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No.35536の一覧
[0] 【チラ裏より】Muv-Luv Alternative Change The World[maeve](2016/05/06 12:09)
[1] §01 2001,10,22(Mon) 08:00 白銀家武自室[maeve](2012/10/20 17:45)
[2] §02 2001,10,22(Mon) 08:35 白銀家武自室 考察 3周目[maeve](2013/05/15 19:59)
[3] §03 2001,10,22(Mon) 13:00 白銀家武自室 考察 BETA世界[maeve](2012/10/20 17:46)
[4] §04 2001,10,22(Mon) 20:00 横浜基地面会室 接触[maeve](2012/12/12 17:12)
[5] §05 2001,10,22(Mon) 21:00 B19夕呼執務室 交渉[maeve](2012/12/06 20:40)
[6] §06 2001,10,22(Mon) 21:30 B19夕呼執務室 対価[maeve](2012/10/20 17:47)
[7] §07 2001,10,22(Mon) 22:00 B19夕呼執務室 考察 鑑純夏[maeve](2012/10/20 17:47)
[8] §08 2001,10,22(Mon) 22:30 B19夕呼執務室 考察 分岐世界[maeve](2012/10/20 17:47)
[9] §09 2001,10,22(Mon) 23:00 B19シリンダールーム[maeve](2012/10/20 17:48)
[10] §10 2001,10,23(Tue) 08:00 B19夕呼執務室[maeve](2012/12/06 21:12)
[11] §11 2001,10,23(Tue) 09:15 シミュレータルーム 考察 BETA戦[maeve](2013/01/19 17:36)
[12] §12 2001,10,23(Tue) 10:00 シミュレータルーム 考察 ハイヴ戦[maeve](2015/02/08 11:03)
[13] §13 2001,10,23(Tue) 11:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:23)
[14] §14 2001,10,23(Tue) 12:20 PX それぞれの再会[maeve](2012/12/16 23:01)
[15] §15 2001,10,23(Tue) 13:00 教室[maeve](2012/12/06 00:01)
[16] §16 2001,10,23(Tue) 13:50 ブリーフィングルーム[maeve](2013/05/15 20:03)
[17] §17 2001,10,23(Tue) 18:30 シミュレータルーム[maeve](2015/03/06 21:04)
[18] §18 2001,10,23(Tue) 22:00 B15白銀武個室[maeve](2015/06/19 19:23)
[19] §19 2001,10,23(Tue) 23:10 B19夕呼執務室 考察 因果特異体[maeve](2012/10/20 17:51)
[20] §20 2001,10,24(Wed) 09:00 B05医療センター Op.Milkyway[maeve](2015/02/08 11:06)
[21] §21 2001,10,24(Wed) 10:00 シミュレータルーム 考察 XM3[maeve](2012/12/06 21:17)
[22] §22 2001,10,24(Wed) 13:00 横浜某所 遺産[maeve](2012/11/10 07:00)
[23] §23 2001,10,24(Wed) 21:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/01/13 23:30)
[24] §24 2001,10,24(Wed) 22:00 B19シリンダールーム 暴露(改稿)[maeve](2013/04/04 22:05)
[25] §25 2001,10,24(Wed) 23:00 B19シリンダールーム 覚醒[maeve](2013/04/08 22:10)
[26] §26 2001,10,25(Thu) 10:00 帝都城 悠陽執務室[maeve](2016/05/06 11:58)
[27] §27 2001,10,26(Fri) 22:00 B19夕呼執務室[maeve](2016/05/06 12:35)
[28] §28 2001,10,27(Sat) 09:45 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:22)
[29] §29 2001,10,27(Sat) 11:00 帝都浜離宮茶室[maeve](2015/02/08 10:15)
[30] §30 2001,10,27(Sat) 12:45 帝都浜離宮 回想(改稿)[maeve](2012/12/16 18:30)
[31] §31 2001,10,27(Sat) 14:00 帝都城第2演武場[maeve](2015/01/23 23:26)
[32] §32 2001,10,27(Sat) 15:00 帝都城第2演武場管制棟[maeve](2016/05/06 11:59)
[33] §33 2001,10,27(Sat) 16:00 帝都浜離宮[maeve](2015/01/23 23:31)
[34] §34 2001,10,28(Sun) 10:00 帝都城第2演武場講堂 初期教導[maeve](2016/05/06 12:00)
[36] §35 2001,10,28(Sun) 13:00 帝都城来賓室[maeve](2016/05/06 12:00)
[37] §36 2001,10,28(Sun) 国連横浜基地[maeve](2012/11/08 22:20)
[38] §37 2001,10,29(Mon) 15:00  B19シリンダールーム 復活[maeve](2013/04/04 22:18)
[39] §38 2001,10,30(Tue) 10:00  A-00部隊執務室 唯依出向[maeve](2016/05/06 12:01)
[40] §39 2001,10,30(Tue) 11:00  B19夕呼執務室 考察 G元素(1)[maeve](2015/03/06 21:07)
[41] §40 2001,10,30(Tue) 15:00  A-00部隊執務室[maeve](2015/02/03 20:59)
[42] §41 2001,10,31(Wed) 10:00 シミュレータルーム[maeve](2016/05/06 12:03)
[43] §42 2001,10,31(Wed) 06:00 アラスカ州ユーコン川[maeve](2016/05/06 12:03)
[44] §43 2001,10,31(Wed) 10:00 司令部ビル 来賓応接室[maeve](2016/06/03 19:20)
[45] §44 2001,10,31(Wed) 12:00 ソ連軍統治区画内 機密研究エリア[maeve](2016/05/06 12:05)
[46] §45 2001,11,01(Thu) 13:00 アルゴス試験小隊専用野外格納庫 考察 戦術機[maeve](2016/05/06 12:06)
[47] §46 2001,11,02(Fri) 12:00 テストサイト18第2演習区画 E-102演習場[maeve](2016/05/06 11:50)
[48] §47 2001,11,02(Fri) 12:15 司令部棟 B05 相互評価演習専用指揮所[maeve](2016/05/06 12:06)
[49] §48 2001,11,03(Sat) 05:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/02/03 21:01)
[50] §49 2001,11,03(Sat) 09:00 日本南洋 某無人島[maeve](2015/01/04 19:23)
[51] §50 2001,11,02(Fri) 20:00 ユーコン基地[maeve](2016/05/06 12:07)
[52] §51 2001,11,03(Sat) 点景[maeve](2016/05/06 12:08)
[53] §52 2001,11,04(Sun) 07:30  A-00部隊執務室[maeve](2016/05/06 12:08)
[55] §53 2001,11,04(Sun) 20:00 B19夕呼執務室[maeve](2015/06/19 19:45)
[56] §54 2001,11,05(Mon) 09:00 ブリーフィングルーム[maeve](2015/01/24 18:43)
[57] §55 2001,11,06(Tue) 10:00 帝都城第2連隊戦術機ハンガー[maeve](2015/06/05 13:06)
[58] §56 2001,11,07(Wed) 10:00 横浜基地70番ハンガー[maeve](2015/03/06 20:56)
[59] §57 2001,11,08(Thu) 14:00 帝都浜離宮来賓室[maeve](2015/09/05 17:29)
[60] §58 2001,11,08(Thu) 15:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(1)[maeve](2013/04/16 21:00)
[61] §59 2001,11,08(Thu) 15:30 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(2)[maeve](2015/01/04 19:04)
