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No.35430の一覧
[0] SWORD WORLD RPG CAMPAIGN 異郷への帰還[すいか](2012/10/08 23:38)
[1] PRE-PLAY[すいか](2012/10/08 22:31)
[2] シナリオ1 『異郷への旅立ち』 シーン1[すいか](2012/10/08 22:32)
[3] シナリオ1 『異郷への旅立ち』 シーン2[すいか](2012/10/08 22:33)
[4] シナリオ1 『異郷への旅立ち』 シーン3[すいか](2012/10/08 22:34)
[5] シナリオ1 『異郷への旅立ち』 シーン4[すいか](2012/10/08 22:35)
[6] インターミッション1 ライオットの場合[すいか](2012/10/08 22:40)
[7] インターミッション1 ルージュ・エッペンドルフの場合[すいか](2012/10/08 22:41)
[8] インターミッション1 シン・イスマイールの場合[すいか](2012/10/08 22:42)
[9] キャラクターシート(シナリオ1終了後)[すいか](2012/10/08 22:43)
[10] シナリオ2 『魂の檻』 シーン1[すいか](2012/10/08 22:44)
[11] シナリオ2 『魂の檻』 シーン2[すいか](2012/10/08 22:45)
[12] シナリオ2 『魂の檻』 シーン3[すいか](2012/10/08 22:46)
[13] シナリオ2 『魂の檻』 シーン4[すいか](2012/10/08 22:46)
[14] シナリオ2 『魂の檻』 シーン5[すいか](2012/10/08 22:47)
[15] シナリオ2 『魂の檻』 シーン6[すいか](2012/10/08 22:48)
[16] シナリオ2 『魂の檻』 シーン7[すいか](2012/10/08 22:49)
[17] シナリオ2 『魂の檻』 シーン8[すいか](2012/10/08 22:50)
[18] インターミッション2 ルーィエの場合[すいか](2012/10/08 22:51)
[19] インターミッション2 ルージュ・エッペンドルフの場合[すいか](2012/10/08 22:51)
[20] インターミッション2 シン・イスマイールの場合[すいか](2012/10/08 22:52)
[21] インターミッション2 ライオットの場合[すいか](2012/10/08 22:53)
[22] キャラクターシート(シナリオ2終了後)[すいか](2012/10/08 22:54)
[23] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン1[すいか](2012/10/08 22:55)
[24] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン2[すいか](2012/10/08 22:56)
[25] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン3[すいか](2012/10/08 22:57)
[26] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン4[すいか](2012/10/08 22:57)
[27] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン5[すいか](2012/10/08 22:58)
[28] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン6[すいか](2012/10/08 22:59)
[29] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン7[すいか](2012/10/08 23:00)
[30] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン8[すいか](2012/10/08 23:01)
[31] インターミッション3 ルージュ・エッペンドルフの場合[すいか](2012/10/08 23:02)
[32] インターミッション3 ライオットの場合[すいか](2012/10/08 23:02)
[33] インターミッション3 シン・イスマイールの場合[すいか](2012/10/08 23:03)
[34] キャラクターシート(シナリオ3終了後)[すいか](2012/10/08 23:04)
[35] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン1[すいか](2012/10/08 23:05)
