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No.35430の一覧
[0] SWORD WORLD RPG CAMPAIGN 異郷への帰還[すいか](2012/10/08 23:38)
[1] PRE-PLAY[すいか](2012/10/08 22:31)
[2] シナリオ1 『異郷への旅立ち』 シーン1[すいか](2012/10/08 22:32)
[3] シナリオ1 『異郷への旅立ち』 シーン2[すいか](2012/10/08 22:33)
[4] シナリオ1 『異郷への旅立ち』 シーン3[すいか](2012/10/08 22:34)
[5] シナリオ1 『異郷への旅立ち』 シーン4[すいか](2012/10/08 22:35)
[6] インターミッション1 ライオットの場合[すいか](2012/10/08 22:40)
[7] インターミッション1 ルージュ・エッペンドルフの場合[すいか](2012/10/08 22:41)
[8] インターミッション1 シン・イスマイールの場合[すいか](2012/10/08 22:42)
[9] キャラクターシート(シナリオ1終了後)[すいか](2012/10/08 22:43)
[10] シナリオ2 『魂の檻』 シーン1[すいか](2012/10/08 22:44)
[11] シナリオ2 『魂の檻』 シーン2[すいか](2012/10/08 22:45)
[12] シナリオ2 『魂の檻』 シーン3[すいか](2012/10/08 22:46)
[13] シナリオ2 『魂の檻』 シーン4[すいか](2012/10/08 22:46)
[14] シナリオ2 『魂の檻』 シーン5[すいか](2012/10/08 22:47)
[15] シナリオ2 『魂の檻』 シーン6[すいか](2012/10/08 22:48)
[16] シナリオ2 『魂の檻』 シーン7[すいか](2012/10/08 22:49)
[17] シナリオ2 『魂の檻』 シーン8[すいか](2012/10/08 22:50)
[18] インターミッション2 ルーィエの場合[すいか](2012/10/08 22:51)
[19] インターミッション2 ルージュ・エッペンドルフの場合[すいか](2012/10/08 22:51)
[20] インターミッション2 シン・イスマイールの場合[すいか](2012/10/08 22:52)
[21] インターミッション2 ライオットの場合[すいか](2012/10/08 22:53)
[22] キャラクターシート(シナリオ2終了後)[すいか](2012/10/08 22:54)
[23] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン1[すいか](2012/10/08 22:55)
[24] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン2[すいか](2012/10/08 22:56)
[25] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン3[すいか](2012/10/08 22:57)
[26] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン4[すいか](2012/10/08 22:57)
[27] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン5[すいか](2012/10/08 22:58)
[28] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン6[すいか](2012/10/08 22:59)
[29] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン7[すいか](2012/10/08 23:00)
[30] シナリオ3 『鳥籠で見る夢』 シーン8[すいか](2012/10/08 23:01)
[31] インターミッション3 ルージュ・エッペンドルフの場合[すいか](2012/10/08 23:02)
[32] インターミッション3 ライオットの場合[すいか](2012/10/08 23:02)
[33] インターミッション3 シン・イスマイールの場合[すいか](2012/10/08 23:03)
