突然トレインとリニスのユニゾンが解けてしまった。呆気にとられるトレインとリニス。その様子を冷やかな視線で見ていたプレシアがトレインたちに言った。「どうやらろくに調整もしないでユニゾンしたのがここにきて表れたみたいね。」そう、トレインたちは打ち合わせをしていたもののぶっつけ本番でユニゾンしたのであった。適正が高かったため能力の向上などうまく行ったいたのだがユニゾンを持続させることができなかった。「調整さえしていれば問題はなかったのですけど…。」リニスが悔しそうに呟く。「んなこと言ってもしょうがねーよ。今はこの状況をどうするかの方が問題だろ。」トレインの言うとおり状況としてはあまり分がよくなかった。幸いトレインの姿までは元に戻っておらず成人の体のままだ。しかし、バリアジャケットがなくなったことで防御面に大きな不安が残り、効果的な攻撃手段も自分で撃てる電磁銃一発くらいになってしまった。(通常弾じゃまずダメージはない、特殊弾にしてもあのバリアを破壊できるようなもんじゃねえ。)いろいろと思考を重ねるが有効な対策が浮かばない。リニスも同様のようで難しい厳しい表情をしている。モニター上で見ていたリンディたちもこの状況はかなりまずいと判断していた。先ほどまではほぼ互角、もしくは有利と言っていい状況だったがユニゾンが解けてしまった今は逆転してしまった。「エイミィ、二人の転送の準備をしておいて頂戴。」「了解!!」「どうやら終りの時間みたいね。あなたはよく戦ったわ、私が今まで会った魔導師の中でもあなたは特に強かったわ。」プレシアはトレインに敬意を評するように言った。実際プレシアもトレインのことは認めていた。ここまで自分を追い詰めた人間は過去にもいなかった。「ここまで戦ったあなたに敬意を評して見逃してあげてもいいわ。あなたほどの人間を消してしまうのは忍びなものね。」そう告げるプレシアだったがトレインは吐き捨てるように言う。「だから決めつけるんじゃねえ。俺はまだ戦えるんだぜ?」プレシアを見据えトレインは言い切る。実際戦闘には支障はない。だが勝ち目は限りなく少ないだろう。「そう、残念ね。」そう呟くとプレシアは手から光弾を複数浮かばせ「さよなら。」トレインに放った。それは数こそ少ないもののスピードはさっきのものとは比べ物にならなかった。(やべぇ!?)とっさにハーディスで防御しようとするものの間に合わないのは明白だった。しかし着弾の瞬間、トレインの前に立つ人物がいた。「リニス!?」「マスターは私が守ります!!!」必死にバリアを張りトレインの前に立ちはだかるリニスだったが防ぎきれずあたり爆音が鳴り響いた。「く、くそ。……リニス!?」爆発の後なんとか立ち上がったトレインはリニスを探すようにあたりを見回すとそばに横たわっているリニスがいた。急いで駆け寄り声をかける。プレシアは攻撃を加えるようなことはせずそれを見ているだけだった。「リニス!!しっかりしろ?」バリアで防御していたもののプレシアの攻撃を完全にふさぎきることはできなかったようで身につけていた衣服がところどころ焦げ付き破れていた。「あ、ああマスター…。」意識はあるようだがはっきりとしない意識のなかでリニスはトレインに呼びかけた。「マスター…。」「いい、無理にしゃべろうとするな!!!」トレインはリニスを抱き抱えながら声をかける。リニスはトレインに笑いかけながら言った。「やはりあなたは私にとっても最高のマスターです。デバイスである私をここまで気をつかって頂けるなんて…。」「馬鹿野郎!!!そんなことは関係ねえだろ、なんで俺をかばったんだ!!」「あなたが…私のマスターだからですよ。いえ、そんなことは関係ありませんね…目の前で危険にさらされている人を放っておけないですよ。」リニスは力なく笑った。「ごめんなさい、あなたのことはユニゾンしていてよくわかりました。