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6月に、リビアのトブルクでイギリス軍が壊滅。
魔術師ロンメルの名がまた一段と輝きを帯びました。
いよいよドイツ、エジプトへ攻めこむぞ。
と英独紙それぞれのベクトルで書き立てますが、たぶんロンメルは動きません。
補給こないもの。
名将は、確実に負けるとわかってる戦いはしないものです。
チャーチル首相は進退を問われ、議会に不信任決議が出されました。
票数475対25で続投採決。
わかってましたけどね。チャーチル降ろして、じゃあ誰なら勝てるんだって話です。
動議を出す側も、も少し考えなさいよ。
しかしこの過程で交わされた議論は面白かった。
英国流のアイロニーをもって「どうしてドイツはこんなにも強いのか」という分析をしてるのですが。
戦車を発明したのはイギリスで、戦術を生みだしたのはフランスだ。
それを完璧に分析しえたドイツ人が最終的に使いこなしたわけだぞ。
みたいな。
日本人も、独創性はカケラもないくせに要領の良さと手先の器用さで世界市場に喰いこんでいくと、戦後の一時期、言われるようになりますが。
民族ごとにそれぞれの得意分野って、たしかにあると思いますよね。
それぞれの長所を、うまいこと組み合わせれば、最強じゃん?
まずは小さいチームでいいから。息が合えばね。
それはそれとして、チャーチルはルーズヴェルトに更なる支援を懇請しました。
太平洋戦線への割り当てが、また、心許なくなります。
マッカーサーが、怒っています。
もっと怒ってるというか、泣きじゃくってるのは、重慶政府ですね。
自分たちを見捨てないでくれと。
同時に英米中の間における軋轢も、いろいろと表面化してきました。
新たなるキーパーソンは、ジョセフ・スティルウェル連合軍中華方面参謀長。
本人みずからマスコミの前に立ち、力強いストーリーに仕立てて語りたがる。
リーダーシップありきなのはマッカーサーと同様で、アメリカ人らしいなあとは思う。
一方で国府側の声明が、チクリチクリと、スティルウェルへの不満をにじませてます。
これが最近、けっこう露骨になってきた。
国民政府にいわせれば、スティルウェルは在華歴も長く、中国語に堪能だけれども、中国人をバカにしていて、とくに蒋介石主席への見下しぶりがひどい。
重慶向けに送られた品々を私物化するばかりでなく、作戦指揮を独断専行で決定し、国府への通達をしないことすらある。
スティルウェルもスティルウェルで、事あるごとに反論してますが、確かに中国人を見下している。
これは人事の失敗じゃないかなあ。レイシストを対象地域に派遣しちゃいけないだろ。
とはいえ連合軍として統帥を一元化するならば、長を決め、権限を与えねばならない。
国府側の本音は、作戦指揮を自分たちで仕切り、米英はそれに援助をしてくれるだけでいてほしい。というのがあからさまなのですが。
さすがに、それはない。
純粋に軍事的な評価をするなら、国民政府には指揮などまかせられません。
そこは、わかってもらいたいかな。
国民政府も、一枚岩ではありえない。
でも蒋政権が長く続いたせいで、皆がそれに合わせているのが実情です。
元来、中国人は、きわめて個人主義の強いアイデンティティを形成しながら社会の一員となる過程を踏んで、成長するものです。
まとまらない民族なんです。
それが強さでもあり、弱さでもある。
軍隊になると弱い。
けれども強烈な個性の家長を中心とした家族経営となると無類の強さを発揮する。
そこは、それぞれの得意分野という範疇で、ひとまず理解しておきたい、と思う。
ただ、スティルウェルだって、せめて蒋へもう少しリップサービスすればいいのにと思います。
無駄に敵をつくる必要もない。今の国府なら、蒋ひとり味方につければ他の者は逆らいません。
そこを疎かにするから、重慶政府の全員から怨まれて、批判を一身に浴びる。
こんなところから、隙が生まれますよ。
日本人は、相手の隙を突くの上手いですからね。
ゆめゆめ、油断めされるな。