バリアジャケットも持たずあの大きな衝撃を受けたトレインはなのはたちとは違い結界外に飛ばされていた。「くそっ、ここはどこだよ?」辺りを見回すとどこかの家の庭だった。それを見るにそれほど遠くに飛ばされてわけではないとわかった。「うっ!?」動き出そうとしたところ痛みが走った。(こりゃあ何本かいってるかも知れねぇな)額からはかなりの量の血が流れ出ていた。このまま放っておけばまずいことは明白だった。痛みをこらえながら何とか動き出そうとしたものの血が足りないせいか意識がだんだん薄れていく「誰ですか?」独特のイントネーションのある声を最後にトレインはブラックアウトした。一方なのはたちもフェイトたちと別れたあと必死にトレインの捜索行っていた。「はぁ、はぁ、はぁ、トレイン君どこに行っちゃったの?」「わからない、彼はバリアジャケットも結界も作ることもできないからさっきのジュエルシードの暴走に巻き込まて結界外に飛ばされたのかもしれない。」「そんな!?」なのははショックを受けたような顔になった。しかし、その表情をみてユーノはすかさず付け加える。「でも、それほど規模が大きいものじゃないからそこまで遠くに入ってないはずだよ。」安心できるわけではないがこのあたりにまだトレインがいる可能性があることはなのはにとって少しは落ち着く材料になった。正直なのはのなかにはもしかしたらこのままトレインがいなくなるのではないかという恐れがあった。旅行以降気まずい関係が続いていたことも今となっては後悔が残る。しかし、それでもトレインは駆けつけ自分の行動、信念を肯定してくれた。揺らぎそうになった自分の信念を支えてくれた。それだけでなのはにとってはトレインは必要な存在だった。だがいくら必死に探そうともトレインを見つけることが出来ない。魔力を探そうにも彼は普段魔力を無意識のうちにか使用していないため手掛かりにはならない。「なのは君はもう家に戻ったほうがいい。」ユーノはなのはにそう提案する。時間はだいぶ遅くなり、小学生が出歩くにはあまりいい時間帯とはいえなかった。「でも!!!」なのはユーノに食ってかかるがユーノは首を振りつつ言った。「もしかしたら家に戻っているかもしれない、その時は僕に念話で教えてくれれば戻ってくる。仮にまだ戻ってなかったら僕が捜索を続けるよ。」「でもそれじゃユーノ君が。」「大丈夫、なのはには助けてもらっているんだ。これくらいは僕にやらせてくれないか?」「ユーノ君…。」「ほら、早く。桃子さんたちもきっと心配しているよ。」「わかった、ありがとうユーノ君。」そういうとなのはは走って家路を急いだ。トレインが家にいるという可能性を信じて。「ただいま~。」多少気まずそうに家に入るとそこには仁王立ちした恭也がいた。「お、おにいちゃん。」「今何時だと思っているんだ?」わずかに怒気を含めながら恭也は告げた。なのはは小さくなりながら頭を下げた。「ごめんなさい!!」「俺だけじゃない母さんたちもどれでけ心配したと思っているんだ?」その言葉にますます小さくなるなのはだったが桃子がもういいだろうと助け船を出した。「恭也その辺でいいわ。」「母さん?」恭也を後ろにやり桃子はなのはの前にでて問いかける。「何か理由があるんでしょう?」「うん…。そう、お母さんトレイン君は戻ってる?」「トレイン君?いえまだ戻ってきてないわよ。てっきりなのはと一緒にいると思ったのだけど?」「トレイン君がいなくなったの。持ってきてた荷物もなくなってて…。」「「「「!?」」」」その言葉を聞いた高町家の人間は驚きの表情を見せた。「ん?ここは?」「あっ!?先生気がつきました。」「あら本当?よかったわ。」気がつくとトレインはベットの上にいた。病院とかではなく誰かの家の中であるとトレインは気づいた。そして自分を解放してくれていただろうと思われる車いすに乗る少女と白衣を着た女医らしき女性がいた。「いや~よかったわ、なにか物音がしたと思ったら君が庭で倒れておってね。血もものすごい出てるから死んでしまうかと思ったで。」「はやてちゃんが私の所に電話してきてくれてここで治療してたのよ。」「そっか、ありがとな。」トレインは二人を見ながら頭を下げた。「私は八神はやて。こっちは石田先生。君は?」「俺はトレイン・ハートネット。」「とれいん・はーとねっと?外人さんなん?」