インターミッション2 ルーィエの場合
人間という生物は総じて愚かなものだ。
ささやかな主張の違いをめぐって刃を振りかざし、同族同士で傷つけ合う。
戦いの跡。
家具や食器の残骸が散らばる食堂で、猫族の王たる銀毛の双尾猫は、窓から銀色の月を見上げていた。
「まったく、バカな奴ら」
あたりには胸が悪くなるような血臭がたちこめ、壁といわず床といわず、赤黒い汚れでいっぱいだ。
これほどの血が流れても、誰一人として望んだものを手に入れていない。全員が痛みを感じただけ。
どんな愚かしい生物でも、この事実を知れば少しは反省する気になるだろう。
それでも争いをやめず、ほとんど趣味としか思えないほど積極的に傷つけ合う人間という生物が、ルーィエには全く理解できなかった。
「とはいえ……」
まったく救いがないわけではない。
破壊を画策したのが人間なら、それを止めようとしたのもまた、人間だ。
居心地のよい部屋と、温かい食事。
それはルーィエにとっても十分な価値を持つものあり、彼の不肖の弟子たちはそれを守るために全力で戦った。
満点とはいかないが、その努力には褒美をくれてやっても構わないだろう。
「相応の評価を与えるのも、王たる者の高貴な義務というものだからな」
紫色に輝く瞳で部屋の中を見渡すと、ルーィエは精霊語で呼びかけた。
『いつも後始末だけというのは気に入るまいが、これもそなたたちの務めだ。人間どもの愚行で荒れ果てた住まいを、元の姿に戻すがよい。そなたたちの奮闘に期待する』
決して華美ではないが、ピート卿夫妻が愛情を持って手入れしてきた館。
そこは、見えざる精霊たちが住まいと定めるのに十分な資格を有している。
呼びかけに応じて、屋敷の中で小さな者たちが動き始めるのを感じて、ルーィエはそっと食堂を出た。
彼らは姿を見られることを嫌う。後のことは任せて、しばしの休憩をとっていれば、朝には仕事の成果が見られるだろう。
眠りの小人が砂をまくのを感じると、ルーィエは睡魔に逆らわず、柔らかいソファを見つけて丸くなった。
最後にちらりと見上げた銀色の月は、いつもよりも優しく輝いている気がした。
ルーィエ(ツインテールキャット、オス、6歳)
尻尾が2本ある猫族の王。銀色の体毛。
モンスターレベル 5→6
敏捷度 18 移動速度 15
生命力 12 生命抵抗力 6→7
精神力 20 精神抵抗力 7→8
技能
古代語魔法 5レベル(魔力8)
精霊魔法 5レベル→6レベル(魔力8→9)
特殊能力
精神的な魔法は無効
毒、病気に冒されない
暗視、闇視