トレインが風邪で寝込んでいる間ジュエルシードのほうにも動きがあった。海鳴市の海上で複数のジュエルシードが発見された。アースラ内部ジュエルシードの反応は管理局側も確認していた。アースラの内部のメインスクリーンにはジュエルシードを封印しようと奮闘するフェイトの姿があった。しかし状況をみるにかなり手こずっている様子だった。「ほんとなんて無茶をする子なの。」リンディは厳しい表情で呆れ気味に言った。なのはにもその状況は分かっていたのでいてもたってもいられなかった。「リンディさん、私も行ってきます。」転送装置に向かうなのはを止めるこ声があった。「その必要はない。放っておけば勝手に自滅する。」その言葉になのはは信じられないという表情をした。リンディのほうに視線をむけるとクロノと同意見なのか厳しい表情でなのはに首を振っていた。(なんで?どうしてなの?)なのはには目の前で苦しんでいる人がいるのに放置しておくクロノ達がわからなかった。そんななのはの様子を見てクロノは言った。「残酷に見えるかもしれないが僕たちの任務はジュエルシードの確保と彼女たちの捕縛だ。」「納得はできないかもしれないけどこれが最善の策であることは間違いないの。」あくまで淡々と述べる二人だった。しかし二人ともこの行動に心を痛めていないわけではない。彼らは何人もの管理局員を従える立場にいる人間で、下のものに模範を見せるためにも感情的に動くことが許されない。ましてや部下を預かる身としては少しのリスクも犯すわけにはいかない。なのはは呆然とスクリーンに映るフェイトを見ていた。善戦しているが複数集まったジュエルシードの封印はフェイトをもってしても厳しいものだった。(組織の中じゃ個人の感情なんか二の次だ。悪く言えば個人的な感情を持つことなんか許されねえ。)ふとなのはの頭にトレインの言葉がよぎった。トレインの言っていたことはこのことだったのかと。なのはも学校という環境の中に身を置いているため組織のなかで行動するということは分かっているつもりだった。しかし、現実は厳しかった。正直な話トレインが管理局に協力できないといった時なのはは納得できなかった。どうして?なんで?今まで一緒に行動し、頼りになる兄のような存在であったがゆえに別離はつらかった。今になってトレインの言葉を痛感したなのはは自身の甘さが悔しかった。(行ってなのは!!)なのはに念話でユーノが話しかけてきた。(ユーノ君?)(行くんだなのは。フェイトのことを放っておけないんだろう?)ユーノは真剣な表情で現場に向かうように促す。でもなのはは迷っていた。(でもユーノ君私たちは…。)(大丈夫、こっちは僕が何とかする。…なのは、トレインが言っていたことを覚えているかい?)(え?)(お前の信じたものは捨てるなよ。何があろうと信念は曲げるんじゃねえ。彼は最後にそう言ってたよ。)なのはは思い出した。彼の最後の言葉を、彼の言っていたことを。彼が大事なのは信じたことを、信念を貫けるかどうかが大事だということを言っていたことを。なのはレイジングハートを握りしめ転送装置に走った。「な!?なにをしているんだ?」「なのはさん?」突然転送装置に走り出したなのはに驚く二人。なのはは頭を下げながら言った。「ごめんなさい、あとでいっぱい叱られますから。」そしてユーノはなのはを現場に転送した。それをクロノが追うように駆けだすがユーノが立ちふさがった。「なんのつもりだユーノ!!!」「なのはの邪魔をするようならここは通さない!!」ユーノは毅然と言い切った。そんなユーノの態度に周囲は驚いた。「僕はここまでなのはやトレインに助けられてきた。僕の勝手なわがままに文句も言わずに…。」ユーノは今までのことをかみしめるように続ける。「信念を曲げるなと言ったトレインのアドバイスを無碍にしないためにも、なのはの信念を貫かせるためにも今度は僕がなのはを助ける!!!」そう言い切ったユーノの姿はもはや気弱そうな少年ではなかった。結局クロノ達はなのはとユーノをが現場に向かうことを黙認し様子をスクリーン越しに眺めていた。「まったく、最初の約束はどうなってるんだ!!」納得のいかないクロノはいらつきながら呟いた。リンディもしかないと思いつつも帰ってきたら厳重注意をするつもりだった。「とやかくいってもしょうがないわ。とりあえず様子を見ましょう?クロノ、すぐにでも現場に駆けつけられるように待機しておいてちょうだい。」「了解。」クロノはデバイスを構え転送装置のほうに向かう。エイミィはその後ろ姿をみて苦笑しながら言った。