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No.38274の一覧
[0] TRPG作品 ダブルクロス the 3rd Edition × コミック 私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い![TRPGユーザー](2015/12/15 21:39)
[1] シーン1 指輪売り[TRPGユーザー](2013/08/16 21:39)
[2] シーン2 衝動のままに[TRPGユーザー](2013/08/22 22:00)
[3] 幕間 状況報告[TRPGユーザー](2013/08/22 22:24)
[4] シーン3 邂逅[TRPGユーザー](2013/08/29 22:33)
[5] シーン4  世界の真実 side S [TRPGユーザー](2013/09/12 22:38)
[6] シーン5 失われた日常[TRPGユーザー](2013/09/12 22:36)
[7] マスターシーン[TRPGユーザー](2013/09/25 20:58)
[8] シーン6 私の絆[TRPGユーザー](2013/09/25 21:01)
[9] 幕間 UGN管理 医療カルテ 黒木智子[TRPGユーザー](2013/12/31 00:24)
[10] シーン7 情報収集[TRPGユーザー](2014/07/10 22:01)
[11] シーン8  悪魔の誘惑[TRPGユーザー](2013/12/31 00:24)
[13] シーン9 動き出せ いつものように![TRPGユーザー](2014/03/04 23:36)
[14] シーン10 ラストミドルフェイズ[TRPGユーザー](2014/03/10 23:06)
[15] クライマックス1 わが名を知れ[TRPGユーザー](2014/06/18 21:39)
[16] クライマックス2 蜘蛛と悪魔がいる限り[TRPGユーザー](2014/07/27 22:17)
[17] クライマックス3 きっと彼女は Side S[TRPGユーザー](2014/07/31 22:45)
[18] バックトラック[TRPGユーザー](2014/08/27 23:02)
[19] ED1 苦味を飲み干して[TRPGユーザー](2014/08/27 23:03)
[20] ED2 悲しみを糧にして[TRPGユーザー](2014/08/27 23:04)
[21] ED3 私は[TRPGユーザー](2014/08/27 23:05)
[22] あとがき[TRPGユーザー](2014/08/27 23:05)
[23] おまけ1 鋼の軍勢[TRPGユーザー](2014/09/21 22:28)
[24] おまけ2 黒木智子[TRPGユーザー](2014/09/21 22:29)
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[38274] クライマックス1 わが名を知れ
Name: TRPGユーザー◆1acf1388 ID:154399c6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/06/18 21:39
飛び降りた先にあいつがいた。
視線を私に向けて手を伸ばし。
私と同じ顔をして大勢の部下らしきものを引き連れてる。

身体の中に無理矢理埋め込まれたアイツの指輪が、歓喜で暴れ出しそうなのを感じた。
私はおり立つ。

背後には玉野さんと春日さん。
春日さんはあいつと同じ、私を非日常へと引きずり込んだ側だと思っていたが、
どうも状況はそんなに簡単じゃないらしい。

私が降りた場所は怪人と、超人達との間。
今の私は半分人外で半分化け物。
ちょうどいい。
ここでアイツを、アイツを。


「やっと来てくれたんだね。待っていたよ」
「う、う、うるさ」

唇が震え頬は引きつり、大事な場面なのに相変わらず声が出ない。
私は一度両手で頬を張った。
目に力を込め中指をアイツに向けて突きたてる。
これが、今の私にできる精一杯の意思表示だ。

「素晴らしい! ようやく私にもそれだけの『思い』を向けてくれるようになったのだね」
「っ……」

絶句する。ようやく好かれたのがこんな怪物だなんて。
しかも顔だけは私と同じというおまけつき。
こいつに好かれるくらいなら喪女と言われて生きていく方がましだ。

「だけど、まだ足りない! 君には雑多な感情がある。それをすべて排除し、私だけのものになれ!」

理解できない狂気が、目に見える瘴気となって辺りを包みこむ。
私の体内で、レネゲイドが荒れ狂う。
たっていられない激しいめまい。
『自分の価値を世界に知らしめ、全てを解放しろ』
そんな衝動が喉元までこみあげる。
口に手を当てどうにかそれを腹中へ押し戻す。

