―――― * * * ――――
『……いる…の…かい?』
病床に伏しながら、彼は問いかける。
彼女は彼の手を優しく握り、顔を見つめる。
『ああ……レベッカ………』
人工呼吸器を取り付けられた口で、彼は何度も彼女の名を呼ぶ。
愛おしむように。撫でるように。抱きしめるように。
けれど、その声は響く度に、彼女の心を締め付ける。
『……オルジフ…』
彼女は彼の名を呼ぶ。
その声に、彼は微笑んでみせる。
しかし、彼女は微笑みを浮かべるどころか、哀しげな顔のまま、彼を見つめていた。
そして、再び口を開く。
『オルジフ……私は……――――』
言いかけて、止めた。
ちょうど今、命の灯火が消えかけている彼に、自身の気持ちを伝えたところで、何になるというのか。
それだけではない。その言葉は“裏切り”だ。彼を愛すればこそ、口にするべきではない。
これまでと変わらず、心の奥底にしまい込めばいい。
そう、これまでと変わらず。“その名”で呼んでもらえばいい。
彼がそれで笑顔になるというのなら、それで十分ではないか。今際の際に、それを台無しにする必要など無い。
名前など、只の記号に過ぎない。どんな呼ばれ方をしようと、彼は自分を見てくれているのだ。
――――彼は、きっと私を……
私…を……――――…?
不意に、彼の手が頬に伸びる。既に温もりなど、欠片も感じられなかった。
次の瞬間、彼は微笑みながら何かを口にした。
たった一言。呟くように。囁くように。
それから、彼は静かに瞼を閉じる。
そして命の火が確かに消えたことを、アラームと心電図が知らせた。
医者と看護師が事後処理をする中、彼女は立ち尽くし、一人思う。
――――オルジフ……私は……
遂に言えなかった唯一言を、震える声で呟いた。
『……私は……“レベッカ”では…ないわ』
顔を両手で覆えども、涙は遂に流れなかった。
20th STAGE
届かぬ想い、その結末。
―――― 1 ――――
「四天王計画については知っている?」
「一応……な」
ゼロは白の団のデータベースから得た知識を思い返す。
ちょうど十年前、ネオ・アルカディア政府内にて“今後予想されるレジスタンス組織の活動活発化への対策”の一つとして挙げられた軍団再編計画。その目玉として用意されたのが、軍団をまとめ上げる指揮官レプリロイドの開発案であった。
「政府に属する、レプリロイド工学権威として名高い四人の科学者に、その開発指令が下された……」
救世主エックスのDNAデータを元に、人類、ネオ・アルカディア、それを統べる救世主エックスの守護者たる、最強最優のレプリロイドを開発する計画――――それが、“四天王計画”である。
四人の科学者はその計画を実行するために呼び出され、それぞれ独自の技術を用いて計画に相応しいレプリロイドを開発するよう指令を受けた。
「その内の一人が、そこの彼――――オルジフよ」
上層部の指示により、四人は四つの軍団の具体的なコンセプトに見合ったレプリロイドを設計。
一人は、制空権の掌握及び国家のライフラインに直接関係する設備を護衛する軍団の長となり、且つ、四天王のリーダーとなり得るレプリロイドを。
一人は、広大な大地の上、最も巨大な戦力をまとめ、レジスタンス組織掃討の要となる軍団の長となり、且つ、自らも軍団に恥じぬだけの戦闘力を持ったレプリロイドを。
一人は、隠密活動に特化し、国外のみならず、国内の反抗勢力からも救世主を直接護衛する軍団の長となり、且つ、自らも高い隠密機動能力を持ったレプリロイドを。
そしてオルジフは、制海権の掌握及び海洋調査任務を主とし、情報戦全般を取り扱う軍団の長となり、且つ、自らも水中戦、情報戦に秀でたレプリロイドを。
四人が設計したレプリロイドには、開発段階でコードネームが付けられた。「ハルピュイア」「ファーブニル」「ファントム」「レヴィアタン」――――どれも神話や伝承とリンクさせ、軍団のイメージに沿うようにつけられた名称である。
それらが、今日までレジスタンスに恐れられる四天王と、彼らが統べる四軍団の前身となった。
「元々、オルジフが設計していたのは男性型だった。それもそうよね。旧時代からの男性社会を受け継いだネオ・アルカディアにおいて軍団の長をわざわざ女性型にする意味はないもの」
救世主とその理想郷を護る、四人の屈強な英雄たち。彼らの完成が間近となったちょうどその時。一つの悲劇が起きた。
「オルジフには、大学講師時代から傍で研究を支え続けた恋人がいたわ」
病弱な彼の健康を気遣い、傍で研究を支え続けた恋人。――――彼女の名はレベッカ。
メガロポリス大学でも才色兼備で有名な彼女は、レプリロイド工学を専攻。授業を通じてオルジフと出会い、授業の質問などを繰り返す内に、彼の人間性に惹かれていった。
そして、大学院を卒業と共に、彼との交際を始めることになる。
「オルジフが戦略研究所顧問に就いたこととか、持病を患っていたこととか、歳の差とか……いろいろ事情が重なって、家庭を築くことは暫くなかったわ。けれど、共に過ごし、愛を育み続けた」
互いに愛しあい、慈しみあい――――大切なあたたかい時間を過ごし続けた。
オルジフにとって、レベッカは誰よりも欠かせない大切な存在となった。
しかし、四天王計画に取り組み、完成が近づいた頃。メガロポリスにおいて、とあるレジスタンス組織による襲撃事件が起きた。
「当時、あの大反乱から七十年も経過していたこと、黒狼軍や解放議会軍のような特別視される組織が見当たらなかったことから、国内の警戒心は薄れていたのね。イレギュラーハンターのおかげで、大事には至らなかったけれど、少なからず犠牲者が出たわ。……そしてそこにレベッカが巻き込まれたのよ」
オルジフは嘆き悲しんだ。
最愛の恋人を失い、元々病弱だった身体の具合はさらに悪化していき、取るべき食事も喉を通らないほどであった。
喪失感、絶望感、悲哀と苦悩に包まれる時間。その中で、オルジフは目の前にいる完成間近のレプリロイドに目をつけた。
「彼は、電子頭脳の不具合を理由に、製作途中のレプリロイドを廃棄。コンセプトの見直しと、新技術の導入を謳い、追加予算を請求し、レプリロイドを基本骨子から全て作り直し始めた」
しかし、そうして彼が作り上げたものは、他の研究者達の想像を絶する私情と私欲の産物であった。
「彼は四天王計画用に支給された全ての予算を用いて、新たなレプリロイドを作り上げた。――――死んだ恋人、レベッカと瓜二つの模造人形を……」