[34] キャラクターシート(シナリオ3終了後)[すいか](2012/10/08 23:04)
[35] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン1[すいか](2012/10/08 23:05)
[36] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン2[すいか](2012/10/08 23:06)
[37] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン3[すいか](2012/10/08 23:07)
[38] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン4[すいか](2012/10/08 23:07)
[39] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン5[すいか](2012/10/08 23:08)
[40] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン6[すいか](2012/10/08 23:09)
[41] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン7[すいか](2012/10/08 23:10)
[42] シナリオ4 『守るべきもの』 シーン8[すいか](2012/10/08 23:11)
[43] インターミッション4 ライオットの場合[すいか](2012/10/08 23:12)
[44] インターミッション4 シン・イスマイールの場合[すいか](2012/10/08 23:14)
[45] インターミッション4 ルージュ・エッペンドルフの場合[すいか](2012/10/08 23:14)
[46] キャラクターシート(シナリオ4終了後)[すいか](2012/10/08 23:15)
[47] シナリオ5 『決断』 シーン1[すいか](2013/12/21 17:59)
[48] シナリオ5 『決断』 シーン2[すいか](2013/12/21 20:32)
[49] シナリオ5 『決断』 シーン3[すいか](2013/12/22 22:01)
[50] シナリオ5 『決断』 シーン4[すいか](2013/12/22 22:02)
[51] シナリオ5 『決断』 シーン5[すいか](2013/12/22 22:03)
[52] シナリオ5 『決断』 シーン6[すいか](2013/12/22 22:03)
[53] シナリオ5 『決断』 シーン7[すいか](2013/12/22 22:04)
[54] シナリオ5 『決断』 シーン8[すいか](2013/12/22 22:04)
[55] シナリオ5 『決断』 シーン9[すいか](2014/01/02 23:12)
[56] シナリオ5 『決断』 シーン10[すいか](2014/01/19 18:01)
[57] インターミッション5 ライオットの場合[すいか](2014/02/19 22:19)
[58] インターミッション5 シン・イスマイールの場合[すいか](2014/02/19 22:13)
[59] インターミッション5 ルージュの場合[すいか](2014/04/26 00:49)
[60] キャラクターシート(シナリオ5終了後)[すいか](2015/02/02 23:46)
[61] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン1[すいか](2019/07/08 00:02)
[62] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン2[すいか](2019/07/11 22:05)
[63] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン3[すいか](2019/07/16 00:38)
[64] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン4[すいか](2019/07/19 15:29)
[65] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン5[すいか](2019/07/24 21:07)
