第八十一話 正直、彼氏といるより楽しかったから 超包子の車両は現在、青空の様に透き通る青い海の中を進攻していた。 目的は当然、むつきやむつみの故郷となる沖縄である。 当初、窓から見える海中の光景、魚や海の揺らぎに目を奪われていた生徒達だが。 朝食後の八時頃に各自の携帯電話に入ったメールに話題はさらわれていた。 差出人はむつきであり、一人一人異なる文面で送られてきたのだ。 皆何が送られてきたとお互いに見せ合ったり、何度もその文面を読み返したり。 特に読み返しているのは、古であった。 最初は顔を赤くしたり、むむっと眉をひそめていた彼女だが、やがて決意したように立ち上がった。「五月、肉まんあるアルか?」「ありますが。くーさん、先程朝食を食べられたばかりでは? ちゃんと朝食時に食べておくべきですよ?」「五月には申し訳ないアルが、食べる事が目的ではないアッ」「隙だらけネ、古。ほほう、ふむふむ」 背後から古の携帯をスッと取り上げた小鈴が、液晶画面に映る文面を黙読する。 さすがに音読などと無粋な事はしないが、それはそれ。 古が慌ててそれを取り返し、チャイナ二人のじゃれあいに若干視線が集ったりも。「返すアル。プライバシーの侵害アル!」「照れの余り、難しい言葉を使い出したネ。誰だって気になる相手には、良いモノを見てもらいたいのが乙女心ヨ」「そんな古さんに朗報です。貴方の為にご用意しました。強制肉まん機、豊満君!」「はい、くーさんのご要望の肉まんできました」 プライバシー云々はまだしも、葉加瀬が持ち出した機械が嫌な予感がする。 豊満君は、蒸し器に蛇腹状の腕を二本付けただけの形状だ。 さらに四葉がタイミング良く肉まんを持ってきてしまった。 豊満君が早速その日本の腕で頭の蓋を開けて蒸し器の中へと肉まんを詰め込み出す。 全ての肉まんを詰め終えると、キラリと蒸し器の上に描かれた目が光ったようにも。 次の瞬間、ホース状の腕を伝い蒸し器の中から肉まんが出てきて手のひらに握られた。「ま、また今度アル!」 逃げ出す古だが、一歩遅かった。 むしろ背を向けたのが悪く、豊満君に背中から乗りかかられマウントポジション。 次々に熱々の肉まんを口の中に放り込まれてしまう。「朝倉サン、古がもう一度先生に写メを送って欲しいそうネ」「先生に会えるまで一時間もないのに、愛だね。はい、くーちゃん。可愛くポーズ」「出来るか、アル。やめ、もが。熱いアル!」 豊満君に口一杯に肉まんを放り込まれた姿がパシャリと撮られてしまった。 古の抗議もなんのその、もう直ぐ着くよっと先に沖縄入りしたむつきへメールである。 そのメールを打った朝倉の肩口に、小鈴がこそっと囁いた。「今日は胸の谷間画像は送らないかカ?」 次の瞬間、バッと振り返った朝倉だったが、小鈴じゃしょうがないと苦笑いだ。「ちょっとした悪戯心もあるけど、彼氏がね。折角の夏休み、全く連絡取らなかったら見事に振られちゃってね。一時の気の迷い」「それで、親愛的からはなんと?」「ご馳走様でしたってさ。いや、さすが和美さんのは破壊力があったみたい」「親愛的の中で、朝倉サンはどう犯されたカ。興味が湧いたら、何時でも待ってるネ」 そこで朝倉がちょっと迷いを見せたのは事実だが、意外と冷静だったらしい。「これでも、結構動揺してる自覚あるし。またね、楽しそうなのは認めるけど」「それは残念ヨ。竜宮城は何時でも貴方を待ってるネ」 エロが絡むトークもそこまでであった。「くーちゃん、ずるい。和美ちん、私も可愛く撮って。先生にアピール、アピーへっ?」 私もっと目ざとく椎名が挙手をした次の瞬間。 古のマウントポジションを取っていた豊満君が何故かその標的を変える。 ただやはり無敵大明神の椎名は、意図せず何もないところでこけた。 こてんと幼児のように綺麗なこけ方を見せた椎名の頭上を豊満君が通り過ぎていった。 その先にいたのは、あろう事か那波である。「ん?」 一瞬早く、それに気づいた那波が来るのかっと黒いオーラを発した。 そこで何故か那波の目の前で着地し、後ずさる豊満君。 くるりと方向を変えて、村上の方へと飛び掛った。「えっ、やだ。小太郎君、お願い!」「お願いやあらへんがっ!」 バリアとばかりに、村上が犬上を差し出し哀れにもマウントポジションを取られる。 次々に繰り出される熱々の肉まんにもがき苦しんでいた。 陸海空と日本の三界を制覇した超包子の車両はついに沖縄へと到達した。 海坊主でも現れたかのように透き通るような青い海の水を盛り上がらせながら地上へと。 流れ落ちる海水を振り払うように、やや強引に砂浜へと登っていく。 沖縄の海と言うと観光客をまず想像するが、人影が殆どさっぱりみえない。 車内の窓から外を見ていた生徒達も、別の秘島にでもと思っていたが違った。 そう核心したのは、四国でひっそり別れる事になったむつきを見つけたからだ。 スーツ姿ではなくシャツにハーフパンツと地元だけに気楽な格好である。 ここだここだと教えるように、日傘を差したむつみの隣で手を振っていた。「先生!」 一番最初に超包子の車両を降りてそう叫んだのは誰だったか。 我こそはと押すな、早く降りろと押しくら饅頭状態。 都会の駐車場ではないので、今回ばかりはむつきも何も言わない。