その時、それは覚醒を果たした。自分は死んだはずだ。いやもともと生きてもいなかったかもしれないが、それでも己が己であることを認識したそれは、目覚めたことを外のモノに伝えた。
驚愕しつつも、外に居た老人の姿をした『同類』は、急いで自分を透明な容器の中から出した。
己の周りを満たしていた水に似た液体が少し部屋に溢れつつも、男は構わず立ち上がった。
「お目覚めの気分はいかがでしょうか?」
恭しく聞いてきた老人の擬態の同類、その手に黒い衣を持っていたので奪い取るようにしても、それは感情一つ見せなかった。
「最悪ではないが、最高でもないな……俺を蘇らせたのは貴様か?」
「はっ、この『地』ではドレカヴァクと名乗っているものでございます」
敬服している老人。それを聞きながら衣を着込む。悪くはない。むしろいいぐらいだ。そして太陽の光が無い暗い部屋であるのが気に入った。
胸元まで届く長い髪を流した一人の若者は、何故自分を復活させたのかを聴くことにした。
「単純に申せば暇つぶしでありました。しかしながら、その身を再生させていく内に、その身は我らが主に近いものであることを認識してからは……この通りですよ」
「嘘偽りを言わなかったのは感心だ。殺し食うことだけは簡便してやろう。そもそも俺にとっては貴様らよりは人間の生き血の方が美味なのだが」
膝を折り、館の主人にすら見せない敬服の態度を取る老人。そんなことは知らないのだが、それでも若者は満足した。
己は本来、破邪を司る存在だった。イザナギと呼ばれる主神によって「神」と称することを許されていたはずだ。
だが――――投げ込まれた先に漂う瘴気と闇が、己に自我を目覚めさせたときに―――その性質を反転させられていた。
「褒美をくれてやる。俺を蘇らせてどうしようというのだ?」
しかし、いまとなってはそんなことはどうでもいいこと。己を使って成し遂げたいことがあるというのならば、それを達成させてやろうと思い、問いかける。
既に滅んだ故郷を取り戻すために、己に協力した比売巫女(ひめみこ)のように一応は目的を聞いておく。
「人の世を覆したいのですよ―――。かつてあった我らが「世界」のためにも」
そうしてドレカヴァクは語る。自分達の理想世界―――それは『若者』にとっても理想ではあった。
「俺にとっても太陽の女神を祖とする連中は忌むべき存在だ。ドレカヴァク、貴様の願い―――曲がりなりにも、神の一柱として聞き届けてやろう」
「ありがとうございます。しかし、その為にも……」
「まずは軍団を組織する。山野の虫獣を「妖」としてお前の仮初の主の軍団の一つとして参加させてやろう。あれから幾らの年月が流れたかは分からぬが、世界には人が鼠のように溢れ、それ以上に獣達も多くなっていよう」
言葉を吐き出す度に溢れ出る瘴気が、妖気が、この男の格を教える。まさに我ら女神の眷属とも違う力の限りだ。
「我らが母と類縁にして、全てを闇に覆い尽くすもの―――オオカムヅミノミコト」
拝礼をしたドレカヴァクに対して、苦笑をしながらその「魔人」は語る。
「その名前は既に喪われている―――俺を呼ぶならば――――」
――――桃生(モモウ)とでも呼べ――――。そう言った若者の姿をした「同類」の眼は暗く、それでも妖しく輝いた。
† † † †
「つまりその『モモウ』なる邪神を殺すために、あなたのご先祖様は戦ったというの?」
「そういうことだ。もっとも俺はここまで大事になる前に決着を着けたかった。こんな話、人に聞かせたって怖がらせるだけだしな」
果汁水―――桃を潰したものを飲んで、口を湿らせる。
「だが現実には、そういう連中は人の世に紛れ込んでいる。モルザイムにて人間をああいう存在に変えたのが、公爵家に近いところにいるんだろ?」
「確証は無いがな」
エレオノーラの言葉に推論を述べておきながら、彼らの目的が何であるかが分からない。
「この辺りでは神話・御伽噺の類はどんな風に伝わっているんだ?」
「家事の精霊キキーモラ、湖の精霊ヴォジャノーイ、碾臼の魔女バーバ・ヤガー、漆黒の妖猫オヴィンニク……まぁ色々居るわ。実在するかどうかで言えば一つしか知らないけれども」
「名前がそうだからと、それそのものである確証も無いしな」
もっとも、あのブリューヌでの武芸大会で襲ってきた蛙男は、確実にヴォジャノーイだろう。
「……バーバ・ヤガー……」
「リーザ?」
虚ろな目で虚空を見るリーザだが、こちらの言葉に気づかされたようで、何でもないと言ってくる。
何でもないわけがないのだろうが、とりあえず今の追求は止しておく。そうして議論は進む。
「お前はティグルをそんな戦いに巻き込むために、わざわざ海を渡ってきたのか。気に食わん」
「ウラは、人知れず決着を着けたかったと言っているでしょうが、第一この問題は西方の人間である私達の問題」
「義兄様はヤーファの人間にも関わらず、それをしてくれていたのよ。恩を感じることあれども恨みを言う道理?」