上層部はその外観に呆れ果て、オルジフに対し抗議を寄せた。だが完成したレプリロイドにイメージカラーとして指定されていた青が取り入れられていたこと、何より独自技術の導入により戦力として十分な機能が付随されていることを挙げられ、要望を満たしていることに渋々納得する形となった。
かくして、四天王の一人“レヴィアタン”は完成した。……レベッカの模造人形としての外観と“心”を持ったまま。
「上は指摘しなかったけれど……“心”の部分において、私にはある意味、“問題”と言える点があるの」
「“心”……?」
目覚めて直ぐに彼女のことを「レベッカ」と呼ぶオルジフ。しかしレヴィアタンは与えられたコードネームではないその名前に首を傾げる事はなかった。
眼の前にいるオルジフを最初から特別な存在に感じ、愛おしく想い、愛しあう事を躊躇わなかった。その“感情”を一切疑わず、彼を愛した。
まるで、“生まれる前から共に歩んできた恋人”のように――――……‥‥
「もう…分かるわね?」
ゼロは唖然としたまま彼女を見つめた。
レヴィアタンは一息ついた後、複雑な表情と微かに震える声で言葉を続けた。
「オルジフは……レベッカの記憶と感情をデータに変換し…私に搭載したのよ」
真の模造人形――――完全な“レベッカ”を作り上げるため。
オルジフはレヴィアタンに“レベッカ”を移植したのだ。
―――― * * * ――――
彼の鼻筋が好き。
耳の形が好き。
目元が好き。
『……レベッカ』
“私”の名を呼ぶ、彼の声が好き。
『レベッカ?』
オルジフは、口にコーヒーカップを運ぼうとした手を止め、テーブルの向かい側で暫くぼーっと見つめる“私”に問いかける。
“私”は「はっ」と我に返って、咄嗟に笑い返した。
『どうしたんだい、急に?』
『いえ…なんでもないわ。気にしないで』
不思議そうな顔をしたまま、彼は一口コーヒーを啜る。
その様子を眺めながら、“私”がまた微笑むと、彼は困ったように顔をしかめた。
『僕の顔になにか付いているのかい?』
『だから、なんでもないってば。…フフ』
『……なら、どうして笑うんだ?』
少しだけ『ムッ』としたように彼は言う。
自分の分からないことがあれば直ぐに不機嫌そうな顔をして、疑問が解消されるまで諦めない頑固者。
その表情も、めんどくさい性分も――――“私”は全て好き。
“私”は少し勿体ぶると、彼があまりにも問い詰めるものだから、『分かった。分かった』と答えてあげる事にした。
彼の瞳をじっと見つめて。
『あなたが、そこにいてくれるからよ』
そう言って返すと、キョトンとした後、彼は年甲斐もなく顔を赤らめて手にしていた新聞に視線を戻した。
“私”はその様子を見て、また笑った。すると、今度は彼も笑い出した。
……ええ、間違いないわ。
恥ずかしがりなところも。その笑顔も。共にいる時間も。
“私”は、彼の全てが好き。
ある日の朝方。
頬杖を突いて自分の青い髪を弄りながら、“私”はそんなことを考えていた。
―――― 2 ――――
「彼は元々免疫機能が弱くてね。昔ならともかく、今の技術ではそれほど悪くならずに済んでいたのだけど」
懐かしむように、遠くを見つめながら、レヴィアタンは語りを続ける。
「……レベッカが死んでから…彼は治療を受けなくなった。そして、どんどん衰弱していったわ」
ゼロは黙って彼女の言葉を聞き続けた。彼女が向けた視線の先を、自分も見つめながら。
「それでも彼は、いつも私に笑いかけてくれた。私も彼を見つめて笑った。手をとりあって外を歩いたり、食事をしたり、眠ったり……。そんな普通の毎日を、時間がある限り楽しんだわ」
四軍団の編成が始まった頃、前線に出ることは殆ど無く、レヴィアタンは時間を比較的自由に扱うことができた。
言葉通り、空いた時間は全てオルジフと過ごすために使い続けた。特に何かやることがあるわけでもなかったので、当然と言えば当然なのだが。
「けれどある日……私は違和感を感じたの」
オルジフは時折、懐かしむように写真を眺めていた。“レベッカ”と共に撮った写真を。何度かその光景を目にした時、ふと感じることがあった。
「必死で考えないようにしたわ。けれど……できなかった」
亀裂の入った心に、その違和感はじわじわと染みこんで行き、ついには拭い去れぬものとなってしまった。
ある日の夜、彼女は問いかけた。「決して口にしてはならない」と心の中で流れる警報に耳を塞ぎながら。
―――― * * * ――――
『ねえ、オルジフ』
薄明かりの中、ベッドの上で横になる彼。“私”は傍に座って、呼びかける。
彼は『ん?』と視線を向けてくれる。
“私”は彼の瞳を見て躊躇った。どう問いかければいいものか。どう言葉にすればいいものか。彼を困らせはしないものか。
そして、しばらく考えた後、“私”は意を決してそれを言葉にした。
『“私”は……誰なの…?』
瞬間、時間が止まったように感じた。
口を開け、“私”を見つめたまま、彼は黙り込んだ。“私”もまた、黙り込んだ。
その言葉が、正しい表現だったかは、正直分からない。けれど率直に出た、その言葉こそが真実の問いに違いない。だから、“私”は言い直さず、彼の答えを待った。
暫くして、彼は微笑みながら答えた。
『君は“君”だ』
それから、彼は直ぐに眠りについた。
“私”は言葉の意味を考えながら、彼の寝顔を見つめた。
誤魔化したのかもしれない。はぐらかしたのかもしれない。――――そう思っても、それ以上“私”は踏み込めなかった。
何故なら、彼を愛していたから。
この時間を、二人でいる温かい時間を壊したくなかったから。
けれど、黒い靄のような不審感は少しずつ“私”の心を包んでいった。
それから、彼が永遠の眠りに就くまで、“私”は募る不審感をひた隠しながら、共に暮らし続けた。共に笑い続けた。
けれど、次第に『レベッカ』と呼ぶ彼の声は、“私”の心を絞めつけるようになった。
『何かが違う』――――そう感じるようになってしまった。その名前に、呼ぶ声に、違和感を感じるようになっていた。
名前なんてものは只の記号。そう思って、気にしないようにした。“レヴィアタン”でも“妖将”でも“レベッカ”でも、“私”は“私”なのだから。
彼が“私”を見てくれている限り、どんな呼び方をされても、気にする必要なんて無い。そう、強く自分に言い聞かせ続けた。