[36] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン2[すいか](2012/10/08 23:06)
[37] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン3[すいか](2012/10/08 23:07)
[38] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン4[すいか](2012/10/08 23:07)
[39] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン5[すいか](2012/10/08 23:08)
[40] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン6[すいか](2012/10/08 23:09)
[41] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン7[すいか](2012/10/08 23:10)
[42] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン8[すいか](2012/10/08 23:11)
[43] インターミッション4 ライオットの場合[すいか](2012/10/08 23:12)
[44] インターミッション4 シン・イスマイールの場合[すいか](2012/10/08 23:14)
[45] インターミッション4 ルージュ・エッペンドルフの場合[すいか](2012/10/08 23:14)
[46] キャラクターシート(シナリオ4終了後)[すいか](2012/10/08 23:15)
[47] シナリオ5 『決断』 シーン1[すいか](2013/12/21 17:59)
[48] シナリオ5 『決断』 シーン2[すいか](2013/12/21 20:32)
[49] シナリオ5 『決断』 シーン3[すいか](2013/12/22 22:01)
[50] シナリオ5 『決断』 シーン4[すいか](2013/12/22 22:02)
[51] シナリオ5 『決断』 シーン5[すいか](2013/12/22 22:03)
[52] シナリオ5 『決断』 シーン6[すいか](2013/12/22 22:03)
[53] シナリオ5 『決断』 シーン7[すいか](2013/12/22 22:04)
[54] シナリオ5 『決断』 シーン8[すいか](2013/12/22 22:04)
[55] シナリオ5 『決断』 シーン9[すいか](2014/01/02 23:12)
[56] シナリオ5 『決断』 シーン10[すいか](2014/01/19 18:01)
[57] インターミッション5 ライオットの場合[すいか](2014/02/19 22:19)
[58] インターミッション5 シン・イスマイールの場合[すいか](2014/02/19 22:13)
[59] インターミッション5 ルージュの場合[すいか](2014/04/26 00:49)
[60] キャラクターシート(シナリオ5終了後)[すいか](2015/02/02 23:46)
[61] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン1[すいか](2019/07/08 00:02)
[62] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン2[すいか](2019/07/11 22:05)
[63] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン3[すいか](2019/07/16 00:38)
[64] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン4[すいか](2019/07/19 15:29)
[65] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン5[すいか](2019/07/24 21:07)
[66] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン6[すいか](2019/08/12 00:00)
[67] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン7[すいか](2019/08/24 23:54)
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[35430] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン1