「この男がやって来たから、その魔物とやらは動き出したという可能性もある」
怒りながら庇い立てしてくれている二人には悪いが、エレオノーラの可能性は自分も考えていたことだ。
そう考えれば、自分は西方と中原を無用な騒乱に巻き込んでいる元凶なのかもしれない。
「けれど―――リョウが来てくれなければ、僕はいなかった。ここには、もしかしたらば「この世」からもね」
「―――それはずるい意見だサーシャ」
サーシャの言葉はある意味、エレオノーラに反論をさせない切り札である。結局の所、ティグルを危険なことに巻き込みたくないエレオノーラだが、それでもそこを突かれると反論しきれない。
まさか東洋の医術に、彼女を癒す手法があったなど誰も分からなかったのだから仕方ない。
そうしてヤーファという国が自分を送り込んできた目的は、そこなのではないかとソフィーは聞いてくる。
「サクヤ女王陛下はあなたにそれを滅ぼせと命じたの?」
「少なくとも俺の国の経験上、生かしておいていい類の存在ではないな。ただサクヤもその辺は『お前に任せる』としか言ってこない」
サクヤの神託は「魔弾の王を探せ」であり、魔物は「そんな気配がするから殺して来い」。魔物の方がついでなのだ。
寧ろ、魔弾の王がどの「道」を歩くかが、焦点となるかもしれない。
「この西方の魔が何を目的としているかは分からない。だが人の社会に魔性の力を用いるならば、それは俺の敵だ」
結局の所、魔物という存在に関しては何も分からなかった。しかしそういう存在がそこかしこで何かしら暗躍をしているのは確認しあえた。
とはいえ『会議は踊る。されど進まず』で終わってしまったのが、なんとも間抜けな結果だ。
「一番歴史が古い当家が魔物に関して直接、間接でも何も無いのが申し訳ないです」
「出会わなければ、それでいいと思うぞ。何かあればお互いに確認し合おう」
ミラの落ち込むような言葉だが、そんなもの無い社会の方がいいのだ。
人が神を自称していた時代は終わりを告げた―――。よくサクヤが言っていた言葉だが、その言っている当人こそが『先祖帰り』しているのだから、何とも皮肉な言葉だ。
そうして魔物に関しては、特に明確な対策は無かった。ただそういった存在が出てきたならば、一般兵士達にそこまでの対応が出来ない。矢面に立つのは自分達だと確認しておいた。
「義兄様……やはりお心は変わりないのですか?」
集められた部屋から出ると同時に、ミラから声を掛けられる。ミラの心が分からないわけではない。
だが決めたのだ。だから曲げられない。
「――――承知しました。では―――これを」
部屋に入った時から目にはしていたが、それでもここまで触れなかったもの。
丈夫な布に包まれた物干し竿以上の「長物」。それをミラから渡される。中身をさっ、と検分すると注文どおりのものであった。
「確かに受け取った」
そして、今後もしかしたらば敵に回るかもしれない自分にこれを渡すということは……一種の決別状といったところか。
落ち込みつつも気持ちを切り替えたミラの相貌を見て、視線で意を伝え合う。
「それでは―――どんな形であれ、ご武運祈っております」
一礼をしてから、言葉少なく彼女は回廊の向こうに去っていく。彼女にも通すべきものがあるのだろう。それは理解している。
その小さい背中に背負うものの大きさ、それを支えあえるのは―――――恐らく俺ではないのだから。
「彼女も辛い立場だね」
「分かっている。それで二人はどうするんだ?」
次なる話の相手はサーシャとソフィーだった。
「その内、向かうさ。ただ積極的な支援は出来ないよ」
「私としては、エレンが惚れ込むほどの男の子に早く会いたいわ……けれど直接的な評価は下せていないから」
サーシャは海の情勢が穏やかではないことから、ソフィーは、まだティグルと会っていないからゆえ。
それぞれの思惑を理解はしている。だが、二人はブリューヌの二大公爵に着くことはないと言ってくれた。それだけで十分だ。
最大の問題は―――――。サーシャとソフィーから目を離して、反対側に目を向ける。そこにいたのは紅髪の戦姫。
その顔は、やはり落ち込んでいるようだ。いい加減に罪悪感が出てきてしまう。まさかここまで二人が落ち込むとは思っていなかった。
戦姫だなんだといっても、所詮は自分と変わらぬ年齢の少女なのだ。それで言動や気持ちを抑えきれるまでには達観できないのだろう。
「君はどうするんだ? リーザ」
「……分かりません。けれどテナルディエ公爵との付き合いは先代戦姫からでミラよりは融通が利きます……」
「けれど君には唯一の取引あるブリューヌ貴族だから、どうにもならないといったところか?」
「そういうことです……。それとウラ……いえ、何でもありません……」
どうにも口ごもりがちだ。彼女にしては歯切れが悪いというか、ブリューヌのあれこれなどよりも心配事があるのだろうか?