「先生!」 改めてそう叫び、一番に飛び出してきたのは美砂であった。 秘密の関係なんて関係ないっとばかりに、飛びつくように抱きついてきた。 一瞬どうすべきか迷ったむつきであったが、心配かけた手前避けるのも可哀想だった。 抱き慣れた美砂の細い体を正面から受け止め、勢いを逃がすようにくるりと回る。 つもりが、百八十度回転したところで誰かに背中を蹴られた。「痛って!」 美砂を庇いつつ背中から白い砂浜に倒れ込み、誰だこの野郎と太陽を睨むように見上げた。「心配させやがって。なにぶっ倒れてんだ。罰ゲームだ、罰ゲーム」「埋めちゃえ、埋めちゃえ!」「先生ごめんね?」 蹴ったどうはどうやら、内心と裏腹に攻撃行動に出た千雨であった。 そして続いて亜子が砂を掛け始め、アキラに両手を取られて押さえつけられた。 当然、砂を掛けられるのはと美砂はそそくさと逃げ出している。「ああ、出遅れたアル!」「続け、続け。私らも埋めろ、宝物は埋めるべし!」 何故一番になれなかったと、古や椎名が続けば後は語るまでもない。 良い大人が心配かけんなと立ち上がろうとしたむつきを蹴り転がしては砂をかける。 三十人を超える女の子に襲われては大人と言えど、立ち向かえるものではなかった。 実際、一人でも大人を負かしそうな武道四天王などと嘯く連中もいるのだ。 むつきが砂の上で首から下を埋められるのに五分と掛からなかった。「お前ら、俺は病み上がりだぞ。そっと扱え、雑なんだよ。お転婆どもが!」「む、なにをしているむつき。すまん、見えなかった」「この気巡れ子猫、後で覚えてろよ。お前ら、尻が赤くなるまでぺんぺんしてやるからな」 挙句、エヴァには見えなかったと頭を踏まれ、砂の中でもがき吠えるのが精一杯だ。 ならば今のうちにと、売り言葉に買い言葉で頭の上に座られた。 この野郎と頭上を睨みたいが、下手に動けばスカートの中に顔を突っ込んでしまう。 ひかげ荘ならまだしも、他の生徒がいる前ではちょっと避けたい。 ちくしょうっと喉の奥で唸るだけで、何一つやり返す事ができなかった。「相変わらず、よえー。兄ちゃん、喧嘩の仕方教えたろか?」「馬鹿野郎、喧嘩歴なら俺も負けんが。生徒相手に喧嘩してどうする。それにな、小太郎君。君も既に同じ穴のムジナだ。見たよ、肉まん一杯食わされてる写メ」「あ、あれはちゃうわい。夏美姉ちゃんが!」「きこえませーん、きこえないんです」 犬上に言われなれた言葉を突きつけられたが、そこはお互い様とやり返す。 どうやら意外と効果はあったようで、ちょっとムキになられた。 ちょっと胸がスッとしたが、それで良いのだろうかとおもわざるを得ない。 ちなみに、まだ罪悪感という正常な感性を持つ村上は必死に耳を塞いでいた。「それにしましても、先生方以外に何方もいらっしゃいませんね」「そうねえ、綺麗な場所なのに。穴場なのかしら?」 むつきへの罰が一先ず完了し、改めてあやかや那波が周囲を見渡し始めた。 以前あやかがむつき達を招待した南国に似た光景である。 燦々と輝く厳しい日差しは麻帆良と同じだが。 海より寄せる潮風と共に岸辺へと打ち寄せる波間、文様を描く白い砂浜。 海水浴には最適な場所でありながら、何故か観光客や地元の人間を全く見ないのだ。 まるで良く似た異次元にでも迷い込んだような、異様ともいえる光景である。「心配いらないわ。ここわね、乙姫家の私有地だから。地元の人か、うちのお客さんしか来ないから。あそこが、民宿の竜宮よ」 不思議がるあやか達に説明したのは、埋められていくむつきを微笑ましく見ていたむつみだ。 あそこと指差したのは、砂浜が途切れる切り立った崖の上。 ひかげ荘を彷彿とさせる屋根瓦木造の民宿であった。 むつきやむつみの父母が切り盛りしている民宿で、一族の大半はそこで働いていた。 もう半分はむつきやむつみのように沖縄を出て元気にやっている。「私有地ってことは、プライベートビーチみたいなもの?」 あやかと同じだとばかりに、ふーんと呟いた神楽坂はとても良い子だった。「先生なにげにボンボンじゃない。プライベートビーチとか。なに、この場所いずれ先生のもの? えっ、以前から何処か周りと違うって思ってた!」「いや、実は私。背負われてる時、凄く悪戯されて。もう、先生の嫁になるしか。責任とってよ、先生」「実は私も、何度か淫猥な視線にさらされ。汚された責任は取ってもらわないと。だ安心すると良い、直ぐに離婚するから。先生は慰謝料だけくれれば良い」「お前ら、何処まで欲望に忠実なんだ。爺さん、相続人が多いから俺になんか全然回ってこないぞ。残念だったら、中学生(笑)」 過去の経験もあって、早乙女や春日、龍宮に対してもの凄く辛辣な台詞が飛び出した。 ほぼ無意識、条件反射のようなものであったがちょっとまずかった。 現在むつきは砂浜に埋められているのである。 体の九割は隠れているが、逃げも隠れも出来ない状態なのだ。 特に最後の中学生(笑)で龍宮の怒りを買ったようで、顔目掛けて砂を大いに蹴られた。「お前ら、乙姫が元気になって嬉しいのは分かるがそれぐらいにしておけ」「むつみさん、先にお世話になる乙姫先生のお宅に挨拶をしたいのだけれど」「それが、ちょっとまだ準備ができてなくて。