Name: すいか◆1bcafb2e ID:e6cbffdd 前を表示する / 次を表示する
Date: 2019/07/08 00:02
マスターシーン アラニア王宮〈ストーンウェブ〉

 王宮の一角に、その小さな部屋はあった。
 四方は厚い石壁で囲われて窓ひとつない。人の耳によっても、魔法の力を借りても盗聴のできない密談用の小部屋だ。
 一日の政務を終え、ノービス伯アモスン卿がその部屋を訪れると、木製の肘掛け椅子にどかりと腰を下ろした先客が、不機嫌を隠そうともせずに頬杖をついていた。
 日頃の暴飲暴食の成果で、アモスン卿の3倍もありそうな腹回り。
 アラニア王家直系の端整な容貌を受け継ぎ、絶世の美姫の腹から生まれたはずなのに、顎や頬に贅肉をたるませていては、もはや醜いブタにしか見えない。
 そんな内心の冷笑は目に浮かべるにとどめ、爵位上は自分の上位にいる相手に、アモスン卿は芝居がかった一礼をした。
「これはこれはラスター公爵閣下、お待たせしたようで申し訳ありません」
 心にもない社交辞令である、と完璧に表現した口調だ。
 ラスター公爵はつまらなそうに鼻を鳴らした。
「くだらん茶番はよせ。この部屋にいるのは我ら2人だけ。剣を持たず、護衛すら伴わずと正気を疑う条件で呼び出したのだ。さぞかし重大な要件なのだろうな?」
 ラスター公爵とノービス伯爵は、それぞれが王宮を二分する貴族派閥の長であり、次代の国王位を争う政敵同士だ。
 従兄弟という血縁など、玉座の重みに比べれば葦のようなもの。自分の手を汚さずに相手が死んでくれるなら、どんな策謀でも躊躇しない間柄である。
 そのふたりが護衛もなしに密室に閉じこもるなど、前代未聞の出来事と言えるだろう。
 話を聞いた側近たちは口をそろえて反対したし、部屋の外では双方が伴った護衛が眼光を飛ばし合っている。
 それでも、ふたりには会わねばならない事情があったのだ。
「要件などお分かりでしょうに。ターバ神殿の件ですよ」
 ノービス伯アモスン卿が、わざとらしく肩をすくめた。
「我が栄光あるアラニア王国は、憎むべき邪教の徒からロードスを守るために建国されたというのに。ターバ神殿とニースどのは、レイリアとかいう亡者の女王の転生体を、まるで我が子のように守っております。そればかりか、あの土臭い小娘にたぶらかされた国王陛下まで、転生体を保護しようとする始末」
 国王の愛妾、ラフィット・ロートシルト男爵夫人がレイリアの保護を願い出て、国王がそれを認めたというのは貴族たちの記憶にも新しい。
 農民出身で貴族の後ろ盾がなかったラフィットを、宮廷魔術師リュイナールが補佐し、レイリアを使うことでターバ神殿の庇護下に据えたのだ。
 これまでは、万一ラフィットが懐妊したとしても、王妃はもちろん側妃にもなれなかっただろう。
 愛妾には寵愛さえあればそれでよいが、妃とは政治的、経済的な後ろ盾がなければ機能しない立場だからだ。
 だから今までは、国王の道楽のひとつとして、農民出身の少女を閨に引き込むことが黙認されてきた。
 飽きたら幾ばくかの金貨や荘園を与えて、宮廷から追い出せばそれで済むだろう、そう考えられていたから。
 しかし、これからは違う。
 ラフィットが王子を産むようなことになれば、ターバ神殿と最高司祭ニースが後ろ盾となり、ラスター公爵やノービス伯爵の派閥に属さない中小貴族たちがこぞって旗の下に集まる。 ラフィットは王妃として宮廷に君臨し、産んだ王子は王太子となり、周囲の側近が次世代のアラニアの中枢を形成する。 
 その次代に、ラスター公爵やノービス伯爵の派閥貴族たちが権勢を維持できるはずがない。 これが、アラニア宮廷に籍を置くすべての貴族にとって、疑問の余地すら生じない現在の政局だった。
「それでも最高司祭ニースは“六英雄”のひとりだ。手を出せばただでは済まぬ。それとも卿がニースを葬ってくれるとでも?」
 左手で頬杖をついたまま、ラスター公爵が胡乱げな視線を向ける。
 政治とはバランスだ。
 ターバ神殿と最高司祭ニースの名声はロードス全土に知れ渡っており、その重みは絶対に無視できない。
 何を今さら、と言わんばかりのラスター公爵に、アモスン卿は唇をつり上げた。
「ところで公爵、北にあるドワーフどもの根城で、上位魔神が暴れ回ったという話はご存じですかな? 強大な魔法を使う魔神を相手に、ドワーフどもの戦士団は100を超える死者を出し、援軍に向かったターバの神官戦士長も討ち死にしたとか」
「ほう、それは気の毒なことよの」
 口ではそう言うものの、ラスター公爵は内心の悦びを隠そうともしない。
 ドワーフ族の“鉄の王国”もターバ神殿も、アラニア宮廷にとっては潜在的な敵だ。弱体化は朗報でしかない。
 敵が上位魔神となれば、騎士団ひとつが壊滅してもおかしくない強敵だ。相当な痛手を被ったことだろう。
「それでノービス伯。その魔神はどうなったのだ?」