だとしたらば……そちらを優先することもありえる。
「何でもないというのならば、もう少し明るく振舞ってくれればいいんだがな。ヴァリツァイフのように」
失礼な。とでも言うように何回も明滅をする黒鞭。それに彼女も少しだけ笑う。微笑といったところであるが、それでも彼女の暗い表情が晴れる。
「ごめんなさいウラ、心配事は私で解決してみせます。だからご武運お祈りしています」
務めて明るく振舞った様子のリーザ。その無理やりながらも振り切った笑顔を見ながらも、安心など一つも出来ずに、『保険』をかけておくことにして見送る。
彼女の無理無茶ほど俺のお袋を思わせるものはないのだから――――。
そうしているとタイミングを見計らったかのようにモルザイムで共闘した戦姫三人が出てきた。
既にサーシャとソフィーもいなくなっていたのを考えると実際、見計らっていたのだろう。
「私はこれから一度ライトメリッツに帰ってから、所用を済ませて別荘にて合流する。お前達はどうするんだ?」
「直接向かうさ。―――疲れるだろうが頼むよ」
「本当、あなたの前では尽くされるタイプというより尽くすタイプになってしまう自分に少しおかしい気分です」
「私も同乗させてもらって構わない?」
オルガの言葉に笑顔で諾と頷いたティナを見てから、出発は半刻後にと頼んでおき、他の所用を済ませることにしたのだが―――今度はエレオノーラが少しバツが悪そうな顔をしていた。
どうにも今日は年下か同年のものに不幸な顔をさせがちであり、何か言いたいことがあるならば聞くと、エレオノーラに言うと、意を決して彼女は口を開いた。
「すまなかった――――そして、ありがとう」
「何のことだか分からないな。特に謝罪も礼も言われるようなことあるか?」
「一つ目は、先程の議場で、あのような言い方をしたことだ。お前は、そういった人間でないことは分かっていてもティグルを巻き込んだ風に思えて仕方なかった」
それに関しては仕方が無い。自分も半分そんな風にも思っていたからだ。
しかし殊勝なエレオノーラというのは貴重なもの。それを茶化さずに今は聞いておく。
「ありがとうというのは?」
「ティグルの「力」を黙ってくれていたことだ。これに関しては二人もそうだが」
「無闇に話すものではないと示し合わせたのはあなたのはず。信頼しろとは言いませんがもう少し信用しては?」
と言うのが、謀略家として内心ばれているヴァレンティナでは、どうにも言葉が薄っぺらい。
しかし彼女としても通すべきものぐらいはあるようだ。彼女の野望がどこに行くのか分からないが、その信用ぐらいは信じてもよさそうだ。
そんな風なヴァレンティナの言葉に、一応の納得をしたのか、エレオノーラは苦笑をして去っていく。
(問題は山積しているな―――いっそのことティグルに来てもらった方が良かったかもしれない)
議題が全て未決だったのは正直言えばティグルの人物像を誰もが正確に知りえなかったからだ。
ミラ、リーザ、ソフィー……含めればサーシャ。彼女らの協力無ければ、挙国一致とはなりえない。
「問題多すぎるかな?」
「とりあえず君の処遇ほどではないな」
真面目な顔で悩むオルガには悪いが、彼女に比べれば解決できない問題ではなかった――――――。そう楽観出来る何かがティグルにはあるのだから。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
遠き西方の地にて、魔人が覚醒を果たした時、それを感じたものがいた。
魔弾の王の覚醒と、大きな魔の気配。それは一日で終わってさほどの心配もなく消え去ったが、魔人はいまだに蟠っている。
すぐに動き出す様子こそ無いが、自分の勘が正しければ、どうやら―――少し緊急事態だ。
瞑想から醒めて、襖の向こうに控えていた女官に「剣」を召集するように伝える。そして一刻もしない内に全員が部屋に集まる。
御簾の向こう側にいるこのヤーファ……ヒノモトにおける選ばれし最強の武将十二の内の十一振りが揃った。畳にて一応姿勢を正している連中を見ながら、集めた者―――ヤーファ女王「サクヤ」は告げる。
「桃の化神が蘇った。場所は恐らく西方―――ブリューヌ王国だ」
「ブリューヌ……確か、そこは筆頭が赴いている国では?」
眼帯をした紫髪の女、東は奥州藤原氏の類縁にも繋がる武将が怪訝そうに聞いてきた。それを聞いて、誰もが思う。
『ウチ』の隊長が向かってるのだから、簡単に解決しそうなものだが――――。と、これで自分達の内の誰かを派遣するならば、二人か三人で出張らなければならないだろうが。
しかしサクヤは構わず続ける。
「そうだ。だが桃の化神(けしん)、モモウはまだ祖神信仰多かりし時に現れた邪神だ。その力はとてつもないものだよ―――伝承どおりならば、鬼の頭領「温羅」を討ち、万にも上る朝廷の軍勢を退けたほど」