けれど、彼が目覚めなくなった時。
遂に、“私”は口にした。募り続けたものを、溢れ出るままに口にした。
『……“私”は……“レベッカ”では…ないわ』
黒い靄のような不審感は、その瞬間、心を覆う闇へと形を変えていった。
それから、真実を知ったのは彼の遺品を整理していた時。
彼の研究メモと、“私”の設計データから、全てを知ってしまった。
外見を似せるだけでなく、“レベッカ”の記憶と人格をデータ化して“私”に搭載した。死んでしまった本当のレベッカへの愛情を捨てきれず、“私”という“レベッカ”の模造人形を作った。
彼は最期まで、“レベッカ”を愛していたのだ。
―――― * * * ――――
「……彼を、愛していたわ」
事の顛末を語った後、レヴィアタンは再び口を開く。
「けれど…ね。それが本当に“自分の感情”だったのか……私には分からないの」
オルジフを愛した感情は。オルジフとの思い出は。心は。記憶は……本当に自分のものだったのか。
膝を抱え、顔を少しだけ埋める。上目遣いに、僅かに前を見つめて、考えこむ。
「……いいえ、違うわ。答えはとうの昔に出ていた」
そう言って笑う。けれど、その瞳は空虚な輝きを放っていた。まるで、ただの人形のように。
「“所詮、私たちはレプリロイド”――――生命の形を模した“模造人形”なのよ。この心も、人格も、感情も……全てデータに過ぎず、生命を名乗れるだけの価値も、尊厳も……本当は何処にもありはしない」
プログラムのままに誰かを愛し、悲しみ、生き続ける。
個としての自由を求めども、結局は抗えず仕舞い。ボレアスの大地で、カムベアスが証明したように。
「恨んでいるわ。憎んでもいるわ。けれど、それも“私”のものなのかしら。分からないの」
「ねえ、教えて」とレヴィアタンはゼロを見つめた。虚ろな目をしたまま。乾いた笑みを浮かべたまま。
「“私”は……誰なの?」
「…………」
見つめ合う二人の間に沈黙が訪れた。重く、悲しく、寂しい沈黙が。
ゼロは、その問いに返すことができず、黙り続けた。けれど、眼をそらす事は出来なかった。彼女の瞳の奥に、自分の姿が見て取れたから。
暫くして突然、レヴィアタンは吹き出し、沈黙を破る。
「ごめんなさいね。辛気臭い話になってしまって」
「クスクス」と笑って謝るが、その様が、ゼロには憐れに見えて仕方がなかった。
心配げに見つめるゼロに、レヴィアタンは「大丈夫よ」と言う。
「もう、割り切っているから。上手くは言えないけれど、『私たちは“そういうもの”なんだ』…って思っていくしかないわよね」
その時、彼女の一見破天荒な言動の理由が垣間見えた気がした。
再び考え込んだ後、「けどね」とレヴィアタンはポツリと、小さく呟く。
「一つだけ……今も引っ掛かっていることがあるの」
あの日の事を何度思い返しても、彼女はただ一つ、どうしても思い出せないことがあった。
殊更寂しい眼差しで、彼女は口にする。
「あの日……彼が微笑みながら何か言ったの……。だけど…どれだけ思い出そうとしても……その言葉だけが思い出せないのよ」
彼女が“気づいてしまった”――――その直後、彼が紡いだ最期の言葉。
怒りのせいか。憎しみのせいか。恨みのせいか。それとも“彼女”への嫉妬心からか。その言葉だけが思い出せない。幾百、幾千、幾万と交わした言葉の中で、たったそれだけが。
その事実が今も彼女を、“あの日”から解き放ってはくれないのだ。まるで呪いのように。天罰のように――――……‥‥
深呼吸を一つしてから、身体を後ろの岩壁に預ける。
「……喋り過ぎて…疲れちゃったみたい。少し眠らせてもらうわ」
そう言って、レヴィアタンは瞼を閉じた。それから少しして、彼女が眠りに就いたのを証明するように、柔らかい寝息が横から聞こえてきた。
ゼロは彼女の寝顔を見つめた後、空を眺めた。漆黒の空に散りばめられた星々が、まるで己の存在を主張するかのように輝いている。
呆れたように、溜息を一つ吐く。
「………無用心にも…程があるな……」
直ぐ傍にいるのは、あの“紅いイレギュラー”だと言うのに。彼女は少しも警戒すること無く、スヤスヤと安らかな寝顔を晒して眠りに就いている。
だが、この無用心さは今に始まったことではない。
ボレアス山脈でも、潜水艦でも、そして今、己の過去を何の躊躇いもなく明かしてしまうなど、予想だにしない言動ばかりが目立つ。
しかし、その根幹が何処にあるのか、ゼロには確かに分かった気がした。
破天荒で、型破りな言動を重ねて、相手を試しているようで、本当は自分を試していた。
掴みどころが無いようで、その実、全て彼女は本気だった。
「……抗おうとしていたんだろ」
そう言って彼女の横顔を見つめる。
プログラムに縛られた常識的な行動。従順な思考。模範的な在り方。――――それらを全て否定したいがための彼女なりの無意識な反抗だったのだろう。
“所詮はレプリロイド”――――そう言いながら、その枠から外れたかった。自分の感情と人格を肯定したかった。
“レヴィアタン”という唯一無二の、絶対の存在でありたかった。
けれど、捨てきれない感情が――――オルジフへの恋慕の情が、それを妨げる。
彼への愛が、彼との過去が、いつまでも彼女を縛り続け、離さない。そしてまた不幸なことに、自分もそれを離したくはないと思ってしまった。
人の手で植え付けられた“プログラム”かもしれないと分かっているのに。
そのジレンマが、彼女を真に縛り続けているのだろう。
「………分かるぜ、そういうの。慰めじゃなく…さ」
そう呟くように言って手を伸ばす。
そして愛おしむように、彼女の青い髪を優しく撫でた。
―――― 3 ――――
遡ること、百十余年前――――イレギュラー戦争以前。
“彼”は、たった一人の科学者の興味から生まれた。
「一つの細胞をどこまで大きくできるか」という実験から生まれた“彼”は紆余曲折の果て、僅かばかりの自律思考能力を備えたバイオメカニロイドとして誕生した。
だが、その戦闘スペックと危険性から、“彼”は隔離施設に一人残され、事実上の廃棄処分となってしまった。
研究施設の片隅でただ一人、束縛から解き放たれる時を待ち続けた。
けれど、その時は何時まで経っても訪れることはなかった。どれだけ待とうとも、その部屋の扉は開かれなかった。
そして、何時しか“彼”は気づいた。
自分は棄てられてしまったのだと。
もう二度と、その扉を開け放たれることはないのだと。