「幸い、ドワーフどもの根城から出てくる前に討たれたそうです。魔神はドラゴンを召喚して応戦したそうですが、シンとかいう蛮族の戦士と、その仲間たちにすべて倒されたとか。それと公爵、もうひとつ良い知らせがありましてね」
 意地の悪い笑みを浮かべ、アモスン卿が言葉を続ける。
「討ち死にしたターバの戦士長が、《リザレクション》の奇跡で甦生したのですよ。しかもその奇跡を起こしたのはニースではなく、シンの仲間の冒険者であったと。ライオットというその司祭は、今や“第三の導き手”と持てはやされて、マイリー教団の最高司祭の礼装をまとったそうですぞ」
「何だと?!」
 思わず腰を浮かせたラスター公爵に、アモスン卿は喉の奥で嗤った。
「まこと羨ましい限りですな。ターバ神殿は実に人材豊かだ。砂漠の蛮族の勇者に、マイリー教団の最高司祭に、大陸出身の大魔術師。しかも彼らは“魔神殺し”“竜殺し”の英雄で、ドワーフどもに大きな貸しを作り、一言要求すれば“石の王”ボイルはいくらでも援軍を出すでしょう。ドワーフ族は皆が精強な戦士だ。その武力は万の軍勢に匹敵します」
 アモスン卿はそこで、落ち着いた口調を急変させた。
 声を荒げ、両腕を広げて、全身で怒りを表現する。
「どうしてこれを座視できましょうか! 今やターバ神殿が持つのはニースの名声だけではありませんぞ! ドワーフ族の戦士団と最強の冒険者が集まり、これがよってたかって土臭い小娘を王妃に祭り上げようとしている! 辺境の田舎者どもが、我ら王族を凌駕するほどの政治力と軍事力を持っているのです! ラスター公爵! これをどうして許せましょうか! 我らは青い血に連なる王族として、アラニアを守らねばならないのです!」
 興奮したアモスン卿の叫びが残響となって石壁に染みこむと、狭い部屋には沈黙が降りた。 難しい顔で正面をにらみつけるラスター公爵。
 目の前にいるアモスン卿は確かに政敵だが、“宮廷”という同じルールの中で生きる同志でもある。
 反対にターバ神殿とその一党は、宮廷をルールごとひっくり返しかねない、共通の外敵なのだ。
 彼らがロートシルト男爵夫人と、そして彼女が産む王子と結びつけば、宮廷の存続に関わる強大な敵対勢力になることは必定。
 座視できない、というアモスン卿の言葉には同意せざるを得ない。 
 だが……。
 内心もあらわに思い悩むラスター公爵に、アモスン卿は静かに語りかけた。
「公爵。あの土臭い小娘は、またしても国王陛下のベッドでおねだりをしたそうです。ターバ神殿へ懐妊祈願に行きたい、と」
 もし、万が一にも大地母神の加護が降り、ラフィットが懐妊したら。
 そんな取り返しのつかない未来が、現実に近づいているのだと示してみせる。
「陛下のお許しもあり、準備は順調です。王都からターバまで馬車で20日。道中は精鋭の近衛騎士10名と兵士50名に加え、宮廷魔術師殿も護衛につくとか」
「忌々しいことだな。それだけの戦力を外から食い破るとなると、手元の小勢では無理だ」
 ラスター公爵が苦々しげに唸る。
 兵士だけならまだしも、宮廷魔術師リュイナールは強敵。力に訴えるのは無謀だ。
 では護衛を買収して毒害するか。
 考え込むラスター公爵に、二の矢が放たれる。
「しかし、宮廷魔術師殿はそれでも不安だったようで。あの小娘を《転移》の魔術でターバに送り届け、自分は騎士たちと共に空の馬車を護衛して身代わりになるそうです」 
 アモスン卿が投げかけた言葉の意味を理解すると、ラスター公爵は目を開いて視線を跳ね上げた。
 つまり、あの小娘は宮廷魔術師からも護衛の騎士からも離れて、単独でターバ神殿に送られるということか。
 正面からその視線を受け止めたアモスン卿は、杯に毒を垂らすように、静かに言葉を続ける。
「この時期、北の大地は乾燥します。神殿で不審火があり、部屋がひとつ燃えたところで、さしたる騒ぎにはなりますまい。しかもロートシルト男爵夫人は、宮廷魔術師殿の護衛をつけて馬車で移動中。不審火で死んだ少女は“別の誰か”でしかないのですから」
 千載一遇の機会だが、猶予は短い。
 あの小娘がロートシルト男爵夫人でなくなる期間は、馬車が移動する20日間のみ。
 それまでに手札をそろえて、北の大地まで差し向けなければならないのだ。
「“ボーカイユ”を使いましょう、公爵。私と貴方がともに動けば可能です」
 耳元で、小声でささやかれたアモスン卿の提案に、ラスター公爵の顔が強ばる。
 それは王族のみが知るアラニア王国の闇。
 数百年にわたって裏から王国を支えてきた影だ。
 その価値はあるのか?
 他に手段はないのか?
 ラスター公爵が繰り返し自問しながら見返せば、アモスン卿の端正な顔にも、緊張の汗が浮いている。
 この決断を共有するために、政敵同士、暗殺の危険を冒してまで2人きりで会わねばならなかったのだ。
「……よかろう」
 深々とした吐息とともに、ラスター公爵がうなずく。
 時に猶予はなく、敵はターバ神殿と“竜殺し”の冒険者たち。
 事ここに至れば、他に手段はなかった。 
  