その戦いの詳細こそ正確に語られてこなかったが、神宝を奪い取ったとはいえ桃生の力は普通の人間には倒せなかった。
故に鬼の息子を従えた媛巫女により、桃生を討伐させた。というのが……一応、公に伝えられているものだ。詳細は違うのだが、それで良しとしていたのが、媛巫女と鬼の家系である坂上家なのだから仕方ない。
「それで、こうして呼び出した以上、用件は察せられるぞ――――サクヤ」
「ああ、我が親友にして我が好敵手カズサ―――あなたの理解を頂けて感謝に耐えぬよ」
魔王とヒノモトから言われている南蛮かぶれの女と、神王と宮中と一部の権力者から恐れられている女の視線が御簾越しとはいえぶつかり合う。
意見は――――「相違」であり「一致」であった。
「魔王としての力を使ってリョウを助けろということだな。私が援軍として向かうよ」
「神巫としての力で伝説を再現する形でリョウを助けに行く。だから当分お前達総出でヤーファを守護しろ」
互いに互いの出した言葉に切れた瞬間だった。
「お前!! この前言っていたことと真逆だぞ!! この国の霊的守護を担うお前がいなくなるなど以ての外だ!!」
「五月蝿い! この給料泥棒どもめ!! たまには私とリョウのいちゃラブの為に身を粉にして働け!!」
先程までの畏まった受け答えなど無かったかのように年頃の娘な会話を繰り広げる二人。会話と同時にとんでもない圧力が謁見の間に吹き荒れる。
もはや御簾と敷き詰められた畳を吹き飛ばし無にするぐらいの「気」が吹き荒れる。場を圧倒するだけの気が全員にたたきつけられるも、それに動じる人間はここにはいない。
一騎当千、豪傑無双、万夫不倒の異名を取る人間ばかりなのだ。しかしながら、その実力差は確実に出ている。
もしも現在の所、きゃんきゃんと言っている二人が本気でかかれば「自分達」は苦戦させられるのだ。一人一人ではなく、「全員」でかかっても。
(この無駄に力を持て余し気味なモテアマ共の重石というか抑えとなる男は、異国の地で勇戦中か……)
他の隊の連中も、どちらかとえいばリョウの元にて戦いたいという思いだ。そして自分も――――眼帯に手を当てながら、脳裏に浮かぶ男の姿を思い浮かべる。
「仕方ない……カズサもサクヤも落ち着く……ここは公平に――――「じゃんけん」で雌雄を決して、リョウおにいちゃんの所に行ける「剣」を選ぶ……」
そんな風に、みんなして得物を引き抜こうか、抜かまいかという時に、眠そうな表情で「虎娘」がそんな風なことを言ってきた。
どうやら今の彼女は「山」の状態のようだ。彼女がもしも「火」や「風」であったならば、争いは際限なく広がっていた可能性もある。
とはいえ、平和的な「争い」の手段を提示されて、それに全員が従う様子を見せていたので、二人もこれ以上の気を出すことはせずに収まった。
「まぁ虎娘の意見も一つか」
「そうだな。このまま宮を破壊するのも財政的に無駄の限りだし」
ここを壊すことも厭わずに戦うつもりだったのか。という思いで二人以外の全員が白い目で見る。
そんな風にしながらも、モモウとやらは自分達の国の魔なのだから、「全員」で行って始末を着けた方がいいのではないかと思う。
独眼竜『紫苑』は、そんな風に思いつつも、自分だけが西方に赴き、もう一匹の竜として『双竜乱刃』として西方に伝説を築きたくもなる。
それが、好いている男ならば尚のことであった。というより会いたい。あなたの腕の中で抱きしめてくれ。と言いたくもなっている。
決意すると同時に拳を振り上げ、振り下ろすことで決まる刹那の戦場に赴く。
「最初はグー! じゃんけん――――」
そうしてヤーファの『戦姫』達の剣呑な争いは始まったのだった。
誰が来るにせよ。それは大きな力であり――――西方にとっては「ヤーファに手を出すべからず」というメッセージとなることになっていく。
西方の人間にとってリョウ・サカガミに伍するだけの剣士など、そこまで多くいるなどと考えていなかった。
彼らはそれまでリョウの言の中でも語られていたそれを「謙遜」だと思っていたからだ。
† † † † †
転移した先―――、変な話だが帰ってきたという実感がわいてしまうぐらいに、そこに馴染んでしまった。
同乗していた若輩の戦姫からすれば、自分以上のものがあるだろう。目算が狂ったのか、それとも重かったのかは分からないが、セレスタの街から五十アルシン離れた所に自分達はいた。
「ありがとうヴァレンティナ、お陰で助かった」
「礼ならば、ティグルヴルムド卿と同じく私の夫を助けることで返してください……にしても静かですね?」
エザンディスの転移に同乗していた人間二人の内の一方が礼を述べ、それに返してから礼を言われた方は街が静まり返っているのが気になっていた。
静まり返っていたという表現は妥当ではないが、エレオノーラがアルサスに残した戦力が、ごっそりいなくなっているような印象だ。
