これはひどいオルタネイティヴ43(後編)①2001年12月07日 午後「う~ん……」「……ッ……」――――尚、面会するに当たって白銀少佐はベット上にて対応されたし。「あのさ唯依」「は、はい?」「これって腰掛けてもOKだよね?」「……平気かと思います」ゆーこさんに渡された用紙に"そんな事"が書いてあったので、紙を手に唸る俺&横から覗き込む唯依。結果 僅かな会話で"ベッドに端座位になった状態で面会する"事に決め、唯依は俺の横に直立している。俺も立っていても構わないんだけど、軍人として書かれた事は守らねばならない……ゆーこさん怖いし。……まぁ、実際 俺は見くれの様に負傷した事になってるから、言われた様に"段取り"が重要なのだろう。「…………」「…………」≪コンコンッ≫「どうぞ~」「はっ! 失礼致します!! ……ッ」「……(やはり私を見て僅かに……)」「昨日の早朝 以来ですね~? 軍曹」「は、はい! 先日は本当に御疲れ様でした!!」「そっちこそ」「御体の方は宜しいのですか?」「あはは。見た目は"こんな有様"ですけど、3日もすれば治るみたいです」「!? それを聞いて安心しました……何せ……」「何せ?」「あの娘達が予想 以上に心配するモノですから毒され、万が一と言う事も考えていました」「だったら早く安心させてやるに限りますね~」「そうですね」16時ピッタリになると、ドアをノックして まりもちゃんが素早く入室し凛々しく敬礼して来る。対して俺も座って敬礼を返すと、僅かに彼女の瞳が開いた気が……ひょっとして立つべきだった?嗚呼、確かに座ったまま敬礼なんて聞いた事 無いしな~。でも用紙に書いて有るからダメなんだよね!よって まりもちゃんに心の中で謝りつつ会話するんだが、彼女の入室 直後から気になっていた事が有る。それは彼女が先程から"とある物"を持っているからで……会話の区切りを見計らって聞く様にした。「ところで」「はい?」「その"花束"は何ですか?」「えっと……不躾で申し訳有りませんが御見舞いの品です」「ほ~」「受け取って頂けますか?」「勿論ですよ。……でも、良く拵えられましたね~?」「あの娘達が摘んで来たのです。……僅かに私が用意したのも混じっていますが」「見事な花束だと感心するが、何処も可笑しくは無いな」「あ、有難う御座います。きっと皆も喜びます」「……(そ、そう言えば私も御見舞いの品を用意して置くべきだったわ……!!)」「篁」「……(神宮司軍曹 達は当たり前の様に……反面 何て気の利かない部下なの? 私は……)」そう花束。まりもちゃんは敬礼もソレを片手に行っており、別に花は好きじゃないけど気遣いは嬉しい。しかも摘んで来たとか……PXには流石に花なんて売ってないから必然的に"そうなる"んだろうけど……G弾ボコボコ撃ち込まれて自然がオワタ此処 横浜基地で良く見つけたよな……凄過ぎだろ常識的に考えて。んでもって まりもちゃんや珠瀬ならともかく、慧らが野花を探すのは想像 出来ないので何だか笑える。決して"花束"と言う程の多さでも無いんだが……この品に対する感謝の気持ちは留まる事を知らないッ。そんな事を近寄って来た まりもちゃんから花束を受け取った直後に考え、俺は篁を見て声掛けしていた。「篁? 篁ってば」「!? す、すみません……何でしょうか?」「……コレ頼めるかい?」「あっ……はい、分かりました」「すみません篁中尉。余計な手間を」「いえ構いません」――――俺から花束を受け取った唯依は、洗面台へと歩むとソレを空の花瓶に納める作業を開始した。「ところで話は変わりますけど」「はい」「そろそろ207B分隊が任官する事になるみたいです」「!?」「ようやくってトコですかね~?」「そ……そうですね。