嘔吐なんて後で好きなだけすればいい。
でも、今は他にやらなくてはいけないことがあるだろう。

「ふむ、私の衝動を受けてふらつくだけで済んでしまうとは。少々手を変えようか」

怪人はそう言って片手を糸を繰るように動かした。

「……な」

身体が勝手に動く。目玉達は、玉野さんと春日さんの方を向いた。
ぎりぎり、ぎりぎり。鎖で縛られるような音と共に私は右手を振り上げる。
己の意思を無視して。

「心配しなくてもいい。我が兵隊のように意識を奪ったりはしないよ。
 君は君の自覚を残したまま、あの二人を撃つのだ」
「い、いや、やだ……」
「なぜだい? 玉野椿は君を騙していた。春日恭二は君を利用するつもりだった。
 君も、彼らに好意を抱いてはいなかっただろう?」
「そ、そ、それでも……」

二人を見る。春日さんはわずかに狼狽し、玉野さんはただ黙って。
私を見ている。私の目。光を打ち出す球体ではなく、この私の眼球を。


玉野さん、春日さん、貴方達は私をどう思っているんですか?
私はあなた達を信じられない。
私はあなた達が恐ろしい。
でも、本当に?

信じられないのは本当に彼女なのか?
恐ろしいのは本当に彼なのか?

彼女が優しく抱きしめてくれた時、そのぬくもりに偽りを感じたか?
彼が全ての真実を告げた時、恐怖を抱いたのは、何に対してだった?

いくら自答しても右腕は待ってくれない。
二人に向かって照準が絞られる。
幾多もの砲台が光を虹彩に宿す。

「や、やだ……や、やめてーっっ!!」

私はそう言いながら右手を振りおろす。
爆炎に包まれる一瞬、玉野さんがわずかに微笑んだ気がした。

私にはそれが聖母に見えて、そして盛大に噴き上がる爆炎を前にただへたり込んでしまった。
違うんだ。殺すつもりなんてなかった。私じゃない。
私は悪くない。だれか、そう言ってくれ。

「これでここには君と私だけだ。大軍であり一人でもある私と、たくさんの魔眼を持つ孤独な君と二人だけの舞踏会だ」

涙がこぼれて。
認めたくないセリフが、アイツの口から洩れてきて。
こんな状況で二人きりだなんて。
いやだ。誰か、誰か!!
絶望しそうになる。
あの裏路地にも、屋上にも助けは来なかった。

「そうだ。一曲舞う前に、きみ自身が焼き上げたオーヴァードの死骸を見るがいい」

怪人の手下どもが、私に絶望をつきつけようと炎の中へもぐっていく。
そう、あの時は助けなんてこなかった。
でも。今度は。

「……大丈夫。私はこの程度じゃ死なないよ。それに『約束』を違えることはしない」
「つくづく、この春日恭二を度外視するか。よほど死にたいようだな『鋼の軍勢』」

声がした。
次いで怪人の手下達が、炎の向こう側から吹き飛ばされる。

「……ああ、ああ」

うれしかった。ただ、ただ嬉しかった。
嗚咽が漏れる。
ひとりじゃないんだ。
それだけで、それだけで立ち上がる意思が湧く。

炎が消えてゆく。
腕を一振り、二振りするたびに、炎が揺らめきまるで切り刻まれるように霧散する。
彼女の指から出た糸が、風を切るように炎をかき消しているんだ、ときづく。
走らず、初めて会った時と同じように目に優しい光を浮かべ、彼女は私の元へ来てくれる。


「黒木さん、一時だけでもいい。私に貴方を護らせてほしい」

玉野椿さんはそう言って。
私に対する庇護の意を示した。

一方の春日さんは服から、炎をくすぶらせながらゆっくりとあるいてくる。
髪や皮膚は焦げてすらいない。
歩き方こそ似ているが瞳にあるのは玉野さんと対極。
その目にはアイツに対する怒りが、そして。

「君もつくづく気の毒にな。これも何かの縁だ。あの不快な金属音。この春日が止めてくれよう」

彼はそう言って。
私にほんのわずかな同情を示した。

二人を見て、安心感が胸に湧く。
なぜ。なぜだ。どうして、彼らは私と異なる立場。異なる主義の人間だ。なのに。
かれらの命が無事なのを確かめてこんなにも安堵を感じているのだろうか。