セレスタの街の活気自体は喪われていない。駐留していた軍がいない印象を受けるのだ。
「野盗でも出て征伐に出たのかな?」
街に入れば分かることとしても、一応の予測を着けてからセレスタの街に入ろうとしたらば、馬蹄の音が聞こえてきた。
単騎で駆けてきた兵士は、一応見知った顔であった。その様子から少しばかりの緊急事態ではあろうと予測は出来る。
こちらを確認した軽装の男は、馬を止めつつゆっくり歩くようにこちらにやってきた。
「トレブションさん。ライトメリッツの駐留軍は?」
男の名前と顔を一番知っているオルガが呼びかけて、これはどういうことだろうかと、聞く。
「おお、オルガちゃん、それにサカガミ卿にエステス卿まで、何とも都合のいいタイミングで――――」
自分達をつれてこようとしていたというアルサスの兵士―――親戚に騎士団の騎士がいるという男性は、己が君の急報を知らせてきた。
予想していなかったわけではないが、それにしてもそんなことになるとは、厄介な敵でもいたのかと思い、戦地に駆けつけることを約束する。
「成程、承知しました。我々も荷を下ろしたりしなければならないので、それが済み次第、至急向かう。とティグルには安心するように言っておいて下さい」
「助かります。では―――」
馬を翻し、再び伝令として「テリトアール」に向かうトレブションを見送りつつ、セレスタの街に向かう―――前に――――。
「リョウお兄さん、私がセレスタに荷を置いてくるから、ここで待っていてくれ」
桃色髪の幼女は、殆どひったくるようにして、自分の荷を持ってセレスタに走っていった。
別段、日用品の類ばかりなのでそれは良いのだが……オルガが、そんな風な行動をしたのは、まぁつまりだ。
「気を遣わせたかな?」
「本当。耳年増な幼女ですこと」
頬を指で掻きつつ、手を頬に当てつつ、二人が呟いてから、正面にお互いの姿を収めつつ、その姿を忘れ得ないようにしておく。
「今生の別れではないのですから、そこまで熱い視線で見つめないで下さいませ……と言えれば武将の妻として合格なのでしょうけれど…」
「そんなに拘らなくていいと思うけれどな。思いの丈を全て吐き出すことも時には必要だと思うけれど」
この西方に来る前にサクヤや知り合いの女性達に言われたことは「武将」の「良人」を自称している身としては、言ってはいけない言葉であったはず。
しかし、その言葉は自分をここまで生きてこさせた。されどティナは自分の妻を自称している女性なのだから。
言ってほしい言葉があるのだ。そうでなければ自分は彼女に対して少しの幻滅もしてしまいそうだ。それはお互いに戦乱の世に生きる人間同士の共感でもあるのだから。
「私は夫と共に戦場を駆け抜ける女傑という姿にも憧れますが、それでも武人の姫なので言わせてもらいますよ―――『ご武運お祈りしています』―――」
「―――ああ、行ってくる」
口付け一つしてから、簡単に返す。その一言にどれだけの「思い」が込められているのか分からぬわけではない。
その見つめる濡れた瞳に、込められた心を理解している。
そうして少しだけ名残惜しそうにしていても、彼女は再びエザンディスで己の国へと帰っていった。
「さてと……まずは、ティグルを助けに行くようだな」
場所はテリトアール。
かつて別の戦姫と共に立ち寄った場所であり、今回に至って何かしらの縁も感じる。
そんな風に感慨に耽っていると、一刻経つか経たないかで、オルガが馬二頭を連れてやってきた。どうやら、準備は全て済んだようだ。
今から全力で飛ばせばトレブションにも追いつくだろうと計算しつつ、馬に乗り込み、戦地へと向かうことにした。
テリトアール領は、ある意味ではアルサスと似たような地でありながらも、その所領の豊かさ領土の広さは比較にはならない。
「山を背にしているアルサスとは違うんだな」
「そういうことだ。このテリトアールとアルサスの違いは山―――ヴォージュ山脈との距離だ。山と競っている形で平原が広く拡大して、そこで取れる作物の多さが、ここの豊かさを表している」
レグニーツァのかつての入植地でもあった火竜山の環境にも良く似ている。しかしながら、こういった土地ならではの問題というのも多くある。
「何だか分かるかオルガ?」
将として、領主として地形を見て何が利点で何が弱点かを―――見えてきたベルフォルの街に馬を向けながら尋ねる。
怪訝な視線を四方八方に散らしながら、オルガは考える。考えた末に出た結論は―――。
「やはり山から敵がやってくる点かな……ジスタートとの境目でもあるから、どんな不逞の輩がやってくるか分からない」
「正解だ。とはいえ簡単過ぎたな」
「お兄さんは敵は山に巣くっていると考えているのか?」
古来より賊は自然の要害を好んで住処を作るものだ。故郷の近隣国の英雄譚―――百八の宿星に導かれた英雄達が、悪徳政府に立ち向かうために天然の要害を住処にしたのと同じく、「山賊」というのは大体そんな所に生息している。
