なのはは目の前の光景に圧倒されていた。「す、すごい。」「う~んいい食べっぷりだ。」「トレイン君。おいしいかしら?」「おう、ヘタな高級レストランより全然イケるぜ桃子さん。」桃子は満足げににっこりと笑いトレインが完食した食器を片づけていった。トレインも十分食べ満足したのかおなかを二、三度たたき椅子の背もたれによりかかった。「はー、食った食った。それにしてもサンキューなのは。」「ううん、気にしないでトレイン君。」「そうだぞ、困った時はおたがいさまさ。」あのあと空腹の余り倒れたトレインをなのは一人で運ぶのは無理と判断しユーノに見張ってもらい、自宅まで戻り家族に子供が倒れていると報告し今に至っている。ちなみに恭也、美由希は帰宅しておらず士郎がトレインをおぶって高町家まで運んだ。「はい、確か牛乳でよかったのよね?」「おう、ちっと背を伸ばさないといけないからな。」そして牛乳が入ったカップに手を伸ばし飲み始めた。「それにしてもトレイン君、あなたのご家族は?」「ん?家族か……。」トレインは一瞬考え込んでしまった。彼の家族は自信が幼少のころ目の前で殺され、その殺した相手は自信の第二の親、もしくは生きる術を叩き込んだ師ともいえた。この家族はいたって普通の幸せそのもの家族だ。一人は自分と同じ匂いを感じる者もいるが、この家族に自分の複雑な人生を語るにはどうしても戸惑われた。それを空気で察した士郎が「無理に言う必要は「いや、ここまで面倒かけちまったんだ話させてもらうよ。」一息おきトレインは話し始めた。「おれの両親はガキの頃に死んだんだ。」「「えっ!?」」なのはと桃子は驚いていたが士郎は特に反応を示すことなく黙って聞いていた。「親が何をしていたか俺は知らなかったし、殺された理由もよくわからねぇ。まあ俺はこうして生きてるわけだしな特に気にする必要もないぜ。」あっけらかんとできるだけ自然に話したつもりだったがやはり空気は重かった。トレインにはこの重苦しい空気は拷問の様に思えた。「あーーーー、あんたらがそこまで気にするようなことじゃないだろ。はい!!!この話はここまで。」無理やり大声をあげその場の空気を振り払うかのようにした。しかし少し気まずい雰囲気を出しているなのは、桃子に対して士郎は厳しいまなざしでトレインを見ていた。(このおっちゃんはもしかしたら。)只者ではない雰囲気を感じていたがやはり間違ってはいなかったようだ。少し落ちつたなのはがトレインに話しかけた。「トレイン君、あのね…。」話を切り出そうとしたが、「済まない、なのは。ちょっとトレイン君と二人で話をしたいんだが?」「え!?」「すぐ、すませるから大丈夫さ。トレイン君もいいかな?」「ああ。」おそらく拒否権はないのだろう。目の前の男も自分が普通の人間ではないことくらいとっくに気づいているのだろう。「じゃあこっちに来てくれないかな?桃子少し道場のほうに行ってくる。」「はい、わかりました。」そしてトレインも士郎の後を付いて行きながら道場に向かった。「こんなところですまないね。」連れてこられた道場はジパングの文化らしいつくりをしていた。そして中央へ来たところで士郎は立ち止まり話し始めた。「君は…。」「おそらくあんたが思っている存在とかんがえて間違いないと思うぜ。」「そうか。」「あんたも似たようなくちだろ?あんたからは薄れてはいるが独特のにおいがするしな。」士郎はなのはに呼び出されトレインをを助けた時に拾った彼の鞄の中をのぞいていた。そこには到底娘と同世代の子どもがもつようなものではなくひどくなつかしいにおいをさせる銃弾の数々だった。「君は暗殺者かい?」「それは元だな。今は掃除屋だ。」「掃除屋?」「知らないのかよあんた?仮にもこっちの世界にもいた人間だろ?」「聞き覚えはないな。」「簡単に言えば賞金稼ぎさ。懸賞金のかかった犯罪者連中を捕まえて生活の足しにする。それが俺の生活さ。」「それが本当だとしても君が俺の家族に危害を及ぼさないという保障にはならないがね。」その言葉を発した瞬間士郎はトレインに対して明確な殺気を飛ばしてきた。(ふ~ん、確かにこっちの世界に至ってのは間違いなさそうだな。これだけの殺気を飛ばせる人間はそうはいねぇ。)殺気を一身に受けているトレインだったがどこ吹く風と言わんばかりに話し始めた。「安心しな俺は仕掛けてこないかぎりターゲットでもない人間を襲うつもりはない、女、子どもに手をかけんのは俺の趣味にあわねぇ。それにむやみやたらとぶっ殺すのは俺の主義に反するしな。」しばらく二人は無言で見つめあったままだったがふと士郎は笑みを浮かべ。「わかった君の言葉を信じよう。」「そうしてくれ。おれもあんたらに恩を仇で返すようなまねは絶対にしないつもりだ。」「こんなところで話してすまなかったな。」「いや、なのはのようなガキに聞かせるようなもんじゃねえしな。仕方ないさ。」その一言を切った士郎は顔をしかめてたづねてきた。「うむ、それなんだが。君もみたところなのはとそれほど変わらんだろう?」「あ!?」トレインは自信の姿が小さくなっていることを完全に頭から消していた。