お爺様も所用で他の島に行っているもので。お爺様のいないうちに挨拶を済ませると、拗ねられてしまいますので」「他の島と来たか、さすが沖縄。と言うか、聞いた通りのお爺さん」 三十人を超える、それもむつきの生徒とあって大わらわなのだ。 本島ではないのでコミューンも小さく、他のご家庭からも人手を借りる始末である。 年頃の男ともなれば、若く綺麗な嫁を手に入れるチャンスと張り切っている者も。 残念、既に四分の一は俺の嫁だと、むつきが内心ふふんと笑ったのは内緒だ。「爺さん、夕方には返ってくるから。それまでは自由行動。といっても、田舎に娯楽は皆無だ。精々、この青い海で気絶するほど遊ぶと良い。今日が旅行の最終日だ」 明日はほぼ移動で終わるぞとむつきが言うや否や、生徒達は皆超包子の車両に逆戻りだ。 むつきの言う通り、確かに娯楽はないが都会っ子にとって夏は海こそが最高の娯楽。 やれ遅れるなとばかりに、水着に着替える為に、戻っていったのだ。 誰か一人でも俺を掘り起こせよと思ったむつきだが、そこは田中さんが掘り起こしてくれた。 彼にも旅行中は随分と世話になったが、もう一踏ん張りして貰わなくてはならない。「田中さん、覗きや盗撮野郎がいたら容赦なく発砲を許可するから。住人は全部、血が繋がった親戚だし。何しても可」「OK, Boss. 地獄で会おうぜ、ベイビー」 むつきが頼んだ瞬間、早速田中さんは民宿竜宮へと向けてショットガンを発砲する。 それで二階部分から、双眼鏡で覗いていたむつみの弟が落ちた。 次いでさっさと働けと、むつきがチクりに行ったのは言うまでもない。 田中さんのショットガン発砲により二階から落ちたむつみの弟。 その名をつくもと言い、むつみの乙姫家で七女一男という唯一の男子であった。 女系家族に唯一生まれた男だけあって、色々な意味でたくましい。 二階の窓から真っ逆さまに落ちたというのに、ピンピンとしていた。 そればかりか、同年代の美少女が自分の家の庭先で戯れているのに仕事などしていられるかと。 むつきのチクりを逆に逆手にとって、自由をもぎ取ってきさえした。 実際の所、無効一ヶ月無給で働きますと土下座してきたのだが、言わなければ分からないものである。「と、言うわけで乙姫つくも。高校一年宜しくッス!」 三十人以上もの水着美少女を前に、気後れする事なく良く日に焼けた顔で晴れ晴れしく言ってのけた。「悪いな、どうしてもお前らと戯れたいらしくてな。すまんが、仲間に入れてやってくれ。痴漢でもしでかしたら、田中さんに撃たせるから。視線がエロイとかでも良いぞ?」「て言うか、私ら先生のやらしい視線で慣れてるし?」 早く紹介しろと肘でせっつかれむつきは嫌々紹介したわけだが。 好意的と言って良いのか、美砂の言葉にちょっと憮然としても許されよう。「つくもばっかりずるい。私らもむつき兄ちゃんと遊びたいのに」「ばーか、短小包茎。学校でモテないからってがっつき過ぎ。気をつけてね、つくも馬鹿だから。暗がりに行くと、押し倒されるぞ」「お兄ちゃん、後で遊んでね。頑張ってお手伝いしてるから」「あかりもかがりも煩せえ、あとぽかり。お前の兄ちゃんはこっちな。むつき兄ちゃんは従兄だから」 民宿の方からは、双子の妹や末の妹から非難轟々であった。「後で小遣いやるから、我慢してくれ。相変わらず、お前家での地位が低いな。妹の誰からも兄ちゃんって認識されてないとか」「むつき兄ちゃんのせいだろ。返ってくればほいほい小遣いやって可愛がって。俺の立つ瀬がねえんだよ。中学、高校と上がるたびにあの乙姫の弟かって教師からマークされるわ。女の子には今時、不良だ不良だって怖がられるし」 ちくしょうとマジ泣きしそうな弟分にむつきも、視線をそらさずにはいられなかった。 学生時代はむつきもそれなりにやんちゃで、そこそこ名の知られた悪だったのだ。 と言っても、理不尽な暴力を振るうわけでなく、基本的にはむつみを守る為の件がだったが。 すまんすまんと、弟分の頭を撫でつつ皆に仲良くしてやってくれと頼んだ。「おう、俺は犬上小太郎や。女ばっかで窮屈やったから仲良うしよや。黒い兄ちゃん」「なんだ、お前? えっ、なにハーレム。三十人もの美少女とToラベルとか」 だが真っ先に仲良くしようぜと握手を求めてきた犬上を前に固まっていた。 そして思春期としては当然の、妄想という逞しい翼が羽ばたいていった。 大なり小なりはあれど、山盛り美少女の中で黒一点の少年である。 しかもこの少年というのが曲者だ。 銭湯だって十歳までは女風呂だって許される、つまりはそう言うことなのだ。「おう、仲良くしようやチビ太郎」「はっは、やっぱ男の方が好戦的でおもろいな」 差し出された手を全力で握るもカラッと笑われ、更に力をこめるがビクともしない。 やがて力を込めすぎて自分の手が痛くなってきてつくもから離した。 だが、まだ諦めたわけではない。 何しろ乙姫家の男子はちょっと粘着質なのだ。「よっしゃ、小太郎。ビーチフラッグやろうぜ。海人の凄い所見せてやるぜ」「ビーチフラッグってなんや?」「ビーチフラッグってね」 ちょっと自分に有利な舞台に持ち込もうとするセコイところも乙姫家の男児だ。 犬上はビーチフラッグを知らなかったようで、村上にこそっと教えられていた。 