「テリトアールの平原の広さはモルザイムの比じゃない。街や村を占拠するならともかく天然の要害は、あそこだけだ」
ヴォージュに指を向けながら、考えるが……腑に落ちない点もある。
「何でここだけを狙うんだ? アルサスはともかくとして、ジスタート側にも跳梁していてもおかしくないのに」
「いい所に気付けたな。俺もそれを考えていた」
もっともジスタート側に下手に跳梁すれば戦姫が出てくる。知らぬものならばともかく知っているならば、そこには手を出さない。
しかしだからといってテリトアールの兵士・騎士達が弱卒であるというわけではない。
寧ろ、その資金力から装備に金を掛けて、家臣団の中にも有能なものは多い。息子がどちらかといえば「兵站参謀」的な人間だとしても武威が無いわけではないのだから。
「夷(えびす)を防ぐには壁を作るしかないんだよなぁ」
「昔、騎馬の民がジスタート領域を脅かしていた時にも、そんなものを作っていたりしたそうだが……防げるものでもないんじゃないかな」
万里は夷を防げず―――、当然でありながらも、どうにかしなければならない問題だ。
(オージェ殿達が梃子摺るということは、ただの野盗じゃないな。鍛えられた戦士が盗賊になっている)
内情こそ未だに分からないが、山地、高地での戦い、誘き寄せ方というのは、自分の故郷でさんざっぱらやってきたことだ。
平地での戦いよりも高地に対する攻城戦こそ自分がもっとも得意とする軍略だ。
そうしてベルフォルの街に入り、早速も領主の館に向かうと、どうやらティグル達はもっとヴォージュ山脈に近い所に陣地を構えたとのことで、ここにはいないと告げられた。
「お怪我の方はよろしいので?」
「まぁ、これしき。ただ報告によればジスタートの女将軍殿が、毒を食らったそうで、そちらは少し重いかと」
屋敷に入り、面会を希望するとすぐさま領主であるユーグ卿の私室に案内された。平服で椅子に掛けながら話す老子爵は少し怪我をしているようだった。
当人は客室でのものを希望していたが、家人の人間達に阻まれて、ここに来ることになった。怪我人の自己申告ほど当てにならないものはないのだから。
そして現在の状況が少し悪いものであることを告げられていてもたってもいられなくなる。
「リムアリーシャが毒を受けた……。申し訳ありませんが、早速向かわせていただきます」
「やれやれ、初めてここに来られた時も、金色の戦姫殿を連れて王都へと急いでおりました。あなたとこの領地は相性悪いのですかな?」
笑みをこぼしながら言う老子爵の言葉に、応える言葉はない。しかし、賊は壊滅させると告げて、子爵との面会を打ち切った。
「……リムさん大丈夫かな?」
「ティグルは狩人の技能を持っている。毒矢に対する対処も既知だろうさ」
不安そうな顔をするオルガ。その顔を完全に晴らすにはティグルでなければ駄目なのだろう。
――――馬を走らせて数刻すると、ライトメリッツ軍の陣地はすんなり見つかった。
歩哨を顔パスし、多くの兵士達に歓待されながら指揮官の幕舎を目指す。
黒竜旗(ジルニトラ)を大きくはためかせる幕舎に入ると、そこにはベッドで正常な寝息を立てるリムアリーシャ―――――そして、そんなリムアリーシャの豊満な胸を無意識なのか、それとも本能が求めてなのか、寝こけながらティグルが揉みしだいていた。
瞬間、怪我人として心配していた数刻前のことなど忘れてオルガはティグルの名前を大声で叫ぶのだった。
† † † † †
「やれやれ本当に暑い国だな。冬も間近だというのに……さっさと目的を達して、帰りたいものだよ」
見渡す限り熱砂と荒野の枯れた土地である。そこまで故郷に愛着があるわけではないが、グレアストとしても草原が恋しくなってもくるぐらいに嫌な風景だ。
「王弟クレイシュは動くことを決意したと聞いておりますが?」
そちらは表向きのものだ。と無言で問うてきた従者の一人に語りながら、白―――というよりは熱砂で黄色く色褪せたムオジネルの普段着の裾で汗を拭いながら、目的のものがある場所を目指す。
裏側の目的―――即ち、我が主の力を増大させるための「モノ」が欲しいのだ。
かつて始祖シャルルに仕えていた神官ガヌロンは、己の足で深き森、大いなる聖域、魔境の類に入り込み妖術、魔術、祈祷術などに類する技能を精霊・悪魔・神々から教えてもらっていたという話だが……。
今代のガヌロン公爵は、人を使って秘術を得るという、何とも罰当たりな男である。
(しかし、あの方は本当に「人」であり「魔」である……このムオジネルの前身国家の終王である「悪政王」の如き御仁だ)
そして今から自分達は、その悪政王の遺体を漁らなければならない。墓荒らしなどは、国が変わるたびに新興国で行われるものだが……悪政王の墓は未だに荒らされていない。
