岡崎は、藤林 杏の協力を得て、残りわずかな日をすべて仲間集めに回した。
最初は‥藤林 杏の妹である椋と直接会って許可を得なければならないと思った。
~椋との約束~
岡崎は、椋が通っている看護学校の校門前に立っていた。
「ここか‥」
綺麗な学校が門から見えた。その中には、看護を目指している男や女の姿があった。
その中に、一人だけオドオドしている人物が見えた。
困った顔をしながら、右も左も分からない子供のようにオロオロしていたのだ。
岡崎は、生徒ではないが、一般人も入っても問題ないという軽い気持ちでオロオロしている女の元まで歩いていった。その子は、岡崎を見るなり、慌ててこちらへ来た。
「岡崎さん‥なんで‥ここにいるんですか?」
紛れもなく椋だった。
「オロオロしている子がいるから、もしかしたらと思ってな!やっぱり、藤林だったか」
「心配して‥くれたん‥ですか?」
頬を赤く染めながら岡崎に言う。
「まぁな!」
「ありがとうございます」
岡崎と椋が話していると周りの生徒であろうか?女が「彼氏?」みたいに騒ぎ立てた。
「ここでは、誤解を生むからな!近くの喫茶店でも行かないか?少し話したいことがあるんだ」
「誤解?」椋も周りで騒いでいる女に気が付き、目を丸くした。
「そうですね‥」
トボトボ歩いていると、椋が自然と岡崎に急接近していたことに気付いた。岡崎は、咄嗟に左を向いていたが、緊張は隠せなかった。鼓動が次第に大きくなり、椋も岡崎の右手に触れるほどの距離だった。
岡崎の右手と椋の左手が付きかけた時、「ここにしないか?」と岡崎が回避行動をとった。
そこは、椋が想像していなかったほどのおしゃれな店だった。
「ここに‥ですか?」
「嫌か?」
「いえ‥ここに‥し‥ます」
緊張しているのか、椋の言葉もおぼつかないようだった。
中に入ると、外以上のおしゃれな店だった。ピンクのカーテンに、1枚1枚仕切りがあり、外からじゃ中の様子が分からないようにまでされていた。
「うへぇ‥」言葉が見つからない岡崎とあまりの仰天ぶりに動揺が口から出てしまった椋は、「こちらへどうぞ!」と言う店員についていくことしかできなかった。
引き返すことなんてできなかった。
仕切りに閉ざされた中は、以外と普通だった。別に凄いことを期待していたわけではなかったが…少し落胆してしまった。
「注文どうしますか?」
ニコニコした店員が言ってきた。
「どうする?藤林?」
「そうですね‥私、オレンジジュース‥この200%で」
「200%!!!果汁ってことだよな?」
『200%の果汁』に驚きの隠せない岡崎は、店員を見た。すると、若い店員は笑顔で「果汁を使いきった究極のジュースですよ」自信満々に言った。そのあとに、
「恋人サービスがありまして‥一緒にドリンクを飲んでいるところを撮影できますけど…どうしますか?」
「え?」岡崎は、椋と恋人同士と思われていることに冷や汗をかいた。
椋も赤く染めて「お願いします」と答えた。
「かしこまりました」というと店員は、去って行った。
「え?藤林‥」岡崎は、椋の大胆な行動にさらに驚いた。
「はっ!わ‥わたし‥あぅ~」
「(可愛い!!)」と岡崎は思ってしまった。(いかんいかん)と訂正した。大事な話があるのに、まさか‥こんな羽目になるとは思っていなかったからだ。
「藤林‥2人で飲むってストーロー2本ってことだよな‥多分」
「だと思います」
しかし、現状は違った。
「あぁ‥」汗が机にこぼれ落ちた。
「お待たせいたしました」岡崎の動揺をすべて吹き飛ばす笑顔は、責められないほどだった。ストーローが交差して、真ん中にハートマークがあり、一緒に吸いこんだら分かれて飲める形のあのストーローだった。
「嘘だろ‥」
「はーい!撮りますので、飲んでください」
店員は、完全に恥ずかしがっていると勘違いしているように、「早く!」と言わんばかりにせかされている気分に陥った岡崎の横で椋がストーローに唇をつけた。
「おか‥朋也君!早く!」積極的になっていた。椋の口から『朋也君』と言われるのは、初めてだったのだ。岡崎もストーローに口をつけて、「(どうにでもなれ!)」という気持ちでジュースを吸った。
その瞬間、酸っぱ過ぎるジュースを岡崎は、ジュースを吐いてしまった。さらに、そのジュースは椋の口の中にもの凄い勢いで流れ込んだ。
「うっ‥ごく‥ごく」と一気に飲み干す椋の頬はへこんでいた。
結局、一口も飲めなかった。岡崎は、お冷を口に含んだ。
「岡崎君‥さっき‥」
「ごめんな!酸っぱ過ぎて、吐いちゃった」
「え?じゃあ、私が飲んだのは、岡崎君の吐いたジュース‥」