「やっぱりクロノ君不機嫌ですね。」「ここのところいろいろあったからね。エイミィ、転送の準備は?」「大丈夫です、すぐにでも送り出せるようにしてあります。」「そう…。あとトレイン君の魔力反応はあるかしら?」エイミィはキーボードを叩きながら画面で確認して「いえ、この結界内部では感知されてません。」「そう、妙ねジュエルシードの反応があればすぐさまやってくるかと思ったのだけれど。」「へ、ヘックシュン!!!!」「なんや?おおきなくしゃみして?」「わからん、誰かが俺の噂でもしてんのか?」ティッシュで鼻をかみながら答えるトレイン。そしてはやてはスプーンをトレインのほうに持っていき「ほな、口あけてや。あ~ん。」「じ、自分で食えるから平気だっつーの。」「なにいうてんの?風邪ひきイベントであ~んはお約束やし乙女の憧れの一つなんやで?」「そんなお約束とあこがれはどぶにでも捨てておけ~!!!」平和な八神家であった。ジュエルシードのほうはなのはとフェイトの協力の末になんとか封印することができた。六個あるジュエルシードをはさみなのはとフェイトは対峙していた。「なんとか封印できたね。」「うん…。」二人の視線の先にはジュエルシードがあった。なのははフェイトに告げた。「これは二人で半分こしよう?」「えっ!?」「だってこれは私とフェイトちゃんで協力して封印したんだもん。それにだれかと何かを分け合えることは嬉しいし」なのはは当然のように笑顔で言った。そしてなのはは気づいた。(そうか、私この子と分け合いたいんだ。)フェイトの姿を見ていたなのははようやく気付いた自分のかつての姿をフェイトに重ねていたことを。どこか悲しい表情で、さびしげな瞳。そして言った。「友達に…なりたいんだ。」「あっ。」フェイトは戸惑いつつもなのはに聞いた「……私も聞きたいことがあるの。彼は?トレインはどうしてるの?」フェイトがトレインのことを聞いてきて驚いたがなのははとたんに表情を暗くした。その表情を見てフェイトは悟った。「トレインが言っていたことは本当だったんだ。彼は管理局には協力していないんだ。」「ど、どうしてそんなことを知っているの?」「彼が……話してくれたから。」あの時のことを思い出してか少し顔を赤くしながらフェイトは答えた。「トレイン君がどこにいるか知っているの?」「知らない。たまたま会っただけだから。」「そっか…。」なのは少し落胆したようだったがトレインがまだ近くにいることがわかっただけでもなのはにとって朗報だった。「トレイン君、元気だった?」「うん、相変わらず。飄々として自由気ままな感じで…。」(私に優しくしてくれた。)フェイトはかみしめるように言った。「そっか。相変わらずか。」二人は友達のように話をしていた。アルフもユーノも何も言わずに黙ってみていた。しかしその雰囲気を壊すかの如くあたりに轟雷が鳴り響いた。決して自然ではありえない状況になのははあたりを見回す。しかしフェイトは心当たりがあるのか小さくつぶやいた「か、母さん?」そして雷撃がフェイトに襲いかかった。「きゃぁあああ!?」「フェイトちゃん!?」フェイトはそのまま気を失い海に落下していった。アルフはすぐさまフェイトを受け止め、ジュエルシードのほうに目をやると転位してきたクロノが迫っていた。「どけぇぇぇぇーーーー!!!」すさまじい気迫で迫るアルフに不意を突かれ繰り出された拳を受け吹き飛ばされるクロノ。アルフはすぐさまジュエルシードをつかむが三つしかない。もしやと思いクロノのほうをみると指にはさみこむようにジュエルシードを持っていた。「ち、ちくしょう!!」「あ、アルフ…。」「フェイト、引き上げるよ!!」アルフは海面に向かって光弾を撃ち込み水しぶきをあげ目くらましをした。そしてそのままアルフ達は撤退していった。雷撃を受けたダメージを回復する間もなくフェイトは母親に呼び出されていた。広い広間に両手を拘束されつるされているフェイトの姿があった。装着しているバリアジャケットもところどころやぶけダメージを如実に表していた。フェイトの目の前には鞭を構える妙齢の女性が立っていた。その女性こそフェイトの母であるプレシア・テスタロッサであった。「か、かあさん。」「フェイト、あなたって子は私をどれだけ悲しませれば気がすむの?」「ご、ごめんなさい。」フェイトがいくら謝ろうとも攻撃の手が緩められることはなかった。親が子にする行動とは思えない常軌を逸している行動だった。鞭による攻撃で叫び声を上げるフェイト。その脳裏にはなのはの言葉が頭によぎっていた。