コンコンコン「おーい、なのはー飯の時間だぞー。」トレインはなのはを起こすべく部屋の前でなのはに呼び掛けていたが反応がない。これではらちが明かないので中に入ることにした。「ったく。せっかくの飯が冷めちまうぞっと。」中に入ると布団を抱きしめたまま気持ちよさそうに寝ている。近くに目覚ましがあったが寝ぼけながら止めたのかスイッチがオフになっていた。「ほれ、おきろって。」「う~ん、んにゃもう少しだけ…。」「そんなことしてたら飯が食えないだろうが。」「ん~ん。」なのは首を振りながらもくずるようにして起きる気配がない。するとトレインは何かひらめいたのか企むような笑みをうかべて懐から何かをだした。そして「んにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!」なのはの絶叫が高町家にこだました。「うー、ひどい目にあったよ~。」なのはは恨めしそうにトレインを見るが当の本人は気にすることもなく朝食に夢中であった。「ははは、でも恭ちゃんでも起こすのに手こずるのにどうやって起こしたの?」「んぐんぐ、企業秘密ということで頼むわ。」朝食を食べながらうれしそうにそう答えた。「これから毎日なのはのことを起こしてもらおうかしら?」「にゃ!?」「おう、俺は別にかまわないけどな。」そういうとなのは必死な顔で「それだけはかんべんしてぇーーー!!!」いったいどんな起こし方をしたのか?朝食を終え、ひと段落すると大学生の恭也、高校生の美由希、小学生のなのははそれぞれ学校に行った。もちろんトレインは学校に行くのでもなく高町家に残っていた。今は朝食の片付けを手伝っているところであった。「ほい、これで最後だぜ。」「はい、ありがとう。でもトレイン君も学校のことを考えないといけないわね。」「は?学校?」一応断わっておくがこんななりをトレインは25歳でありいまさらちびたちに交じって小学校に行く気などさらさらない。それに学校に行くにも自分の戸籍などここには存在してないのだから。するとふと新聞が目に入った。普段は新聞など目にすることのないトレインだったが先日の戦いのことが気になって何んとなく見てみた。がしかし星の使徒に関する記事など微塵も載っていなかった。むしろ自分が見たことのきいたことのない国、地方のことばかり載っていた。(どういうことだ?俺だってまったくというほどニュースは見てねぇわけでもないんだが?)なにかいやな予感のしたトレインは桃子に「なあ、古い新聞ってまだ残ってるか?」「新聞?えーと玄関のすぐそばにある収納スペースにあるはずだけど…。」それだけ聞くとトレインは大急ぎで玄関に向かい新聞を見開いっていった。「ない、そんなバカな。」そう、ひと月近く前のの新聞を開いてみても星の使徒に関する記事がまったくというほど載っていないのである。そこに載っているのは聞き覚えのないニュースに関する記事ばかりであった。「こいつはいったいどういうことなんだ?」トレインはとりあえず新聞を片づけ始めた。(情報をクロノスが規制しようにしてもリアルタイムであの惨状が流れていたんだそんなことは不可能だ。)現にトレイン自身ラジオでその情報を聞いていたのだ。それにスヴェンの持っていた新聞にそのことに関する記事が載っていた。「こりゃ、いったん情報を集めたほうがいいかもな。」今日一日、外に出てみて状況確認を踏まえた情報を集めようとトレインは考えた。そしてリビングに戻ると桃子が待ち構えていた。「トレイン君?」「なんだ?」「これから時間あるかしら?」桃子はあふれんばかりの笑顔で聞いてきた。「特に、急用ってものはないけど。それが?」「うん、なら今日はあなたの生活品を買いに行きましょう?」「へ?」「少し待っててね私の準備するから。」「って待ってくれよ?」あまりの急展開にトレインもおされぎみだった。なんで俺の生活必需品を?というより今日は情報収集するんだろう俺は?といろいろと疑問が浮かんでいたが戸惑っているトレインをみて桃子は急に沈んだような表情になる。「私と買い物に行くのがいやなのかしら?」「いや、そういうわけではないんだが…。」桃子はそのままたたみかけるように眼尻に涙を浮かべた。