自由は何処にもないのだと、“彼”は理解した。
……ユル…ナイ……
それから数年が経過した頃。
思いがけないことに、二度と開くことはないだろうと思っていた扉は開かれた。
その扉を開けた主は、“彼”に手を差し伸べた。
そして、共に来るように言いつけた。
“彼”はそこに救いを見た。
間違いない。目の前に現れた彼こそが、自分にとっての主であると。
一人棄てられてしまった自分を、誰からも思い出されることのなかった自分を救ってくれた唯一人の主。
一度は棄てられた命だ。それならばその命に代えても、自分を救ってくれた彼に忠誠を尽くそう。
この身が滅びるその時まで、唯一絶対のマスターにこの恩を返そう。
そう誓いを立てたのだ。
……ユル…ナイ……ます…ーニ……ア…ナス…モノ………
時はイレギュラー戦争開幕直前、あるイレギュラーによる反乱事件が起きていた頃。
イレギュラーハンターであった筈の“彼”の主は、あろうことかイレギュラー側の将軍として、とある発電所の守備任務を上から命じられていた。
“彼”は主の命に従い、その発電所内の番犬として、侵入者を排除する役目を負うことになった。
それから命じられるままに幾百の侵入者を排除し続けた後、“彼”はその男に出会ってしまった。
………ル…ナイ………すたー……ハム…ウモ……………
B級のイレギュラーハンターに過ぎなかったその男は、知恵と勇気を振り絞り、“彼”を倒した。
しかし、“彼”は最期まで主の為に足掻き続けた。AIチップと少量のゲル状ボディだけになっても尚、その男に取り付き、先へ進ませまいと抵抗した。
だが、その命は無残にも事切れ、その後、“彼”の主はその男により破壊された。
……ユルサナイ……ますたーニ……アダナスモノ…
そして、現代。
オベールの手により復元された“彼”のプログラムは、冥海軍団が開発していた実験兵器に、多少のアレンジを加えられ、搭載された。
忠実な番犬として、救世主が護る最終国家を護るために。人類のためにその力は使われる筈だった。
“彼”が自分を思い出したのは、メラレーン湖での演習時。
迫り来るパンテオン部隊を視界に入れた時、“彼”はあの男を思い出した。
……ユルサナイ……ますたーニ…ハムカウモノ……
それは、“怨念”とでも呼ぶのが正しいのだろう。
“彼”はパンテオン達の姿に、かつて自分と対峙したあの男の影を重ねた。
そう。
“彼”のマスターに仇なし、刃向かった“あの男”。
決死の覚悟で挑めど、遂に倒せなかった“あの男”。
命を懸けた忠誠を、その手で打ち破った“あの男”。
イレギュラーハンター「ロックマンエックス」の影を見たのだ。
……ユルサナイ……ロックマンエックス………
……ユルサナイ……
何故、紅いイレギュラーであるゼロではなく、レヴィアタンを狙ったのか。
その理由は単純明快だ。
レヴィアタンのDNAデータとそれに伴う精神プログラムは、かの「ロックマンエックス」のものを参考に組み立てられていた。
“彼”は、彼女からそれらを“感じ取った”。
つまりは彼女を「ロックマンエックス」であると“思い込んだ”。
そして、かつて主に命じられた指令を遂行しようと“彼”は再び己の意志で動き出したのだ。
果たせなかった忠義を、今度こそ貫き通すために。
既に崩壊寸前の研究施設から微弱のエネルギーを吸収し終え、“彼”は日の出と共に動き始めた。
先ほどの必殺兵器はもう使うことはできないだろうが、今の戦闘力だけで十分だ。
真相をゼロ達が知る日が来ることはない。
誰にも知られることはない。
それでも、“彼”は与えられた任務をやり遂げるため、戦うのだ。
“彼”は感覚が告げるまま、陸へと上がる。
そして、朝焼けが大地を儚く照らす中、「ロックマンエックス」を探し始めるのだった。
ますたーハ恩…人ダ……
廃棄ラレ…テタ…オレ…ヲ…救ッテ…ク…レ…タ
ワタシ…ますた…ニ…忠誠…チカッ…タ……
キサマ…ヲ…ます…た……ノ…トコ……
…イ……カ…セ…ナ……イ……
………イカセナイ……
…ロックマン……エックス
……………イカセナイ
―――― 4 ――――
朝の日差しが二人を染める。
自己修復機能により、ある程度塞がった傷口を確かめると、レヴィアタンは立ち上がり、フロストジャベリンを握った。
「この地形を利用しましょう。ラドゥーンを地上に上げるわ」
辺りを囲む岩山を眺めながら、作戦を考える。
「奴が私を狙うというのなら、今度は私が囮になる」
「待て。傷の治りは……」
ゼロの言葉を、レヴィアタンの人差し指が遮る。
片目を瞑り、笑いながら「大丈夫よ」と答える。
「この程度の傷、問題ないわ。それよりアレを何とかしないことにはどうにもならないでしょ」
放っておけば、どんな被害をもたらすか分かったものではない。
増援を呼ぼうにも、犠牲が増えるだけならば、いっそ二人で仕留めてしまった方がいい。そう言う判断だ。
「これ以上、軍団の恥を晒すわけにもいかないし……。一つ協力してちょうだい、紅いイレギュラー」
「……上に立つ人間も、楽じゃないな」
これまでの失態を考えれば、他の軍団に協力を要請するわけにもいかない。無論、その失態のほとんどにゼロは関わっている。
また、妖将の立場として、今回ゼロと協力関係を築いているということも問題であるし、作戦に協力してくれた上に傷が癒えるまでそばに居てくれたゼロへの恩も無下にはできない。
レヴィアタンがそう言った複雑な事情と私情を抱えていることが分かるからこそ、ゼロもまた、この戦いから手を引く訳にはいかないのだ。
「ボレアスでも湖でも、借りが重なってるからな。必ず返してやる。だから、無茶だけはするなよ」
「フフフ……ありがと」
二人でエル・クラージュに跨る。そして、研究施設があった方面に向けて、ゼロはアクセルを回した。
登り始める朝日に、照らされる岩山。奇襲を警戒して、湖近くの道は通らぬようにした。
初めて乗ったエル・クラージュの速度に、レヴィアタンは振り落とされないよう、ゼロの身体にしがみつく。かと思うと急に、背中越しに笑い出した。
風の音を気にしたくなかったので、接触回線を通じて何事かと問いかける。
「どうした?」
「いえ…ね。思ったより男らしい背中で感心しただけよ」
「そりゃどういう意味だ」とゼロが顔をしかめる。レヴィアタンはそれに対し、またしても笑う。
「あなたこそ、こんなにグラマーな美女が後ろから抱きしめているのに、気にならないわけ?」