[62] §60 2001,11,08(Thu) 16:00 帝都浜離宮来賓室 考察 創造主(3)[maeve](2015/02/03 21:19)
[63] §61 2001,11,09(Fri) 11:05 新潟空港跡地付近[maeve](2015/10/07 16:50)
[64] §62 2001,11,10(Sat) 23:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/03/06 21:15)
[65] §63 2001,11,11(Sun) 05:50 燕市スポーツ施設体育センター跡[maeve](2015/06/19 19:48)
[66] §64 2001,11,11(Sun) 06:52 旧海辺の森跡付近[maeve](2016/06/03 19:25)
[67] §65 2001,11,11(Sun) 07:15 旧燕市公民館跡付近[maeve](2016/05/06 11:55)
[68] §66 2001,11,11(Sun) 07:24 連合艦隊第2艦隊旗艦“信濃”[maeve](2016/05/06 11:56)
[69] §67 2001,11,11(Sun) 07:44 旧新潟亀田IC付近[maeve](2015/09/11 17:22)
[70] §68 2001,11,11(Sun) 08:00 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 09:53)
[71] §69 2001,11,11(Sun) 08:15 三条市グリーンスポーツセンター跡[maeve](2015/02/08 10:00)
[72] §70 2001,11,11(Sun) 08:20 旧北陸自動車道新潟西IC付近[maeve](2014/12/29 20:34)
[73] §71 2001,11,11(Sun) 08:25 帝都上空[maeve](2015/08/21 18:44)
[74] §72 2001,11,11(Sun) 10:30 三条市荒沢R289沿い[maeve](2015/02/04 22:07)
[75] §73 2001.11.12(Mon) 09:30 PX[maeve](2015/09/05 17:34)
[76] §74 2001.11.13(Tue) 09:00 帝都港区赤坂 九條本家[maeve](2015/04/11 23:27)
[77] §75 2001,11,13(Tue) 10:30 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2015/12/26 14:19)
[78] §76 2001,11,13(Tue) 19:50 B19フロア 夕呼執務室 考察G元素(2)[maeve](2016/05/06 12:19)
[79] §77 2001,11,14(Wed) 09:00 講堂[maeve](2016/05/06 12:25)
[80] §78 2001,11,15(Thu) 22:22 B15 通路[maeve](2016/05/06 12:31)
[81] §79 2001,11,15(Thu) 15:00(ユーコン標準時GMT-8) ユーコン基地滑走路[maeve](2015/10/07 16:54)
[82] §80 2001,11,16(Fri) 10:15(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/09/05 17:41)
[83] §81 2001,11,16(Fri) 10:55(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト18[maeve](2015/10/07 16:57)
[84] §82 2001,11,16(Fri) 16:30(GMT-8) ユーコン基地 モニタールーム[maeve](2015/05/31 10:24)
[85] §83 2001,11,16(Fri) 21:00(GMT-8) リルフォート歓楽街 “Da Bone”[maeve](2015/10/07 17:03)
[86] §84 2001,11,17(Sat) 17:00(GMT-8) イーダル小隊専用野外格納庫 衛士控室[maeve](2015/06/20 23:51)
[87] §85 2001,11,18(Sun) 17:20(GMT-8) ユーコン基地 演習区画 テストサイト37 幕間?[maeve](2015/05/31 20:15)
[88] §86 2001,11,18(Sun) 22:00(GMT-8) アルゴス試験小隊専用野外格納庫[maeve](2016/05/06 11:46)
[89] §87 2001,11,19(Mon) 13:00(GMT-8) ユーコン基地 居住区フードコート[maeve](2015/06/19 20:13)
[90] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア[maeve](2015/12/26 14:23)
[91] §89 2001,11,19(Mon) 18:50(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/12/26 14:25)
[92] §90 2001,11,19(Mon) 20:45(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画 ПЗ計画研究施設[maeve](2015/10/07 17:13)
[93] §91 2001,11,19(Mon) 21:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画[maeve](2015/10/07 17:15)
[94] §92 2001,11,20(Tue) 03:30(GMT-8) ソビエト連邦租借地 ヴュンディック湖付近[maeve](2015/08/28 20:32)
[95] §93 2001,11,21(Wed) 14:30(GMT-8) ユーコン基地 ソビエト占有区画内 総合司令室[maeve](2015/10/07 17:20)
[96] §94 2001.11.22(Thu) 03:00(GMT-8) アラスカ州ランパート付近[maeve](2015/12/26 14:28)
[97] §95 2001.11.23(Fri) 18:00(GMT+9) 横浜基地 B20高度機密区画[maeve](2015/08/28 20:08)
[98] §96 2001.11.24(Sat) 15:00 横浜基地 B17 A-00部隊執務室[maeve](2016/06/03 19:39)
[99] §97 2001.11.25(Sun) 02:00(GMT-?) 某国某所[maeve](2015/12/26 14:33)
[100] §98 2001.11.25(Sun) 13:30 横浜基地 北格納庫管制制御室[maeve](2016/06/04 14:06)
[101] §99 2001.11.25(Sun) 18:00 横浜基地本館 メインバンケット モニタールーム[maeve](2015/10/31 14:40)
[102] §100 2001.11.26(Mon) 06:30 横浜基地本館 ゲスト棟[maeve](2016/05/06 11:44)
[103] §101 2001.11.26(Mon) 17:15 横浜基地 モニタールーム[maeve](2016/05/15 12:14)
[104] §102 2001.11.27(Tue) 06:00 国連横浜基地 第2グランド[maeve](2016/06/03 19:42)
[105] §103 2001.11.28(Wed) 09:00 国連横浜基地 XM3トライアル V-JIVES[maeve](2016/05/14 13:10)
[106] §104 2001.11.28(Wed) 17:00 国連横浜基地 米軍割当外部ハンガー ミーティングルーム[maeve](2016/06/04 06:10)
[107] §105 2001.11.28(Wed) 17:40 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2016/06/10 23:26)
[108] §106 2001.11.28(Wed) 18:00 国連横浜基地 Bゲート付近 〈Valkyrie-04〉コックピット[maeve](2019/03/26 22:16)
[109] §107 2001.11.28(Wed) 21:00 B19フロア 夕呼執務室[maeve](2019/03/30 00:03)
[110] §108 2001.11.28(Wed) 21:00(GMT-5) ニューヨーク レストラン “Par Se”[maeve](2019/06/30 17:55)
[112] §109 2001.11.29(Thu) 09:00(GMT-5) ニューヨーク国連本部 安保緊急理事会[maeve](2019/05/05 21:16)
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[35536] §88 2001,11,19(Mon) 18:12(GMT-8) ユーコン基地 演習区外米国緩衝エリア
Name: maeve◆e33a0264 ID:341fe435 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/12/26 14:23
'15,06,19 upload
'15,12,26 誤字修正