今でも、確かに感じる。
異形化した腕を持つ春日さんへの恐怖を。
身を任せてしまいそうになるけれど、常に心をざわつかせる玉野さんへの猜疑心を。
じゃあ、なぜ。

「……実に不愉快だ。怨敵である私と対峙しているというのに、他者へ思いを掛けるのか!!
 黒木智子。 君の憎悪は、嫉妬は 欲望は私に向かうべきだ。なのになぜ!!」
「……そうだ。だからだ」

こいつをどうしても憎悪している一方で、こいつに心を砕きたくない私がいる。
構ってくれ、と不気味に泣きわめくこいつが心底。

「憎いだろう!? 君を怪物の身へやつし、日常を奪ったこの私が!!
 ならば、君の欲望は私が対象でなければいけない。もっと抱け、私への殺意を!憎しみを!」

うるさいと心の中で呟いて。私は春日さんと玉野さんの方へと向く。

「まて! そちらへ行くな!! 私がこれだけ踊る相手を用意し、君もそれだけの自分自身を出現させ、
 これ以上ないくらい、大軍同士の殺戮が、秩序なき一騎打ちができるというのに! なぜ、他人の介入を受け入れようとする!?」

いちいち芝居がかった仕草とセリフに反吐が出る。
こいつのモーションがいちいち大仰なのも私の興味を引くためだったのだろう。
腰が抜けて立てないから、這いながら前に進む。
玉野さんと春日さんへの距離が近づいてゆく。
私はこいつが心底憎い。だから、だから。

《……お前は、私の心の中に必要ない》

心中のメタルレギオンへの憎悪が冷めてゆく。
冷えて、乾いて、消えてゆく。
それが、こいつに対する精一杯にして最大の報復。
絆を捨てる。こいつへの。

「……馬鹿な! 絆のない孤独な貴様が、何も持たない空っぽの貴様が、唯一手に入れた欲望を捨てるというのか!!」
「き、きずなならある……」

怪人と背を向けたまま、私は玉野さんと春日さんを見上げる。
守護者は私に顔を近づけて。
悪魔は腕組みをしたまま。

「た、玉野さん……春日さん……」
「黒木さん、私は……」
「ふん、なんだね?」

「……力を、か、貸してください」

救いを求めるように手を伸ばす。
春日さんは嘆息しながら、玉野さんはしっかりと。
両名は私の手を取った。
二人に思いきり引き上げられ立ち上がる。
いまはまだ白黒つけられない自分。でもこれでいい。

「黒木さん……。貴方が私を許し、人との絆を持ってくれるなら。共に闘いましょう。
 UGNのエージェント「シルクスパイダー」として」

世界を護る盾、と。

「いたしかたない。鋼の軍勢には私も腹をすえかねていた。手を貸そう。この悪魔、『ディアボロス』の手を」

世界を砕く魔の手が。

私をまたいでXの字に交差する。
いま、私は非日常の中心点にいるのだと、ようやく実感できた。
日常は何処かに置き忘れてきてしまった。
黒木智子という名前も今はまるで他人のように感じる。
だから私も名乗ろう。

 「……《私は悪くない》『アイアム、ノット、ダークネス』」

中二病のようで、ほんの僅かに気恥かしい。
だけど、自分の素直な気持ちを吐き出せて。ようやく落ち着けた。

我に咎無し。
我に責なし。
他者に全てを押し付ける漆黒のようなこの心。
だが、黒一色って訳じゃない。

玉野さんへの猜疑心が薄れる。信頼はできない。
でも、彼女は約束を忘れてはいなかった。
私を守る、助けになるという約束を。


  故に彼女へ誠意を。 

春日さんも。怖くないと言ったらウソになる。
でも、それ以上に今はとても頼もしい。


だから自信溢れる彼の態度に感服を。   



そして、今この瞬間だけは私も非日常に身を染め
戦おう。


一人のオーヴァード。「アイアム、ノット、ダークネス」として


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