[66] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン6[すいか](2019/08/12 00:00)
[67] シナリオ6 『魔女の天秤』 シーン7[すいか](2019/08/24 23:54)
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[35430] インターミッション4 ライオットの場合
Name: すいか◆1bcafb2e ID:e6cbffdd 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/10/08 23:12
インターミッション4 ライオットの場合

「痛え。誰かが本気で殴るもんだから体中ガタガタだ」
「アホか。先に手を出したのはお前の方だろ」
 壮絶な殴り合いの果て。
 ルージュに容赦なくこき使われ、全部の皿を洗い終わって片付けまで済ませてから、ライオットとシンはようやく宿に戻ってきた。
 剣を棚に立てかけると、崩れるようにベッドに身を投げ出す。
 色々とありすぎて、精神的にも肉体的にも疲労困憊した1日だった。
 明日は鍾乳洞の再探索の予定だ。早く寝て体調を整えなくてはならない。十分すぎるほどに分かっているのだが、ふたりにとって今日のメインイベントはこれからだった。
 横になったまま、うす汚れた天井を見上げて、ライオットがぽつりと言った。
「マイリーの声を聞いたんだ」
 無言で続きをうながすシン。
「見極めて答えを出せと言われた。俺にとって勇気とは何か。戦いとは何か。倒すべきものは、守るべきものは何か。どうやら、俺にはそれが分かってないらしい」
 ロードスに来てすぐの頃、シンがライオットに教養された内容そのままだ。
 この期に及んで悩みの内容がそれとは。警察官として出した結論では、やはりこれ以上戦えないということか。
「で? 勇気ってのは虚勢とやせ我慢じゃダメなのか?」
 シンがいささか皮肉っぽく尋ねると、ライオットはため息をついた。
「自分より相手が強ければ、それで合ってると思うんだけどなぁ」
 ゴブリンに乱暴され、血まみれで倒れているシノンを見たときの想い。自分よりはるかに弱い相手を虐殺しようという決意を、何と呼べばいいのだろう。
 胸にもやもやとしたものが立ちこめてきて、ライオットは大きく嘆息した。
 まったく、ゴブリン退治とは世界で一番簡単な依頼だと思っていたが、とんでもない。これなら邪教の司祭と戦っている方がまだ気が楽だ。
 それからライオットは、脈絡もなく、思いつくままに内心を吐露していった。
 ぽつりぽつりと続く話に言いたいことは山ほどあったが、シンは黙ってそれを聞き続ける。
 どうやら問題は、勇気がどうとか戦いがどうとかいうマイリーの宿題ではないらしい。
 要するにライオットには、敵を殺戮する自分というものが許容できないのだ。
 話が一段落すると、シンはようやく口を挟んだ。
「やっぱりゴブリンは殺したくないか」
「まあな」
「だったら、どんな相手なら殺したい?」
 あっさりと尋ねるシン。
 思わず絶句したライオットに、シンは言葉を続けた。
「王都ミッションの時、ラスカーズが言ったんだ。俺があいつを殺せないのは甘いってさ。お前も俺が甘いと思うか?」
 レイリアを付け狙う邪教の司祭、ラスカーズ。
 ピート卿とイメーラ夫人を斬り、レイリアをなぶり、シンをも敗北の一歩手前まで追いつめた邪悪きわまる男。
「あの時は、深追いすればこっちもただじゃ済まなかっただろう。司祭長とやらも出てきたし、ラスカーズを見逃すのはやむを得ない結論だったと思う」
「ごまかすな」
 シンは上体を起こすと、まっすぐに親友を見た。
 漆黒の瞳に見下ろされて、ライオットが決まり悪そうに視線をそらす。
「分かってるんだろ? 現実から目をそらすな。俺はラスカーズに一太刀あびせて無力化していた。お前の相手をしてたでかいのも、ルージュの《ライトニング・バインド》に拘束されて身動きできなかった。俺たちは一撃で奴らを殺せたんだ。でも殺さなかった。それをどう思うかと聞いてるんだ」
 容赦のない舌鋒が、ライオットの古傷をえぐり出す。
 あのとき感じた矛盾と苛立ちを思い出して、ライオットは深々とため息をついた。
「そうだな……」
 自分でもよく分からないうちに問題をすり替えていたらしい。
 そうだ。アンティヤルは自分より強かった。だが、それでも自分は相手を殺すことを躊躇したのだ。