Side ユウヤ


『こちらCP、〈Ardos-01〉指定空域東端まであと5,000―――。』

「了解―――。」


オペ娘[リダ]の声に応答しつつ、時刻を確かめれば18:12―――。
時間が限られている以上、可及的速やかに行動に移らないとならない。


解っている―――。
解っていて、やっている。

それでもコレは、オレが絶対退けない一線。


隣のイーニァに視線を送ると、コクリと頷いた。


前回ウェラーから教えられた、秘匿封印を解くためのキーワード―――“Be Free”―――とはね。
皮肉、だな・・・。

何時もの極端な匍匐飛行姿勢から、機体を120度近くまでロール、急激なピッチアップを敢行する。
基地方向から見れば、斜め下へのシザーズ機動―――。
当然急激なマイナスGに視界が一瞬暗くなる。
状況はブリザード、一面の白い闇。
それでも近づく地面を頭の中で意識しながら、アクティブ・ステルスを発動させた。
スロットルを急速に絞りつつカナード代わりの長刀角度を微妙に調整、同じ白で境界の判らない積雪面を微かに掠る感触―――そのまま0高度背面飛行に移行する。

目指すは、北―――。
クリスカ―――。













事の発端は3時間前・・・15:00頃に遡る―――。



その時オレは降りしきる雪の中、自室に戻ってきていた。
ハイネマン[おっさん]に指示されていた“白銀の雷閃[シルバーライトニング]”戦の自機機動記録を提出し、さらに記録には残らない操作性に対する感覚の話をしたら、つい興に乗り、戻りがこの時間になってしまった。
あのオッサンも益々元気・・・嬉々としてなにやら動いている。
期するものがあるらしい。

帰り際聞いたタリサの情報は少し気に掛かったが、その後会ったステラによるとクリスカは買い物に行ったと言う。
実際彼女たちの私室は、まだ何も無い。
元々私物の少ないソ連の兵士だが、それに輪をかけて物に執着してこなかった。
唯一の例外が、イーニァの抱いているくま[ミーシャ]だとか。
言ってくれれば一緒に行ったのに、と呟けば、一緒では買えないモノもそれなりに在るものよ、察しなさい、とステラに窘められた。
一瞬キョトンとしていたのだろう、ユウヤはどんなランジェリーが好みなのかしらね、と笑顔で揶揄された。
確かに一緒に選ぶなど出来はしないし、と言ってこの吹雪の中、女性用アンダーウェアの店先で立っていたくはない。
それでも、二人が狙われる可能性が在る以上、可能な限り一人にしたくない。
流石にサンダークが抑えている以上、白昼衆目の拉致はないと思うが、着替えたら直ぐにでも迎えに行く。
イーニァはVGが昼飯に連れて行ったと言う事で、珍しいことも在るもんだとは思うが、二人がメンバーと打ち解けてくれるのは有り難いし、オレの手が回らないところで、誰かが一緒に居てくれるのは二人の安全確保上も歓迎すべきことだった。


ウェラーに頼まれた亡命の推奨・・・。
タリサに言われた様に、今日も1本だけ自主訓練で高速機動慣熟を入れてある。
それが終われば明日は休みだから、訓練後二人をリルフォートに晩飯にでも誘って亡命を打診しよう。

それが刷り込みかも知れなくても、横浜に転籍となっていても、変わらず祖国に感謝している二人。
確かに、どんな形であれ彼女たちを産み出してくれた、と言う言い方もできる。
その後の扱いについて、オレは到底納得できないが、ただその一点についてなら感謝しよう。
二人はその祖国よりも、オレを選んでくれた。
実際、亡命を勧めることは、その祖国を捨てさせることに等しい。

その対価は・・・。


責任・・・か。
亡命して一緒に違う基地に赴任して欲しい・・・ってこれはもう殆どプロポーズに近い気がしないでもない。
と、言うか、オレ自身がクリスカとイーニァに約束できるものなど、それしか無い。

―――家族に成ること。

遺伝子工学から生み出されたというデザインド・チルドレン。
明確な言葉を耳にした訳ではないが、クリスカが“家族”に憧れを抱いているのは時折感じられた。

本当なら指輪くらい用意したいけど・・・あ、在るか・・・!、確か、お袋の形見が・・・!!


オレが物心付いた頃には、身を飾ることなど全く興味のなかったお袋。
着けていたのは、ほんの小さな石の付いた、指輪だけ。
今思えば、恐らくはお袋を捨てた男に貰った唯一のプレゼントだったのだろう。
お袋の死後、オレがそれを持つはずもなく、こっそりと一緒に墓に埋めた。
それとは別に、お袋が一つだけ大切にしていたのは、お袋の母・・・つまりオレの祖母に譲り受けたという指輪。
じいさんには黙って渡され、オレにいつか大切な人が出来たら渡せと言われた。
確か遠縁に当たる地質学者がアフリカから米国の有名宝石店に持ち込んだ希少石で、後日その1つを指輪にして貰ったとか聞いた気がする。
南部の名家と言うだけ在って、結構大きな宝石だった。
当時は全く興味が無かったし、じいさんに見つかってもまたうるさいから見向きもしなかったが、今なら少しは判る。
確か、ネリスから来る時もバッグに放り込んでおいたはず・・・。

そういえばクリスカの瞳色に似た、透き通る様な青紫色だったっけ。
私物を突っ込んできたバッグを漁れば、確かにそこに在った。
中身を確かめると、正しくクリスカの瞳を思わせる青紫、見る角度によって紫色に寄るところまでそっくりだった。

シンプルなロゴが刻まれた小さな箱を、そのままポケットに突っ込む。




「ユーヤァァッッ!」


そこに泣きながら駆けこんできたのが、イーニァだった。


「クリスカが居ないのッ!!!


抱きとめて何事かと訊こうとした思考が止まった。


―――え?


「―――これが・・・。」


イーニァの掴んでいた一葉の紙には、辿々しい筆致の短い英単語の羅列。


【 Never look for me.[探さないでくれ]
  Please, be well about Иния.[イーニァを頼む]  】



・・・・・・ちょっと待て―――。

なんだコレは・・・??



ドサリと椅子に沈み込んだ。



何が、起きた―――?


拉致はないだろうと油断していた。

なのに・・・自ら行った?

何処に?

何のために?

何の相談も無しに?





強制?

どうやって?

或いは脅迫?

例えば・・・!
狙撃!?
Su-47の評価試験を強要するの時の唯依の様に、イーニァかオレを対象ととする?

否―――、こんな書き置きを残せるなら何らかを伝えて来るはず

メッセージが簡素過ぎる。

そもそも、ソ連に行ったとは決まっt
「クリスカは、クリスカは向こう側[●●●●]に居るのッ」

「ッ!!、イーニァ・・・クリスカが何処に居るか判るのか!?」

「うん!
私はクリスカと繋がっているから・・・。
此処からは遠すぎて“色”は見えないし、“声”も聞こえないけど、どっちに居るか、判るの!」

「―――そっか・・・。」


―――深く、息をついた。





取り敢えず、今のところは無事・・・かどうかの保証はないが、最低限生きている。
行き先はソ連、それも確定事項。


―――今、オレが為すべき最優先事項はなんだ?


