突然介入してきた第三者によって二人の動きは止まった。そんなそことはお構いなしにクロノと名乗る魔導師は淡々と続ける。「詳しい事情を説明してもらおうか?」三人はそのまま地上に降り立った。しかしフェイトのほうは警戒を解いておらずバルディッシュを構えたままだった。「これ以上この場で戦闘を続けるのであれば…。」二の句を続けようとしたところにクロノに向かい光弾が襲いかかってきた。とっさににバリアを張り難なくそれを防ぐ。クロノが攻撃の出所見ると狼の姿をしたアルフがいた。「フェイト、撤退するよ!!」そう言い放つとまたしても複数の光弾をクロノ達がいるところに放った。今度は防御をせずにクロノとなのはは回避した。フェイトはそれに乗じて二人から距離をとり離れたところ移動した。しかしその眼には明らかに今までに見られなかったおおきな戸惑いが見られた。視線をさまよわせているとトレインがいた。短い間であったが今までに見たことのないほど真剣な表情でクロノのほうを見ていた。そのトレインもフェイトの視線に気がついたのかフェイトのほうを向くと二人の視線が重なる。そしてそのままトレインはフェイトのほうに走り出した。「あぶねぇ!!!」「えっ!?」「フェイト前だよ!!」トレインに遅れてアルフも叫んでいることに気がつくとフェイトの目の前に光弾がクロノの撃った迫っていた。トレインはフェイトに飛び込むようにジャンプし抱きかかえるように地面に転がった。突然のことに呆然としていたフェイト。目の前にあるトレインの顔を直視できずにいた。「いってぇーな。大丈夫か?」トレインが無事の確認をしてくるが目線をそらしながら「は、はい大丈夫です。あ、ありがとう。」おそらく自分の顔は真っ赤であろうことを自覚しながらトレインと顔を合わせないようにしているとジュエルシードが目に入った。その瞬間トレインを振りほどきフェイトはすぐさまジュエルシードの元に向かう。「あ!?」なのはがしまったという表情でみつめるがその横のクロノは冷静だった。デバイスを構えフェイトに向かい攻撃をした。「あぁぁっ!?」「フェイト!?」「フェイトちゃん!?」直撃したものは少なかったもののダメージを与えるには十分だった。そのまま地面に落ちるところをアルフが先回りし受け止めた。しかしクロノはデバイスを構え攻撃を加えようとしていた。「ダメ!!!」そんなクロノの攻撃を防がんとすべくなのはがクロノとフェイト達の間に立ちはだかった。「なっ!?」「やめて!!!撃たないで!!」そんななのはの行動に動きが止まったクロノ。すると三発の銃声が聞こえてきた。ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!その銃弾はすべてクロノのデバイスの先端の同じところに命中した。キンッ!!キンッ!!キーーーーンッ!!!!その衝撃にクロノはデバイスを手放してしまう。攻撃が加えられた方向に目を向けるとハーディスを構えていたトレインがいた。「トレイン君!!」「な、なにをするんだ!?」クロノはトレインに問い詰める。しかしトレインはクロノを無視しアルフに告げる。「ここはいったん引いておけ。フェイトはもうまともに戦えねぇだろ?」「あ、あんた…。」「いいから早くしな!!」「わかった、フェイト逃げるよ?」「あ、あああ。」アルフに捕まるフェイトの顔色はダメージのせいか熱っぽくどこか視点があっていなかった。アルフはその場から急いで退避した。クロノはそのまま追うようなことはせず黙ってみていた。すこしたち三人と一匹はは顔を見合わせるように立っていた。そしてなのはが口を開いた。「トレイン君、無事だったんだね?」「ああ、心配掛けたな。まーこのとおりぴんぴんしてるから問題ねーぜ。」「よかった、僕も心配していたんですよ。」(あれ、トレイン君…?)なのははトレインの姿に違和感があった。それを指摘しようとしたところクロノが一息ついた。「こほん。話をするのは結構なんだがとりあえず後にしてもらってもかまわないかい?」「あ、はい。」そして四人がいるところに突然モニターのようなものが現れた。そこには翆色の髪をした女性が映っていた。「クロノ御苦労さま。」「艦長。すみませんでした、一人を逃がしてしまいました。」「仕方ないわ。それよりそこにいる子たちをアースラに連れて来てもらえないかしら?事情を詳しくききたいのだけれど?」「了解しました。」会話が終わるとスクリーンのようなものは消えた。そしてクロノがこちらに向き直る。「聞いての通りだ。事情を説明してもらいたいのだけれどアースラのほうにまで来てもらえるかな?」「え、えーとユーノ君?」まだ状況を把握しきれていないなのはユーノに助けを求める。「わかりました。なのは行ってとりあえず事情を説明しよう。」