 認めなければならないらしい。
 自分は、相手が誰だろうと『殺す』という行為が嫌いなのだ。
「分かった、認める。甘い。甘かったよ俺は」
 ライオットは肩をすくめると、ベッドから身を起こして窓辺に歩み寄った。
 真夏の夜。窓が1つしかない部屋では風が吹き抜けることはないが、それでも、窓辺にはいくらか涼しい空気が流れ込んでくる。
「頭では分かってた。あいつはあの瞬間に殺すべきだった。ルージュの魔法はすぐにバグナードに解呪される。次のチャンスはないかもしれないってな。ゴブリンの時も同じだ。ここで逃がせば村人が襲われるかもしれないって分かってた。だけど殺せなかった。俺の甘さだ」
 胸の中のもやもやを言葉にして吐き出してしまうと、いくらか気が楽になった。代わりに外の空気を吸い込んで、不愉快な何かを少しでも薄めようとする。
 そんなライオットを見て、シンは小さく笑った。
「俺はそうは思わないな。お前は甘くなんてない。正しかった。何も間違えてなかった」
「…………」
 まさか自分を肯定されるとは思っていなかったライオットが、驚いてシンを見返す。
「もちろん俺もだ。俺は相手を殺すために戦ってるんじゃない。殺さなきゃ『甘い』呼ばわりされるなら、俺は甘くて結構だ。俺がどうするかは俺が決める。他人に口出しはさせない」
 戦うとはどういうことか。
 己の剣と力は何のためにあるのか。
 その答えに揺るぎなく立ったシンは、いささかの迷いもなく、まっすぐにライオットを見つめていた。
「今さら言うまでもないけど、俺はレイリアを守るために戦ってるんだ。見知らぬ他人なんてどうでもいい。正義とか平和とかを守ろうとも思わない。俺に守れるものは、この剣の届く範囲のものだけだからな」
 シンはそこまで言うと、棚に立てかけた精霊殺しの魔剣に手を伸ばした。
 魔剣は軽い音を立てて鞘走り、純白の燐光を発した刀身が姿を現す。
 磨きあげられた刃をランプの明かりにかざして、シンは言葉を続ける。
「だから、俺はレイリアを離さないよ。彼女が俺の隣にいる限り、敵が誰だろうと絶対に守りきってみせる。レイリアに剣を向ける奴がいたら、その時は、相手が誰だろうと俺はためらわない」
 刀身に映る自分自身に誓うように、シンは力強く断言した。
 ラスカーズのような殺人狂の変態でもない限り、相手の命を奪うというのは不愉快な行為だ。それでも相手の血に手を染めるのは、それ以上に価値のある何かを守るためでしかない。
 己の身を危険にさらし、様々なリスクに身を投じてでも守りたいものは何なのか。
 その答えが見えないうちは、戦いなど苦痛でしかない。
「あの日、スーヴェラン卿の屋敷で戦ったとき、俺はラスカーズを殺さなかった。ラスカーズが襲ったのは俺であってレイリアじゃなかったからだ」
 他人が聞けば、ラスカーズがレイリアを狙っているのは確実なのだから、シンの論理は詭弁だと言うかもしれない。 
 だがシンにとっては、レイリアを現に差し迫った脅威から守るという切迫性が、相手を殺すためには絶対必要な要素だった。
 守るのが自分だけであれば、ラスカーズごとき10回戦って10回勝つ自信がある。わざわざ殺すほどの相手ではないのだから。
「結論から言えば、相手を殺さなかったっていう俺とお前の行動は同じに見える。だけど理由は全然違うんだ。なぜなら、俺たちは戦う理由が全然違うからだ」
「戦う理由、か……」
 ライオットにとっては、漠然として言葉にできないもの。
 シンはそれを明確に認識して、自分と親友の差異さえも理解しているらしい。
「お前が戦う理由はさっき言ったとおり。警察官だから犯罪者を許しておけないのさ。だから見知らぬ他人のためにも戦える。シノンの怪我にも責任を感じてしまう。けど犯人と犯人じゃない奴を明確に区別するから、シノンを襲ってないゴブリンは傷つけたくない。洞窟で戦ったときは、襲ってきたのが向こうだから反撃はできたけど、相手が逃げ出したら追撃はできない。日本の警察官は、逃げる犯人の背中には発砲できないことになってるからな」
 シンは歯切れのよい言葉でライオットを評価していく。
 今までもやもやして形にならなかった内心が、シンの言葉ではっきりとした輪郭を与えられて、ライオットの中でどんどん整理されていった。
 オーガーの前では足に根を生やして硬直していた民間人のSEが、今では自分の前を歩いているのか。
 ふとそう思って、ライオットはようやく自分の増長を認識した。
 さっきシンが言ったとおりだ。心のどこかで、自分はシンやルージュを『守るべきもの』だと決めつけていたのではないか?