その気安い距離の近さもつくもの癪に障ったようだが、周りはそんな事は関係ない。 ちょっとエッチな馬鹿が来たぐらいの認識で私もやるっと立候補者も。 一部、付き合ってられんと呆れる者もいたが概ねは仲良くやってくれそうだ。 そこからは二人のビーチフラッグを応援したり、別途ビーチバレーを始めたり。 三十分も過ぎた頃には、役に立たないと思われたあかり達も仕事から解放されていた。 今さら三人ほど保護対象が増えた所でたいした問題ではない。 引率者がさらに一人、観音が増えていたので生徒プラスアルファには自由に遊ばせた。 むつきもエヴァの相手をしたり、ぽかりがやってきてエヴァと肩車の位置を争ったり。 程々に生徒達の相手をしていた時の事である。「親愛的、ちょっと良いカ?」 小鈴が背後にすすっと近付いてきて、むつきに囁いてきたのは。 むつきの背中にぴったりと背中をつけてきていた。「どうした、小鈴? つくもがエロい眼で見てきたか?」「つくもサンは、どうやら巨乳派のようネ。悔しくないヨ、私は美乳だから」「そんな事は小鈴の次に知ってるけど?」「よろしい」 もうここが公共の場でなければ押し倒したところだが、用件は違う事であろう。「朝倉サンが、彼氏と別れたらしヨ。どうするかは、親愛的に任せるネ。また怒られたくないし」「別れた、なんでまた?」「それは本人の口から聞くヨロシ」 告げるだけ告げて、そのまま再現と何処かへ行ってしまう。 なんとも気になる情報だが、それでどうしたと聞きにいくのも微妙だ。 現状、お嫁さんが一杯のむつきが近付くと、これ幸いにと考えているようでもある。 一先ず、落ち込んでいるのかいないのか。 朝倉の様子次第だと辺りを探してみると、相変わらずデジカメ片手に写真を撮っていた。 現在は、仲良くなったエヴァとぽかりが作る砂のお城を撮影中だ。 ちなみにお城の設計は絡繰が図面を書いて製作指導の模様、主にぽかりに。「おーい、朝倉」「ん、どったの先生。先生も撮って欲しい?」「じゃあ、二枚ほど。ぽかり、ちょっとだけ」「うん、ぴーす」 ぽかりを抱き上げて頬を寄せるようにニッコリ笑って一枚。 次いで期待の目でうずうずしていたエヴァとも同じように抱き上げて一枚である。「先生、私もよろしいでしょうか?」 と言うわけで、何故か絡繰も立候補したので肩を抱き寄せるようにして一枚の計三枚だ。「先生、最後の。肩必要だった?」「突っ込むな。やってからやべって思ったんだから。それより、ちょっと」 追求を跳ね除け、あっちと指差したのはビーチの端っこであった。 乙姫家のビーチは切り立った崖の下にあり、まるで大地を切り取ったかのような場所にある。 自然が生み出したミニビーチは、両端がそのまま崖に直結するわけだが。 東側にだけは、代々乙姫家の子供が共有秘密があるわけである。 他に誰かついてこないように注意しつつ、秘密のお話が出来るよう朝倉を連れて行く。 ビーチの端に行くと砂浜と小波、として切り立った崖と三点が重なる点がある。 そのまま小波に足をつけて海側に歩み寄り、崖に沿って歩く。 すると膝まで海水はあるのだが歩き続けられ、やがてビーチからの死角に小さな洞窟が見えてきた。 最初は屈まなければ入れない小さな穴だが、入ってしまえば割りと中は広い。「うわ、なにここ。自然の洞窟?」「かもしれないし、そうじゃないかもしれない。乙姫家の代々の子供が入り浸る秘密基地。代々だから大人も知ってるけどな」 昔はむつきやむつみも、宝物を色々と持ち込んだわけなのだが。「おっ、こんな所になつかしの箱が」 一抱えもあるぼろいが見覚えのある木箱があり、小走りに駆け寄った。 昔つくもに教えた通りならと、箱を持ち上げるとその下の海水の中にキラリと光る鍵が。「なにこれ、意味なくない?」「こんな汚い箱。女の子はわざわざ手に持たないだろ?」「女の子なら……もしかして、中に入ってるのって」 朝倉の想像通り、むつきが木箱の鍵を外して開けると入っていたのはエロ本だった。 女系家族であるつくもの方の乙姫家では、エロ本を隠すのも一苦労なのだ。 ベッドの下だろうと、本棚の下だろうと明かされその日の内に食卓に置かれてしまう。 昔泣きつかれた時に、むつきが使っていた木箱をあげたのだ。 ちなみにその前はむつきの親父が、さらにその前は爺ちゃんが使っていたと聞いている。「巨乳ものばっか。先生の家、代々巨乳好き?」「かもな、姉ちゃんを初め。つくもの家の女の子は全員巨乳だ。六年生のぽかりでさえC、つまりは最低Cなんだよ」「そんな英才教育下で育てば、巨乳眼も鍛えられるってわけ」 やらしっと言いつつも、朝倉が両腕で胸を押し上げた。 首から紐で提げていたデジカメや携帯が、ふくよかな膨らみにぽよんぽよん跳ねている。 一件普段通りなのだが、エロ本を仕舞わずその辺に置いて木箱を閉めた。 エロ本は後で食卓にでも持って言って浮かれているつくもに鉄槌を下すとしてだ。 木箱を椅子代わりに座り込んで、ちょっと考えてから朝倉を手招いた。「んー、まあいっか。失礼しますよ」「案外、あっさり座ってきたな」 以前の逃げっぷりが信じられない程に、素直に朝倉が膝の上に座ってきた。「小鈴から、彼氏と別れたって聞いたけど。なにかあったのか?」