 ロードスという名の島がある。
 アレクラスト大陸の南に浮かぶ、辺境の島だ。
 大陸の住民の中には、ここを呪われた島と呼ぶ者もいる。
 かつて神話の時代、邪神カーディスがこの地に倒れ、大地に呪いをまき散らしたと伝えられるが故に。
 異界から召還された魔神が暴走し、島中に死と破壊をもたらしたが故に。
 そして今なお、表向きの平和を隠れ蓑に、陰謀と闘争が島を支配しているが故に。
 千年王国と称されるロードス最大の王国に、今、内乱の足音が響き始めていた。


SWORD WORLD RPG CAMPAIGN
『異郷への帰還』
第6回 魔女の天秤


シーン1 ターバ神殿

「そう。王に、ね……」
 若者たちの長い告白を聞き終えた最高司祭ニースは、ソファから立ち上がると若者たちに背を向けた。
 白髪交じりの背中にシンとレイリアの視線を感じながら、窓の外に広がるターバ神殿の夕暮れを眺める。
 遅い礼拝を終え、家路へと向かう農夫たち。
 談笑しながら聖堂から宿坊へと帰ってくる神官たち。
 夜番の神官戦士たちが整列しているのは、カザルフェロ戦士長が訓示をしているのだろうか。
 ここから見下ろす人々は小さく見えるが、それぞれが自分だけの人生を生きており、様々な思いを抱えて夜を迎えようとしている。
 橙色の薄闇に沈む部屋の中、即答するにはあまりにも重大すぎる決意を示されて、ニースには自分が返すべき言葉も、浮かべるべき表情さえも思いつかない。
「ニース様は俺に、あの墓所で言いましたよね。レイリアとともに歩む道は、宮廷や神殿の封印主義者たちと、果てしなく戦い続ける茨の道だ、と。カザルフェロ戦士長からも同じことを言われました」
 レイリアと並んでソファに座ったシンが、その背中に言葉を続ける。
「それでも、と俺は言いたい。諦めたくないんです。この広い世界のどこにもレイリアが安心して暮らせる場所がないなら、俺は持てる力のすべてを使って、その場所を作りたい。国も権力も欲しくなんてないけど、それがないと作れないというなら、手に入れるために全力を尽くします」
 シンの声音は穏やかだが、決してぶれない決意を感じさせた。
 喜びも悲しみも、すべてを分かち合って歩む家族という道。
 どうやらその道が、自分とレイリアとで別れるときが来たらしい。
「私はきっと、その言葉が聞きたくてあなたにレイリアを任せたはずなのにね」
 ため息まじりの言葉が持つ否定的な響きに、若者たちが小さく動揺するのを感じる。
 窓の外に広がる、平穏な一日の終わりの風景。
 それとはあまりにも対照的な内心に、ニースはなんとか2度目のため息を飲み込んだ。
 マーファ教団の最高司祭として、亡者の女王の転生体を手放していいのか。
 ロートシルト男爵夫人とあの宮廷魔術師は、レイリアのターバ離脱を認めるだろうか。
 戦いのさなか、もしレイリアに万一のことがあったらどうするのか。
 全てがうまくいったとして、王になったシンと友誼のあるターバ神殿を、アラニアの宮廷が見逃すだろうか。
 どれかひとつをとっても、ターバの存亡に関わる重大事だ。
 本来なら穏やかに祈りを捧げるだけの場であったターバ神殿は、ニースの存在とシンの活躍で、あまりにも強くなりすぎた。
 “亡者の女王”であるレイリアをひとりの女として見るのは、今ではシンだけだろう。
 そして困ったことに、そのシン自身が、ひとりの男であることを拒否したのだ。
 これから世界は動く。
 いや、若い力によって否応なしに動かされていく。
 かつてニース自身が、仲間たちとともにそうしたように。
 そこまで考えたとき、ニースは苦笑して小さく首を振った。
「ちがう、そうじゃないわね」
 全部言い訳だ。
 すべては最高司祭という地位に付随する悩みであって、シンの言葉を借りれば『大切なことなんて何もない』ではないか。
 認めなければならない。
 ニースはゆっくりと振り返ると、ソファに座るシンとレイリアに、穏やかな微笑みを向けた。
「告白していいかしら。シン、貴方の話を聞いてね、私は嫌だって感じたの」
 思いもよらない返答に、若いふたりの表情が強ばる。
 今まであらゆる無茶を応援してくれたニースが、この土壇場で反対に回るとは想像もしていなかったのだ。
「ニース様、俺は……」
「だってそうでしょう。17年間も愛を注いで育てた娘が、風と炎の砂漠に出征するなんて聞いて、諸手を挙げて賛成なんかできないわ」
 口を開きかけたシンに、ニースは言葉をかぶせて黙らせる。
「今までは、私の持てる全てでレイリアを守ることができた。猫王様も言っていたでしょう、私は隠居するにはまだ早いって。今までも、そしてこれからも、命のある限りそうするつもりだった。けれど、砂漠の大地には、私の力は届かない」
 その代わり、砂漠ではシンの力がずっと強くなって、レイリアを守れるのだろう。
 これからはニースの役割をシンが引き継いで、そして……。
 そう考えたとき、ニースは再びかぶりを振った。
 ちがう。
 また誤魔化そうとしている。