思えば長かったです」「解体式は近いうちに有るみたいなんで、軍曹にも予定の報告が来ると思いますよ」「そうですか」「其処で軍曹の"待遇"なんですが」「……私の?」「B分隊は任官したらA-01に配属されるんスけど、軍曹には俺の部隊に入って貰います」「えぇっ!?」「ありゃ。やっぱ嫌でした?」「と、とんでも有りませんッ! 御招き頂けて光栄です、白銀少佐!!」「何と」「今や白銀少佐の纏める"突撃機動部隊"は世界有数の戦術機小隊だと専らの噂ですッ。 よって入隊の暁には、その"名声"に恥じる事の無い働きをさせて頂く所存であります!!」「…………」×2「(う、噂って……)」「(恐ろしいわ……)」「(ついに……ついに白銀さんと"本当の意味"で一緒に戦える時が来たのね……!!)」――――何だか興奮してる まりもちゃんだけど、入隊は只単に人数が足りない為だとは言えないZE。「HAHAHA、まぁ期待させて貰いますね~?」「はっ! ……えっ?」≪ぽんっ≫(頭に右手を添えた音)「でも……少し肩の力を抜いた方が良いですよ?」「!?!?」「……(やはり神宮司軍曹も彼を……でも今は振り向くダケ野暮と言うモノね)」「軍曹~っ?」「……ッ……」【ヘブン状態!!】「軍曹ってば」「あっ!? すすすすみません!! 助言を有難う御座いましたッ!」「いや助言って程のモンじゃ」「そ、それでは白銀さんッ! 私はコレで失礼致します!!」「榊達に宜しく言って置いてください"まりもちゃん"……って」「!?(し……しまった、動揺して人前で彼の事を……!)」「……(さん付けて呼ばれたから、つい言っちゃったぜ☆)」「……(後出して"ちゃん付け"されたのも、きっと白銀さんの咎め……浮かれ過ぎにも程が有るわッ)」「……っ……」≪た、武さん♪≫≪何だい? 唯依ちゃん≫(キリッ)「今のは失言でした。も、申し訳有りません」「いやいや、こっちこそ迂闊でした」「……(ま、まさか神宮司軍曹を"あんな呼び方"で……何て羨ましい……)」「では改めまして私はこれにて」「わざわざアリガトでしたァ~」≪――――バタンッ≫「ふ~っ」「…………」「へぇあ」俺の部隊に配属される事を まりもちゃんが大袈裟に喜んでくれた事から、調子に乗った結果がこれ。つい立ち上がって頭を撫でてしまったダケでなく、唯依が居るのに"まりもちゃん"と呼んでしまった。"白銀さん"は全然OKだが"ちゃん付け"はマズいだろ……されど先にフォローを入れてくれる軍曹サマ。いっその事 唯依が居る時は公認にしようかな? そう考えるも まりもちゃんは素早く退室してしまう。よって苦し紛れに汗を拭う仕草をしてみると、何時の間にか近くに戻って来た唯依。一歩 後退する俺。「…………」「ゆ、唯依さん?」≪ぷく~っ≫――――ビビッて腰を引く俺を見上げながら頬をフグの様に膨らませる唯依。怖いが可愛いんですけど。「座ってください。武さん」「はい(……すっかり忘れちゃってたんだ☆)」「次は月詠真那 中尉ですね」「そうだねェ」「次は守る様にしてください」「わ、悪かったよ」「……(あからさまな嫉妬……自分でも分かっている筈なのに……)」唯依に言われてベッドに再び腰掛けると……彼女は次の面会の時間まで口を訊いてくれなかった。あちゃ~、こんな事になるなら頭撫でたりするんじゃなかった! まりもちゃんにも嫌われたっぽいし。だったら次はマジで自重だな。相手も月詠さんだし真面目に対応しないと俺の寿命がマッハになりそうだ。……………………数分後。「そろそろかな?」「その様です」≪コンコンッ≫「ど~ぞ~」「失礼します」「いやはや先日はどうも」「此方こそ」まりもちゃんと同様 時間通りに月詠さんが入室し、敬礼と共に当たり障りの無い挨拶を交わす。ちなみに俺はベッド上で敬礼しており、月詠さんは何故か黒いビニール袋を持って訪れて来ていた。