「まー、そういうことになるかな?」「???」なぜか疑問形で返したトレインにはやては首をひねっていた。そこで石田がトレインに話しかけてきた。「トレイン君、君の怪我だけど見た目ほど大したことはないけど結構な怪我よ?いったい何があったの?」「えーとそのだな…。」トレインは説明に困っていた。まさか本当のことを言うわけにもいかないし相手はいい年下大人だ。下手な言い訳など通用しないことは確実だ。悩んでいるトレインを見て石田はため息をついていった。「言いたくなければ言わなくてもいいわ。その代り親御さんの連絡先を教えてもらえるかしら?」「ワリーが俺の両親は二人ともいねーよ。」「「えっ!?」」二人ともその言葉に固まった。「事故で死んじまったからな。」両親の死は本当のことを話したがその経緯までは話すことはしなかった。おそらくこんな自分を助けるようなお人好しの人間だ。聞くだけでもつらいだけだろう。「私と同じなんやね。」「へ?」「私も両親がおらんのよ。トレイン君と一緒や。」少し影のある笑顔でトレインにそう告げるはやて。(両親を殺されたときの俺と同じくらいの歳か…なのはと同い年くらいか)はやてをトレインが見ていると石田がトレインに口を開いた。「ごめんなさい、私も配慮が足りなかったわ。」「いいぜ、いまさらそこまで気にしてねーしな。」「そう…。じゃあどうしようかしら?できれば入院まではいかなくても通院してもらいたいのだけれど…。」石田が悩みながら思案しているとはやてが口を開く「トレイン君、今日はどうするつもりなん?」「ん?ああ、どっかのホテルにでも泊るつもりだったが。」嘘である。そんなに手持ちのお金を持っていないトレインはどこかで野宿をする予定だった。「なら私のとこにとまればいいわ。」「え、でもよ…。」「な?先生?」はやてが後ろにいる石田に同意を求める。「う~ん、そうねえ。病院に入院させるればいいかと思ったのだけど…それもいいかもしれないわね。」っておい!!!トレインは心の中でつこっみを入れた。得体のしれない男をこんながき一人で住んでる所に居させていいのかい?姿はガキだけど「ちょ、ちょっと」「よし!!決まりや!!よろしくなトレイン君。」はやてはトレインの手を取り嬉しそうに笑った。屈託もなく笑うその姿にトレインはサヤの姿がダブった。「どうしたんトレイン君?私の顔をそないに見て。」恥ずかしそうにほほを染めるはやてに気づきトレインはなんでもないように「いや、知り合いに似てるなと思ってな。」「そうなん?その人トレイン君の恋人?後で聞かせてや?」「あー、機会があれば話してやるよ。」二人のやり取りをみて安心した石田は帰り支度をし二人に言った。「じゃあ、私は病院に戻るわね。はやてちゃん、明日の診察と一緒にトレイン君を連れて来てもらえるかしら?」「はい、わかりました。今日はどうもありがとうございました。」「いいえ、じゃあ二人ともおやすみなさい。」そういって石田は出て行った。「そういえば、トレイン君おなか減ってない?」「お?そういえば昼からなんにも食ってないな。」「じゃあご飯の用意してあげるわ。」「まじか!?いや~はやてお前っていい奴だな。」はやてはご飯聞いて目を輝かすトレインの顔をみてクスッと笑いながら「じゃあすこし待っててや。」そう言って寝室から出て行った。少ししてトレインに用意されたご飯は白米と焼き魚、卵焼き、味噌汁とといった典型的な日本食だった。トレインはそれを見事なはし使いできれいに完食した。「ぷはぁーーー!!うまかった。ごちそうさん。」「お粗末さん。いやーそんだけおいしそうに食べてくれるとこっちも作りがいがあるわ。」トレインは満腹になったところでひとつ気になったことを聞いた。「はやて。お前、足どうしたんだ?けがか?」「ああ、これは病気や。うち生まれつき病気をもっててなもともと悪かったのが最近はろくに動かなくなってしまってな。」「ふ~ん。治るのか?」「わからへん。石田先生がよく見てくれとるけど…。」暗くなっていたはやてを見てトレインは努めて明るく言った。「病は気からって言うんだったかな?そんなに悲観的じゃなおるもんのなおらねーぜ。」「そやね、全く希望がないわけでもないやろし。」それから二人はとりとめのない会話をしていた。そしてやがて時間が12時を回ろうとしていたところで「そろそろ寝なあかん時間やね。」