ヶ原「『みどりの日』って存在が謎よね」
駿河「え、うん?何がだろう」
ヶ原「『自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ』という趣旨の祝日だけれど、正直な話『へー、ふーん』と言った感じじゃない?率直な感想を言うとゴールデンウィークの連休を確保する為の辻褄合わせな気がするのよ」
駿河「あー、言われてみれば確かに趣旨がすこし曖昧な気もするな。みどりの日は確か、昭和の日が新しく祝日に台頭してきた時に、元々のみどりの日である4月29日に昭和の日が収まったため、追いやられる形で5月4日に移ったんだったか」
ヶ原「ええ、そうよ。しかも、ちびまる子ちゃんに出てくる『みどりちゃん』は友蔵の友人の孫で、さくら家には全く血縁関係がないのに視聴者から勝手な思い込みで従姉妹だと思われている挙句、まる子ちゃんとは学校も違う癖に藤木君なんかに憧れているという散々な扱いだし。ギリシャ神話でヘラクレス踏まれたからという理由で星座になった蟹座の扱いと同じくらいに、みどりの日が祝日と名を受けている事がちょっと信じられないのよ」
駿河「へぇ・・・蟹座ってそうなんだ・・・へぇ・・・って、いやいや、多分みどりの日とみどりちゃんは名前が似ているだけで特に関連性ないだろう!先輩はみどりちゃんに何か恨みでもあるのか!?というか藤木君はもっと関係ない!藤木君なんかにって普通に酷いな!人の好みは千差万別なのだから」
ヶ原「祝日を享受しておいて何なんだけど、本当、癪で堪らないのよ。思い出しただけで左まぶたが痙攣してきたわ、私って子供の頃から興奮すると眼輪筋がピグピグいってちょっと暴力的な気分になるのよね」
駿河「先輩の暴力は私が余すところ無く受け止めよう!だから安心してくれ、一体何がそんなに気に食わないのだ」
ヶ原「だって、私ってば子供が嫌いだしね。そうそう『なんとかだしね』と言うと『なんとかだ、死ね』と言っているみたいね。『私子供が嫌いだ、死ね』」
駿河「本当だ」
ヶ原「簡単だ、しね」
駿河「先輩?」
ヶ原「阿良々木君だ、しね」
駿河「戦場ヶ原先輩の今の顔、八九寺ちゃんだったらクリアファイルにしたいとか言い出しそうな程、活き活きとしている」
ヶ原「それなのに、みどりの日に比べて何よ、ゴールデンウィークの祝日における五月五日の知名度の一人横綱感」
駿河「あー、幼稚園児に5月5日は何の日か聞いても『男の娘の日』と答えられる程度に教育として行き届いているしな」
ヶ原「そう、『こどもの日』として根付いているわ。それと神原、男子の健やかな成長を祝うお祭りに乗じて幼稚園児に妙な英才教育を施さないで、娘(むすめ)と書いて『おとこのこ』、と読まないで頂戴。手遅れになるのはもっと大きく育ってからで遅くはないのだから」
駿河「凄い台詞だな、手遅れになるのはもっと遅くなってからで構わないって・・・」
ヶ原「強い男の子の象徴として桃太郎や金太郎なんかがモチーフとして五月人形と一緒に連想されるけどあいつ等全然たいした人物ではないのよ。みんなあいつに騙されている」
駿河「子供に対して全く容赦がないな、一体何がたいした事ないのだ?桃太郎なんて鬼退治をして宝物を持って帰ってくる英雄じゃないか」
ヶ原「英雄ですって?貴女、一体、桃太郎の何を知っているというのかしら」
駿河「えっと、桃から生まれた桃太郎がおじいさんおばあさんに育てられ、悪さばかりをして村人を困らせる鬼を懲らしめに黍団子をもってお供の犬、猿、雉を連れて鬼が島へ行き、宝物を持って帰る話だが、実に勇敢ではないか」
ヶ原「ハッ、だから貴女は愚かなのよ」
駿河「罵られた!うれしいな」
ヶ原「私は鬼が島に押し入った桃太郎こそ悪だと思っているわ」
駿河「ああ、鬼側からみたらそうなのかもしれないな」
ヶ原「桃太郎が鬼ヶ島に行ったのは宝を獲りに行くためよ。許されるのかしら?宝物は鬼が大事にしていて、宝の持ち主は鬼なのよ。持ち主のいる物を理由もなく獲りに行くなんて、桃太郎は盗人と言うべき悪人ね。例えば、もしその鬼が悪者で世の中に害を成す存在ならば、桃太郎が鬼を懲らしめることはとても勇敢な事だけれ、宝を獲って家に帰り、お爺さんとお婆さんにあげたのなら、これはただ欲のための行為であり卑劣よ」
駿河「あー、えっと、うーん」
ヶ原「それに家来が犬、猿、雉って何?桃太郎さんは一人旅に出られる年齢になっても一緒に旅が出来る友達の一人も居なかったのかしら。きっとお爺さんお婆さんが年を取ってから出来た子だからさぞかし甘やかされて育ったのね、きっとクラスに一人か二人くらい居るような寡黙で根暗な何を考えているのかわからないような不気味なやつだったのよ」
駿河「先輩は鬼か!?どうしてそこまで子供をいじめられるのだ」
ヶ原「あら、才能を褒められて私はちょっといい気分よ」
駿河「いや、褒めてはいない、褒めてはいないんだ戦場ヶ原先輩、褒めキャラの私でも褒められたものではないと思ってしまった」
ヶ原「で、金太郎よ」
駿河「聞こう、金太郎が一体何をしたというのだ!」
ヶ原「それ」
駿河「え?」
ヶ原「金太郎って、何をした人なのよ」
駿河「言われてみれば・・・足柄山に住んでいて・・・熊と相撲をしたり跨って馬の稽古をしたり・・・え、本当だ、金太郎は一体何をした人なのだろう」
ヶ原「御覧なさい、そもそも大した実績もない男を、男の子の健やかな成長を願う日の象徴に祭り上げるのが間違いなのよ。きっと会社で言ったら『営業成績は悪いけど、社員間の人当たりが良くて出世していく男』みたいなやつなのよ金太郎は」
駿河「ある意味才能だな」
ヶ原「そう考えると、サラリーマン金太郎って凄いネーミングセンスよね」