混乱している暇はない。
―――考えろ、考えるんだ。

細かいことは全部後回し―――。
何故とか、どうしてとか、どうせいくら考えても判る訳ない。
推測に足る情報がないのだから。
書置きの真意を質す為にも、安全を確保する為にも一刻も早く本人に会わないとならない。

そしてクリスカが恐らくは以前行った研究所に居る、と言う事実。
ソ連に何らかの理由で戻ったと成れば、その理由に拠らず当然クリスカが治った理由を調べられるはず。
最悪解剖とか、されかねない。
どう考えても危険が差し迫っている。


ならば、遣ることは唯一つ―――奪還[●●]

―――全てはそれからだッ!



ПЗ計画研究施設―――前も潜入し、クリスカを奪還しようとした場所。
今、潜入が可能か?

流石に以前サンダークに貰った入出許可がもう取り消されているのは確実。
あの用心深い大尉が二人を“御大[Great Colonel]”に譲渡した以上、そのままにしておくわけがない。

イーニァが居ても相手は軍事施設、潜入・救出ミッションなど、そうそう出来るわけがない。
オレに蛇やIMFの様なスキルを期待されても無理だ。

となれば、前回実行されなかった計画と同じ、戦術機を使った強襲強奪[●●●●●●●●●●●]くらいでしかできないだろう。



ウェラーに相談・・・は無理か。

以前とは状況が違う。
あの時ウェラーがオレを唆したのは、元々XFJの査察を防ぎたかったからの様な気がする。
オレがクリスカの救出に成功したとしても、米国の得られる対価が余りにも小さいのだ。
言い換えれば個人的な事情で起こした暴挙をチャラにする面倒だけ被るようなモノだったはず。

前回口にはしていなかったが、当時からCIA・・・第5計画派の専横を嫌っていた様子。
昨日も今のCIAは嫌いだと言っていた。
キタねぇ仕事と自らは言うが、そんな仕事でも米国の矜持は喪わない、・・・そう在りたいとする良き米国人の典型、とも言える。
その米国人として、他国の土地だからとG弾をばら蒔くような作戦は容認しかねる、と言うところなのだろう。
第5計画の暴走を抑制するには、日米の関係を悪化させ、プロミネンスの縮小に繋がる漏洩の事実が明らかになっては困る、と言う意志が存在したに違いない。

今回も、どんな手管かしらねぇがクリスカを再び略取したソ連には憤ってくれるだろう。
けれど、そこにオレが戦術機で突っ込むのは、どう考えても反対される。
祖国のために、諦めてくれ・・・そう言う姿が目に浮かぶ。
オレが救出に成功したところで、今更第3計画とやらや、ПЗ[ペー]計画の人道的非道を訴えたところで、ソ連には何の痛痒も与えない。
何故なら、被害者であるはずのクリスカ達ですら、それが当たり前[●●●●]の国だからだ。
それ以上は、此方の論理や価値観を強引に押し付けるだけの水掛け論に終始する。
かと言って、米国がクリスカとイーニァを調べ、同じような存在を創り出せば、それこそ本末転倒、到底オレが容認できない。
つまりは、今回も米国の得るものなど何も無い。

対して、失敗したときに喪うものが大きい。
XFJ Phase4―――がソ連に渡る。
XFJ-01が次期主力候補と成っている日本にも、これから開発をする米国にも重大な懸念を与えることは間違いない。

―――しかも、この機体、今もハイネマンの不発弾が眠っている。

昨日のハイネマンの話では、ソ連はアクティブ・ジャマー関連技術は得意とのコトだったが、それは逆に言えば、形状ステルスやアクティブ・ステルス等、“認識されない技術”が不得意であり、ソ連が欲しいのはその分野の技術、と言うことだ。
そこが弱いからG元素研究施設を潰されたりしているわけで、XM3を除けば、喉から手が出るほど欲しい技術、と言う事になる。

けど、待てよ・・・?
ハイネマンや米国にしてみれば、そのアクティブ・ステルスはI/Oまで進化したXM3正規版には通じないし、前回だって同じリスクは在ったわけだから問題は無いのか―――?


ならば問題は・・・、何だ?

ソ連を領域侵犯しソ連軍を襲撃した戦術機が、アクティブ・ステルスを搭載したXFJ-Phase4で在ることをソ連が明らかし、米国を糾弾にすること・・・なのか?

・・・いや、ならばそのリスクは寧ろ救出に成功して戻ってきた時の方が大きいのかも知れない。

―――それは、政治決着した機密漏洩疑惑に決定的な証拠を示してしまう[●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●]行為。
前回オレを唆してまで有耶無耶にしようとした事柄を、今度は逆にオレ自身が根底から覆す事に他ならないじゃねぇか・・・!!

前回はそれを避けるために、奪還後は態々ウェラーのコントロール出来る帰投地を指定してきた。

これは、無理だ・・・。
・・・そうだよな、成功しようが失敗しようが、Phase4で襲撃した事実が明らかに成れば、第5計画派であるCIAに利する行動になる。
ウェラーが止めないはずもない。



―――けれど、オレとしては絶対に譲れない一線。
ウェラーの提示した未来予想図の前提は、クリスカとイーニァが居ることなのだ。
それを欠いた未来にオレは、何の未練もない。

その為に使えるものは何でも使う。


サポート無しに夜中のハンガーから戦術機を盗み出すコトは厳しいが、今のオレにはこの後Phase4を堂々と乗れる時間がある。

17:00以降は隊単位での追加訓練をしない限り基本自由。
但し、22:00以降の外出には申請が必要だし、戦術機や攻撃性の装備を使った自主訓練には許可や、監視が付く。
今日もこの後18:00から1時間、自主訓練を設定していた。
インフィニティーズ戦以来、恒例ともなっているオレの自主訓練には、武器の使用も無いことから最早監視も制限も付かない。
状況を伝えるCPが一人付くくらいのもの。
チョビも今日は休むと言っていた。

内容も、何時もの高速飛行慣熟。
申請はアッパー・マウス・パーチ・クリーク流域・・・。


何時もならクソッタレなこの荒天も、今回は寧ろ僥倖。
この後、益々吹雪く中では衛星からの画像監視やIRトレーサーさえ殆ど効かない。
慎重を期すなら、積もった雪面でゼロ高度背面飛行をすれば良い。
背面飛行は、通常の匍匐飛行よりもバーナー炎が下向きになるため、0高度なら排熱は積雪を穿って拡散せず、雪渠内で急激に温度低下する。
巻き上げた雪も吹き荒ぶブリザードと同化し瞬く間に溝を埋めてくれるから短時間サーチにも引っかからない。


そして、基地の追跡は―――アクティブ・ステルスを起動する事で振り切る―――。
Phase4になっても眠っているハイネマンの爆弾。
統合補給支援システム[JRSS]については空力に対する交換対象部位ではなかったことからそのまま。
アクティブ・ステルスも時間の関係で回収しなかったんだろうが、これこそが[]―――。
クリスカ奪還の切り札になるし、かと言って見つかれば最悪な状況を招く最大の弱点にもなる・・・とはな。

