このSSは魔法少女リリカルなのはとジャンプで連載されていたBLACK CATとのクロス作品です。設定等で多少の違いが出るかもしれませんがご了承ください。激しい轟音と光とともに一筋の弾丸が一人の異形とも見える男を貫いた。その男と相対するように一人の男が銃を構えていた。トレイン・ハートネットかつては秘密結社クロノスに所属する不吉を届ける存在、黒猫(ブラックキャット)と呼ばれる抹殺者(イレイザー)だった男である。その彼も過去の因縁により結社を抜け、掃除屋(スイーパー)に転身することになった。さまざまな戦いを経て彼はようやく過去との因縁にけりをつけることができた。目の前の男が倒れたのを確認すると彼も力尽きるように倒れた。薄れゆく意識の中彼の相棒、仲間の声が聞こえた。(スヴェン、姫っち。ケリはつけたぜ)掃除屋としてコンビを組んだ相棒が手を差し伸べるがトレインにそれに捕まるだけの力はすでになく瓦礫とともに飲み込まれていった。瓦礫とともに落ちてゆくなかトレインは一人の女性を思い浮かべていた。(サヤ、最後の最後まで面倒かけちまったな。)因縁の相手を打ち抜いた最後の力、炸裂・電磁銃。トレインは自身の力では彼女、ミナツキ・サヤが撃たせてくれたものだと感じていた。「ようやくあんたのところに行けるかもな。」トレインは自嘲気味の表情だった。しかしそれは突然の光とともにかき消された。(ダメだよ。)(サヤ!?)かつて自分が守ることのできなかった女性の声が確かに聞こえた。トレインは目を見開きあたりを見まわした。そこで彼はある違和感に気づいた。彼がいる場所があの崩れゆく城のではなく真っ白の何もない空間で空中にいたはずなのにいつの間にか地に足が付いていた。そして自身のすぐそばに彼女がいた。「あんたにこうして会うのも久しぶりだな。」「そうだね。」トレインの前に立つ彼女は記憶の中の彼女と寸分の違いもない笑顔を浮かべ立っていた。「さっきだめとか言っていたがどういうことなんだ?」「トレイン君。君はまだこっちに来ちゃダメってこと。」「だけどあんたと同じとこに立っているってことは…。」トレイン自身は自信がもう死に際にいることを感じていた。「うん、そうだね。でもまだ間に合うかもしれない。」「間に合う?」「そう、私が最後に力を貸してあげればね。」いたずらを考えている子供のような笑顔を浮かべてトレインのほほをなでた。「トレイン君はようやく私という過去にけりをつけて本当の自由を手に入れたんだよ。君はまだまだ生きなきゃいけないよ。」「だがあんたは!!」トレインの唇に人差し指をあて、首を振り「ううん、私は十分生きたと思うよ。そりゃもう少し君といたいと思うけどそれ以上に君にはもっと生きていてほしいんだ。」「サヤ…。」「いつか、またいつか会えるから。それまでは自由な世界を楽しんでみて。ね?」何かを悟ったようにトレインは笑顔を浮かべ「わかった。もう少し野良猫生活を続けてみるわ。」「うん、けどね。」「???」「ううん、なんでもない。さあ、あっちにある光のほうに行って。」彼女が指示したほうには確かにまばゆいばかりの光の塊のようなものがあった。「んじゃ、行ってくるわ。あんたも元気でな。」「うん。気をつけてね。」そこらへんに散歩に行くかの如くトレインは軽い足取りで振り返ることなくその光の中に入って行った。だがなんともないのは後姿だけであり、頬には一筋の流れ落ちるものがあった。(君が向かう世界、以前とは違うものでも君ならやっていけると信じているよ。)トレインは目をあけるとその場を見回してみた。どこかの山の中のようで自分が寝ているのが雑草の上だった。おもむろに立ち上がってみると先ほどの戦いがうそのように軽かった。むしろ軽すぎるほどだった。そしてすぐそばには壊れたはずの愛銃ハーディスが完全な形で存在していた。「確か銃口がいかれたはずだったが」ハーディスを持ち上げまじまじと見ているとある違和感があった。「なーんか、妙に視線が低いような気がすんな。」その時は特に気にすることなく人がいるところを探しに歩き始めた。しばらくして自身の姿を見て途方に暮れるトレインの姿この町、海鳴にあった。