「う、うん。トレイン君?」「ん?ああ、わかってるよ。」そういうとトレインはけだるそうにこちらに向かった。クロノはその姿を見て厳しい目つきで言った。「君には事情説明以外に話したいことがある。かまわないかい?」「別にいいぜ。」(拒否させるつもりはないって顔に書いてあるしな。)「エイミィ、転送を頼む。」転送ご三人の目の前に広がっていたのはSF映画に出てきそうな宇宙船の管内のようなところだった。目の前の様子に圧倒されつつもクロノについていく三人。すると突然クロノが立ち止まり告げた。「いい加減その格好は窮屈だろう?ここまで来たらデバイスとバリアジャケットを解除しても大丈夫だよ。」「あ、そっか、そうですね。」そう言うとなのははバリアジャケットを解除しレイジングハートもいつもの赤い珠に変わった。クロノはユーノのほうにも視線を向け言った。「君もその姿でいる必要はないだろう?」「ああ、そういえばそうですね。」「ほえ!?」するとユーノは光に包まれだした。光が収まるとそこにいたのはいつもなのはが知っているフェレットのユーノではなくなのはと同い年くらいの少年だった。「あ、あ、あ?」「ふぅー、この姿を見せるの久しぶりだね。あ、トレインには初めてだったね。」「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーー!?」なのはの絶叫が艦内響き渡った。「えーと、なのは?」なのはは震えながらユーノを指差していた。「ユーノ君ってフェレットじゃなかったの?」「え!?なのは、最初君に会った時この姿じゃなかったっけ?」「ち、ちがうよ~。」両者とも認識の違いがあったらしく互いに混乱していた。しかしトレインは冷静にこの状況をみてユーノに近づき囁いた。(お前、下手したら恭也とかに殺されるぞ?)(な、いきなりなんですか?)トレインは意地の悪い笑顔を浮かべながら告げる。(お前の温泉での行動は俺はきっちりと覚えているぞ。)(うっ!?そ、それは仕方なかったんで。)(そんな言い訳があの連中に通用するとは思えんがな?シシシシ。)二人が自分に隠れてしゃべっていることに不審に思ったなのはが近づいた。「どうしたのトレイン君?なんかお兄ちゃんがどうとか聞こえたけど?」「いや、あのおん「な、なんでもないんだなのは!!」トレインの言葉をさえぎるようにユーノが必死に前に出てトレインを抑える。「????」目の前の二人がなんでもめているかはわからないが仲が悪いようには見えなかった。ふとその様子に笑いながらなのはは言った。「二人とも仲がいいんだね。」「ゴホン!!艦長を待たせているんだ、できればその話は後にしてもらえるかい?」「「は、はい!!」」「じゃあ行くよ。」そしてクロノについていくとある一室で止まった。「艦長、失礼します。」「はい、どうぞ。」中から女性の声がすると扉が開き中には先ほどスクリーンに映っていた女性がいた。(どうやらこの女がこいつらのボスってとこか。)クロノに続き三人が部屋の中に入ると未来的な館内とは不釣り合いなもので埋め尽くされていた。特にたくさん置いてある盆栽はトレインも若干引き気味だった。なんというか和風という雰囲気がぴったりの部屋だった。(そーいやセフィリアのやつもやたらこういうのに凝ってた気がすんな。)トレインのなかで組織のトップに立つ人間は和風好き!?という仮説が浮かび上がった。それはさておき招かれた三人は用意されたお茶とお菓子の前に座り込んだ。そして事の経緯を話し始めた。「そう、あのロスト・ロギア、ジュエルシードを発掘したのはあなただったの。」リンディというこの艦の艦長の女が言った。クロノとは親子の関係だがそれには三人とも驚いていたが桃子の例もあるのでトレインからすれば50歩100歩だった。会話のほうに戻るとユーノが口を開いていた。「はい、だから僕がそれを回収しようと思って…。」ユーノは自身の責任を感じているのか弱弱しく答えた。「立派な心がけね。」「だが同時に無謀でもある。」「………。」以前にたような問答をトレインとやっていたが改めて言われるとユーノとしてはつらいものがあった。ここでなのはは疑問に思った事を聞く。「あの、ロストロギアってなんですか?」「ああ、それはね…」ここでリンディから簡単なロストロギアと次元世界についての説明を受けた。次元のなかにはいくつもの世界がありそこからごくまれに発見されるもの、ロストロギア。それが進みすぎた文明の遺産であり使用法も分からないが危険なものであり過去になんどか大きな事件になったこともあるということ。そしてそれらを管理保管することをしているのが管理局でもあるという説明を受けた。「あのジュエルシードは次元干渉型のものだ。