自身は25にもなるような男なのだからなのはの様な少女はガキに見えるがそれは中身だけであって外見は10歳前後のこどもなのである。「まあ、なんというか俺から見れば同じくらいの連中はガキっぽいというか…。」本当のことを話せばよかったのだがこれ以上ややこしくなるのは勘弁願いたいので自分の姿については黙っていることにした。「君から見ればそうかもしれんな。おっとずいぶんと話し込んでしまったな。なのはのほうも話があるみたいだから行っていいぞ。」「んじゃこれで。」道場から出ようとしたその瞬間「トレイン君良ければ明日の朝6時くらいにここに来てくれないか?」「なんでまた?」「早朝に俺の息子と娘がここで剣術の稽古をしていてな良ければ君も参加してみないかなと思ったんだが。」正直朝早く起きてまで稽古をしてみたいとは思わなかったが士郎の言っている剣術には興味があった。「気が向いたら行かせてもらいますわ。」「あ、あと最後に。」士郎は笑顔でトレインに近づき肩をつかむと「なのはに手を出したら………どうなるか分かっているね?」「は?」「返事は?」「は、はい。」今まで士郎が放っていた殺気の中でもぴか一なものがトレインに向かって放たれていた。あれから士郎から解放されたトレインはなのはの部屋に来ていた。コンコン「あ、トレイン君?」「おー、入るぞ。」扉を開けるとベッドの上に座るなのはとユーノとかいうイタチがいた。「トレイン君どーぞ中に入って。」「んじゃ遠慮なく。」部屋に入りとりあえず床に腰をおろして部屋の中を見回す。なのはくらいの年頃の時の自分は同じ世代の子ども、ましてや女子と遊ぶようなことがなかったため女の子の部屋に入るのは初めてであった。逆になのはのほうも男の子を自身の部屋のなかに入れるのは初めてであった。実際はユーノがいるので初めてではないのだがユーノはなのはの中では男の子というカテゴリーから外れていた。「あ、あんまり見られると恥ずかしいのですが。」「あ、わりぃーな。んで話ってのはなんなんだ?」「それは僕からさせてもらうよ。」そこからユーノが大体のあらましや魔導師やジュエルシードについて説明を始めた。「魔導師か…。」「たぶんトレイン君信じられないと思うけど。」「いや、お前が飛んで来たことを考えるとあながち否定もできなしよ。」確かに突拍子もない話だが導士(タオシー)という存在を知っているトレインにとって魔導師という存在も現実味のない話ではなかった。「大体の事情は分かってもらえたかな?」「まあな。お前の尻拭いをなのはにやってもらっていることくらいはわかったぜ。」「!?」「と、トレイン君!?」トレインは戸惑っている二人を気にせずそのまま言葉をつづけた。「なんでお前はその回収を自分一人でしようとしてるんだ?魔導師とかを管理している組織に頼めばいいんじゃねえのか?」「だけど今回のことは僕の責任だから…。」「だけど結局解決してねえだろ?お前の手に余ってるんだからこんなことになってるんじゃねえのか?」「それは…。」ユーノは反論できずにただうなだれていた。「トレイン君、ユーノ君を責めないであげて。」「ん?」「いいんだなのは彼が言っていることはきっと正しいんだ。」「ユーノ君…。」「結果として関係のない君まで巻き込んでしまった時点で僕の手に余っている事態だったんだ。」完全に意気消沈している二人にわざとらしい溜息をつきながらトレインが口を開いた。「ったく。ユーノ。お前はどうしても自分でけりをつけたいんだな?」「はい、これは僕がまいた種ですから。あ「なのははユーノを手伝いたいと?」「は、はい。」「ふーっ。わかったよなのはには飯を食わしてもらった恩もあるしな、俺がそのジュエルシードとかいうのを集めるのを手伝ってやるよ。」「「…えぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!」」「な、なんだよ?いきなり大声あげやがって。」「む、無理無理。魔導師でもない君がこんな危険なことを。」「そうだよ。トレイン君。」「あのなぁ?見てねえかもしれねえけど俺はお前らに心配されるほど弱くはないぞ。」ナンバーズクラスの相手でなければよほどのことがない限り遅れをとるようなことはまずないという自信はトレインにはあった。先ほどの化け物相手でも以前子どもの姿のとき戦ったクランツのほうがよほど驚異的であった。「そうかもしれないがジュエルシードだけが驚異じゃないんだ。僕ら以外にもジュエルシードを集めている魔導師がいるんだ。」「そうなのか?」「うん、ものすごく強くてこの前も…。」そのあとなのはは何も言わなかったが負けたのだろうということは容易に想像できた。しかしそんな空気を払しょくさせるかの如くトレインは言い放った。「んならなおさらほっとけねぇーな。なのはがどれくらいの実力かどうかしらねーが間違いなく俺のほうが戦闘慣れしてるからな。」自信たっぷりに言い切ったトレインだったがなのは、ユーノはまだ納得しないような様子だった。「わかった、そこまで信じられないなら。なのは。」「は、はい?」「俺とひと勝負しようぜ。」ここから黒猫の新たなる戦いの日々の始まりであった。