今現在ではビニール袋を地面に置いており、その際には"ゴトリ"と謎の音が室内を響かせている。「そう言えば神代達は何をしてるんですか?」「我々は何時もと変わり有りません。今朝もシミュレーターを利用させて頂きました」「へぇ……熱心なモンですね」「いえ必然です」「必然って?」「あの状況で"動けた"のは白銀少佐のみでしたから……まだまだ私達には危機感が足りなかった様です」「……(そもそも俺以外 気付かないのは仕方無いんだが……)」――――あのハプニングを防ぐ勘を得るのは流石に無理と分かっていても、更に精進する気持ちって事か?「我々4名のうち一人でも狙撃に反応出来ていれば、SⅡ型で沙霧大尉を庇った白銀少佐……及び、 同乗する冥夜様に危害が及ぶ事など有りませんでした。もはや斯衛としての面目が有りません」「……(大体当たってそうだな~)」「故に神代達は白銀少佐の容態が気になって居た様ですが、今は私も含め鍛え直すべきかと存じまして」「いやいやいや、反応 以前に突然 現れた米軍機を怪しいと思ったから対応 出来たダケですって!(嘘) 流石にイキナリ発砲されたんじゃ~俺だって庇えませんでしたよ……って言うか不可能だと思います」「……(イルマ少尉の事は隠しているのね)」「な、成る程。唐突にラプターが4機 現れた時は"そんな事"など思いもしませんでした」「だから勘じゃなくて"偶然"気付けたダケですってアレは」「いえ。流石は白銀少佐です(……冥夜様や殿下が認められるのも頷けると言うもの)」「買い被りすぎですよ。むしろ月詠中尉には"冥夜"を危険に晒してスイマセンって心境ですし」「!?」「……(し、しまった! つい"冥夜"って言っちまったぜ☆)」≪――――ザッ≫ ←跪く真那「……って何 やってるんですか中尉!? 頭を上げてくださいよッ」「つ、月詠中尉?」「白銀少佐」「はい?」「先ずは謝罪 致します。初めて御会いした時からの数々の無礼……本当に申し訳有りませんでした」「別に気にしてませんって」「また"あの件"に置いては自分の体も省みず、冥夜様の身を守って頂いて感謝しております」「ソレも俺が同乗させたダケなんで当たり前とゆ~か何と言うか」「そして"1人の仲間"として接して頂けている事……貴方の存在無しに今の冥夜様は無かったでしょう」「お、大袈裟ですって」「買い被っているつもりは有りません。今の冥夜様にとって、もはや白銀少佐は欠かせない方です」「それほどでもない」(謙虚)「……ッ……ふふふ、貴方は本当に……(面白い人です)」「それより顔を上げてくださいって」「はい」「ともかく、めい……御剣は絶対に死なせたりはしませんから、大船に乗った気で見守って下さい」「白銀少佐。もう私の前で冥夜様の呼称を気にされなくても結構ですよ?」「そうッスか」「私の事も好きに呼ばれて結構です。……元々の階級も有りますから」「えっと、じゃあ……真那さん?」「――――ッ」(ドキュン)「あっ? いや、もう一人"月詠さん"が居るみたいですし」「いえ……そ、そう言う事で無くとも構いませんのでッ(……何だ? 呼ばれた直後 胸の辺りが……)」「なら良かったです」イキナリ真那さんに跪かれてビックリしたが、原作と同様に彼女は白銀の事を認めてくれた様だ。しかも"月詠中尉"でなく名前で呼んで良いらしく……やっと許しが出たかッ、封印が解けられた!!ぶっちゃけ前述の通り単純に真耶さんと会ったから"真那"にしたんだけど、許してくれた様で安心です。呼んだ直後 一瞬とは言え表情が硬くなってた時は失禁しそうになったが、要は結果が全てなのだから。≪た、武くん♪≫≪何です? 唯依さん≫(キリッ)「……(こ、コレも悪く無いかもしれない……)」「さて。