確かにI/Oまで支配し、独自の制御をするXM3正規版には通用しないらしいが、I/Oは旧来のままで、機動制御のみを変更しているLTEやLITE相手には有効。
基本同じプロトコルを制御している基地レーダー群にも未だ有効・・・YF-23が採用されなかったことで一般化されなかったアクティブ・ステルスは、その無名故に基地レベルでも殆ど対策が進んでいないのが現状だった。

演習先でアクティブ・ステルスの隠蔽コードを解除し作動させれば、バーチ・クリークから誰にも捕捉されずに東回りでソ連領に侵入できる。
―――勿論、CPのレーダーもロスト・・・オレは2度目のMIA・・・か。
当然強化装備のデータリンクも欺瞞するから、またオペ娘を泣かせちまうが・・・許せ。

今のユーコン基地に於いてこの機体を捕捉できるのは、正規版を有する同じアルゴス隊の4機のみ―――。
XFJやACTVのレーダー範囲から言って、タイミングによってはバレる可能性も在り・・・か。
コレばっかりは、アイツらを信じるしか無いな。


推進剤は満タンだが、ウェラーの援護を受けられない以上弾薬の搭載はない。
それでも刃引きされているとは言え、74式近接戦闘長刀が2振り在るのは幸運。
F-22の騎乗経験でステルス近接格闘の経験もあるし、近接戦術機格闘術[MACROT]慣性制御機動概念[MCLIC]訓練を怠っていない。
加えてこのXFJ Phase4は、不知火とYF-23のハイブリッド進化系、その機動は現状世界最高峰と言っても過言ではない。
戦闘など最後の手段ではあるが、最悪突撃砲を奪うから無問題―――。



―――タイムリミットは・・・?

機体がレーダーロストしても、ブリザード下の視界では夜間捜索を断念するだろう。
米国領との緩衝地帯だから、他国籍の戦術機が大量に捜索に出ることも嫌うハズ。
救難信号が無いのは不自然だが、不時着のショックで意識を失っていたとすれば、少なくとも日付の変わるくらい迄ならそんなにおかしくはない。

・・・但し、その時にクリスカが搭乗していたら流石にマズい。

となれば、やはり22:00がタイムリミット―――。
それまでにクリスカが居住区に戻っていなければ、誘拐や逃亡も視野に捜索が始まる。
大抵は無申請のままリルフォートで飲んだくれて居るのが発見され、譴責で済むのだが。
申請すれば延長は可能だが・・・本人が居ない今、ID無しで代理申請は無理だ。
MPの捜索が始まってしまえば隠れて戻すことは事実上不可能と見て良い。

オレが訓練中ロストすれば当然アルゴスメンバーには召集がかかるから、その時点でクリスカの応答が無いのはバレちまうが、そこは部隊内だけの問題・・・、戻ってからクリスカが拐取された差し迫った状況を話せば理解は得られるだろう。

クリスカさえ22:00までに居住区なりリルフォートなりに戻すことが出来さえすれば、奪還ミッションクリア―――ってことか・・・。
その後はパーチ・クリークに戻り、片側の主機でもぶつけて、救難信号を出せば良い。
深めの吹き溜まりに填っていたことにすればレーダーロストも誤魔化せる。
アクティブ・ステルスの再封印は出来ないが、作動のオンオフは可能。
・・・事後本体は早めにハイネマンに撤去してもらうしか無いな・・・。



・・・と成ればやはり最大の難関は、研究施設への潜入か。
ただクリスカが自分で行ったのなら、少なくともイーニァはある程度行ける気もする。
―――つまり、気は進まないが、クリスカの位置を特定できる可能性が高い事もあり、イーニァの同行は必須。

国連横浜軍転籍と成っているが、今のところ亡命したわけではなく、二人はソ連に国籍がある。
機密区画に入れるかどうかは微妙だが、イーニァの能力を考えれば可能とも思えるし、それでもダメなら最終手段は戦術機での強行突破だ。


―――何れにしろクリスカ本人と逢って真意を質さないとどうにもならないのだから。



もう一度辿るべきプロセスをなぞって、覚悟を决める。


・・・考えたくは無いが、最悪、クリスカの死亡が確認されたら―――、残されたイーニァを守るためにも即時撤退、バーチ・クリークに戻るしか無い。

そして、門限[シンデレラ・タイム]に間に合わなかった場合は・・・。
やはりクリスカの同乗がマズい。
予めイーニァと一緒に騎乗申請しておくことは出来るが、訓練開始時のデータリンクは隠蔽できないからバイタルで不在がバレる。
救難信号に迎えに来てくれるのが、アルゴスなら話せば理解してくれるだろうが、他のメンバーが他国籍で在る以上、救難チームは米国側の警備部隊である可能性が極めて高い。
―――誤魔化しは通用しない。


・・・まあ、コレは今考えても仕方ない、か。
間に合わないと決まったわけでもない。
先を憂いて尻ごんでいたら間に合うものも間に合わない。
最優先事項は、クリスカの可及的速やかな確保!



「ふッ・・・。」


相当に分の悪い賭―――。
杳として見通せない先行きであるが、不思議と落ち着いている自分に、失笑した。
ウェラーから輝かしい未来予想図を聞いた時には現実感がまるで無かったが、死地に自ら飛び込むに等しい今、それをひしひしと感じる。

これがオレのリアル―――。
二人と一緒なら―――それもでも、良い―――。

だから、征く。

別にまだそうなると決まった訳じゃないし、クリスカを喪う未来に比べたら、希望は在る。



「・・・イーニァ、聞いてくれ―――。」

「ウン・・・クリスカを迎えに行ってくれるの?」

「ああ―――。
オレにはクリスカとイーニァが必要なんだ。
先刻のクリスカの位置が判るってコトなんだけど・・・。」

「横浜で純夏や霞と練習したの。
お薬や眠くなるのをしなくても一つに成れるように・・・。
そしたら、―――クリスカだけなんだけど―――、何処にいるか、大体判る。
それに他の人は10mくらいじゃないと見えないんだけど、クリスカとは、100mくらいでも“声”が聞こえる様になった。」

「・・・それは、クリスカ限定?」

「他の人は、・・・純夏と霞なら同じくらい出来るかもしれないけど試してない。
その他の人は、無理。」


なるほど、強力な相手限定のテレパスってコトか?
やはりクリスカの位置を特定するには、イーニァが必要って訳だ。


「・・・ちょっとオレにも試して貰って良い?」

「ん!」


どうせ訓練開始まで時間があるので検証してみると、当初何も起きなかったが、やがて幾つかの映像が見えた。
前にも見せてもらったプロジェクションってヤツなのだろう。
それは最大で100mくらい届く。
以前聞いた、というか他の人だと今でも10m前後と言うから、能力が拡大しているのか、オレ限定なのか、研究者ではないオレには判断が付かない。


「ごめんなさい・・・やっぱり“声”は届かないみたい―――。」

「ああ・・・いや、十分!」


不安げなイーニァを引き寄せ、頭を撫でた。

―――流石に通信機代わりなんて、そうそう都合良くは行かないよな。
けれど、クリスカと繋がるだけでも僥倖。
それ以上は、ESP発現体ではないオレの所為で、イーニァに強制することでもない。