「そうだな、そろそろ寝るか。」「ほんならトレイン君、少し奥に詰めてくれる?」「!?いいけどよ。」何のために詰めるのかわからなかったが言われるがまま奥に詰めた。「お邪魔するで~。」そう言うとはやては手すりに掴まりながら器用にトレインの隣に入り込んだ。「って、なんでわざわざおれんとこで寝るんだよ?」「ん?せやかてここは私のベッドやし。特に問題ないやろ?」よく見ると手すりやらなんやらがベッドにたくさんとりつけられていた。おそらく障害者用に設計されたベッドなのだろう。「いや、まあそうだけどよ。別にほかの部屋もあんだろ?俺はそこでいいからよ。」出て行こうとするトレインの服をはやてがつかむ。「お願いや、一緒に寝てくれん?」おおよそ10歳前後のこどもが言うようなセリフではないとトレインは考えていた。まだこのころは男女の意識など特にないのだろうと割り切り溜息をつきながらトレインはだまってベッドに戻った。しかし10年後、いや数年後トレインはこの己の軽率な行動を激しく後悔する日が来る事を知らなかった。「ありがとな。」はやては嬉しそうにトレインにお礼を言う。「はぁ、もういいから寝とけ。」そう言って瞼を閉じようとしたがはやてが話しかける。「トレイン君はこれからどうするん?」「どうするも何も……。まだ考えてなかった。」そう、こちらに来てからジュエルシードの一件がありそれどころではなかったせいか先のことを全く考えていなかった。できることならきままな掃除屋家業を続けていきたいと思っていたがこちらに掃除屋なるものがあるかどうかも分からない。それにスイーパーライセンスがあったとしてもこの体では取得資格すら持っていない。「どや、もしよかったらうちで暮らさへん?」「おまえんとこでか?」「うん、幸いうちは一人やし家もトレイン君一人くらい問題ないくらいやしね。お金も援助してくれとる人がおるから困らへんし。」ある意味トレインにとっては魅力的な提案であったが簡単にうなずけるものではなかった。おそらくこの少女は家族というものに飢えているのだろうと気づいていた。自分と同じように両親がいないトレインに親近感を抱きそのような提案をした。(家族か…。)トレインにとって野良猫の自分には縁のないものだと考えていた。「考えとく。」とりあえず安易な答えでこの場はかわしておくことにした。「まだこの街でやり残したことがあるからよ。それが片付いたら決めるわ。」「やること?」「ああ、ケリをつけないといけないことがあってな。」ジュエルシードの一件にケリをつけるまではこの街を離れるつもりはトレインにはなかった。それにおそらくあのお人好しの高町家の人間だ自分のことを心配して……。冷たい汗がトレインの背中を流れる。「ど、どうしたんトレイン君?急に青ざめとるけど?」(い、一応書置きもしたしな。そ、捜索届けとかでてねーよな?)夜が明け朝がやってきた。高町家ではいつも通りとまではいかないまでも普段通りの生活が進んでいた。なのはが遅くなって理由はトレインを探していたということになり特に追及されることもなくなった。肝心のトレインは桃子宛に一筆書いており、トレインがいないということは把握していた。その内容は「すこし込み入った事情があるのでここを出るが、落ち着いたらまた連絡するわ。心配はいらないぜ。」とあきらかに心配されるような内容だったが文面からトレインの様子が浮かぶようだった。すこしあきれながらも高町家の面々はその内容を信じて待つことに決めたらしい。「なんかトレイン君がいないとさみしいね。」とすこし寂しそうにトレインの席を見つめる美由希。それに同意するように桃子が言った。「そうね。短い間とはいえあの子もうちの家族だったからね。」恭也は特にいつもと変わらない様子だったが少し気になるようだ。士郎も同様だったが落ち込んだ様子のなのはをみて明るく言った。「なーに彼のことだひょっこりまた現れるさ。だからなのはもそんな顔をするな。」「うん…。」文面からはトレインが戻ってくる可能性もあることを示唆していたが事情の知っているなのはは彼が戻ってくるかどうかでなく彼が無事であるかどうかが心配であった。ユーノは夜遅くに戻ってきたが結局見つけることが出来なかったらしい。今は部屋でぐっすりと眠っているところだった。