「やっぱりいやなのね?」「そ、そうじゃねえって。わかった一緒に買い物に行きます。行かせてください。」すると一変していい笑顔で「それじゃあ、トレイン君も準備しておいてね?」そしてそのまま軽やかな足取りで桃子はどこかに行ってしまった。「…桃子もなかなかしたたかだな。女ってコエ-わ。」子どもの姿になろうと女の涙には弱いトレインだった。身支度を済ませたトレインと桃子は近くにあるデパートに向かうことにした。家を出るさい留守番を任された士郎の恨めしそうな顔が妙に気になったが。特に気にする必要もないのだがトレインは居心地が悪いのかすこし桃子との距離をあけて歩いていた。ふと疑問に思っていたことを口に出してみた。「なあ?」「なにかしらトレイン君?」「桃子っていくつなんだ?」ピシッ!!!一瞬だが空気が凍った。桃子も笑顔なのだが青筋が浮かんでいるのは気のせいではないだろう。「どういうことかしら?」桃子は努めて冷静に返した。トレインは特に気にするでもなく平然と会話を続けた。「いや、だって恭也が長男で今19になるってことだろ?俺が思ってる年齢で考えると変だからよ。」「ちなみにトレイン君は幾つだと思うの?」「う~ん、25,6かと思っていたんだが。」トレインは率直な意見としてそう述べていた。(リンスと同い年って感じじゃないしな。タイチョーと同じくらいだと思ったんだが)すると桃子はとたんに機嫌がよくなり「トレイン君、今日は何でも買ってあげるわね♪」そしてトレインの手をとりスキップを始めた。ここで下手な年齢を答えていたらトレインは25で生涯を閉じていたかもしれない。その後デパートについた二人は必要最低限の日用品と普段着、寝巻き下着を何着か購入し休憩を兼ねた昼食をとっていた。トレインは少し疲れ気味であった。(お、おれは着せかえ人形じゃねえんだけどな…。)恭也以来となる男の子の衣服選びとなって桃子も少し浮かれ気味になって手当たりしだいトレインに着せていたのだ。桃子のほうはご満悦でメニューを眺めていた。「私は日替わりパスタと紅茶のセットで、トレイン君は?」「おれは白身魚のムニエルと飲みもんはミルクで。」「かしこまりました。」ウエイトレスの女性は軽く会釈しメニューを持って行った。「それにしても何から何まで悪いな。」「いいのよ気にしないで。困った時はお互いさまよ。それよりね?」「ん?どうしたんだ?」桃子は意を決したように述べた。「トレイン君、うちに養子にはいらないかしら?」「へ!?」あまりにも想定できなかったことにトレインはあっけにとられていた。「聞いたところだとあなたには両親もいないみたいだし、私としてはこのままあなたを放っておくことなんかできないわ。」「ちょ、ちょっと待ってくれよ。」あわててトレインも止めに入る。ここにきて自分の生い立ちを正直に話したことを後悔した。嘘でもいいから両親が健在であるといっておけばこんな面倒なことにはならなかっただろうと思った。といっても高町家の人の良さは変わらないので似たり寄ったりの展開にはなったであろうが。「急な話でトレイン君も戸惑っていると思うけど考えておいてもらえないかしら?」「まあ…、考えるだけならな。」とトレインは適当な返事をしておいた。お昼も過ぎようやく買い物を終えて自宅に戻るとなのはも帰宅していた。「あ、トレイン君。」「よう、もう学校は終わったのか?」「うん、これから友達のうちに遊びに行くんだけど…。」なのはが語尾を小さくし様子を窺うようにトレインをみてきた。「なんか俺に用事でもあんのか?」「うん、友達が昨日の晩お父さんにおぶられてるトレイン君をみたみたいなの。」「それで?」「友達がトレイン君も連れてきてって。」「………まあ、暇だからいいが。」「ほんと!?じゃあ早く行こう!!!」そういうとなのはトレインの手を取り走り出した。「お、おいそんなに急がなくてもいいだろうが。」(こういうところをみるとただのガキだよな。)トレインにはいまだにこの少女が昨日の話のような戦いを演じていることが信じられなかった。がこのあとトレインはその考えを見事に打ち砕かれることになる。かつての仲間をほうふつとさせる少女との出会いとともに。