そう言って、わざとらしく強く抱きしめ、身体を押し当てる。だが、ゼロはさ程気にしないどころか、呆れたように溜息を漏らした。
「おふざけも、度が過ぎるとみっともないぜ?」
「ホント、思ったよりも真面目よね。……つまんない人」
レヴィアタンは不満気に口を尖らせる。
だが、その表情は何処か嬉しそうでもあった。無論、ゼロには見えなかった。
それからしばらく、背中越しにゼロの体温を感じながら、レヴィアタンは考える。そして不意に、先ほどまでとは打って変わった落ち着いた声で「ねえ」と呼びかける。
「……なんだか、こういうのいいわね」
「『こういうの』?」
「………恋人みたいじゃない?」
その問いに、ゼロは答えなかった。彼女が真剣に口にしていたということもあるが、きっと彼女の心の中には別の景色が浮かんでいるだろうと思ったから。
レヴィアタンもまた、答えを迫らなかった。理由は、言うまでもない。
そこからまた走り続ける内に、今度はおもむろにゼロが口を開く。
「考えてみたんだ」
「……何を?」
「どうして、ソイツが死んだのか」
“ソイツ”――――誰のことを指しているのか、レヴィアタンにはすぐに分かった。
昨日、ちょっとした気紛れから過去の話をしたことについて、レヴィアタンは少しだけ後悔し、うんざりしたような声を返す。
「……しつこいわよ。彼は身体が弱かったって……――――」
「ネオ・アルカディアの延命技術があれば、いくら身体が弱かろうが、願えばもう少し長生きができただろう」
あの“おじいさま”などは既に百数十という歳を重ねている。
オルジフも、治療を打ち切らなければ、もっと長く生きることができた筈だ。
「だが、ソイツは死を選んだ。“レベッカ”が傍にいるにも関わらず…だ」
「…………」
ゼロの指摘は間違いなく、正しい。
“レベッカ”の模造人形が傍にいたというのに、オルジフは生きることを選ばなかった。
過去も、記憶も、姿形も似せて作った完全な模造人形と共に生きる道を選ばなかった。
それは、何故か――――
「もしかして、ソイツは……――――」
言いかけた瞬間、ゼロの腰に回されたレヴィアタンの両腕が、言葉を遮るように強張ったのが分かった。
ゼロは言葉を飲み込む。明らかに、彼女は動揺している。まるで「聞きたくない」とでも言うように。
その様子に、ゼロは「まさか」と口を開く。
「……まさか、お前……――――……‥‥ッ!」
その刹那、二発のエネルギー弾が二人めがけて放たれた。
センサーが感じるまま、ゼロはハンドルを切り、なんとか躱しきる。彼自身の反応に対し、コンマ〇秒のズレもなく応えるエル・クラージュだからこそ避けられた。
レヴィアタンは咄嗟に弾の軌跡を追う。その先に敵の姿を確認した。
「どうやら……向こうから来てくれたようね」
一体の竜の化物が、獲物を睨むようにしてこちらを見ている。
どうやって感知したのか知れないが、ラドゥーンは陸に上がり、二人を見付け出したのだ。
「クソ……先手を取られるとはな」
「問題ないわ。岩陰に隠れて減速して。あくまでも作戦通り行くわよ」
冷静にそう言い放つ。ゼロはそれに従う。
ラドゥーンのエネルギー弾による射撃攻撃を掻い潜り、岩陰に隠れながら減速した。タイミングを見計らって、レヴィアタンが飛び降りる。受け身をとって立ち上がると、「よろしく頼むわよ」と声を掛け、岩山を軽い足取りで登った。
岩山の頂上にひらりと舞い立ち、ラドゥーンと顔を合わせる。憎悪のようなものが、ラドゥーンのコアから放たれているような感じがしてならない。
レヴィアタンは不敵な笑みを浮かべた。
「……あなたが、いったいどういうつもりなのかは知らないけど――――」
愛槍の切っ先をラドゥーンへと向け、大気中の水分を集める。昨日、ラドゥーンが大量の水を湖から外へまき散らしてくれたお陰で、調子は悪くない。
「――――簡単に負けてはあげないわ。……手加減は抜きよ!」
瞬間、氷結と共に放出。
凝縮された水分は氷の龍を形作り、ラドゥーンへ目掛けて一気に空中を駆け抜ける。
スピリット・オブ・ジ・オーシャン――――フロストジャベリンによる必殺攻撃。とは言え、水中や雨天時ほど大きさを確保出来なかった氷の龍は、ラドゥーンの硬質化した眉間に衝突すると共に、派手に砕け散った。
氷の破片に乱反射する朝日がラドゥーンの視覚を惑わす。それによりレヴィアタンの姿を見失った。かと思うと、四方からのビーム攻撃。スピリット・オブ・ジ・オーシャンを防ぐために硬質化した表面に直撃し、ラドゥーンは思わず怯む。
蝶が舞うように駆けまわるレヴィアタンを捉えようと、ラドゥーンのコアは周囲を見渡す。すると今度は、上空から無数の氷の塊が霰の如く降り注ぐ。ダメージになることはないが、目眩ましとしては十二分に効果を発揮した。
「残念ながら、私はあの“戦闘馬鹿”みたいな重たい一撃は持っていないのよね」
撹乱と一撃離脱。敵を惑わし、最後はその隙を突く。それこそが妖将レヴィアタンの戦闘スタイルである。
水分を再び集め、フロストジャベリンを一振り。今度は氷の輪を生成し、ラドゥーンへと投げ飛ばす。
これもまた圧倒的なダメージを与えられるような攻撃ではない。ラドゥーンのような相手に対しては尚更だ。しかし、それでも構わない。奴の注意が必要以上にこちらへ向いてくれるならば。
優先すべきは作戦の完遂なのだから。
砕け散る氷の破片に、再びレヴィアタンを見失う。
痺れを切らしたのか、ラドゥーンは身体を大きくうねらせ、周囲に尾を振り回す。硬質化した尾は囲んでいた岩山を砕き、破片を飛ばす。
岩の礫を躱しながら、レヴィアタンはラドゥーンの尾に対し、ビーム攻撃を絶えず浴びせた。その衝撃は、確実に内部の神経伝達用ナノマシンにダメージを与えてゆく。
しかし、そのようにして行動を制限することによって、ラドゥーンはレヴィアタンの姿を視界に捉える。そして牙を向け、猛烈な勢いで頭部から襲いかかった。
だが、それを見越していたのか、レヴィアタンが難なく躱してみせると、ラドゥーンの頭部は背後にあった岩に激しく突っ込んでいった。
巻き上がる砂埃の中、背後へ振り返る。すると、レヴィアタンはフロストジャベリンを天に向け、周囲にばら撒いていた水分を再び集めていた。今度は先程より遥かに巨大な水の塊が切っ先に出来上がりつつ有る。
初撃、氷の輪、そして氷塊を降らせる“マリンスノー”による攻撃は、全てこの一撃を即座に放つための布石だった。