(友達に…なりたいんだ。)あんな言葉をかけられたことのないフェイトは戸惑いを感じていたが同時に嬉しかったのも事実だった。母親とアルフ、そして自分の面倒を見てくれた( )だけが自分の周りにいた人間だった。そしてもう一人、フェイトの頭の中によぎる顔があった。自分の頭を暖かい大きな手で撫でてくれた人の顔が。「あぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」大きな悲鳴を最後にフェイトは気を失った。それを見たプレシアはつまらなさそうに眼をそむけ別室に向かおうとしたとき気を失っているフェイトがひとりの名前をつぶやいた。「と、トレイン…。」「トレイン?」プレシアは思い出した。以前からフェイトと交戦していた白い娘と一緒にいた少年だった。以前からフェイトの口から出ることの多くなった名前であることはプレシアもわかっていた。「気を失ってでも口に出すということはよほど大切な人なのねフェイト?」プレシアは嬉しそうに声を上げるがそれはフェイトを思ってのことではなかった。(このこをもっと効率よく動かせる道具になるかもしれないわね。)そう言ってすぐさまトレインを探しだした。スクリーンに写っていたのはけだるそうにベッドから這い出ているトレインだった。「フェイト!?」アルフは先ほどまでプレシアがいた広間に駆けつけフェイトを抱きかかえた。傷が無数にできており痛々しいさまだった。アルフは歯ぎしりをして主人を痛めつけたであろう人物を許すことはできなかった。まずはフェイトを落ち着ける場所に移動させ治療することにした。「なんだよ、こりゃ?」トレインは目の前に広がっている魔法陣にあっけにとられていた。ベッドから起き上がり以前買ったパジャマから普段着に着替えていると突然の目の前に魔法陣が現れたのだ。ハーディスを構え恐る恐る近づくと声が響いた。(聞こえるかしら?)「誰だ?」(私はプレシア・テスタロッサ。フェイトの母親と言えば分るかしら?)「母親?んでそいつが俺に何の用だ?」トレインは警戒しつつ聞き返した。(娘の友人を招くのがそんなに不自然かしら?)「別にあいつと俺はダチでもないんだが。」(なら私が個人的にあなたに興味があるということにしておくわ。怖ければ別に無理をしなくてもいいわよ坊や。)それだけ言うとプレシアは念話を切った。「あからさまな罠だけどよ…。」うまくいけば今回の件にけりをつけることができる。「行くしかねえだろ。はやて、少し出かけるぜ。」そう言って魔法陣の中心に立ち八神邸からトレインの姿は消えた。プレシアが嬉しそうにその様子を眺めていると扉を破壊する音が聞こえた。「?」「はぁ、はぁ、はぁ。」息を荒くし、敵意を前面にぶつけてきているアルフだった。「何の用かしら?」「あんた…なんであんなことをするんだ?」プレシアは興味がないのかすぐに視線をそらし「くだらない会話につきあう気はないわ。すぐに出て行ったちょうだい。」その言葉にアルフはもう我慢がならなかった。一気に距離を詰め攻撃を仕掛けるがプレシアには届かない。「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」それでも何度も攻撃を繰り返すアルフ。そしてプレシアの張るバリアを押し返すように破ると胸倉をつかみ言った。「あんたはあの子の親であの子はあんたの娘だろ?なんであんなことを、あんなに頑張ってるのに…。どうしてだ?」アルフは叫ぶようにプレシアに問い詰める。しかし無表情のままアルフの腹部に手をやり衝撃波のようなものを撃ちアルフを吹き飛ばした。プレシアは淡々と言った。「あの子は使い魔の作り方が下手ね。余分な感情が多すぎるわ。」「くっ!!」アルフは腹部をさすりながら痛みをこらえている。「今日はせっかくあの子大切な人を招待したというのに。」「大切な人だって?」「そう、あの子がずいぶんとご執心だったみたいだからね私としても興味が出てきてね。」アルフの中で一人の人物が浮かび上がった。「まさか…トレインかい?」「そう、その通りよ。気を失っても呼びかけるなんてよほど大切なのね。」「何を…何を考えているんだい!!!!」アルフはやな予感がしていた。この女がフェイトに対して碌な事をしてきていないことを考えれば当然だった。そしてその予感は的中する。「あのこがもっとうまく働けるように道具になってもらおうと思っているだけよ?」「っ!?なんで…あの子はあんたに笑ってほしくて……優しいあんたに戻ってほしくてあんなに…ぐっ!!」