決して折れることのない信念、不器用な人を思いやる心、そしてサヤさんとの過去。」「!?」「勝手にあなたの中をみてしまったことは謝ります。後でいくらでも責めてください。ですが…。」リニスはトレインの手を握りしめ「私のわがまま……本当は逃げてくださいと言いたいですがあなたはそうはできないでしょう?ですからお願いします、プレシアを止めてください。」「リニス…。」「私の……マスター。」リニスはそこで意識を失った。トレインは来ている上着を脱ぎリニスに掛けた。そしてリニスにつぶやく。「わかったぜ。お前のわがままを聞いてやるよ。けどな俺はマスターって柄じゃねえしお前もデバイスなんてもんじゃねえ。」ゆっくりと歩き部屋の隅にリニスを運び寝かせる「俺とお前は……相棒だ。」ハーディスのシリンダーに銃弾をリロードし構える。そして姿の見えないリンディたちに言った。「リンディ!!こいつをそっちに転送してやってくれ。」「わかったわ。あなたもいったん引きなさい、その状態じゃ勝ち目はないわ。」リンディはトレインに撤退をするよう言うがトレインは首を振る。「俺はこいつとの約束がある。それにクロノが来るまでの間の裁量は俺に任されるているはずだ。」「でも!!!!」「悪いが引けねぇ。だがもしここであんたら俺をそっちに転送しようものなら俺は一生あんたらを恨む。」トレインはそう言い切った。その覚悟にリンディは何も言えなくなっていた。「艦長、どうしますか?」エイミィがリンディに問いただす。リンディは顔をうつむかせながら呟く。「……リニスさんだけこちらに転送を…。」「は、はい!!!」リニスの下に魔法陣が現れ光とともに消えていった。「短い時間でずいぶんと良い関係を築けていたみたいね。私に対しては文句ばかり言っていたのに…。」そういうプレシアにトレインは言った。「それは狂ったあんただからだろう?あいつは基本的には忠実なやつだと思うぜ?」「主人が狂っていようと付いてくるのが使い魔よ。」トレインはもううんざりという感じで踏み出した。「そんなもんは知らねえな、あいつはもう使い魔じゃねえしな。」そう言ってトレインは駆けだした。それに対してプレシアは水晶のようなスフィアを4つ出現させトレインに向かわせる。そしてそれらがばらばらに動き出しそれぞれがレーザーのような光線を打ち出した。「ちっ!!」それをうまくかわしていくがスフィアはそれぞれが連携を取るように動き攻撃を加えトレインを追い詰める。「うまく避けるじゃない。けどそれの多角攻撃にいつまで対応できるかしら?」ガンッ!!!ガンッ!!ガンッ!!トレインは反撃にスフィアに銃弾を撃ち込むが破壊まではできない。「無駄よ、私のバリアほどじゃなくとも銃弾を防ぐだけの防御力は持っているわ。」「ならこいつでどーよ!!!」ガンッ!!!ガンッ!!ガンッ!!三つのスフィアにトレインは一発ずつ銃弾を撃ち込む。そして着弾とともにスフィアが凍りついた。「なに!?」「冷凍弾だ!!」そして残った一つのスフィアの攻撃を回避しながら銃弾をリロードし凍ったスフィアに照準を合わせ撃ちこむ。ガンッ!!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!!ガンッ!!ガンッ!!それぞれ二発ずつ撃ちこむとスフィアは砕け散った。そしてまたリロード行い今度は残ったスフィアに撃ちこむ。ガンッ!!!見事スフィアの先端にあたりドゥオンッ!!!!!そして着弾とともに今度は爆発が起こった。そしてスフィアにひびが入るとたたみかけかけるように続けて撃ちこむ。ガンッ!!!ガンッ!!最後のスフィアも砕け散った。(コイツで特殊弾も打ち止めか…。)最後に放った炸裂弾でトレインの持っていた特殊弾はすべて使い切ってしまった。プレシアはまたしても光弾をトレインにめがけ打ち出した。もはやトレインは防戦一方で回避する以外の行動がとれなくなっていた。