 この世界にもっとも適応できないのが自分なのに、何と烏滸がましいことだろう。
「つまり今の俺は、犯人を逮捕するために戦ってるってことか……」
 シンの言葉を咀嚼して、ライオットはそう結論づけた。
 相手を捕らえて官憲に突き出すという意味ではない。
 戦うに当たって自分で決めた交戦規定が、警察官職務執行法の範囲を1歩も出ていないということだ。
 よくよく思い出してみれば、ライオットが今まで殺した相手はオーガーとゴブリンのみ。その状況も、『自己もしくは他人の防護』という、正当防衛に当てはまる場面に限定されていた。
 これでは、東京での警察官としての活動と何ら変わらない。
「そうなるのかな。あともうひとつ俺が言いたいのは、お前が全部自分でやろうとしすぎるってことさ」
 シンは精霊殺しの魔剣を手に持ったまま、ベッドから一挙動で起き上がった。
 ライオットの前を通り過ぎ、壁に立てかけてあった魔法の大盾に歩み寄る。
「警察官だったら、盾になって民間人を守るのも、戦って犯人を逮捕するのも、全部自分でやらなきゃいけないんだろうけどさ。今ここにいる“ライオット”は、警察官として生まれたわけじゃないだろ?」
 シンはそう言って、ライオット愛用のカイトシールドに左手を伸ばした。
 革を巻いて握りやすくしたグリップには手垢が付き、黒ずむほどに使い込まれている。今まで幾多の強敵から仲間を守り抜いてきた歴戦の防具。
 これこそがライオットというキャラクターの象徴だ。
「思い出せよ。お前がライオットを創ったとき、目指したものは何だった?」
 キャラクターメイクで他のPCから借金をしてまで、プレートメイルとラージシールドにこだわったのは何故か。
 レイド帝国の滅亡を巡るキャンペーンで、聖堂騎士団のエースとして与えられた異名は何だったか。
 忘れるはずもない。
「……“不敗の盾”だ」
 ライオットが低く答える。
「俺たちパーティーを1人の人間だとすれば、剣を持つ右手じゃなく、盾を持つ左手になりたかった。どんな強敵が来ても仲間を守れる、不敗の盾に」
 だから重装甲で身を鎧った。
 シンが両手武器で打撃力を上げるのとは対照的に、回避力と防御力を上げることに専念した。
 GMに魔法の武器と魔法の盾どちらが欲しいかと聞かれ、迷わず盾を選択した。
 崩れざる壁となるために、回復魔法を求めてプリースト技能を上昇させた。
 すべては必然の上に乗った成長だったのだ。
「そうだよな。俺たちはずっとそうやって戦ってきたんだ。お前が敵の攻撃を遮断している間に、俺とルージュとキースの3人がかりで粉砕する。俺たちは4人でひとつだった」
 シンたちはライオットの防御力を信じて攻撃に専念し、ライオットはシンたちの打撃力を信じて防御に専念する。
 皆が互いを信頼し合っていたから、それぞれが全力で役目に集中できた。
「だけど今は違う。お前は俺たちを信じてない。“不敗の盾”としてシンやルージュを守るんじゃなく、“警察官”として桧山伸行や井上喜子を守ってる。未だに俺たちの保護者のつもりなんだ。だから何から何まで面倒を見ようとする」
 右手に精霊殺しの魔剣を。
 左手に魔法の大盾を。
 それぞれ構えて、シンはライオットに向き直った。
「お前がやろうとしてるのはな、この盾で攻撃を受けて、この盾で敵を倒すことだ。それでうまく敵が倒せなくて、盾の使い方が悪いんじゃないか、盾の覚悟ができてないんじゃないかって悩んでるんだ」
 右手の剣をだらりと下げたまま、シンは左手の盾を高く掲げた。
 斬撃を受け、敵を殴り、また受け、また殴る。
 左手一本で激しい演舞を繰り返しながら、シンはライオットに燃えるような視線を向けた。
「これが今の俺たちだ。どうだ、うまく戦ってるように見えるか? もしそうなら、右手の剣の立場はどうなる?」
 そして動きを止めると、シンはライオットに盾を放り投げた。
 相手が無言で盾を受け止めると、ことさら静かに問いかける。
「お前さ、役目を代わってくれって言ったらどうする? レイリアが一列目に出て、その盾でラスカーズやアンティヤルの攻撃を防ぐって主張したらどうする?」
「そんなことできるわけないだろ。危険すぎる」
 むっとしてライオットが答えた。
 守るべき対象を最前線に出すなど、議論にすら値しない。仮定の話としてもナンセンスだ。
 すると、シンは小さく口許を歪めた。
「そうだよな。普通はそう思う。けどな、それを、盾に隠れて全力防御ばかり、楽をしてて申し訳ないって言った奴がいるんだ! ふざけんな!」