こんな我々とは言えどXM3等の恩恵も有り、技量は全体的に上昇している様です」「ソレは間違い無いと思いますよ~? 決起軍に対する戦果も凄まじかったですしねェ」「ですが斯衛軍……いえ帝国軍に置いての実装は、まだまだ先の話になりそうですね」「その辺は大人の事情ってヤツですよ」「となると……やはり人類によるハイヴ攻略の鍵は、横浜基地が握っている事になります」「そうなるのかな~?」「はい。よって歯痒い限りですが、我々は冥夜様達を影で支える事しか出来ません」「……真那さん……」――――そう言えば桜花作戦で冥夜達を見上げるダケだった彼女達は どれだけ癪だったんだろうか?「例え冥夜様が死地へと赴く事になろうとも……(その可能性は十二分に有る……だが……)」「……ッ……」「……("この方"であれば冥夜を本当に守ってしまうのでは無いだろうか? 先日の様に……)」「大丈夫ですって」「えっ?」「さっき"俺が言った事"を思い出してくれません?」≪ともかく、めい……御剣は絶対に死なせたりはしませんから、大船に乗った気で見守って下さい≫「!? あ、あれは――――」「冗談だと思いました?」「そう捉えた訳では……ッ……いえ。冥夜様が遂に衛士となられる事から、いささか不安も有った様です」「見事な忠誠だと感心するが何処も可笑しくは無いな」(キリッ)「そ、それ程でもないです(……時より彼は凛々しく発言する……それが本来の"白銀少佐"なのか?)」――――まさか真那さんから今の返答が来るとはッ。さて置き、そろそろ頃合だし気になった事を聞こう。「ところで真那さん」「何でしょう?」「その黒いヤツに入ってるのは何なんですか?」「これは……盆栽ですね」「ぼ、盆栽ィ~?」「神代少尉が拵えたモノでして、白銀少佐に是非 渡して欲しい……と」「だったら神代って」「はい。盆栽を育てるのが趣味なんです、あの娘」「…………」×2………………こうして真那さんとの面会が終わり彼女が退室すると、当然の如く残される今回は動かなかった俺と唯依。そんな病室の端の棚には花束が活けられた花瓶が置かれ、その横には神代の盆栽と若干シュールな光景だ。されど盆栽を育てるのって難しい筈。だったらB分隊に重ねて神代にも後で礼を言っとかないとならんね。でも見舞いに盆栽は縁起が悪いんじゃなかったっけ? いや人がバタバタ死ぬ"こっち"じゃ関係無いか~。ンな事を思って座ってる中、真那さんとの会話中ブツブツ呟いてた唯依が壁の時計を見ながら口を開くと。「時間ですね」「把握」≪コンコンッ≫「どうぞォ~」「失礼」――――先程の まりもちゃんと同じく、今度は立派な花束を抱えた"月詠真耶"さんが入室して来た。「なぁなぁ雪乃~ッ、大丈夫だったかな~? 受け取ってくれたかなぁ?」「平気なんじゃない? 白銀少佐の趣味はともかく、貴方の腕は一流だし」「と言うか巽……さっきから何度目ですの? 同じ事を聞いて来るの……」「だ、だって盆栽って良く考えてみれば やっぱアレだろ~? 怒られないかって」「けど本当の意味で"ゆっくり療養して欲しい"って意味でも有るんでしょ?」「確かに以前から白銀少佐は頑張り過ぎな気がしましたから、良いメッセージだと思いますわ」「だけどォ」「そんな情けない顔しなくても平気よ。真那様も良い灸だと思って渡す事を承諾してくれたんだから」「最初は"コレで少佐が少しでも自重してくれれば私は満足だよ(キリッ)"……とか言って置きながら、 今更になって其処までオタオタするのなら、最初からアレを渡さなければ良かったですのに」「(この娘達は全く……それよりも次は真耶か。やはり殿下の白銀少佐に対する信頼は大きかった……?)」●戯言●やっと真那さんのフラグを立てられた&篁中尉が便利すぎる件。今回は短いので次回は極力早めに。(確実)