「なにもなかったから、振られたが正しいかな。夏休みに入ってから、報道部かひかげ荘か。ほら、夏祭りだって私皆と一緒にいたでしょ? 普通ならキレるって」「思い出してみれば。悪い事したか?」「そうでもないかな。楽しかったのは事実だし。正直、彼氏といるより楽しかったから」 思ったよりというか、朝倉は全く落ち込んだ様子を見せずにしょうがないと笑っている。 それも強がっているというようにも見えない。「結構イケメンだったし、デートでは奢ってくれたからね。けど、大好きかって言われると微妙。向こうも、私ってよりは私の特にこれが好きって感じだったし」 もちろん、これとは朝倉が両手で再び強調した巨乳である。 相手が程々にイケメンで金回りも良く、相手も相手で可愛い巨乳だったから。 思春期の恋愛として、それ程変な理由で付き合ってたわけでもなかろう。 中身までちゃんと知ってから付き合おうとか思ってたら、既にその時は遅い。 とりあえず掴まえて、合わなきゃ別れるし、合えばそれが続く。「でも、それなりにショックではあるかな。初めての彼氏だったし。主に悪かったの連絡ぶっちしてた私だから罪悪感がね」「大丈夫だろ、別に。連絡途絶えがちになっただけで、お前みたいな巨乳美少女振るとか。別の巨乳女が見つかったんだろ。気にすんな」「先生、それ余計気にするんですけど。て言うか、ずるい。私にだけ美少女つけるとか。ぐらっと来た。ちょっとだけ、エッチしよっかな」 そのままこてんと後ろに首を傾け、胸に髪を押し当てながら朝倉が見上げてくる。 正直、むつきも気弱になっている朝倉の瞳にぐらっと来たのだが。「弱気になってる女の子に手を出すの、刀子さんで懲りた。もうちょい、冷静になってそれでもってんならその時な」「先生、偶にその自制心凄いよね。お尻、当たってるけど」 巨乳美少女に儚げに頼られたら、男としては正常な反応である。「ちょっとだけなら?」「自制心何処行ったの」「俺だって乙姫家の男児なんだよ」「和美さん、巨乳美少女だから。先生がむらむらしても仕方ないね」 そう言うと朝倉が背中に腕を回して自ら水着のビキニを取り外そうとする。 のだが、そこはむつきが止めた。「先生、やっぱしないの?」「ちょっと待って、今凄く俺の中で死闘が起きてる。水着の着衣か、生巨乳か」「そっちの死闘、先生……」 はやくしないと気が変わっちゃうぞとばかりに、朝倉が腰をふりふり誘惑してきた。 既に勃起をしはじめた一物をハーフパンツの上からお尻で押されたのだ。 ここで押し返さなければ、乙姫家以前に男児とは言えない。 即断即決、全裸はいずれと貴重な水着巨乳を堪能する事に決めた。 水着で押さえつけられ布地からはみ出すように、溢れ出そうな朝倉の巨乳。 圧迫されたその谷間など、お尻かと突っ込みたくなるような出来である。 なんという重量感と下からその胸を支え、水着の下からでも分かる突起に指を伸ばす。 贅沢にも巨乳と乳首の両方を同時に楽しんでみた。「どう、和美さんの巨乳は?」「超柔らかい。一日中たぷたぷしてたい。乳首もこりこりでエロイ。和美、キスして良い?」「キスか、どうしようっかんぅ!」 迷うという事はしても良いと思う部分があるはずと、答えを聞く前に奪い取った。 元々上目使いに見上げてきていた和美の唇は、巨乳同様ぷりぷりだ。 それこそ一日中キスしていたいと、唇をこじ開け舌を差し込んでいく。 最初は驚きからむつきの腕の中で身悶えていた和美も次第におとなしくなっていった。 むしろ自分からも率先して舌を絡め、エロイ子なのである。「和美、可愛い。凄くお前が可愛い」「んぅ、先生がっつき。ぁん、乳首気持ち良い。いつも写真撮ってるだけで、その後でこっそりオナニーしてた。先生に、なぶられるの想像しながら」「オナニーしてる時の想像の中の俺と比べてどうだ?」「全然違う、先生の方が凄く良い」 潤んだ瞳で見上げられながら呟かれ、本番を我慢出来るか少し不安になってきた。 その辺の海水で軽く手を洗い、来ていたシャツで指を拭きつつ。「和美、触るぞ」「うん」 膝の上で可愛く頷いた和美のお腹を撫でるように辿りつつ、指先を下腹部へ。 水着のなんともいえない手触りに指を絡め、少しどけて割れ目の近くに。 珠のお肌の上に途端にチクチク感触は、和美の陰毛の剃り跡だろう。「先生、乙女の努力の跡を弄るのは駄目じゃない? 今の私、明日菜と同じパイパンだよ」 ついポロッともらしてしまい、やべっと和美が口を押さえていた。「神楽坂、パイパンだったのか。アレで結構、良い体痛い、痛い!」「喋っちゃった私も悪いけど、先生の腕の中の美少女巨乳女子中学生は誰かな?」「和美です。昨日、ズリネタに使った和美ちゃんです!」 ふとももを思い切り抓られ、ついついむつきもぽろっともらしてしまった。 とは言っても、和美から使ってと送ってきたのだから何を恥じる必要がある。 むしろ、そこで恥じ入ったのは送ってきた当の本人の和美であった。「嘘、先生本当に使ったの?」「お前が使えって言ったんだろ。妄想の中で七回、お前に中だしした。凄いアヘ顔させて、写真に撮りまくったった」 この時、ブルッと和美の体が震えたのはこの熱い夏に寒かったからでは決してないだろう。 