 シンは、ニースの役割を引き継ぐわけではない。
 あまりの往生際の悪さに、自分でも自分を認めたくないが、この期に及んで目を反らし続けても仕方がない。
「つまりこれが、娘を嫁に出したくない、親の心境なのね」
 娘が選んだ男性は、実直にして至誠。世界中を探してもこれ以上の人は見つからないだろう。
 最高司祭の令嬢という身分でもなく、ニースから受け継ぐだろう財産でもなく、まあ美しい容姿は少なからず意味があるだろうが、とにかくひとりの女性としてレイリアを愛してくれる最高の男性。
 それでも、レイリアを連れ去ってほしくない、と感じてしまうのだ。
「嫁って、ニース様、その……」
 直裁的な単語を聞いて、シンの頬が一瞬で茹で上がる。
 言われるまで気づかなかったが、先ほどの宣誓は「娘さんをください」という義母への挨拶そのものではないか。
 同じように頬を染めたレイリアが、そっとシンの袖を握る。
 その様子をいささか妬ましく眺めながら、ニースは言った。
「ありがとう、シン。貴方には感謝するわ。私がこう感じるということは、私はきちんと親だったということでしょう? 最高司祭として亡者の女王を育てたわけではなく、レイリアの母として娘を育てたのだと。それがはっきり分かったから」
 正しい、正しくないではなく、娘を連れ去る男は母親にとって不愉快な存在なのだ。
 その思いを共有できたことを、ニースは誇らしく思った。
 レイリアはピート卿とイメーラ夫人の娘で、ニースが腹を痛めて産んだ子ではない。
 それでもレイリアは、ニースにとって本当の娘だったのだと、自分自身で信じることができたから。
「レイリア。私は恋しい男性と一緒になったことがないし、その人の子供を産んであげることもできなかった。私は貴女が心から羨ましい。これからどんな苦難があろうとも、それを愛する人と分かち合って生きることは、私が手に入れられなかった幸福だから。常に感謝なさい。シンと、シンを育んでくれたこの世界に」
「はい、お母様」
 生まれて初めて、ひとりの女としてニースに向き合ったレイリアは、万感の思いを込めて肯いた。
 この身に宿した運命は過酷だけれど、もし自分に亡者の女王の魂が宿っていなければ、ニースに引き取られることも、ターバ神殿に身を寄せることも、シンと出会うこともなかったのだ。
 これからシンとふたりで、未来を切り開くという生き方。
 守られた揺り籃から、何も描かれていない真っ白な世界へ。
 シンの隣にいれば、何も怖くなかった。
「シン。あなたの覚悟は分かりました。お征きなさい。ただし、レイリアを泣かせたら承知しませんよ」
「ありがとうございます、ニース様」
 自然にシンの頭が下がった。
 ニースには、言いたいことがいくらでもあるのだろう。
 口を開きかけては閉じ、目には様々な表情が繰り返し浮かぶ。
 不自然な、だが決して居心地の悪くない沈黙。
 シンとレイリアは肩を寄せ、互いを労るように指を絡めて母の言葉を待つ。
 どれくらいそうしていただろうか。
「近いうちに、イメーラ夫人と一杯やりたいわね」
 ニースはやがてそう言って、複雑きわまる思いを吐き出した。
 もしかすると、酒を飲みたいなどと思ったのは人生初めてかもしれない。
 そしてもう一度ため息をついて切り替えると、最高司祭の仮面をかぶりなおす。
「シン。今回の依頼が、あなたと過ごす最後の時間になりそうね。遺漏なくお願いするわ。レイリア、あなたも後悔を残さないように。きちんとお話ししておきなさい」
 素直に頷く若いふたりを見ながら、ニースは思う。
 おそらくアラニア宮廷は、シンとレイリアの希望を認めないだろう。
 ふたりの親として、彼らの背中を守る戦いは、避けられそうになかった。


「素晴らしい! 素晴らしいですぞルージュどの!」
 頬張ったパンを一口に飲み込み、ターバ神殿の金庫番、財務担当司祭マッキオーレは満面の笑みを浮かべて絶賛した。
 パンに挟まれているのはレタス、トマト、軽く炙った厚切りの塩漬け肉。たったのそれだけなのに、ルージュが持ち出した白い調味料を加えただけで、未だ経験したことのない絶品の味へと様変わりしたのだ。
「塩漬け肉のパサつく口触りを、野菜の水分で誤魔化すことなく補い、しょっぱさと甘さの絶妙にブレンドされたこの味! 飽きのこない深みとまろやかさ! これは絶対に売れますぞ!」
 つばを飛ばして力説するマッキオーレの後ろには、白い神官衣にたすきを掛けた数人の女性神官たち。
 まだ十代半ばの彼女らも、黄色い歓声を上げながらレシピの確認に余念がない。
「卵黄、ビネガー、レモンの絞り汁、塩を少々。これにオリーブオイルを入れるだけでこんな風になるなんて」
「まよねーずと言いましたか。本当にルージュ様は博識でいらっしゃいますわ」
「バターよりも簡単に作れて、しかも美味しいんだもん。言うことないよね!」
 神殿の厨房の一角を占拠し、臨時の調理教室を開いていたルージュも、楽しそうに指導する。