「・・・OK、じゃあ段取りを詰めよう。」


Sideout




Side ウェラー

ユーコン某所DIC事務所 18:12


「未だ、見つからんのか!?」


つい、苛ついた声が漏れてしまった。
しかし、昨夜ブリッジス少尉に、二人の亡命推奨を依頼したばかりで、この状況―――。


「は・・・。
やはり強引な拉致の事実は在りません。
ビャーチェノワ少尉本人は、ウェラー部長の仰る通り、エージェントが周囲に存在することに気付いていたと思われます。
その、いわば味方のエージェントを撒いて振り切ったのは、彼女自身。
女性モノのアンダーウェアショップから、まさか一人で裏口から抜けるとなると、状況から見て、本人の意志[●●●●●]で、行方を眩ませたとしか・・・。」

「―――ムウ・・・。」


XM3トライアルに合わせて派遣された我々は今回、言うなれば“ユウヤ・ブリッジス”サポートチームの一面を持っていた。
“紅の姉妹”の亡命申請が為されれば、即座に発効される原隊復帰命令―――それまでの万全のバックアップ、それが今後の国防に直結しているからだ。
本人は全く斟酌してない感じだったが、彼の存在は今現在、本人が思っているよりもずっと重要な位置に在る。

第5世代戦術機開発計画[ADFX-01]”―――。

米国がG弾という切り札を失った今、可及的速やかに成立させなければならない計画の一つ。

それは、昨夜のPAK FA、“T-50”リークで、益々重要性が高まった。
日本のXFJ-01、そしてソ連のT-50。
近接戦闘能力に長け、ハイヴ攻略を目指したコンセプト―――。


我が米国には幸運なことにハイヴが存在しない。
しかし故に、その経験とK/Hに於いては、後塵を拝していると認めざるを得ない。
勿論、世界各地に派遣する海兵隊や、国連軍協力部隊にはBETAと戦っている兵士が居ないわけではない。
しかし基本的に我が国の政府は、国土防衛に直接関係ないところで米国人の兵士が失われることを極端に嫌う。
朝鮮、ベトナム、そしてパレオロゴスやスワラージなど、過去、他国で多くの犠牲を出した政権は次の選挙で尽く敗退しているせいで、一種政治的トラウマと化していた。
故に各地に展開している部隊も、最前線は現地当事国に任せ、側方・後方からの支援が主流、故にBETA接敵経験を持つ者が、比率として圧倒的に少ない。

元々オピニオンリーダーだったG弾推進派が描いていたのは、正に明星作戦[Op.Lucifer]の様な殲滅戦なのだ。
当初の陽動は現地部隊任せ、G弾投下後突入する。
それなら最深部の制圧以外は殆ど戦闘が無い状況となる。
当然G弾の功績は大きく、それに合わせて突入できる米国部隊がG元素確保の最重要拠点である“アトリエ”を制圧できる可能性が高い。
米国に取ってはむしろ反応炉などどうでもいいのだ。
つまりは、この戦術なら他国にあるハイヴであっても、最重要戦略物質である、 G-11[グレイ・イレブン]の確保が可能だった。
それこそがG弾推進派が提唱していたループでもある。


だが、その目論見が根本から崩れた今、米国が行わなければならないのは、本気でハイヴ突入戦を想定した部隊の創設―――。
他にも幾つもの計画が立ち上がってはいるが、この計画は一番早期実現できる可能性が高い。

そこに、最も相応しいのが、彼なのだ。


高い近接戦闘能力。
カムチャッカやレッドシフトでBETA近接戦闘も経験している。

御子神大佐や白銀少佐の愛弟子とも言え、近接戦術機格闘術[MACROT]慣性制御機動概念[MCLIC]にも習熟。

米軍唯一のXM3エキスパートにして既に“レベル5er[ファイヴァー]”。

そして、戦術機による遷移音速域戦闘という、新たな領域の開拓者でもある。
その機動領域では、機体構成含め、白銀少佐すら凌駕したと言っても過言ではない。

加えて、深い考察と、重層的な思考、指揮官としての作戦展開能力―――。


今後の機体開発、そして部隊創設とその運用、その象徴性に於いて、少なくとも現状欠くことの出来ない存在―――それがユウヤ・ブリッジスだった。


G弾が使えないのに G-11[グレイ・イレブン]が戦略物質足りえるのか、と言う議論も別にあるが、今後ML機関の活用研究なども再開されるため、その重要性は変わらないとされている。
存在が確実視されている第4計画のBETA鹵獲技術でも、使われる可能性が高い。
非合法破壊工作の代償として第5計画が秘匿していたG弾を支払ったとの話もある。
G弾の危険性を指摘した第4計画がそのまま使う訳がないから、原料である G-11[グレイ・イレブン]確保に動いていると見ていいだろう。

そう、その分野でも、過去の遺産であったHi-MARFの残骸を接収したのもやはり第4計画―――。
危険極まりない、搭乗員をミンチにしたXG-70を使える目処が立ったからこその接収・・・。
ここまで完全に出し抜かれている、と言って良い。

第4計画は、“00ユニットによる、対BETA諜報と、齎された情報による対BETA戦略の構築”―――を目標としていた。
だが、遅々として捗らない00ユニットの制作に、年内打ち切りの声も高まっていた。
所詮妄想理論に依る、インチキ装備・・・それがロスアラモスの見解でもあった。


―――それが約1ヶ月前、突然変わった。

プラチナ・コード―――つまりXM3とその周辺機動技術
“香月レポート”に“バーナード星異説”。
地味ではあるが重要だった“擬似生体の改良技術”は今まで人類には未知だったヒトゲノムの操作技術が含まれていることも判明したし、何よりも新潟防衛戦で“Amazing5”が概念実証した装備の数々―――。
そこには“BETA鹵獲技術”が使われているとしか考えられないのだ。

つまりは“00ユニット”完成によるBETA情報の鹵獲・・・それが既に一部成功していると言うことであり、既に11月29日に国連の安全保障理事会に第4計画から緊急動議提出が打診されている。
プラチナ・コードの公開に始まり、XM3、香月レポート、ラプターショック、そして新潟防衛戦―――。

その、今後のBETA戦略を根底から変えてしまうかも知れない“第4計画”と、最も近しい“米国人”もまた、ユウヤ・ブリッジスと、・・・困ったことにフランク・ハイネマンなのだ。


実態はどうあれ、日本と米国は同盟国、国防上の問題は顕在化していない。
BETA戦略における米国の立ち位置、そしてBETA戦後を睨んだ国際戦略―――。
一方的な安保破棄やG弾の無警告投入等、懸念事項も多数あるが、今日本との関係を悪化させる訳には行かないし、日本政府とも内々の準備は進んでいる。
―――あの帝都の怪人[ヨロイ]がチョロチョロしているのが、気に食わないが・・・。
少なくとも米国内の多数派[マジョリティ]である良識派はその方針だった。