そんな和美を見て悪戯心を起こしたむつきは、その首に下げられていたデジカメを手に撮った。 改めて悪戯の前にと、和美を後ろからギュッと抱き占めその耳元に囁いた。「和美、偶には撮られてみるか?」「ぁっ……」 思っても見なかった、ではなく。 思っていた事を言い当てられたからか、和美が言葉を失い顔を赤らめていた。 何時ものひょうひょうとした、悪戯心満載の悪い女の子の影もない。 純な女の子が耳元でエロイ囁きをされた時のような恥ずかしがり様であった。 これでむらむらしなければ、男ではない。「和美、俺達のファーストキス記念。ほら撮るぞ」「待って先生。それ皆との写真も」 制止を聞かずむつきは和美の唇を奪いなおしたまま一枚ぱしゃりと撮った。「大事な記念写真。制止したくせに、和美全然嫌な顔してないぞ。むしろ、陶酔したみたいに顔が赤くて。気持ち良かったか?」「うぅ……やばい、先生スイッチ入ってる。柿崎達にSになる時の先生」「なら、次は」 もはや今のむつきに何を言っても無駄なのは、近くで見てきただけに分かりきっている。 和美も抵抗は既に諦め、楽しむしかないかと彼氏を忘れる事にした。 いや、忘れると言うよりは彼氏がいるのにという二律背反を楽しむ事にが正確か。「胸の前で腕を組んで若干持ち上げ気味」「こう?」「そう、そのまま撮るぞ」 むつきに指示された通りに腕を組むと、またしても一枚写真を撮られた。 先程と同じように、その撮れた写真を直ぐに見せてくる。 斜め上からの胸の谷間を強調したバストアップ写真となっていた。 まだ和美の表情は少し硬いが、それでも十分過ぎる程に可愛い。 自分でそう思うのもなんだか自画自賛っぽいが、決して自信過剰というわけではなかった。 何しろ和美を抱き締めているむつきの腕が、殊更強く抱き締めてきていたからだ。「お前、本当に巨乳美少女。まだちょい表情硬いけど、明るい感じがまた。巨乳を引き立たせる。超可愛い」「先生、谷間だけで満足?」「この野郎、満足なわけないだろう。もっとエロイ格好撮りたい」「例えば?」 自分でもびっくりな挑発が飛び出したが、誘惑しているのか混乱しているのか。 お尻の下のむつきがごそごそ動き始めた。 胡坐をかいていた足が体操据わりに、自然と膝の上にいた和美も持ち上げられる。 次いでむつきが膝を開くと、その膝が和美の膝に引っ掛けられていた。 むつきの膝に追いやられるように和美の膝が割れていき、開脚させられてしまった。「動くな」 思わず膝を締めようと胸の前で組んでいた腕が動いたが、一瞬早く制止させられた。 もちろん、言う事を聞かないという選択肢もあったのだが選べなかった。「先生、ちょい恥ずかしい。ちゃんとケアしてて良かった」「そのまま笑ってピース」 こんどはバストアップから遠ざかり、むつきがデジカメを持つ腕を目一杯伸ばしていた。 こんなもんかなと勘で角度を決め、両手でピース中の和美を撮った。 と言っても、むつきの膝の上にいるわけだから、自身も一緒にだ。 さすがに危うい写真なので、洞窟を出る前には消さないとなと心のメモにつけておく。 それはさておき、今この瞬間は撮れたばかりの写真の方が大事である。 和美も早くとむつきの腕を引いており、一緒に覗き込むように小さな液晶画面を見た。「うわっ、男の人の膝の上でとか。自分で言うのもなんだけど、エロイ。ヤラレちゃった後みたい。割れ目が浮き出てるし、先生なんでこんなの思いつくの?」「俺が今まで読んできたエロ本の数を覚えていると思うのか?」「はいはい、それだけ読んできたんだ。で、次はどうする?」 もはや和美も止まれず、次は次はとむつきのリクエストを率先して聞き始めた。 それに伴い和美の表情からも硬さが消え、淫靡な笑みが時折顔を出すまでに。 リクエストされたポーズも、巨乳によりはち切れそうなビキニに自ら手を入れ乳首を摘んで強調させたり。 頑なに水着の着衣は守りながら。 開脚させられた足、陰部に張り付いた水着の割れ目。 その割れ目を足の付け根の肉を左右に引っ張る事で開かされたりもした。 その間、ずっとむつきは写真を撮るか、ポーズを指示するかの二つのみ。 和美の足を開かせていた足だけは別だが、殆どは和美が自らポーズを取る格好だ。 元々濡れていた水着なのでむつきは気付かなかったが、和美は当然気付いていた。(あぁ、濡れちゃってる。戻れるかな、私。無理、かな。皆を見てると) むつきの指示を聞きながら、漠然と。 何時か私もむつき相手に処女喪失する日を、嫌悪感なく想像してしまう。 そしてその想像がさらに密かに濡れる陰部を更に潤わせる事になるのだが。 次の瞬間、突然和美の胸元でブーンとバイブレーションで震え出した携帯に我に返った。 突然の刺激に思わずイキかけたが、確認した着信名に背筋に寒いものがのぼる。「せ、先生どうしよう。彼氏から電話掛かって来ちゃった」 まるで浮気現場を直に見られてしまったかのように、声が震えていた。「振ったの向こうなのに?」「あっ」 そうだ別れたんだと、今まで彼氏の事など本気で頭から吹き飛んでいたようだ。 何故今さらと和美は思ったようだが、むつきには分かった。 彼氏は別に本気で別れるつもりなどなかったのだ。 振るのはやり過ぎな気もするが、ちょっと冷たくして気を引きたかったのだろう。 