そこはムオジネル王国にとっても忌まわしき「呪われし場所」であり手出しすることは……不審死を幾つも出す結果に終わっていたからだ。
一刻で三ベルスタも歩いてきた所で、ようやく見えてきた……巨大な石の「山」――――かつては黄金細工、銀細工などが施されていたという四角錐の巨大な建造物。
例え墓荒らしが容易に手出ししなくとも、長い風雨と吹き付ける砂嵐が、それらを吹き飛ばしていったのだろう。
それにしても……何故にこのようなものが必要になるのだろうか……。
王墓というものがブリューヌにも無いわけではない。ただそれはもう少し厳かであり簡素なものである。
ましてや、このような高さだけでも二百五十アルシンあるような巨大な建造物―――。何のために作ったのやら。
「グレアスト様、どうなさいますか?」
「さてさて頼まれ、所在は判明し、されど取りに行くは難し……どうしたものやら……」
部下達に命じて中に入って来いというのは、簡単だ。しかし地元民からの情報ならば全員が五体満足で生きて帰ってくることはあるまい。
第一、この巨大な四角錐の建造物は一種の迷宮でもあるのだから。死なせるには無駄すぎた。
「おまえたち―――何者だ?」
仕方なく地元住民達の盗掘屋を金で―――と思考した時に、どこにいたのか自分達と同じくムオジネル風の服を着込んだ人間が、現れた。
武芸に達者というわけではないが、グレアストもそれなりに納めていただけに、その人間が―――自分など及びもつかない「手練れ」だと気付けた。
王墓の階段――――六段目とも言うべき所にいきなり現れた。フードを目深に被った人間。
従者達が、腰に差していた長剣を抜こうとする前に―――手から放たれた何か―――甲高い音と共に剣帯を吹き飛ばした。
見ると、当たり所が悪かったのか……手を押さえているものもいた。見ると、三人のうち一人は指が吹き飛び血が流れている。一瞬の早業。
(魔術師か……?)
呪術ということも考えられたが、詳細に見ると人間の手には金属製の何かがあった。それから煙が棚引いている。
太陽を背にしていたので暗くて上手く見えなかったが、どうやらこれが――――。思考を進めようとするも次の攻撃が続けられようとするのを確信して、口を開く準備をする。
この場は口八丁で切り抜けなければならない。
「質問に答えろ」
「いやはや、まさか観光に来て、このような不思議な体験が出来るとは思いませんでしたよ。私、ブリューヌの貴族で伯爵位を戴いておりますカロン=アクティル=グレアストと申します」
「ブリューヌの貴族……観光と言ったか――――それは真実か? ここに来るまでに何も言われなかったのか?」
階段から着地音一つさせない跳躍。そして早業のように抜かれる―――「カタナ」。フードを目深にしている人間の出身が分かった瞬間でもある。
「グ、グレアスト様……!」
従者の一人が呻くように周りを見て戦いている。首にカタナの切っ先を向けられながらも注意して周りを見ると――――背格好がバラバラな同じく砂漠の民の衣装に身を包んだ人間達に囲まれている。
大柄というには巨躯過ぎる人間もいれば、盟主であるガヌロン以下の矮躯の人間もいる―――年齢・性別こそ判別出来ぬが、全員がとんでもない殺気でこちらを睨み付けているのだ。
「疑いはもっともだが……私の主は残虐非道、悪辣無道を旨としている人なのでね……蛇神をその身に宿したという王に詣でて来いと言われたのですよ。いずれ始まるであろう戦争で勝利するには、我が国の戦神ではどうにもご加護が薄そうなのでね」
「邪神の加護で戦うか、馬鹿げてるな」
「その他にも、邪神の力を手に入れたいと言ったのですよ――――、あなたには蛇王の力を取り戻す秘術があるのでは?」
こちらの探りの言葉に、圧力が変化する。既に首からは一筋の血が落ちて黄砂に吸い込まれていく。
黄に紅が混ざった時に―――、言葉が変化をする。
「どこでそれを知ったのだ?」
「二年ほど前から―――『極東』から流れ着いたある人間が神秘の力を用いてアサシン教団に現れた。その人間は己の力を誇示して当代のムオジネル国王に取り入ったという話ですが、その「男」――――軍事総責任者クレイシュ=シャヒーン=バラミールに冷遇されて、今ではしがない王墓の守番をしていると」
知っている話は、そんなところだと言いながら次なる対応を待つ。
「そうか。ではそのしがない守番が出世をするためにも貴様の首は献上した方がいいだろうな。何せこの国にとって、ブリューヌは弱くも豊かな家畜なのだからな」
言葉だけ聴くならば、今すぐにでも殺されそうだが―――分かるのだ。この男も自分も―――己が主を食い殺すほどの「狼」を飼っているのだと―――。
黄砂に落ちた紅は既にかなりの広がりをしている。だがグレアストには分かっていた。この男も「逆らう者」なのだと……。