「やっぱり本調子とは言えないけど………今はこれで十分。喰らいなさい!」
掛け声と共に、特大のスピリット・オブ・ジ・オーシャンが放たれる。そしてラドゥーンの頭部に直撃し、盛大な氷の破片を空中に撒き散らした。
刹那、視界を撹乱されたラドゥーンの隙を突き、紅い影が背後から飛びかかる。手にした刃は炎を纏っていた。
ゼロの剣技の一つ、断地炎。炎を纏った刃を下に向け、上空から敵を討つ。接地、接敵した瞬間に爆発を起こすことで追加ダメージを与えることが出来る。
硬質化した表面を弾けさせ、内部のコアへ刃を通す。ラドゥーンの性質を考えた末、ゼロはこの技こそが勝利の鍵となると判断した。
「これで終わりだ!」
言い放つと同時にゼットセイバーはラドゥーンの表面に直撃し、爆破。身体を形成していたゲルが見事に弾け飛ぶ。そして、微かだが、確かに露わになったコア部分へと、そのままゼットセイバーを突き刺した。――――筈だった。
「…… な っ !?」
ゼットセイバーの刃はそのまま元のゲル状に戻った身体に突き刺さる。コアとなっていたパンテオンヘッドは、流れるようにゲルの内部を移動し、ゼロの攻撃を躱したのだ。
爆発の衝撃により、後方からの敵を感知。追撃を予測し瞬発的に避けた。そもそも中枢となるコアが自在に動くという考えがなかったこと、事前情報以上の反応精度であったことが災いした。
「紅いイレギュラー! 離れて!」
レヴィアタンの叫びが届くよりも早く。ラドゥーンはゲルを棘上に変形させ、ゼロの身体を突き刺す。咄嗟に躱すも、腹部を貫かれ、そのまま身体から弾き落とされた。
彼の身を案じ、レヴィアタンは駆け寄ろうと地を蹴る。が、ラドゥーンがそれを許さない。あくまでもターゲットはレヴィアタン一人らしい。襲いかかる牙を既の所で躱す。
すると、パンテオンヘッドのカメラ部分と目が合う。気がつくと、いつの間にか牙の中心部分まで移動していたのだ。まるで、目玉のようにギョロリと見つめている。
「気色悪いものを!」
奥歯を噛み締め、フロストジャベリンを振り回す。硬質化した牙に刃が防がれる。
その後直ぐに、コア部分が今度は頭部まで移動する。そして、巨体を一気に凝縮させ、巨大な球体を形成する。
直径十数メートルの巨大な球体から四肢が生え、パンテオンヘッドはそのまま頭頂部に移動した。陸上での戦闘を考慮し、巨大な竜は、球体の魔神へと姿を変えたのだ。
その右腕が、レヴィアタン目掛けて振り抜かれる。咄嗟に飛び退くと、後ろの岩山が破壊され、瓦礫が周囲に飛び散った。
「もう一度……!」
フロストジャベリンに水分を集めようとしたその瞬間、ラドゥーンは体内に蓄積していたエネルギーを雷に変換し、体全体から放出した。
直ぐ傍にいたレヴィアタンは、その攻撃を直接受けてしまう。体中を雷が駆け巡り、全身の回路を焼き切るかのような激痛が走る。堪えきれず悲鳴を上げた。
それから攻撃が止んだ後に、周囲を見て絶句する。先ほどの雷により、撒き散らしていた水があらかた分解されてしまっていたのだ。フロストジャベリンによる攻撃は、もうそこまでの威力を発揮できないだろう。
「……万事休す…ね」
踏ん張りが利かず、そのまま倒れこむ。なんとか上体を片腕で支え、前を見る。審判を下す執行人のように、ラドゥーンは重たい足取りで近づいて来た。
「……いや……ここまで…か」
昨日の傷も痛み出し、もう立ち上がる気力もない。レヴィアタンは敗北を悟った。
彼女を睨むラドゥーンのコア部分。そこから滲み出る憎悪。
「ホント……あなたの“それ”は何処から来たのかしらね」
体を引きずり、岩山にもたれかかる。
ラドゥーンが抱える憎悪の正体。それが一体何処から来たのかは分からない。
しかし、己の死が迫る中、レヴィアタンはその以上な執着心に、自分を重ねた。
――――過去……か…
予測の範疇だが、おそらくマザーからサルベージしたプログラムの中に残っていた、過去のデータが影響していたのだろう。つまりは、今向けられているのは過去からの憎悪。
きっとラドゥーンの中にある“それ”もまた過去に縛られているのだ。そう感じ取った。
もう自分に抗う力はない。レヴィアタンは覚悟を決め、オルジフの顔を思い浮かべた。
「……やっと…あなたのところへ行けるわ」
思い出せぬ言葉も、自分自身の存在の意味も、過去への執着も……何もかもから解放される。
そう思えば、怖くはなかった。
振り上げられる拳。それを見つめ、思い出す。
――――今、行くわ……オルジフ…
そっと瞼を閉じ、豪腕が空を切る音を聞く。そしてレヴィアタンはこの世界に別れを告げた。
衝突音と、頬に当たる礫に、レヴィアタンは瞼を再び開く。
「………そっちに…逝ったところで……お前はソイツに……会えやしない」
紅いコートの背中が見える。身の丈を遥かに超える豪腕をゼロは正面から受け止めていた。
地面にめり込む足。先ほどの傷口から血液が噴き出る。それだけではない。あの拳をもろに受けたのだ。そのダメージは想像を絶するだろう。
レヴィアタンはしばらく状況が飲み込めず、口を開けたまま見つめる。
「ちょっと……何を……」
「……お前のことを……ソイツは待ってなんかいない」
レヴィアタンの心に、ゼロの言葉が突き刺さる。しかし、今はそんな話をしている場合ではない。
「……そんなこと言ってる場合じゃ――――……‥‥」
「 諦 め る の が 早 過 ぎ る っ て ん だ よ ぉ !!」
怒鳴り声をあげ、受け止める両腕に力を込める。そして、両腕のジェネレータをフル稼働させ、エネルギーを爆発的な速度で蓄積させてゆく。
「ちょっと…! そんなことしたら!」
オーバーヒートを引き起こし、四肢が弾け飛ぶに違いない。それほどの高速性だ。関節が軋む音が聞こえるような気がした。
しかし、ラドゥーンはそれを見過ごすつもりはない。いや、むしろそれを利用しようと考えた。
球体状の身体は形を変え、ゼロの身体を包み込んだ。全身から溢れ出るエネルギーを吸収するために。
「やめなさい! 紅いイレギュラー!!」
レヴィアタンの悲痛な叫び。だが、ゼロはジェネレータを稼働させ続ける。
既にアースクラッシュ数発分に匹敵する量のエネルギーを生産し、それでも尚、ラドゥーンが吸収する以上のエネルギーを増産し続けた。
体中を駆け巡る激痛の中、自身を奮い立たせるためか、勝利をもぎ取るためか。ラドゥーンの体内に包み込まれたゼロは、ジェネレーターの可動と共に雄叫びを上げ続けた。