「大変だけど、よく混ぜながら、オリーブオイルは少しずつ入れてね。混ぜ足りないと分離して失敗だから。ここだけは手を抜いちゃだめ」
 厨房の食料庫に山と積まれた野菜の山。
 農民たちからの寄進を無駄にするわけにもいかず、さりとて神官たちだけでは消費するのにも一苦労。
 なんとかうまい方法はないものかと相談されて、ルージュが自家製サンドイッチのレシピを提供したのだ。
「問題は卵ですな。これはかなり大量に必要となりそうだ。料金はいかほどに設定するべきか……パンの大きさにもよりますが、銀貨3枚を超えると手が出ないでしょうし……」
 マッキオーレがぶつぶつ呟きながら、神速で脳裏のそろばんを弾く。
 同じメニューだけだと飽きてしまうし、客の好き嫌いもあるだろうから、挟む中身を変えていくつかのバリエーションを作るべきだろう。
 値段は張るが高級品のチーズなども合うかもしれない。
 南方の港町ビルニから入荷した魚の塩漬けとも相性が良さそうだ。
 軽い飲み物を抱き合わせで販売し、いくらか割り引けば、全体としては売り上げを伸ばすことも可能だろう。
「そういえばルージュどの、取り分はいかほどをご希望ですかな? 当方としては、できれば利益の3割程度でお願いしたいのですが」
 思い出したようにマッキオーレが問いかけると、麻のエプロンを着たルージュは笑って手を振った。
「そういうのはいいよ。お金には困ってないし、今までお世話になった分のお礼だと思ってくれれば」
「いやしかし、そういうわけには……」
「鉄の王国の一件で、銀貨30万枚ももらったばかりじゃない。これ以上お金もらっても使い道がない」
 それが掛け値なしの本音だと伝わったのだろう。
 マッキオーレはまるで女神を見るような顔でルージュを見つめ、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。それではそういうことで。この品は『ルージュサンド』と名付け、神殿続く限り末永くルージュどのの功績を讃えることといたしましょう」
「それだけは絶対やめてよね」
 半眼になって拒否する銀髪の魔術師に、心外とばかりにマッキオーレは言いつのる。
「そうおっしゃらずに。いくつか試作しようと思うのですよ。『ステーキルージュ』『サーモンルージュ』『BLTルージュ』など。名前からして旨そうではありませんか」
「神殿ごと焼き払ってほしいなら、はっきりそう言ってもいいんだよ?」
 食堂の片隅に腰掛けたライオットは、厨房で楽しそうにじゃれ合うふたりを遠目に眺めていた。
 卓上では、蜂蜜入りミルクを堪能するルーィエの尻尾が機嫌良さそうに揺れている。
 夕食を摂りに食堂を訪れる司祭や神官たちは、ライオットの姿を見ると口々に感謝の言葉をかけてきた。
 半月前、鉄の王国に向かうときには絶望的だった、平和な日常。
 カザルフェロ戦士長を失い、失意にくれていた神官戦士団。
 そういった絶望感をまとめてひっくり返したライオットは、欠くべからざるターバ神殿の一員として、すっかり受け入れられている。
 なし崩し的に居室まで提供されたため、鉄の王国から戻って以来、ライオットたちは一度もターバの村に帰っていなかった。
「穏やかな日常、か」
 おそらくルージュなら、永遠に続いてほしいと望むのだろう。
 まるでぬるま湯につかっているような、刺激のない、穏やかな日々。
 ライオットとて、それが嫌なわけではない。
 ただ、慣れたくないな、と思っているだけだ。
 シンが決断した以上、この日々は長くは続かない。これから待っているのは、風と炎の砂漠を舞台とした戦乱の物語だ。
 わずかな気の緩みが命取りになるだろう戦場を前にして、自分の覚悟を錆び付かせたくなかった。
 ぼんやりとして形のない、焦りのようなもの。
 あるいは、見えないところでボタンを掛け違えているような、小さな不快感。
 この日々は何かが違う、そんな思いが拭いきれないでいた。
 すると。
「おい半人前。下手の考え休むに似たり、と言ってな。どうせ愚にもつかないことを延々と思い煩ってるんだろうが、はっきり言ってやる、無駄だ」
 スープ皿から顔を上げた銀毛の双尾猫が、ばっさりと斬って捨てた。
「陛下、そう見える?」
「自分で気づいてないのか? 寝不足のハリネズミみたいな殺気が出てるぞ。今すぐ引っ込めろ。食事の邪魔だ」
 優美な尻尾でテーブルをたたきながら、ルーィエは不機嫌そうに注文する。
 何を恐れているのか知らないが、このターバ神殿の食堂にあって、ライオットはひとりだけ戦場にいるような緊張感を振りまいているのだ。
 もちろん、実戦のようにあからさまではない。猫族と違って鈍感極まりない人間どもには感じ取れない程度のもの。
 それでも、ルーィエの至福を邪魔するには十分すぎた。
「悪い。どうも切り替えるのが苦手でさ」
「だったらあの半人前を抱いて発散してこい。あれじゃだめだって言うなら、こないだ言い寄ってきた別のメスでもいいだろう。いつでも部屋で待ってると……」
「だああ、陛下、ストップ! それ以上はだめ!」