一方八神家でお世話になっているトレインはのんびりと朝食をとっていた。「おかわり!!」「はい、どうぞ。」トレインがお代わりするのを分かってたように素早く茶碗にごはんを盛るはやて。ちなみに今日の朝食は焼き鮭とあさりの味噌汁であった。「やっぱり食べてくれる人がおるとやる気が出るわ。」「そうか?」「うん、一人だけのためにご飯作るんとはやっぱりぜんぜんちがうわ。それに一人で食べるよりたくさんで食べたほうがごはんもおいしいで?」はやてはご飯と食べるトレインを見ながら微笑んでいた。「ごちそうさん!!いや~昨日に続いてうまかったわ。」「そらよかったわ。じゃあうちは片づけるわ。」そう言ったところでトレインが止めた。「片づけくらい俺がやるからいいぜ。」「で、でも…。」「これくらいしか俺はできねえからさ。な?」そういうとトレインは食器を抱え台所へ行った。片付けも終わりひと段落したところではやてとテーブルに座り落ち着いていた。「今日のことなんやけど?」「今日?」「昨日いっとったやろ?先生が私の診察と一緒にトレイン君もみるって。」トレインは昨日のことを思い出し手をたたいた。「そういや言ってたな。けどもう特に痛みもねえし大丈夫だろ?」事実トレインの傷はほとんどがふさがっており、痛みを感じ折れていると思った箇所も動いても特に問題はなかった。自分でも驚くほどの回復ぶりだった。しかしはやては譲らなかった。「あかんで、ちゃんと病院いかんと。せやないとトレイン君の荷物返さへんよ。」「あ!!!!!!?そうだよ、俺の荷物どこにあんだよ?」「病院に行く?」意地の悪い笑顔を浮かべトレインに問いかけるはやて。「ぐ、わかった。行くから返してくれよ。」そうトレインがいうと安心したように安堵の表情を浮かべ車いすを動かしどこかに向かった。そして戻ってくるとハーディスとリュックを持って出てきた。「はい、これや。」「ありがとよ。」それを受け取りホルスターにしまいリュックを背負った。「トレイン君、それって拳銃…。それでなにをしてたん?」恐る恐るトレインに問うはやて。「…。別に殺しをしてるわけじゃねえしするつもりもねえぞ?」詳しいことは話せない。話せばおそらくだが親身になり聞いてくれるだろうがそれはできない。この少女まで巻き込むわけにはいかない。そう決めていたトレインは詳しいことは言わなかった。「詳しいことは言えねえんだ。許してくれ。」そう言って軽く頭を下げるトレイン。それをみてやれやれと言った感じで溜息をついた。「わかった。これ以上詮索はせえへんよ。その代りなにかあったら私を守ってや?」「へ?」「あたりまえやん、ただで飯が食べられるほど世の中甘くないで?」またまた意地の悪い笑顔を浮かべトレインに言う。その言葉を聞いて大笑いするトレイン「はははははははは、そうだな。OK、その仕事掃除屋として請け負ったぜ。」「掃除屋?」「ほれ、じゃあ準備して行こうぜ?」トレインははやての背後にまわり車いすを押す。「ちょ、ちょっと待ってやー。トレイン君?」それを無視するようにトレインは走って行った。病院についたトレインははやての診察が終わるまで廊下で待っていた。いろいろ検査があるらしくしばらく時間がかかるとのことでかれこれ1時間近くたっていた。「まともな病院なんて来るのはいつ以来かね。」掃除屋稼業をしているうちは闇医者に診てもらうことが多かった。といっても医者に診てもらうほどの大けがをおったのは組織を抜けてからは星の使徒との戦いくらいのものだった。「とっとと終わらせて翆屋にいかねーとまずいことになりそうだな。」診察を終えたらとりあえず高町家に連絡を入れるつもりだった。手紙を置いておいたとはいえなのはとはあのジュエルシードの暴走に巻き込まれたあとから連絡が取れていない。なのは本人の心配もあるがあれだけタフなバリアジャケットとかいうものに守られていることや自分が無事なのだから無事であるだろうと確信していた。下手に心配されて捜索願など出されて警察に厄介になるようなことは勘弁だった。「トレイン君、入ってちょうだい。」「おう。」そして石田に呼ばれたトレインは診察室の中に入って行った。「信じられないわね。」石田は診察をしながら驚きを隠せないでいた。トレインは上半身裸の状態で巻かれていた包帯を取られていた。「なにがだ?」「あなたの回復力よ。