駄だよ、私やフェイトにとってそいつは脅威にはならない。おとなしく言うことを聞いておいたほうがいいよ。」小馬鹿にしたようにトレインに語りかけてくる女性。さすがにここまで言われてトレインも黙ってはいられない。「おもしれぇ、なら力づくで奪ってみやがれ。」腰に下げたハーディスを抜くと相対する二人も臨戦態勢に入った。しかし構えようとしたフェイトと呼ばれた少女を止めるように女性が前に立った。「フェイト、こんな奴相手にあんたが出る幕はないよ。ここは私がお仕置きしてやるから見てなって。」「へー、あんたが相手してくれんのか?」「アルフ、油断はしないであの子は強いよ。」(あの女はアルフ、あのガキがフェイトだったな。)目の前の相手を警戒しつつトレインは相手の情報を整理していた。「だいじょーぶ、あんながきんちょすぐに片づけてあげるからさぁーーー!!!」「!?」最後まで言い切る前にトレインに向かい拳を放った。トレインはそれをハーディスでガードしたが衝撃まで受け切れず藪の中に飛ばされた。「はっ、口ほどにもないね。」藪飛ばされたトレインの姿を見て勝利を確信したアルフ。しかしすぐさまフェイトが声を張り上げる。「アルフ!!!手の甲!!!」「へ!?」アルフが自身の手の甲に目をやると猫のイラストが描かれた爆弾らしきものが貼り付けられていた。カッ!!!音ともにあたりに閃光がはなたれた。「ちっ!!」アルフは目を隠すように腕を前に組んだ。閃光がなくなったところで辺りを見回すがトレインの姿は視界の中にはなかった。ガンッ!!!するとアルフの足もとに一発の銃弾が撃ち込まれていた。アルフの上空にハーディスを構え不敵に笑うトレインの姿があった。「やってくれるじゃないか!!!」アルフも攻撃を加えようとしたがトレインはそれを許さないように矢次に銃弾を撃ち込んだガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!それをその場から移動することで回避した。そのすきにトレインは着地し態勢を整えた。しかしそこからのアルフの動きはトレインの予想を超える素早いものですでにアルフは自身の目の前に迫ろうとしているところだった。「もらったよ!!!」「くっ!?」ダンッ!!!アルフがおおきくふりかぶり拳をトレインのボディーに打ち込んだ。そして先ほどのように大きく飛ばされ気に背中をぶつけた。拳にあった手ごたえから確実に体に充てたと確信しているアルフは今度こそはという感じでトレインの見た。しかし「ちくしょうなかなかいてぇじゃねーか。」「「なっ!?」」これには二人とも驚きを隠せないでいた。確実にヒットしていた思っていた攻撃を受けてなお立ち上がる目の前の相手に戸惑いがあるのだろう。トレインはおなかのあたりをさすりながらダメージを確認していた。(あばらはいってねぇしまだ動けるか。しかし当たる直前にバックステップしなかったらやばかったな。)そうトレインはヒット直前に後ろに跳びダメージを最小限に抑えたのだ。(この衝撃。あのデブの道士と張り手と同じくらいかそれ以上の威力か。)その一連の動きを見ていたフェイトは改めて実感していた。(この子は戦いなれている。)魔力が使えないことは大きなハンデとなっていることは間違いないがあの子は人の隙を突く、作ることに長けている。なにより戦いの場において冷静な精神を保っている。もしこれで彼が魔力を使えるような人間であれば二人ともやられていたかもしれないと感じていた。「ははは、あんたは化け物かい?バリアジャケットもなしに私の攻撃を受けて立ってられるなんて。」「あん?別にあんたの動きは速いは速いが動きが単純だから読みやすいんだよ。」「なんだって?」「それに魔力とかいうのがないからって俺をなめすぎだぜ?すぐにかたづけられるんじゃなかったのか?」