痛みにこらえきれなくなったの顔をゆがめるアルフ。そんなアルフに無情にも杖を向けるプレシア。「邪魔よ、消えなさい。」杖から光があふれアルフも無事では済まないと覚悟した瞬間。ガンッ!!!一発の銃声が聞こえてきた。「あらあら、ずいぶんと手荒なあいさつね。」プレシアは特に驚くこともなく銃声のほうへ視線を向けた。「そいつはどーも。育ちが悪いもんでね。」「と、トレイン!!どうしてここが?」アルフは驚くように聞いた。「最初は別のとこにいたんだけどよ。おめーらのやりあう音を頼りに来てみればビンゴだったんだよ。」トレインはアルフのもとへ行き尋ねた。「大丈夫か?」「ああ、なんとかね。」アルフはよろつきながら立ち上がった。「大体の話は聞かせてもらったぜ?悪いがあんたの道具になるつもりはねーぜ?」「あら?じゃあそうするつもりなのかしら?」プレシアは小馬鹿にしたようにトレインに尋ねた。「決まってるだろ。掃除屋としてあんたを確保するだけだ。」「あんた…。」アルフはそう言い切ったトレインに頼もしさを覚えた。その眼は自信に満ち迷いも戸惑いもない。プレシアはその眼をみて忌々しいように見ていた。「わかったわ、もう頼んだりはしないわ。道具は道具らしくしてもらうわ。」プレシアは距離をとりトレインと相対した。「アルフ、お前は後ろに下がってろ。」「なんで?私も手伝うよ!!!」トレインはアルフの腹部を指差しながら言った。「んな体じゃ足手まといなだけだ。俺は絶対に負けはしねーよ。お前が一番わかってるだろ?」確かに身を持ってトレインの強さは実感しているが目の前の相手はただの魔導士ではない。かつては大魔導士として名をはせた女だ。トレインもあいての実力は肌で感じ取っていた。フェイトの母親ということだけあって魔導士としての実力はぴか一であること。そしてクリードのように淀んだ目つき。目的のためならどのような手段、犠牲もいとわない人間がする目つきを。「そろそろいいかしらね?あなたたちごときにそんなに時間はかけたくないの。」そう言うと杖を構える。トレインもハーディスを構える。ダッ!!!地面を蹴りある程度の距離を保ちながらトレインは銃口を向け撃った。(相手を殺すわけにもいかねえからな。動きを封じる!!)ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!プレシアの足にめがけて3発の銃弾が迫るがプレシアは何も反応することなくその場にたったままだった。(反応すらしねえ?)不審に思ったトレインだったが次の瞬間それは起こった。プレシアに迫った銃弾は届くことなく見えない壁に阻まれるようにはじかれた。「なっ!?」「そんなおもちゃで本当に私と戦うつもりだったの?だったらいいお笑い草だわ。」「トレイン、そいつは半端な魔導師じゃない生半可な攻撃ははじかれちまう。」アルフがトレインに伝える。トレインは一瞬驚きはしたがプレシアがフェイトの母親であり魔導士であることからある程度予想をしていた。かつてシキと戦った時も通常弾ではダメージを与えられなかったこともありそれほど深刻にもなっていなかった。「確かに通常弾じゃ無駄見てーだな。」「まだやる気かしら?」プレシアは悠々と立ちトレインに言い放った。アルフは正直な話トレインでも勝つのは難しいと踏んでいる。自分の拳が防がれるバリアをトレインの持つ銃が貫くことはできないと考えていた。しかし、ひとつだけ希望がある。電磁銃だ。フェイトやなのはが破ることのできなかった電磁銃であればプレシアの強固なバリアを破れるかもしれない。アルフはそう考えていた。「トレイン、電磁銃(レールガン)だ!!!」アルフはトレインにそう呼びかけるがトレインは難色を示した。確かに電磁銃であれば相手の防御を貫くことができるかもしれないが威力がありすぎる。当たりでもすればプレシアといえどもただでは済まないだろう。下手をすれば死に至るかもしれない。しかし、トレインの状態はそんなことを言っていられない状況になりつつあった。病み上がりなのもあるが、熱自体はほとんど下がっているが昼食後にとった薬の副作用が今になって効いてきたのだ。副作用と言っても睡眠を促しだるさを伴うものだけだが、今の状況ではそのわずかの不安材料が命取りになりかねない。トレインはリロードしハーディスを構える。「どうやらまだやる気みたいね?」「違うな、あんたに勝つ気だ。」プレシアはトレインの瞳をみて感じた。この少年は本気で自身に勝つつもりであると。