どんな最新の技術であっても、公開すればやがて陳腐化していくのは進歩している証でもある。
BETA鹵獲技術も一旦技術提供さえ受けてしまえば、研究も開発も、そして生産も、米国は他の追随を許さない。
技術は更なる発展を遂げ、世界をリードし続ける“力”が、米国にはある。
BETAに国土を齧られた日本では、決して世界の領袖には成れないし、また日本はそれが判っているから、その気もない。


だが―――。
危険なのは第5計画派。
今は、そのアイデンティティを喪った形であり、一時の勢いは喪っていようが、過激な一部は更に先鋭化する可能性も否定出来ない。
“欲しければ奪えば良い”という、ある意味悪い面での米国人の典型。
手段は、金、謀略、暴力、なんでもあり。
あらゆるモノを狙ってくると考えられる。

その意味でも、彼の確保は重要だった。



そこにこの、ビャーチェノワ少尉の失踪―――。

前回、あの無茶苦茶な計画にも飛び込もうとしたブリッジス少尉だ。
彼女が行方不明と成れば、どんな無茶でも為出かし兼ねない―――。




「なんだと?、ビャーチェノワ少尉がソ連領へ?、何時だ?」


唐突に通信員が叫ぶ。


「・・・何処だ?」

ПЗ[ペー]計画研究施設です―――。」


私の問いに、即座に答えが返る。


「・・・あの研究施設に自ら戻った?
確かに、国籍はソ連、国連軍所属であれば、施設の入り口までは行けるだろうが・・・。
何故発見が遅れた?」

「連絡が入ったのは、先ほど・・・、彼女が入ったのは15:00前後かと思われます。
・・・たまたまモグラの交代時間が18:00だったのが遅延理由、ですね。
その間は、警備室で全体を俯瞰していた者が不在でしたので、ビャーチェノワ少尉の動向を見落とした可能性が高いと思われます。」

「・・・モグラも万全とは行かないにしろ、大失態だ・・・。
狙われる可能性を重々承知していたのに、捕捉しきれず対象を3時間も見失った結果、敵地に戻られるなど・・・。
―――現状からのリカバーは可能か?」

「・・・最重要機密区画内まで入室した形跡が在るとの事ですが、拉致の事実が確認されていないことから正面からの抗議は通りません。
最重要機密区画の中までは、目が届かないので状況把握も不可能・・・。
・・・我々の敷いた体制を根こそぎ壊す覚悟があれば非合法の略取も可能だと思われますが・・・正直オススメは出来ません。」


確かにそれは無理だ。
米国の諜報の事実を明かす訳にはいかない。


「・・・・・・ブリッジス少尉は?」

「―――つい先程、何時もの夜間高速飛行慣熟訓練に出かけたようです。」

「・・・ビャーチェノワ少尉失踪の事実をまだ知らない・・・と言うことか・・・?」

「まあ、22:00迄は基本自由な休暇扱いですから、その可能性も・・・。」


その時、別の係員が声をあげる。


「!!―――、〈Argos-01〉、訓練飛行中レーダーロストしましたッ!!」

「はぁッ!? レーダーロストッ!?」

「バイタルも不明・・・墜落?・・・撃墜?」

「-――映像は?、NORADの衛星IR追尾は?」

「!、確認します・・・が、この悪天候では無理だと思ってください。
・・・NORADの時間推移IRトレーサーでも、数点しか捉えられていません!」

「天候が・・・っっっ!!、まさかっっ!?」

「 ?? 」

「シェスチナ少尉の動向はどうなっている!?」

「・・・シェスチナ少尉はブリッジス少尉の訓練飛行に同乗しています。
共にバイタル、感ありません。」


―――やはり、そうかッ!!

彼の機体のアクティブ・ステルスは未だ撤去されていない!
この天候をも味方に付け、ビャーチェノワ少尉を奪還に動いたかッ!!


・・・何という思い切りの良さ。
全く・・・諦める、と言う言葉は彼の中にはないのだな・・・。
アレだけの輝かしい未来を提示したのに、場合によっては全てを捨てる事になるのを理解した上で―――それでも、征く―――。

恐らくは、速やかに奪還し、MIAの間に戻ってくる算段なのだろう。
彼がPhase4に存在するアクティブ・ステルスの危険性を理解していないとも思えない。
だからこの悪天候の中、訓練中行方不明などという手段をとった。
・・・これからソ連軍の研究施設を襲撃するのは、G元素研究施設と同じ、正体不明のテロリストと言うわけか。

正直相談して欲しかったが・・・、相談されたらやはり反対しただろう。
リスクが・・・大きすぎる。

―――かなり分の悪い賭だぞ、ブリッジス。


だが、彼はもう走りだしてしまった。
当然、相当の覚悟を以て決行したのであれば、止める手段は皆無。
だとすれば―――、我々は如何なる状況でも戻って来られるよう手配するだけか・・・。


「・・・該当地区の潜入工作員[モグラ]に通達―――。
恐らくブリッジス少尉は、訓練中行方不明を装い、例の研究施設に向かっているものと想定する。
でなければ、シェスチナ少尉の同行が不自然だ。」

「ッ!!、そうかッ!!」

「今、合衆国は彼を喪うわけにはいかない!
潜入・奪還・帰還、全てに於いて可能なかぎり、サポートしろ!」

「了解・・・施設警備状況確認・・・・・・え??
ПЗ[ペー]計画研究施設のセキュリティレベルが極端に下げられています!
これは・・・パスワードがワイルドカード状態・・・何を入れても通過できます!」

「な―――ッ!?」


まさか、他にも協力者が!?

―――或いは・・・“罠”、かッ!?


Sideout




Side リダ・カナレス(XFJ計画専任オペレーター 伍長)

統合司令部B01 C-108 18:30


「全員・・・あつま・・・ん?、ビャーチェノワ少尉はどうした?」

「・・・今戻ってきているところと推測しています。
午後軽い貧血でしばし医療センターにて休養していましたが、その後は回復し、リルフォートに日用品の買い物があると、出掛けました。」


ドーゥル中尉の問いに応えたのはブレーメル少尉。


「食事して戻る途上とも考えられるが・・・、何時も二人で行動している彼女が、シェスチナ少尉の行動に無頓着、と言うのも解せんな・・・。」

「「「・・・。」」」

「まあ、いい、先に始めよう。
カナレス伍長、状況説明を―――。」

「は、はい。
本件は、ユウヤ・ブリッジス少尉及びイーニァ・シェスチナ少尉の自主訓練に於けるユーコン基地演習区域外MIAについて、です。
訓練目的は、XFJ-1号機 Phase4の高速飛行慣熟。
行先は、基地外縁部バーチ・クリーク地区、アッパー・マウス・バーチ・クリーク流域です。
現地天候は、ブリザード状況、風速は事象発生当時で20m/s前後でした。
参加は2名で、ユウヤ・ブリッジス少尉がパイロット、操作取得を目的にイーニァ・シェスチナ少尉がサブ・ハーネスで同乗していました。