突如、ラドゥーンのボディーに綻びが生じる。ゲルの欠片が破裂音と共に弾け飛び始めた。
一つ二つと、焼け焦げたように煙を上げながら。次々と、連続的に。その数は増えてゆく。
そして大地を揺るがすような爆発的な衝撃が、激しい閃光と共に内部で起こった。
瞬間、ラドゥーンの身体を形成していたゲルは粉々に砕け、その勢いのまま、光と共に上空へと撒き上げられた。まるで滝が勢いもそのまま、逆流してゆくかのように。
光りに包まれ、コアとなっていたパンテオンヘッドは消し飛んだ。その内に抱えた憎悪と、今尚忘れられぬ過去と共に。
それから、数秒後。空中に舞い上がった無数のゲルの破片がどしゃぶりの雨のように地面を叩き続けた。
―――― 5 ――――
呆然と座り込むレヴィアタンの前に、満身創痍の身体を引きずるようにしながらも、ゼロはなんとか戻ってきた。
降り注ぐゲルの破片に陽光がキラキラと美しく反射する。その輝きの中、ゼロはレヴィアタンの前に立つ。
あまりに無謀な戦法に絶句していたレヴィアタン。震える声で気遣う言葉を搾り出そうとする。
「あなた……なんて無茶を……」
「………ふざけるな…よ」
レヴィアタンに対し掠れた声で、ゼロは言う。
突然力なく崩れ落ちるゼロの身体。レヴィアタンは咄嗟にそれを支える。
だが、ゼロは彼女の肩を掴み、睨みつけ、叱咤した。
「……ちゃんと生きてもいない内に……諦めるんじゃない」
ラドゥーンの脅威を前に、レヴィアタンは敗北を悟り、死を覚悟した。いや、生きることを諦めた――――ゼロにはそう見えた。
事実、レヴィアタンは亡きオルジフのことを思い浮かべ、生きることを諦めた。彼の元に召されるのだと、信じた。
だが、ゼロは再び言い聞かせる。
「……お前が逝ったところで……ソイツは……待っちゃいない……」
既に限界を超えていた。ゼロは震える声で、言葉を搾り出していた。
その姿があまりにも痛々しく、レヴィアタンは「喋らないで」と止める。
「そんな話をしてる場合じゃないでしょ! 体の方は……」
「…お前…は……気づいて……いたんだろ……」
そのゼロの言葉に、思わず「ハッ」とする。
心の中を抉るようなその響きに、レヴィアタンは思わず体を震わせる。
その様子に気づいているのか、ゼロは厳しい口調で言葉を続ける。
「ソイツが…“分かっていた”ことに……気づいていたんだろ……」
「………めて…」
消え入るような声で、レヴィアタンは言う。
それから今度は、はっきりと聞こえるように。拒絶の言葉を吐く。
「……やめて…」
じっと見つめるゼロに、レヴィアタンは怯えるように叫ぶ。
「やめて……… そ ん な こ と 言 わ な い で !」
それ以上は聞きたくない。――――ゼロの言葉が真実であると分かっていた。だからこそ、拒絶する。その真実が自身の心を抉ることを知っているから。
だがゼロは残る力を振り絞り、彼女の肩を強く掴み、「ダメだ」と強く言う。
「それと……向き合わない限り………お前はこれからずっと……縛られたままだ……」
「構わないわよ! それでも!」
拒絶の言葉はまるで、悲鳴のようだった。
「彼のことに縛られて! “私”が何者なのか分からなくとも! それでも構わない! 私は、彼に……――――」
「それは……ソイツへの冒涜だ」
ゼロが言葉を吐く度に、それが心に突き刺さる。レヴィアタンは拒絶するように目を強くつぶり、吐き出すように叫ぶ。
「知ったようなことを――――」
「俺は愛する人をこの手で殺した」
彼女の言葉を遮るように、ゼロは殊更はっきりとした声で言う。
突然告げられた驚愕の告白に、レヴィアタンは言葉を失う。「愛する人を殺した」――――確かにそう言った。
「……俺は…それを覚えてる………。覚えてるのに……思い出せないんだ……」
苦しそうに、悔しそうに、ゼロは言葉を続ける。
「…愛したその人の…顔も…………名前も……思い出せないんだよ……」
夢の中で何度も出会った“彼女”。
記憶をなくしても尚、覚えている破壊者としての自分。その手にかけた“彼女”のこと。
失った過去が、心を蝕む。怨念のように。呪いのように。思い出せないからこそ、苦しい。
“彼女”だけじゃない。本当に多くのものを失くしてしまった。信じた友。部下。仲間。好敵手。思い出。約束。誓い。――――なにもかも、失くしてしまった。
「けれど……俺は…その過去から逃げたくはない。いつか……必ず思い出したい……向き合いたい……真正面から……受け止めたい……」
その日が来ることを、待ち望んでいる。願っている。
理由はただ一つ。
「俺は…“未来”が欲しい」
そう言ってから苦笑する。
「いや……そんな大層なもんじゃなくてもいい」と首を横に振り、言葉を続ける。
「せめて…“明日”が欲しい。俺は……“今日”の向こうにある“明日”が欲しい」
随分前に辿り着いた答え。それをずっと抱き続けて戦ってきた。
掴めないからこそ、欲しい。希望に満ちた“明日”が欲しい。「だけど」と、唇を噛む。
「“明日”は“今日”の連続だ。……“今”があるから……“未来”がある。そして………――――」
「……“今”もまた……“過去”から繋がっている……」
レヴィアタンの言葉に、ゼロは「そうだ」と頷く。
「だから俺は…“過去”を取り戻したい……“今”を生きるために……“未来”に繋がる“今”を生きるために…………俺は“過去”を背負って生きていきたいんだ……。そんな“過去”を……思い出したいんだ」
失った友との記憶も。部下や仲間のことも。
美しい思い出ばかりじゃない。分かっている。それでも欲しい。
苦しんだ戦いも。つらい真実も。遂に果たせなかった約束も。
愛してしまった“彼女”の名前も。殺してしまった“彼女”の顔も。最期に“彼女”と交わした言葉の一片も。
向き合いたい。そこに絶望があろうとも。
そこから目を背けて前に進もうというのなら、愛してくれた“彼女”への冒涜でしか無い。
そんな自分が“今”を生きられる筈がない。“明日”を、“未来”を掴める筈がない。
「……それなのに……お前はどうだ…」
肩を握る手に、さらに力を込める。
「向き合えるのに………覚えているのに…背を向けて………」
感じたのは確かな怒りだった。
自分がどれだけ望もうとも手に入れられないものを持ちながら、それから目を背けようとしている。