目に見えない圧迫感は並み大抵の人間に出せるものではなかった。「なら今度はこちらもいかせてもらうわ!!!」そう言って杖を振るうとトレインの頭上から雷撃が襲ってきた。「ちっ!!」大きく横に跳び回避するが追いかけてくるように雷撃がトレインを襲う。「ほらほらどうしたの?逃げてばかりでは私に勝てないわよ?」余裕をもって挑発するようにいったプレシアだったが次の瞬間。ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!トレインは回避をしながらもプレシアに向かい攻撃を仕掛ける。しかし無常にも銃弾は先ほどと同じ用ように阻まれた。カン、カン。銃弾がプレシアの足もとに落ちるがそこにあるのは二発だけだった。残りの二発はプレシア背後から迫っていた。完全に不意を突かれていた。しかしカンッ!!!、カンッ!!!その銃弾ですらはじかれてしまった。(あのバリアは意識外の攻撃もはじくのかよ。)プレシアは後ろから迫った攻撃に多少驚いた様子だった。「なかなかの腕前みたいね。まさか跳ね返ってくる銃弾を利用するなんてね。」その言葉を返すほどの余裕もトレインにはなくなってきていた。アルフもトレインの動きが鈍いことに気がついていた。以前戦ったときと比べ明らかに動きの切れが悪い。このままでは一向にダメージを与えることができないと考えたトレインは通常弾と一緒に特殊弾をリロードした。(正直、こいつでだめならやばいな。)まずはあの強固なバリアを破らなければ話にならない。そのためには自身の中でもっとも威力あるの攻撃、レールガンを撃つしかない。ズキン!!(手のほうもだましだましやってきたが限界が近いな。)ワイヤーで固めたグリップからはわずかだが血がにじんでいた。トレインはプレシアを見据えハーディスに充電を開始した。アルフはその様子を見て電磁銃を撃つということがわかった。おそらくバリアを貫くことができれば一瞬の隙ができるはず。アルフはタイミングを見計らい攻撃を加えようと考えていた。プレシアはこちらを見据えるだけのトレインをただただ見つめているだけだった。「もう降参かしら?できれば準備をしたいのだけれど。」「まだだ。こいつをくらってからそいうことを言いな。」そうしてハーディスを構えプレシアの足にかするように電磁銃を撃ちはなった。ドォンッ!!!!そのあまりの弾速と威力にプレシアも驚いたが電磁銃に対しても反応しようともしなかった。(くそっ!!!完全に外れてやがる。)体調の悪さがここにきてピークを迎え普段ではありえないほど射撃精度を落としていた。しかし直撃こそしなかったもののバリアには直撃し、ガラスのように崩れていった。(よしっ!!!)トレインはあいての態勢を崩すために赤い銃弾、炸裂弾を撃ち込もこもうとした瞬間。「おりゃぁぁぁぁぁーーーー!!!!」アルフが咆哮とともにプレシアに迫っていた。「なっ!?」予想外の介入にトレインも不意を突かれた。しかしプレシアは特に驚くこともなくアルフのほうに杖を構えた。そして「邪魔よ。」冷たく言い放ちアルフに向かい光弾を放った。トレインは照準をプレシアではなくその光弾に合わせ炸裂弾を撃った。光弾とぶつかり合った炸裂弾は爆発を起こしアルフへの直撃は防いだ。しかし「甘いわね。」その言葉にプレシアのほうに視線を動かすと目の前にはもう一つの光弾が迫っていた。目の前の爆発に吹き飛ばされたアルフはダメージを受けたものの動けないほどではなかった。「く、くそ。」何とかたちあがろうとしたが目の前にはプレシアがせまっていた。「馬鹿な使い魔。あなたがあそこで下手な行動をとらなければ彼は勝っていたかもしれないのに。」プレシアは冷たく言い放つ。「な、なんだって?と、トレインはどうしたんだい?」「あの子ならあそこよ。」そうプレシアが指さす方向にはボロボロになったトレインの姿があった。「あ、あ、あ…。」信じられないようなものを見るようにアルフは言葉が出なかった。「あなたが余計な事をしたせいで彼には致命的な隙ができた。それがなければ迷いなく彼は私に攻撃できたのに。」そして「今度こそ終わりよ。消えなさい。」杖から大きな光があふれだした。アルフは光に包まれる瞬間とっさに転移魔法を発動させた。(ごめんフェイト、ごめんトレイン。少しだけ、少しだけ待ってておくれよ。)「さて、邪魔な使い魔は片付いたことだし。」プレシアはトレインに目を向け「あなたには役に立ってもらうわ。あの子を動かすために、私の願いをかなえるために。」狂気に満ちたプレシアの声が響き渡った。