実際アルフの動きは通常では考えられないほど速い。しかし動きが単調で読みやすいというのがトレインの印象だった。動きだけなら恭也のほうがよほど洗練されていた。とはいっても相手をできるだけ傷つけずに無力化するにはかなり厳しい状況だった。(この体じゃな~、仕方ねー疲れるが奥の手といきますか!!)と再び相対しようとしたところで二つの気配が感じられた。トレイン以外の二人も感ずいたようでフェイトも武器を構える。「遅かったななのは?」「トレイン君?」「トレイン?もしかして君一人で戦っていたのか?」二人はトレインのところどころ擦り切れている姿をみて心配そうに駆け寄った。「なにかすり傷だよ。それよりこいつを。」手を差し出すとジュエルシードが輝いていた。「「ジュエルシード!?」」それを手に出すと黙ってみていたフェイト達も動き出す。「それをこちらに渡してください。」「そっちのおちびちゃんたちあんたたちにも警告したろ?言うことを聞けないならそいつと一緒にまとめてがぶっといくよ?」その姿をみたなのはも身構える。「なのは、やっぱり彼女はあの子の使い魔だったんだ。」「「使い魔?」」聞いたことのない言葉になのはとトレインが二人同時に聞き返す。それにアルフが答えた。「そうさ、私はフェイトに生み出された魔法生物。主人の魔力で生きる代わりに持っている力の限り主人を守るのさ!!!」そう言うと女性の姿から一遍赤いオオカミの姿に変わった。「なっ!?犬っころだったのか?」「犬じゃない!!!私は狼だ!!!」トレインの発言が許せなったのかすぐさま突っ込みを入れた。そして大きく跳躍しなのはたちに襲いかかった。しかしその攻撃はなのはたちに襲いかかることなく見えない壁に邪魔されていた。「やらせはしない!!!」「はん、やってみなよ。」ユーノはシールドを展開するとそのまま魔法陣を展開し始めた。「なのは、君は彼女のことを頼む!!」そう言うとアルフとユーノの姿が消えた。「ユーノ君?」「いい使い魔をもっているね。」フェイトがなのはに語りかけるが使い魔という言葉きにいらなかったのかなのはは言い返した。「ユーノ君は使い魔じゃないよ!!お友達だよ。」その言葉を聞いて少し怒気を含めた表情に変わった。その姿を見てなのはも本格的に構えるがあることに気がついた。「トレイン君は?」「なんで俺までこっちに移動してんだ?」「僕のそばにいたからつい。」そうトレインはユーノと一緒に転移していたのだった。「くそっ!!すばしっこい連中だね。」二人は攻撃を加えることはせずにひたすら逃げ回っていた。「このままじゃ埒が明かねえな。」「といっても僕は攻撃魔法はそれほど得意じゃないし…。」つまり二人とも決め手に欠けていたのだ。トレインは悩むそぶりをしつつ立ち上がった。「詳しい説明は後にする。とりあえずあいつをなんとかするわ。」「なんとかって、無茶だ!!魔法も使えない君が…。」「まーみとけってここ最近夜な夜な抜け出していた理由がわかるからよ。」そう言うとアルフのほうへ出て行った。「へーようやく観念したのかい?」「いや、あんたを倒すつもりだぜ?」不敵な笑みを浮かべるトレインだった。その眼からは負けることなどみじんにも考えていない自身に満ちた目だった。「その根拠のない自信と度胸には感心するね。けどもう手加減はしないよ。」「それはこっちも一緒だ。」そしてハーディスを構え目を閉じるとまばゆいばかりの光が当たりを包んだ。「くそっ!!!また眼裏ましかい?」その声に反応して少し低い声が発せられた。「そいつは違うな。戦闘準備をしただけだ。」アルフの目の前にいたのは先ほどまでそこにいた少年ではなく「待たせたな。不吉を届けに来たぜ。」「あ、あんたは?」「き、きみは?いえ、あなたは?」そこに立っているのは長いロングコートをまとい不敵な笑みを浮かべるかつてのブラックキャットの姿だった。