私が悪かったと和美が言えばよかったのだが、恐らく旅行で忙しくそれもない。 だから慌てて、俺が悪かったと悪くもないのに言おうというところであろうか。「どうし、ねえ。先生どうしたら良い?」「そうだな」 もちろん、むつきの中では今さら和美を元の鞘に収めるつもりなど毛頭ない。 まだ膝の上で可愛がっている相談を受ける程度なら良かったのだが。 和美もまたひかげ荘の住人であり、嫁にしたいとちょっと思うぐらいにはなっている。 だからこの時初めて、むつきは自分から動く事にした。 まずは散々遊んだデジカメを自分の首に掛けて、両手を自由に。 それから片手で和美自慢の巨乳を大胆に揉みしだき、片手は開かせた足の太股をなぞる。「んぁっ、先生。待ってお願い。彼氏から」「元、彼氏」 改めて振られたんだろと、強調し和美にむつき自身を強く意識させた。「和美、そのまま電話に出てくれ」「このままって、本気で?」「振られた意趣返し。もちろん、言わなきゃわからないさ。別れたくないぐらいに好きだったわけじゃないだろ。楽しめよ、和美」 渋る和美に、ここぞとばかりに畳み掛けるように情報を植えつける。 既に別れた、向こうから振った、俺といて楽しかったろと。 これが証拠とばかりに、むつきは和美の太股から足の付け根に、張り付く水着をにちゃりと肌から離して指を滑り込ませた。 直ぐに割れ目にはもぐりこまず、愛液でぬらついた肌の上で愛液をにちゃにちゃ弄ぶ。「電話に出て。しばらくは、普段通り。ほら」「駄目、乳首苛め。先生、柿崎達にする時みたい。嫌って言っても、エロイ事で言う事を聞かされちゃうんでしょう?」「さすが、ひかげ荘の住人。分かってるじゃないか」 ついに元彼からの電話の動揺よりも、一体何をされるのかの興味が勝ってしまっていた。「も、もしもし?」「和美ちゃん、ごめん!」 第一声の謝罪は、無駄に大きな声が和美の耳を貫き機嫌を損ねただけであった。 咄嗟に携帯を耳から離し、顔をしかめた和美を振り向かせた。 何やら喚いている電話の向こうの彼氏をほったらかしにして。 むつきは和美の唇へと自分の唇を強く押し付けた。 最初は眼を白黒させていた和美も、何かに陶酔するように瞳を閉じ始める。 電話の向こうの喚き声も、足元の海水の小波も遠く聞こえる程に。 何時の間にか和美は体から力を抜くように、むつきへともたれかかっていた。「んはぁ……先生、力入んない。キス上手過ぎ」「ダウンにはまだ早いぞ、元彼待ってるぞ」「元、彼か。元なんだよね」 ちょっと面倒そうに携帯を耳に当てなおした和美が始めて言葉を向こうに投げた。「ちょっとうるさい、静かにしないと切るよ」「はい、ごめんなさい」 不機嫌さが伝わったのか、イケメンとは聞いていたが何処か気弱な声が聞こえた。 それはともかくとして、今はそういうプレイ中である。 早くと視線で誘ってくる和美の割れ目に、ついにむつきは指を埋め込ませていった。 オナニー経験はそこそこあると発言していたが、その通り。 処女膜は確かにあるが、特有の硬さはあまりなくぐにぐにと美味そうな膣である。 たわわに実る果実も同時に弄び、水着の中に手を差し込んで直接乳首も捏ね上げた。「んぅ、胸がじんじんする。あそこも。会話なんて出来ない」「ほら、元彼が待ってるぞ」 腕の中で身もだえする和美の首筋にキスを落としつつ、ほらっと催促する。「気を散らっ、んぁ。先生、なのに。で?」 震える声を無理矢理押さえ、返ってそれが怒りを含んだような声にも聞こえた。 むつきでさえそうなのだから、携帯の向こうの元彼はなおさらだろう。 案の定、ご機嫌伺いをするような下手な声が聞こえてきた。「あの、ごめんなさい」「それさっき聞いた」 相変わらずというか、若干わざとらしい不機嫌な声である。 その和美の視線は、自分の乳房を弄び、陰部を弄るむつきの手にそそがれていた。 元、彼氏だが、以前は散々メールや直接好きと言葉にした相手と電話しながら弄ばれている。 もちろん、むつきという男を知っているから、既に嫁にする気満々だとも分かっていた。 けれど、それでもまだ完全に切れていない相手との電話中の行為であった。 二人の男の間を行ったり来たりする淫乱な女子中学生。 そんな想像から愛液の量は更に増し、足元の小波よりも自分の愛液が絡む音の方が良く聞こえた気がした。 だからこそ、わざと不機嫌な声を出さなければ、瞬く間に向こう側に喘ぎ声が漏れてしまうだ。「別れるつもりなんて、全然なかったな。気を引きたくて。なのに連絡全然なくて!」「ふーん」 正直、そんな事情知るかとも思ったのだが、囁きかける。 当然耳元から遠ざけた携帯ではなく、自分を弄ぶ淫行教師にであった。「先生、気付いてたっしょ」「まあな、俺も男だから。男特有の身勝手で馬鹿な行動ぐらい分かる。たぶん、電話の直前まで怒ってたぞこいつ。なんで掛けてこないんだって」「本当、馬鹿……なっ、んだから」「そういう所も可愛いと思えて初めて、立派な女だよ。まあ、その後でコントロールできなきゃ駄目だけど。結論、お前は俺の嫁」 ああ、ここにも身勝手で我が侭、どうしようもないのがと和美が若干頭を抱えた。 けれどその身勝手に身を許してしまったのは自分だ。 