正直入院もやむ得ないと思ってたほどだったのだけれどほとんどの傷がふさがっているわ。」確かにこの回復力は異常だった。さっきもそう思っていたがトレインには何となく原因が分かっていた。(これもナノマシンってやつの力か。)ふとはやてのほうに目を向けていると顔を赤くしながらトレインの体を見ていた。「はやて、俺の体になんかついてんのか?」「はっ!?いや、なんもないで。ほんまや。」なぜか顔を赤くしながら視線をそらした。(トレイン君って割と着やせしとるんやな。しかもかなりしまった体をしとる。)不気味に笑っているはやてにすこし引き気味に視線を石田のほうに戻した。「実際のところ体のほうはどうなんだ?」「ハッキリ言ってしまえば何の問題もないわね。病院に来ていること自体がおかしいってくらいにね。」「そっか。まあいろいろありがとな。」「いえ、医者として当然のことをしたまでよ。それよりはやてちゃんとはうまくやってる?」突然の質問によくわからないといった表情をした。「うまくやるも何も昨日会ったばかりだぜ?」「そうね。だけどはやてちゃんはあなたのことを気に入ったみたいね。」そういわれてもトレインとしては困るものがある。いつまでもここにいるとは限らない、あくまでトレインは今回の一件にけりをつけるためにこの海鳴市にいるのだ。「はやてちゃんのことよろしく頼むわね。」石田に手をとられ真剣な表情で頼まれてはさすがのトレインも嫌とは言えず。「……できる限りな。」それだけ聞くと石田は笑顔になり二人を送り出した。(高町家の人間といいあの石田っていう医者もそろいもそろってお人よしだな。身元もわからねえような人間をここまで信用するもんか?)「じゃあ石田先生さよなら。」「ええ、お大事にね。」二人は外で昼食を済ませるとのんびりと歩きながら八神家を目指していた。トレインがはやての後ろに回り車いすを押していた。特にこれといった会話をしていなかったがはやては終始機嫌がよくすこし浮かれているようだった。トレインははやてを一度家に送り返したら高町家に行くつもりだった。そのことをはやてに告げる。「ふ~ん、その高町さんのとこにいくん?」「ああ、一応世話になったからな。挨拶くらいしとかねえとな。」「何時くらいに帰ってくるん?夕飯の準備とかあるから知っておきたいんやけど?」「そんなに遅くなるつもりはねえよ。てか電話番号を教えておいてくれれば連絡するからよ。」そういうとはやては急いで持っていた手帳の一枚を破りトレインに手渡した。「はい、これや。」「おう。あとはやてひとつだけ言っておく。」「なに?」トレインは意を決したように言った。「俺はお前のとこで世話になってもいいとは思ってるけどよ、そうもいかねえんだ。」「なんで?どうしてなん?」悲しそうな表情をするはやて。正直トレインとしても言いづらい。「そもそも俺は一か所にとどまるような性質じゃねえからな。いずれこの街をを出ていくつもりだ。」「そ、そんな…。」「だがなお前がやばくなったら絶対に守ってやる。全力で。」いつになく真剣な表情で語るトレイン。その言葉には迷いなどなく信じるに値するだけの響きがあった。その表情でに少し見とれるようにはやては見ていた。「ほんま?」「ああ、だから…。」しかし、すべてを言い終わる前にトレインは何かに感ずいた。そうジュエルシードの気配だ。(わからねえ、最初の頃はなんにもかんじなかったが最近はいやに感覚が鋭くなっているような感じがしやがる。)ジュエルシードの感じる方向へ走りだそうとするとはやてが服をつかむ。「どこいくん?」「わりぃ、例のけりをつけなきゃなんねえことだ。」「戻ってくるんやろ?」そういうとはやてはさびしげな表情をした。トレインはそれを見て自分の首に下げている首輪をはずしはやてにつける。「これは?」「こいつは俺のお守りだ。決意の表れでもあんのかな。とりあえずこいつをお前に預けるぜ、必ずこいつを取りに戻る。」そう言うと一目散に走り出した。はやてはだまってその後ろ姿を見届け、つけている首輪を見つめた。一方公園ではすでにジュエルシードの暴走が始まっていた。ユーノにより結界が張られ人の気配はなかったが大樹の怪物が暴れまわっていた。なのはも攻撃を仕掛けるべく空中にいた。そして少し遅れてアルフとフェイトが現れジュエルシードを抑えるために攻撃を加えた。しかしその攻撃はバリアによって防がれていた。