次々に襲いかかってくる光弾に追い詰められ完全に回避できなかった一発の光弾の爆風に巻き込まれ壁に叩きつけられる。「もういい加減あきらめたらどうかしら?」プレシアは油断なく杖を構えトレインに告げる。トレインはすでに衣服はボロボロ。ダメージもかなりのものとなっておりあちらこちらで裂傷ができていた。「まだだ。このまま引くわけにはいかねえんだよ。」ふらつきながらトレインは立ち上がった。息遣いも荒くなっており体力的にも余裕がなくなっていた。「どうしてそこまでして戦うのかしら?私には理解できないわ。」「ああ、あんたにはわかんねえだろうな。」プッ!!血混じりのつばを地面に吐きトレインは言った「あんたは娘のアリシアのためとか言ってるがそいつは詭弁だ。」「……なんですって?」「あんたの娘はそんなことを望んでないはずだ。」「あなたにアリシアの何がわかるって言うの?」「あんたは過去から逃げてるだけだ。起こった現実を認めず過去の思い出にすがって今を生きていない。」「………。」プレシアの表情が歪む。トレインを視線で殺さんばかりに睨みつけていた。「あんたをここまで駆り立てているのがアリシアへの思いというのはわかった。だがそいつは支えなんかじゃない……単なる鎖だ。」「黙りなさい…。」「あんたはそれに……。」「だまれぇぇぇーーーーー!!!!!」プレシアは叫び声と同時に光弾をトレインに打ち込んだ。トレインはそれを回避しプレシアとの距離をとった。しかしプレシアは次の攻撃に入っていた。プレシアの前には魔法陣ができあがりすでに構えに入っていた。「くらいなさい!!!!」なのはやフェイトよりも大きな砲撃がトレインめがけて襲いかかってきた。ドゥオォォォォォォォン!!!!地面をえぐるような跡を残しその砲撃は放たれた。あたりは砂煙で視界が悪くなっていた。(手ごたえはあった…。)プレシアは手ごたえはあったと感じていたがしかし煙に乗じて横からトレインが現れた。右肩にはやけどのような跡が残っていた。(かすっただけ!?)不意を疲れたプレシアだったがバリアを張り攻撃に備える。一方のトレインはプレシアにできた一瞬の隙を逃さず攻撃に転じる。(通常弾じゃ効果はない。レールガンも打ち止めだ、ならこいつしかねえだろ。)地面を強く蹴りプレシアに接近しハーディスを振るう。「黒爪ッ!!!!!!!!」ギィンッ!!!!!ハーディスによる高速の三連打撃がプレシアのバリアとぶつかり合う。「自棄になったの?そんな攻撃…。」そうプレシアが言おうとした瞬間ピキッ!!黒爪の打撃が当たった箇所のバリアにほころびが出ていた。「ま、まさか!?」単なる銃のによる打撃がここまでの攻撃力を誇るとはプレシアも思っていなかった。そんなプレシアを尻目にトレインは天井に跳躍しプレシアの頭上に躍り出ていた。「すべてを断ち切るっ!!!!!」そして反転し天井を蹴り勢いよくプレシアに向かいもう一度ハーディスを振るう。「黒十字!!!」ズンッ!!!!!!!!!!!!「ここは僕が引き受ける。君たちは早くプレシアの元に急ぐんだ!!!」クロノが砲撃を放ちながらなのはたちに言う。「無茶だよ!!こんな数相手じゃいくらクロノ君でも。」なのはの言葉ももっともだった。ここまで進む間になのはとクロノ、ユーノによってかなり数を減らしたといえどクロノ一人で相手をするには厳しい状況だった。「なのはの言う通りだ。君を置いて先に進むことなんかできない。」ユーノもなのはに賛同してクロノに反対する。「僕たちの目的は君たちも分かっているだろ?ジュエルシードを、プレシアテスタロッサを止めることが僕らの目的だ。もし手遅れになったらどうするんだ?」「トレイン君が…。」「彼も絶対ではない。不測事態を考えた時、僕らが遅れてしまえば取り返しがつかない。」「でも…。」言い争っている三人の目の前に迫る傀儡兵に一発の砲撃が撃ち込まれる。