「あ!悪い‥なんか飲みたいものあるか?」
顔色を確認しながら、頭を下げた。椋の顔は、赤く染められて真っ赤になって動かなくなった。
「椋‥椋!!!!」
喫茶店で話すことができず、店員にお会計の時に、もらった破り捨てたい写真をポケットに入れ、背中に椋を乗っけていた。
「うっ‥」
椋が目を覚ますと‥夕焼けが広がっていた。
「あ!ここは?」
周りを見渡すと、公園だった。ベンチで腰かける岡崎の姿があった。
「お!目覚ましたか?」
「は…はい」
「今日は、悪かったな」
「いえ‥あの、ここは?」
「あぁ‥気絶したお前をおんぶして運んだんだけど…ここぐらいしか思いつかなくてな。すまん」
「いえ‥おんぶ‥ですか‥」
赤く染める顔を見た岡崎は、そっとポケットの写真を渡した。
「え?」
「これは、お前が持っていてくれ!俺には、渚っていう奥さんがいるからな」
「渚さんに怒られてしまいますね!分かりました。大事にします」
「まぁ!杏には、なるべく内緒な」
「大丈夫です。私、僚生活なんです」
「そうだったのか…知らなかった」
僚生活と聞かされ、門限とか大丈夫か?と不安していると椋が口を開いた。
「今日の話ってなんだったんですか?」
すっかり忘れていた岡崎は、頭を掻いた。
「そうだったな!藤林‥実は‥」
すべてを話した。これから、起こすことを‥。
「分かりました。協力します。宮沢さんや相楽さんの電話番号なら分かりますし‥それに、そういう話でしたらみなさん来てくれると思います。」
「いや…。この話は、みんなが来てから言うつもりだ。だから、内緒にしてくれないか?まだ、汐が生きていると思っている奴もいるんだ。だから、電話で話すことじゃないだろ?」
「そうですね!岡崎君‥分かりました。協力します」
「ありがとうな」
「ただし、条件があります」
「条件?」
椋の口から出た『条件』という言葉に首をかしげた岡崎。
その岡崎を見て言った。
「私は、協力します。ですが、今日のことは、誰にも言わないでくださいね!例え、お姉ちゃんでも‥」
真剣な椋に岡崎も真剣に頷いた。
「分かった。杏には言わないし、誰にも言わない」
「ありがとうございます」
「いや、手伝ってくれるんだし、それくらいの願いは聞くぜ」
椋は、笑い出した。岡崎も右腕を胸にドンとつけて笑った。
「それでは、日が暮れますので、帰ります。今日はありがとうございました」
「俺こそ、ありがとうな。またな」
「はい」
日が暮れる瞬間まで一緒にいてくれた椋の背中を見ながら岡崎も帰って行った。
~春原との電話2~
ピッピッ ピッ!
岡崎は、ある人物にかけていた。
「はい!」
「もしもし。パシリか?」
「あんた‥いきなりパシリって……どういうことだ!!!!」
春原に電話をした。
「お前、妹いたろ?芽衣ちゃん」
「あぁ‥可愛い妹がどうしたって?」
「実は、子供ができたらしい‥」
「‥‥マジかよ!!!」
ブチン
電話が切れた。
そして、5分後―春原から掛かってきた。
「もしもし。岡崎です」
「この大大うそつきが‼!子供なんてできてないじゃないか!!」
「信じるなよ」
「こっちは、馬鹿にされたわ」
「良かったな。最高のご褒美だったろ」
「んなわけあるかよ。で!なんの用件なんだ?」
「あぁ‥実はな!全員で集まりたくてよ!芽衣ちゃんも誘ってくれないか?」
「あのね‥さっき、兄妹関係にひび入ったばっかなんだよ」
「春原‥芽衣ちゃんに『俺の彼女になってください。兄だけど、愛さえあれば関係ないよね!』って言ったんだろ!」
「アホか!!兄に愛って、ありえるか!!あんたのせいだろうが」
「じゃあ!頼んだ」
岡崎が切ろうとすると、春原が改まった声で話しかけてきた。
「なぁ!岡崎?」
「なんだよ‥」
「渚ちゃんがいなくて‥寂しくないのか?汐ちゃんも小さいしさ!母親いないのって…」
「それ以上言わないでくれ‥」
「悪かった!芽衣には言っておくよ」
「『俺と結婚してくれ』ってか?」
「アホ‥」
ブチン
受話器を置いてやった。
シャワーを浴び寝る体勢に入った岡崎は、春原の言葉を思い出していた。
まだ、何も知らない春原や他のメンバー‥みんなが知って、俺はどうしてほしいんだ!慰めてほしいのか?どちらにせよ!時間がないんだ。明日から、全力で…。
(作者の感想)
ありがとうございます。
岡崎の思いを告白するのは後編以降となります。
後編は、みんなが集まるところまでです。
ややこしくてすみません。看護学校に行っている椋ちゃんは、うまくいってない様子でしたね。
今のところ、24話体制でいこうと考えています。
ありがとうございました。