以前黒衣の魔導士と君がぶつかり合った時におきた爆発があっただろう?」先日、トレインが吹き飛ばされ互いのデバイスにダメージを与えた出来事。「あれが次元震だ。たったひとつであれだけのことが起こるんだ。もし複数集まったときあんなことが起きればその被害はとてつもないものになる。」カコンっ!!「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収に関しては時空管理局が全権を持ちます。」「「えっ!?」」「!?」一息入れたところでのリンディからの通達だった。不服がありそうな二人の様子を見てクロノはリンディに続く。「次元干渉にかかわる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの事件じゃない。」「でも!?」「ちょっと待ちな?」そこまで沈黙を保っていたトレインだったがはじめて口を開いた。そして置いてある茶碗の中身を一気に飲み干す。「あくまでそれはそっちの事情だろう?俺らはいまさら手を引く気はねーぞ。」トレインは毅然と言い切った。「トレイン君だったかしら?」「ああ。」「急にそんなことを言われてあなた達が納得いかないのもわかるわ。ここは一晩考えて落ちついて三人で話し合ってからお話しましょう?」リンディはやんわりとたしなめるようにトレインに言った。しかしトレインは首をふった。「こいつらがどう考えているかは知らねーが俺の中で答えは決まってる。今回の件はきっちりとけりがつくまで付き合うってな。」「トレイン…。」「トレイン君…。」しかしそれを切り捨てるようにクロノ言う。「魔法もろくに使えないような素人が口を出すことじゃない。」「クロノ!?」リンディが驚き、止めようとするがクロノがそれを制す。「確かにな、それは否定しないぜ。」トレインはさも気にしていないように言う。実際のところそれほど気にしていないのだが。「それに君のさっきの行動は執務官の職務妨害として現行犯逮捕できたのだぞ?」「それで?」「それだけじゃない、君の使っているその銃だ!!」クロノが指をさしていたのはホルスターにおさまっているハーディスだった。「戦闘記録から見てもそれからは一切の魔力反応はしなかった。それは疑いようのない質量兵器だ。」「質量兵器?」聞き覚えのある単語だったがトレインの頭の中では切れさっぱりに消え去っていた。その様子をみたリンディが説明した。「質量兵器というのはあなたたちの世界で使われている銃器の類と言ったらいいかしら。魔法が主流のこちらでは安易に使える質量兵器は使用が認められていないの。」「そいつは分かった。だがそれで俺がとがめられる理由にはならねーぜ?」「君は!!!」クロノがあまりのトレインの態度といいように怒りをあらわにした。立ち上がったクロノは怒りを隠せずにトレインを睨みつける。そんなものはどこ吹く風、トレインは淡々と言葉を続けた。「あくまで今まで言ったことはあんたらの中での話だ。おめーを攻撃したのだって突然現れた得体のしれない奴から知り合いを助けただけだぜ?」「なんだと?」「いきなり現れたやつより、短いとはいえ顔見知りな上に目的がはっきりした奴のほうが信用はできるぜ?たとえ立場どういうものであろうとな。」正直な話トレインは管理局にあまりいい印象を抱いていなかった。秘密結社(クロノス)に属していた時は組織の行動に興味はなかったが思い返せば碌な事をしていなかった気がする。確かにクロノスは世界の安定に一役を担っているのは確かだった。しかし裏では安定のためとはいえ善悪問わずに数々の要人を危険因子として抹殺してきた。ではこの管理局はどうだろう。次元世界を守るために行動していると言っているがそれはある意味増長しているとも考えられる。この世界で起きた事件はその世界の人間が解決すればいいとも考えられる。確かに次元世界の事件を解決しているという行為をトレインも否定するつもりはない。しかしクロノが管理局の法を持ち出してこちらを咎めてきたことは納得が出来なかった。トレインにはこれからの大筋の流れが読めて来ていた。おそらくこのまま自分たちをこのまま帰って話し合いのうちにこのままこの一件から手を引くことはできない。結果、管理局に協力することになる。そして管理局はこちらの指示に従うように言ってくるであろう。クロノ、リンディは個人としては信用できるかもしれない。が組織に属している人間は個人の感情で行動することは原則許されない。おそらくなのはたちが容認できないような判断を下すことも考えられる。トレインとしてもどこかの組織に飼われるのは二度とごめんだった。一方クロノもここまで言われて黙っていられるほどまだ成熟していなかったもありデバイスを手に取り、構える。「クロノ!!」