ドゥオン!!!!!!「こ、これは?」「フェイトちゃん!!!」なのはたちが視線を向けるとデバイスを構え飛んでいるフェイトとアルフの姿があった。二人はなのはたちのそばに降りてきた。「こんなところで言い争ってる場合じゃないだろう?なにやってんだい。」アルフが三人にあきれたように言う。「ここは私とアルフが抑えるからあなたたちは行って。」そうフェイトが三人に告げるがクロノは首を振る。「いや、君たちが来たのなら…なのは、フェイトと一緒に先に進むんだ。」「「えっ!?」」「変わりにアルフとユーノは僕のフォローを頼む。いいかい?」「わかった。」「私としては鬼婆に一撃入れてやりたけどしょうがないね。」クロノに指名された二人は戸惑い気味だった。その様子を見てクロノは言った。「この二人のフォローがあれば君たちも安心していけるだろう?それに貴重な戦力をこんなところにおいてはおけない。」「クロノ君…。」「なのは、行って!!!」「フェイト、行ってきな!!」「アルフ…。」そして二人は視線を合わし頷いた。「僕が突破口を開く一気に進むんだ!!」そういうとクロノはS2Uに魔力を収束させ一気に打ち出した。クロノの放った砲撃は傀儡兵を吹き飛ばし道を開いた。「行くんだ!!!」そしてなのはとフェイトはプレシアとトレインがいる玉座に向かった。「何でなのはたちに行かせたんだい?」ユーノはクロノに問う。「これが一番ベストな選択だった。それだけだ。」「……トレインのこともあるんじゃないか?」その言葉にクロノは少し押し黙った。「………彼は関係ない。あくまでこれは僕の判断だ。」どこか自分の思いを隠すように淡々と言うクロノに「クスッ、わかったよ。」「それにすぐにこいつらを片付けてプレシアのもとに向かうつもりだ。なのはたちに遅れずにね!!!!」クロノは再び傀儡へに切り込む。そしてアルフもそれに続き「私もとっととあの鬼婆のもとに行って一発でも入れないと気が済まないよ!!!」「OK、僕もそれに乗らせてもらうよ。」「エイミィ、転送はできないの?」「駄目です、こちらの転送を受け付けません。」リンディたちはモニターに映っている状況を見て焦っていた。そうにかして転送を試みようとするがジャミングのようなものがかけられ妨害されてしまうのだ。「お願い、クロノ、なのはさん、ユーノ君。急いで…。」リンディは悲痛な面持ちでモニターを眺めていた。映りの悪い画面の中では壁に打ち付けられ動かないトレインとそれを離れた所から見ているプレシアの姿が映っていた。「さあ、ようやくアルハザードへの道が開くわ。」そういうとプレシアはジュエルシード浮かべ魔力を込めジュエルシードを発動させる。すると庭園全体が大きく揺れた。「アルハザードへ辿りつけるかどうかわからないけど…これしかもう方法がないの。でも大丈夫よアリシア、私はいつでもいっしょよ。」プレシアはポットに浮かぶアリシアに話しかける。その眼は恍惚の表情であった。しかし手を動かすと顔をゆがめ脇腹を押える。「くっ!!あそこまでやってくれるとは思わなかったわ。まあそれもここまでね。」ふと壁に打ち付けられているトレインに視線を向ける黒十字を放ちトレインはプレシアのバリアを破ることはできた。そしてそのままプレシアへ攻撃が当たったのだが、それでもプレシアは倒れはしなかった。トレインは失念していた。バリアを張り防御をしているプレシアであったがバリアジャケットを装着しているということを。プレシアはひるんだものの決定打にはならなかった。トレインにはもう反撃するだけの力は残っておらず動けなくなっているところプレシアに近づかれ懐に衝撃波を当てられ壁に叩きつけられた「無情ね……。フェイトにかかわりさえしなければこんなことにはならなかったのに…。」同情するような視線を送るプレシアであったが湧き上がる歓喜にを抑えられず大きな笑い声をあげた。