「なんだい、生意気にもシールドまで張れるのかい?」「今までのより強い、あの子も近くにいるみたい。」フェイトはバルディッシュを強く握り構えた。「いくよ、バルディッシュ!!」そう言うとバルディッシュから魔力の刃が出た。“Arc Savior”そして大きく振りあげそのまま振り下ろすとブーメランのように刃が根を切りはらいながら大樹に襲いかかる。なのはも負けじとレイジングハートを構え。「レイジングハート!!打ち抜いて!!」“Divine Buster”桃色の砲撃を撃った。しかし両者の攻撃は相手のバリアがよほど強固なのか防がれてそのまま押し切れずにいた。「なんてやつだい。フェイトだけでなくあいつの攻撃も受けてるのに。」アルフが驚愕の表情を浮かべ大樹を見据える。(フェイトはあいつにやられた傷も癒えてないんだ。このままじゃまずいよ。)そう危機感を覚えていると一発の銃声が聞こえた。ガンッ!!!そしてそのまま大樹に向かい命中するはずだがそれもバリアに防がれるがドォン!!!!着弾とともに爆発を起こした。「おいおい、炸裂弾も防ぐのかよ。」「えっ!?」茂みに隠れていたユーノが声のしたほうに視線をやるとそこにいたのはハーディスを構えたトレインだった。「トレイン君!?無事だったの?」「おう、心配掛けちまったな。」そう言うと大樹を見据えた。今までの相手とは一味違うのは今の一発で分かった。トレインの持ちうる手段の中で一番破壊力のある炸裂弾でもダメージどころかバリアすら破壊できない。(となると選択肢は一つしかねーな)そしてトレインは照準はそのままにハーディスを構えた。すると同時にトレインの体から稲光のようなものが発生した。大樹は最後に攻撃を仕掛けてきたトレインを標的にしたようで何本もの根がトレインに襲いかかる。「あんた、何やってんだ早く逃げな!!!」「トレイン君逃げて!!」なのはだけでなく敵であるアルフまでも叫んだ。しかしフェイトは地面を蹴りトレインに向かっていった。「フェイト!?」その行動にアルフが驚く。だがどう考えてもフェイトが駆け付けようとも間に合わない。フェイトもそう考えバルディッシュを構える。もう少しで根がトレイン届くというところでトレインは呟いた。「充電完了だぜ。」カッ!!閃光が見えたと思った瞬間に光弾が走った。ドゥン!!!!!その光弾は根どころか大樹の張っていたバリアまでも貫通し大樹を直撃した。すると大樹からジュエルシードがこぼれおち空中に浮き上がった。「す、すごい。」「な、なんてやつだい。フェイトやあのガキんちょの攻撃も防いだバリアを一発で。」ユーノとアルフがトレインの放った一撃は以前みたことがあったがあれほどの威力があるとは思っていなかった。その間にフェイトとなのははジュエルシードの封印をしていた。封印されたジュエルシードをはさんでなのはとフェイトが相対していた。「ジュエルシードに衝撃を与えてはいけないみたい。」フェイトがつぶやく。それになのはも同意する。「うん、昨日みたいになったら大変だし…。」なのははトレインに視線をずらす。「またトレイン君がいなくなったら困るし…。」「………。」フェイトは無言でトレインを見つめる。それに気がついたのかトレインはあろうことか笑顔を浮かべフェイトに向かいピースサインをしていた。「//////」それに直視できずごまかすように首を振りなのはに視線を戻す。なのははその行動を不審に思いながらもレイジングハートを握り返す。「それに、私のレイジングハートもフェイトちゃんのバルディッシュも昨日みたいになったらかわいそうだもんね。」「うん、だけど譲れないから。」そう言うと二人は互いのデバイスを構え振りかぶり、ぶつかりあおうとしていた。しかしその間に光が飛び込んできた。二人のデバイスをひとりの少年が受け止めた。「ストップだ!!」突然現れた少年は毅然とそう告げた。「ここでの戦闘は危険すぎる。」なのは、フェイトの両者は突然現れた第三者に驚きながら少年を見た。そして少年は言った。「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい話を聞かせてもらおうか?」その様子を黙ってみていたトレインだったが管理局という単語に聞き覚えがあった。(確かユーノが前に言っていた組織だったな。ますます厄介になりそうだな。)