リンディが大きな声とがめるがクロノは構えたデバイスを下ろすようなことはしない。「いい加減にしないと本当に…。」それ以上の言葉を発しないが言わんとすることは分かっている。しかしトレインとしてももうひとつだけ容認できない言葉があった。「あんた、さっき俺のことを魔力も使えない素人って言っていたな?」「それがどうした?自分でも認めていただろう?」「ああ、だが戦いは魔力が使えるかどうかは問題じゃねえ。それにそこまで言われたらな…。」ガタッ物音がしたと思った時クロノの視線がいきなり反転し気がついたらトレインに組み敷かれ頭部にハーディスを突き付けられていた。「クロノ!?」「と、トレイン君!?」「BLACK CATの名前がすたれるってもんでね。」なのはも今までに見たことのないような雰囲気のトレインがそこにいた。目を猫のようにぎらつかせ寸分の隙も見せずに構えるその姿になのはとユーノは彼がBLACK CATと呼ばれた暗殺者を垣間見た気がした。しかしトレインはすぐさまクロノを解放するとその場から立ち上がった。「どこへ行く気?」「トイレ。話がすんだら廊下にいるから呼んでくれ。」片手をあげトレインは出て行った。「まて!!」起き上ったクロノがトレインを呼ぶが彼がそれに応じることはなかった。そしてこぶしを強く握りながらクロノは自身の足が震えていることに気がついた。結局、一度家に帰ってから結論を出すようにリンディに言われたようでさっきまでいた公園に降り立った。「さてと、どうするつもりだ?」トレインはなのはに聞いた。「とりあえずいったん家に戻って、夕ご飯を食べてから決めようと思うの。」「OKだ。んじゃあまず家に戻るか?」「うん、お母さんたちも心配してたから安心すると思うの。」「あー、そうだったな…。」高町家に戻ったトレインは桃子によって質問攻めの嵐だったが事の経緯を八割ぐらいを嘘で固め説明しなんとか納得してもらった。納得していたかどうかは疑問だが。その後はやてへ今日はそちらに戻れないということを伝えた。かなりごねられたが何とか納得してもらったが今度一日付き合うように約束された。今日はトレインにとって女難が特に出ている日だった。そして時間が過ぎ、夕食後ユーノがレイジングハートを介してリンディたちと会話をしていた。内容からするに協力させてほしいと要請しているようだった。トレインは今後どうするかは二人に任せるといい、そのまま横になり寝ていた。しかし、トレインは一つだけ決めていたことがあった。(なのは、決まったよ。)(うん、ありがとうユーノ君。)念話でなのはに伝えたユーノは地面で横になっているトレインに話しかける。「トレイン、起きて。」「ああ、起きてるよ。決まったのか?」「うん、僕たちも協力させてもらうことにしてもらった。」「そっか…。」そう言うとトレインは起き上がり持っていた荷物を背負い窓に向かった。「ちょ、どこに行くんだい?」「わりぃ、俺は野良猫暮らしが性に合ってるんでね。これから俺は俺なりのやり方をさせてもらうわ。」ユーノはあわててトレインに飛びつく。「なにを言ってるんだ。君一人でどうにかできることじゃないってことくらいわかるだろ?」「なのはにわりぃって伝えておいてくれ。なのはのこと頼むぜ?」トレインは用意してあった靴をはきそのまま飛び降り走り出した。ユーノにはそれを止めることはできなかった。アースラ内部「うわーすごい。二人ともユーノ君より魔力だけならクロノ君を上回ってるよ。」そのセリフにクロノがおもしろくなさそうにつぶやく。「魔法は魔力量だけじゃない。それを運用する的確な技術と状況判断だ。」そのひがみっぽいセリフにエイミィ、アースラの管制官でもある女性が笑いながら続けた。「じゃあ、クロノ君とやりあった彼はどうなるのかな?」そう言うとボタンを押してトレインがレールガンを撃ったシーンに変えた。そうするとクロノは悔しそうな表情に変わった。「確かにすごいわね。」そこにリンディが入ってきた。「この二人のですか?」クロノはあえてトレインが話題からはずれるように仕向けたがそれに気がついたリンディは苦笑しながら言った。「三人ともよ。二人は魔力量も資質もすごいものをもってるわ。けど彼は…。」「はい、魔力は平均以上のものを持ってますけど魔力を行使した形跡がないですね。」「ええ、彼の持っている銃になにかあるのかしら?」弱いとは言えないあいてのバリアをやすやすと破る貫通力をもった光弾。質量兵器が脅威となりうるという認識には違いはないがトレインの持っている銃にそれほどの威力があるとも考えにくい。「こちらに来た時に改めて聞けばいいでしょう。では僕は。」そういうとクロノは管制室を出て行った。「彼とクロノ君、かなり相性悪そうですね?」「困ったものよ。状況はそうも言ってられないのだけれど…。」