「―――いいだろう。話ぐらいは落ち着いて聞いてやるカロン殿―――治療を」
「承知しました」
カタナを引き、鞘に収めた男―――側に控えていた人間―――ゆったりとした衣服ゆえやはり性別年齢分からぬが、それでも女であろうものが従者の指と―――自分の首を癒した。
「我ら外からの流れ者の住居など粗末なものでしかないが、茶ぐらいは出してやる」
「ありがたい。ちょうど喉が渇いていたところなので―――どうか我が主のお心、ご理解戴きたいものです」
「話次第だ。無条件に協力出来るわけではない」
素っ気無い返事だが、それでも交渉の椅子には着けた――――そして、そこで一つの疑問がわいた。
極東より流れ着いた人間の名前は知らなかった。そういう男がいることは知っていたが、それでもその男の名前は知らなかった。
「ところで御仁、お名前伺ってもよいかな? 私だけが名乗るというのは不公平だ」
フードを下ろした男の髪色は―――予想していた人種の割には、奇抜な色だった。銀色というよりも―――光沢が無い白髪、老人のようなそれを思わせながらも、その眼は炯々と輝いていた。
瞳が狼のそれに思えるぐらいだ。
「名前か……ならば「■■■■■■」とでも呼んでくれれば構わぬ」
その名前は、この西方においては微妙に呼びづらい名前であり、略称としてグレアストは彼のことを「カイ」と呼ぶことにした。
こちらの呼び名にあちらは「憎悪」八割と「親愛」二割の入り混じった表情で見てきたが、所詮、そんなものだとして、何も言わずに住処へと案内されることとなった。
あとがき
アシオ先生の魔弾同人誌、まだ買えていないが好評の様子。絶対に買おう。
あと、個人的に注目していたGA文庫の『最弱無敗』の新刊が六月に出ることが確定して嬉しい。やっぱりツインテールが忙しくて遅れたのかな?
イラストとライターの仕事の都合不都合というのは、ラノベでは稀にあることだな……。最悪なのは清水先生に絡んだあれだが。
学生時代に気象を読んでいた自分としては先生がそんなことになっていたこと知らなかった。勝手ながらご多幸祈っています。
では感想返信を
>>刀さん
感想ありがとうございます。
一度は「やってやろう」と思っていたオルガであったが、結局降りかかる現実、住んでいた草原以上の所領の広さに官僚組織のサポートあっても「探さないでください」な女の子ですからね。
彼女の失敗は己の部族から親しい人間(姉)などをサポートとして連れて行けばこんなことにはならなかったのでは? など最新刊読んでいると思います。
戦姫の会議に関しては、何も決まりませんでしたね。結局ティグルを知らん連中だから「支援してほしければ、見定めさせろ」と言うばかり。
魔物に関しても「出くわしたならば、慎重に戦え」というぐらいしか言えないんですよ。結局、会えたのが蛙のヴォジャだけですから。
次に会う時には、もう少し深い会話が出来るはずですね。
予定では原作どおりの流れになり、エレンも一時離脱のムオジネル相手の「桶狭間」な話も出てくる。
その際に、少し戦姫四人ぐらいの結束を強めとかないと困るんですよね。まぁ予定であり、軍監にしても予定通り来るとも限りませんので、そんなエロスは起こりませんよ。(汗)
ソフィーはティグルを「おっき」させることは確実ですが(笑)
あとR-18な話は、少しずつは書いてはいます。ただあんまりにも恥ずかしすぎて、手が止まること多々ありました。気長にお待ちを
>>almanosさん
やはり原作初期と最新刊との乖離が激しいような気もしますねヴィクトール王は。まぁエレン視点での人物評価なんて結構当てにならないこと多いですし。
せいぜいグレアストぐらいか「キモい」と直感しましたから。(笑)
今作のティナは、そこまでジスタートの王位というものに拘りは無いですね。ただ「なれる」んだったらば「なりたい」ぐらいには考えています。
その上で一番真っ当な(?)戦国の「姫」なので「武将の奥とはかくあるべき」ということをオルガやティッタに教えて、ティグルを少し困らせます。
次話辺りでティッタは神職としての「技能」を目の当たりにして「教え」を請うのですが、その後のティグル覚醒イベントで「乗っ取られた」ことを知り、リョウは「後悔」するといった感じですね。
一番、今後の展開で分からないのがティグルの出生の秘密ですね。母親が王宮の庭師の娘―――物語的に考えれば「ブリューヌ王家の私生児」とか「ファーロンの愛人」とか、変なドラマ的展開を考えてしまう人物である。
果たして彼女の正体や如何に―――。
ロリコンは、島に逃げ込みあれこれ画策します。その結果は後々出てきますので、今後をご期待ください。
ではでは今回はここまで、エロな話がもしかしたらば先にあがるかもしれないので、それで本編が遅れても許してください。というところでお相手はトロイアレイでした。