 何の前触れもなく純白の刀身がひるがえり、ライオットに襲いかかった。10レベルファイターの完全な奇襲。速度といい重さといい、相手がラスカーズ程度なら首を取れる一撃だ。
 だがライオットは、脊椎反射でシンの一撃を受け止めていた。
 こと防御に関する限り、ライオットは難攻不落と評してよいだろう。シン・イスマイールの奇襲を完璧に防御できる人間など、ロードス全土を探しても3人といないはず。
 であればこそ、そこに価値を見出そうとしないライオットの言動が、無性にシンを苛立たせた。
「人殺しに向いてない? それがどうした? 俺たちは4人でひとつ。お前の仕事は盾になることだ。この先、どんな強敵が出てきても砕けない“不敗の盾”にな。その役割に誇りを持てよ。敵を倒すことじゃなく、攻撃を防ぐことに全てを賭けろ。古竜だろうが魔神王だろうが、現れた敵は全部完封しろ」
 魔法の剣と盾が干渉し、青白い火花が散る。
 至近距離で親友の目を睨んでから、シンはすっと剣を引いた。
「その代わり、俺たちが敵を倒す剣になる。どんな敵が立ちはだかっても、必ず打ち倒してみせる。言ったはずだぞ。俺たちはもう、お前に守られるだけの民間人じゃない。“砂漠の黒獅子”と“奇跡の紡ぎ手”なんだからな」
 手慣れた動作で剣を鞘に納める。
 シンの声から怒りや苛立ちが消え、一転して真摯に訴えかけるような口調になった。
「お前が戦う理由とか、勇気の意味とか、そんなもんは夜寝る時にでものんびり考えればいい。だけどこれだけは忘れないでくれ。守るべきものも、倒すべきものも、お前ひとりだけのものじゃない。俺たち4人が全員で共有すべきものなんだ」
 その言葉は、壮絶な衝撃となってライオットを殴りとばした。
 蒼氷色の瞳が大きく見開かれる。
 頭の中で混沌の霧となっていた思考が、いきなり吹き払われて地平が見えた。
 自分を保護者に任じてすべてを抱え込み、マイリーの信託を受けてから、ライオットは出口のない迷宮に閉じこめられていたのだ。シンの言葉は、その迷宮を壁ごとぶち抜いてライオットを外に連れ出した。
 そもそも、ロードスにいるのが自分だけだったら、倒すべき敵も守るべき味方もいるはずがないのだ。ライオット個人とロードスの住民の間には利害関係など存在せず、戦う理由も必要もないのだから。
 にも関わらず、自分だけの問題だと決めつけてしまったから、見えるはずのない答えを求めて悩むようなことになった。
「そうか……共有するものがあるから、戦うんだよな」
 自分ひとりのものではなく、4人で共有すべきもの。
 かつてニース最高司祭が評したのと同じ言葉だった。喜びも悲しみも、全てを分かちあって同じ道を歩もうとする者たち、と。
 互いを信頼する絆の強さこそが、シンたちの強さの根元だと。
 だが、シンの言ったとおり、ライオットは本当の意味ではシンやルージュを信頼していなかった。
 守らなければという義務感や、攻撃に参加しなければという罪悪感に邪魔されて、シンやルージュの力を信じられなかった。
 だからひとりだけ歯車が噛み合わず、物事がうまく進まなかった。ニースが評した強さに、ライオットは寄与しきれていなかったのだ。
 シンはレイリアを守りたい。
 だがその想いは一方通行ではない。レイリアだってシンを守りたいのだ。その循環こそが本当の強さに繋がる。
「やっと分かった。俺はどうやら、ひどいレベルで思い違いをしてたらしい」
 憑き物の落ちたような清々しい表情で、ライオットが肩をすくめた。
 互いが互いを思いやる、信頼の円環。
 ライオットは、自分がそこに参加していなかったという事実を、今さらのように認識していた。
 今日までは圧倒的なレベルにものを言わせて、力任せに敵を粉砕してきた。だが明日からは違う。
 ひとりだけずれていた歯車は、音を立てて正しい位置に組み込まれた。
「目が覚めたか」
「ああ、ようやく。待たせて悪かった」
 にやりと笑ったシンが拳を突き出すと、ライオットが苦笑を浮かべて拳を合わせる。
 倒すべきもの。守るべきもの。まだ、それを明確な言葉にすることはできない。
 だが、それは確かに、自分の中にある。
 シンに見せられた景色を胸に刻みつけると、ライオットは顔を上げた。
 窓の外。白み始めた東の空に、紫色の雲がたなびいていた。
 


シナリオ4『守るべきもの』

 獲得経験点 5500点

 今回の成長
  技能・能力値の成長はなし

  経験点残り 12000点



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