 堂々と口を滑らせたルーィエを、ライオットが慌てて止める。
 名前も知らないあの女性司祭は、凱旋した英雄に本気になったわけではない。アイドルを追いかける女子高生と同程度の認識なのだ。
 だが、ライオットに粉をかけたという事実が露見すれば、間違いなくターバ神殿に隕石の雨が降ることになる。
 全力でルーィエの口を塞ぎ、厨房の様子を窺う。
 すると、いかなる超能力によるものか、目を細めてこちらを見るルージュと視線が衝突した。
 やばい。
 それだけははっきりと分かった。
 心臓が早鐘を打ち、背中を冷汗がびっしょりと濡らした。
 あきれた様子で念話を送るルーィエにも、それを受けて肩をすくめるルージュにも気づかず、ライオットがひたすら神に救いを求めていると、どうやらマイリーはその願いを聞き届けてくれたらしい。
 ニースの私室から戻ってきたシンとレイリアが、晴れ晴れとした顔で食堂に入ってきた。
「ずいぶん待たせたな。でも無事に終わったよ」
 背負っていたミスリルの大剣をテーブルに立てかけ、シンがライオットの向かいに座る。
 待ち人が帰ってきたのを見て、ルージュもエプロンを外しながら厨房から出てくると、レイリアは小さく会釈した。
「ルージュさんもお疲れ様でした。ご迷惑でなかったといいんですが」
「大丈夫だよ、レイリアさん。久しぶりの料理で楽しかったから。マッキオーレ司祭も喜んでくれたし。それでリーダー、そっちはどうだった?」
 ごく自然にライオットの隣に腰を下ろすと、ルージュはルーィエの背中を撫でながら問いかけた。
「砂漠に行くことは、ニース様に認めてもらった。それと、俺とレイリアの未来についても」
 ほんのわずかに頬を上気させながら、堂々と告げるシン。
 レイリアのはにかんだ笑顔を見れば、万事うまくいったことは間違いないだろう。
 具体的にどんなやりとりがあったのかは、また後日改めて聞けばいい。
「じゃあ、砂漠へはいつ出発するの?」
 穏やかな日常に決別を告げるルージュの言葉に、しかし、シンはかぶりを振った。
「悪い。まだ駄目なんだ。最後の一仕事、ニース様から依頼があった。出発はこれが終わってからになる」
「仕事?」
 予想外の回答に、ライオットがシンを見る。
「ああ。アランの都から、ロートシルト男爵夫人が遊びに来るらしい。その護衛をしてほしいそうだ。正確にはニース様からじゃなくて、宮廷魔術師のリュイナールからの依頼だそうだけど」
「リュイナール、か」
 その名を聞いて、ライオットとルージュの表情が引き締まった。
 シンが王になると決めたその事実は、かの“灰色の魔女”の天秤を大きく揺らしてしまうだろう。
 今のところ、レイリアとロートシルト男爵夫人の友誼を軸にして、リュイナールとの関係は悪くない。
 だが、シンが王国をひとつ築くという行動を、あの魔女はどう評価するだろうか。
「どうなるにせよ、できるだけ貸しを作っておきたいよね」
 依頼をニースが仲介している以上、断るという選択肢はない。
 であれば、可能な限り完璧に依頼を達成し、今後の交渉に役立てるべきだ。
「男爵夫人は、リュイナールが《転移》の魔法でここまで連れてくるそうだ。たぶんあと1週間くらい後になると思う。宮廷には馬車で移動すると公表するから、ここではただの神官として過ごすように、だとさ」
「なるほどね。移動中は馬車の方に敵の目を引きつけて、安全はここで確保するって作戦か。ほんとにあいつは人の裏をかくのが得意だよな」
 ターバ神殿には、カザルフェロ戦士長を筆頭に100名の神官戦士と、ニース以下50名あまりの司祭がいる。他にも見習いの神官、下働きなど、全部合わせれば200を超える数の人間が住んでいるのだ。
 これはちょっとした村があるのと同じで、しかも大地母神マーファの性質上、司祭には若い女性が数多くいる。
 木を隠すなら森の中だ。ここなら、14歳の少女がひとり増えたところで目立つことはない。
「ラフィットがこちらに滞在するのは、長くても2週間程度だそうです。期間中は私の部屋で過ごしてもらう予定です。ライオットさん、ルージュさん、大変ですがよろしくお願いします」
「ニース様が言ってた。おそらく、これがニース様と過ごす最後の時間になるだろうって。政治的な話は俺の専門外だから、頼むよ。気づいたことは何でも言ってくれ。今回は絶対に失敗したくないんだ」
 そう話すレイリアとシンの様子に、思わずライオットとルージュは顔を見合わせた。
 以前の、事ある毎にピンク色の結界を張っていた頃とはまるで違う。
 ごく自然に肩を並べ、現実に足をつけて、できること、できないことを見定め、お互いを支え合っている姿は。
「比翼の鳥って、こういうのを言うんだろうね」
「また男爵夫人が嫉妬しそうだな」
 もう誰が何をしたところで、決して離すことなどできはしない。
 ふたりでひとつの道を歩く“家族”だった。


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