しかも体を弄られて気持ち良くよがっていたのも事実。 世間一般的にはむつきが完全に悪いが、自身が当事者ともなれば自分も悪いとも思える。 だからもう流されちゃえと、今の流れに抗わず和美は色々な意味で身を委ねる事に決めた。「ねえ、今私なにしてると思う?」 再び耳元に近付けた携帯の向こう側へと、和美がそう言い出した。「なにって、旅行。クラスメイトと旅行だろ?」「そうじゃなくて、んぅ。今、現在ぁっ」「和美、ちゃん?」 まだ携帯の向こう側の元彼は、何を聞かれたのか計りかねているようだ。 察しが悪いなあと、和美はむつきを見上げるようにお願いしてきた。 もっと声が出るように、携帯の向こう側にまで届くように。 お安い御用だと、むつきは優しい愛撫を終えて、少しだけ激しく、徐々に強くしていった。 勃起した乳首のしこりを和美自身に教えるように摘み捏ね上げる。 割れ目の奥に伸ばした指も、じゅぶじゅぶと音が聞こえる程に激しく挿入を繰り返す。 足と足は絡めあい、目の前の和美のうなじにはこれでもかとキスを落とし始めた。 全力で、全身で密着し、和美にむつきと言う名の男を刻み始める。「ねえ、聞こえる。んぁ、ぁっ。私が、くんっ。あぁぅっ」「和美ちゃん、もしかして」 やっと分かったかと笑ったのも一瞬。「俺に振られたのが寂しくて、一人慰めて。マジで、オナニーしてるのか!?」 ああ、やっぱり男は身勝手だとちょっとだけ冷めかけた。 だから気分が漏り下がらないよう、陰部を弄るむつきの指にあわせ腰を振った。 どっちも馬鹿だが、自分が気持ちよくなる様気遣ってくれる男の方がマシだと。「今、はぁ……何処に、一人?」「分かってる、一緒にだろ。一緒に、今寮の部屋。俺だけだから」 ごそごそと聞きたくもない衣擦れ音が聞こえたのを期に和美は携帯を手から離した。 通話中のまま、一人でマスでもかいてろと首に下げなおす。「もう一人の身勝手な人、せめて気持ち良くしてね。しばらくは、セックスフレンドで。本番はなし。んー、大事にしてくれるんだって思ったらお嫁になってあげる」「十分だ、女の子を大事にするのは割りと得意だ。和美、こっち」 また嫁が増えたが、それで色々と考えるのは後の事だ。 今は和美を愛するのが先だと、胡坐をかき直して和美をこちらに向ける。 少しだけ腰を浮かしてハーフパンツとトランクスを脱いで、和美の陰部、水着に寄り添わせた。「本番は駄目だけど、素股ぐらいなら良いよ?」「水着、変に伸びたら困るだろ。そこまでならないにしてもな。どうだ、大事にしてるだろ?」「当たり前」「お前が言い出したんだろ」 そうでしたと笑う和美の唇を奪い、水着に覆われたお尻に両手を添えた。 舌を使いながら互いを舐りあい、体を擦り付けあう。 濡れた水着の表面は少し摩擦が強いが、それも自分のカウパーと和美の愛液が混ざるまでだった。 水着越しに染み出す事はなかったが、ちゃんと布地と肌の切れ目から溢れだしていた。「和美、可愛いぞ。絶対大事にする、幸せにする」「そう言うのは後。今は気持ちよく、擦れて。熱い、硬い。先生ぇ」 元彼が携帯の向こうで盛る声など、二人の密着した胸の間で音が途切れていた。 洞窟内の小波さえも聞こえない程に、互いの吐息と喘ぎだけで耳がもう一杯だ。「先生、ちょっとやばい。感じた事のない、キュンキュンが」「遠慮せず、イケ。砂浜に戻るまで、三回はイカせてやるからな」「うん。んくっ、ぁっ!」 もう我慢出来ないと、和美もむつきの首に腕を巻くように抱きついてきた。 初めての快楽から逃れるように腰が浮きそうにはなったが、そこはむつきががっしり抑える。 なので自慢の巨乳を水着越しに、むつきの顔に押し付けただけであった。 巨乳の谷間に顔を埋め、幸せに窒息しそうにもなったが、自分がよがるのはまた今度。 今は和美をお嫁にしてくださいと、向こうかわ言わせる為にもむつきは頑張った。「和美、ほら乳首たってむ」「イク、乳首噛まれて。イク、ぁっ。んぁっ!」 一際大きな喘ぎ声を上げて、和美がむつきの腕の中で喜びに体を震わせた。 むつきも和美が膝の上から転がり落ちないようしっかりと抱き締める。 和美のほうもしっかりと、むつきへ抱きついていたわけだが。 しばし快楽の波に弄ばれぼうっとむつきの頭越しに遠い場所を見つめていた。 だが時が過ぎるにつれて我に返り、自分の胸の中で窒息しそうなむつきを見下ろす。「先生、生きてる?」「なんとか。マジで窒息するかと。良かったか?」「もう、一回?」 つまりはそれが和美の答えであった。 むつきも喜んでと答えたのは良いが、二人共既に通話中の携帯の存在を忘れていた。 気がついた時には切れていたのだが、不用意な発言が聞こえていないか祈るばかりだ。-後書き-ども、えなりんです。ここ最近は、連載開始時の慕われなさが嘘のようですね。嫌われてはないにしても、軽んじられてたんですよこの人。その代り教師としてはどんどん堕落してますが。さて、彼氏持ちだった和美ですが……別れました。別れたというか、彼氏の方が別れた振りして逆に捨てられた感じですが。軽い寝取りですが、元彼が血の涙を流すような寝取りはありません。むつきは元より、和美自身の身も危うくなりますから。正式に嫁になるのはもう少し先です。それでは次回は土曜日です。