18:00 申請定刻通りに第7カタパルトにて離陸、帰還予定は18:50。
18:05 基地外縁より、当該地区に進行。

当時の高度は約30m、飛行速度は500km/h前後。
これはシェスチナ少尉を同乗させて居るためと思われ、以前のブリザード時飛行記録では高度15m、速度も600km/hで巡航しています。


以降〈Argos-01〉は機首を東に向けて順調に飛行。
時折10mくらいブレる事がありましたが、以前のPhase3機体に比べ、高速域の安定性は格段に上がっており、何の問題も確認できません。

18:12 申請演習区域東端まで5,000と警告
了解、との応答がありましたが、後の確認ではその直後速度が一気に0近くにまで落ちて居ることが判明しました。
その時には、レーダーから機影が消え、同時に戦域データリンクによる反応もロスト―――。

以後、現在に至るまで、レーダー機影、音声通信、データリンク、救難信号、どれも確認されていません・・・。」


最後は半ば泣き声になってしまい、テオドラキス先輩に肩を抱かれました。


「・・・因みにNORADにも確認したが、画像確認及びIRによる航路トレースは、この天候下では不可能。
機体が燃料満載だから、万が一墜落すればその爆発なら十分捉えられるが、〈Argos-01の〉レーダー消失時間前後にその様な熱源は観測されていない。
状況から考えて、〈Argos-01〉は当地に墜落、乃至不時着したものと推定される。
現在、短時間観測の時間履歴を確認してもらっているが、不時着地点の特定はまず無理だと考えていいだろう。
レーダーもこの天候では時折電波が乱れ、精度が極端に落ちている。
同様にGPSの電波も撹乱されまともな計測もできていない。
よって捜索隊の派遣も現在見合わせている。

―――状況は厳しいが、直ぐに我々が動ける状態でもない。
まずはアルゴス隊各員の意見を訊きたい。」


3人のメンバーを見回す中尉。


「・・・大丈夫なんじゃねェの?、アイツがこんなヌルい状況でクタバル訳ねェじゃん!」


不貞腐れたような声を出したのはマナンダル少尉。


「速度は時速にして500km/h程度って事は、秒速で140m/s程度か・・・今のブリザード最大瞬間風速で30m/s程度・・・。
戦術機に搭乗しても衛士が見ている世界は、一面の雪・・・ってか光度増感しても、全周360度、何処を見ても何も見えない白い闇みたいなもんだ。
その中で、10mも不意に跳べばパニックに陥りそうだけど、それはルーキーの話、アルゴスの・・・今ではユーコン基地のエース様だぜェ?
アイツ、反射的に0.2秒程度で修正してくるんだ。
殆ど、無意識レベル。
自分の機動の中で、正確に地面を把握している。
それでなければ、cm単位で0高度を飛行する機動なんか出来るわけねェじゃん・・・。」

「・・・俺もマナンダル少尉[チョビ]に同意。
最後の急激な速度変化は、何かに衝突したのではなく、急激な旋回に依るシザーズ機動だと思う。
何らかの障害があった可能性は否定できないが、アイツの力量から言って、急減速し、生存可能な状況で雪面不時着する確率が高い。
・・・一番可能性が高いのは何らかのトラブルで不時着したことだが、意識が在るならデータリンクが切れるコトは通常ない。
となれば、その際立木等に接触し、雪に投げ出されたと同時に、データリンク用のアンテナを破損、通信途絶した・・・という事態が最も妥当、じゃねえか?
何れ気がついて、救難信号を出してくる事を待つしかないが・・・な。」

「・・・成る程、あの地区の川や湖沼は、今は凍って雪が覆っているし、仮に戦術機の重さで氷が割れても、そもそも機体が沈むほどの深さがない。
状況にもよるが、あの地区はなだらかで障害と成るのは立木程度、地面が数mの雪であることを鑑みれば、不時着したとても強化装備を着ている彼らは致命傷に至らない可能性が高い、と言うことか。」

「「―――ああ。」」


応えたのはジアコーザ少尉とマナンダル少尉。

・・・なんとなく、ほっとします。
誰よりも彼の腕を知る二人が、生存を確信している・・・。


「・・・ブレーメル少尉は―――どう考える?」

「・・・ブリッジス少尉の技量を鑑みれば、私も同じ、この程度の天候でもMIAとなる事自体が信じられません。
故に・・・その他の可能性は皆無なのでしょうか?
例えば、Phase4の情報が欲しい勢力の罠であったり、・・・あるいは自らデータリンクを切った可能性は?」

「・・・常識で考えれば、現実的ではない・・・な。
当該空域に、〈Argos-01〉以外の機影はなかった。
F-22並のステルス性能なら、この吹雪で隠れることも出来るが、消失直前に戦闘は疎か接敵報告も無い。
それこそブリッジスが何の反撃もできず沈黙する相手は、まず居ないと考えていいだろう。
しかも、今回はあの直感の塊みたいなシェスチナ少尉が同乗している。
―――まして、自らの意志でデータリンクを切る意味が判らん。
あんな何も無い原野に戦術機を置いて、このブリザードの中、何処に行くと言うのだ?」

「・・・・・・。」

「・・・何が疑問なのだ?、ブレーメル少尉。」

「・・・不自然なんです。
未だ戻ってこないビャーチェノワ少尉も、何時も決して他人を乗せなかった高速慣熟飛行に、シェスチナ少尉を今回急に乗せたブリッジス少尉の行動も・・・。
―――何か・・・、何かキーワードが足りない・・・。
私達の知らない、重要なキーワードが足りないから判らない・・・、そんな気がするんです。」

「「「・・・・・・。」」」


そんな・・・。
何か別の理由が、在ると言うんですか?


「・・・違和感が在るのは認めよう。
だが、少なくとも論理的に説明できない事で動くわけにはいかん。
・・・そこは、理解してくれ。」

「・・・判っています。」

「だが、ビャーチェノワ少尉の不在は確かに懸念事項ではある。
・・・MPが動き出さす22:00にはまだ間がある。
ジアコーザ少尉は悪いが、一応リルフォートの飲食店を回ってみてくれ。」

「は―――、了解です。」

「何れにしても、不時着地点が曖昧である事と、米国との緩衝地域である事、夜間、且つこの最悪な天候を考えると2次遭難の危険性もあり、捜索隊派遣は暫く見送られるだろう。
レーダーロストしているとなると、吹き溜まりに埋没している可能性が高い。
救難信号の受信を待って動くことに成る。
ブレーメル少尉、マナンダル少尉は救護に備え、出撃できる状態で控室待機とする。
無論、位置が位置だけに他国籍の我々では許可されない可能性もあり、その場合は警備部隊が出向くだろう。
天候状況、情報取得の推移に伴い、適宜連絡する。
・・・何か、質問は?」


もどかしいけれど、救難信号が出ていない以上、雪に埋れていると考えられる機体を、夜間、しかもこのブリザードの中捜索するのは不可能なのです。
不時着であれば、強化装備を着けている衛士、生死に関わる事態には成っていないことを祈るのみ。
いずれかの意識回復を待ち、救難信号を捕捉次第救助に向かう準備だけして待機することしか出来ません。


「では、各自行動を!」


―――元々長いのに・・・更に長い夜が始まりました。


Sideout



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