そんな彼女への怒りだった。
「過去に縛られた“つもり”になって…… 悲 劇 の ヒ ロ イ ン を 気 取 る の は い い 加 減 に し ろ ぉ ! ! 」
そう吠えた後、ゼロは力を失ったのか、肩を掴んでいた腕は地に落ち、頭から倒れ込む。それを、呆然としていたレヴィアタンの身体が支える形になった。
レヴィアタンはそれを気にすることなく、代わりに深く考え込んだ。
「……あなたの……言う通りよ」
やがて、沈黙の後にレヴィアタンは震える声を搾り出した。
「……私は……気づいていた……彼が“彼女”を愛していたことに………」
放心したように遠くを見つめながら、レヴィアタンは言う。
そう……“私”は分かっていた。彼が死ぬ瞬間に――――或いはもっと前から気づいていた。
彼は“彼女”を愛していた。
死んでからも尚、愛し続けた。
目の前の“模造人形”には目もくれず。
そこにいない“彼女”を愛していた。
「代わりでも良かった……」
“私”の中にいる“彼女”を愛してくれているなら。
『それは“私”だ』って
『“彼女”としてでも“私”を見てくれていたんだ』って
そう思えた。
けれど、真実は違った。
彼は既に見ていなかった。
“私”の中に“彼女”を。
――――いや、違う。
もういなかったのだ。
“私”の中に……彼が愛した“彼女”はいなかったのだ。
あの日、彼が最期に紡いだ言葉を、何故思い出せないのか。
それは、その言葉こそ彼の想いの真実を現していたから。
だから“私”は記憶の底に閉じ込めて蓋をした。
『“彼女”としてでも、彼は“私”を愛してくれた』――――そんな過去が欲しかった。
そんな過去を壊したくなかった。
そう……。
あの日、彼が最期に紡いだ言葉は。
共に見せてくれた笑顔は。
それらを向けた相手は…――――……
「“レベッカ”で良かったのよ……最期まで…」
愛してくれているのなら。
だけど、彼が最期にかけた言葉と笑顔は、“レベッカ”に向けたものではなかった。――――しかし、だからこそ認めたくなかった。
「……教えて…紅いイレギュラー………」
肩にもたれかかるゼロへと問いかける。
「……“私”は…どうすればいいの…?」
どうすれば受け入れられるの?
どうすれば認められるの?
どうすれば向き合えるの?
――――そんな彼女の問いに対し、暫くの静寂の後、搾り出すような掠れた声が答える。
「…俺達は……レプリロイドだ……」
生物を模して作られた擬似生命体。プログラムにただ従い、忠実に動く機械人形ではない。
自分で思考し、選択し、生き方を選ぶことができる。――――感情を持った“レプリロイド”だ。
「誰かを…想うことも…愛することも………憎むことも…恨むことも………そして…」
「ぐっ」と息を飲む。それから優しい声で囁くように言葉を続けた。
「――――そして……赦すことも…出来る筈だ……」
『赦す』――――その言葉が耳に染み込んだ瞬間。
心を覆う雲が引き潮のように流れてゆくのを感じる。光が漏れ出すのを感じる。
そして、心の底から蘇る――――
あの日、最期に彼が紡いでくれた言葉
“私”に向けてくれた、あの笑顔と共に
“私”にかけてくれた、最期の言葉
それは――――………‥‥‥
「………………………」
既にゲルの雨は止んでいた。
照らす太陽は地上に落ちたゲルに反射して、眩しく輝く。
まるで宝石を散りばめたように。
もたれかかるゼロの身体もそのままに、レヴィアタンはずっと遠くの方まで、ぼんやりと空を眺めていた。
どこまでも青く広がる優しい空を。
いつまでも、一人で見つめていた。
―――― 6 ――――
「本当にいいのか?」
「餞別よ。あなたのおかげでアレも倒せたことだし」
レヴィアタンはそう言って笑うが、後方に控えていた部下は苦い顔をしていた。
ネオ・アルカディアの最新技術が詰まったエル・クラージュを敵に明け渡そうというのだ。他の軍団や元老院に知れれば、レヴィアタンだけでなく冥海軍団全体が危機に晒されるだろう。
だが、それを恐れる以上に、レヴィアタンはゼロに対し恩を感じていた。それを示したかった。
ラドゥーンを倒した後、レヴィアタンの救助用ビーコンを頼りに、冥海軍団の救援が現れた。
傷だらけのゼロは彼らに保護され、治療を施されてなんとか一日で復帰することができた。
「まあ……これで貸し借りなしってことで。文句はないでしょ?」
「オーライ。そういうことにしといてやる」
呆れたように笑いながら、ゼロは答えた。
「……もう、大丈夫か?」
「あら、優しい。心配してくれるのね」
レヴィアタンはこれまでと変わりないように振舞っている。だが、真実を受け止めたばかりで内心はどうなのか。ゼロは些か以上に気にしていた。だが、レヴィアタンは「大丈夫よ」と苦笑じみてはいるが、明るく答える。
「ただの“ちょっと遅い失恋”だもの。女らしく、新しい恋に生きるわ」
「……そいつは何よりだ」
それからレヴィアタンは「ん~」と人差し指を自分の頬に当て、わざとらしく考えてみせる。それから、おもむろに歩み出し、ゼロの傍へと近寄る。そして何を思ったのか、両腕をゼロの背中に回して抱きしめた。
突然の行動にゼロも含め周囲は皆、状況が理解できなかった。しかし、彼女が周囲の目を気にする様子はない。寧ろ、それだけでなく――――
「……っ!」
ゼロの首筋にそっとキスをした。数秒ほど優しく押し付けられた柔らかい唇。その感触が、温もりと共に残る。
開いた口がふさがらないままの部下達を尻目に、今度は耳元へその口を近づける。そして艶かしく囁く。
「この首はいずれ私が頂くから……覚悟なさい、ゼロ」
「………本当に…なんて将軍だよ」
首を竦めるゼロに、レヴィアタンは「フフフ♪」と嬉しそうに微笑んだ。
それからエル・クラージュと共に去りゆくゼロの背中をじっと見つめる。
後ろから部下が慌てたように駆け寄る。
「本当にいいのですか、妖将様!」
「なにが?」
「あの紅いイレギュラーですよ!? 奴を野放しにしてしまっては――――……」
「しつこい」
そう言って、彼の額を指で弾く。そして、小馬鹿にしたように笑った。
その部下は額を抑え、苦い顔をする。
「……笑っている場合じゃありませんよ……これは明らかな――――」
「“裏切り”でしょうね。言いたければ上に言いなさい。私は甘んじて罰を受けるわ」
「そう言う問題ではありません」と喚き散らす部下の声を無視し、再び振り返る。もうずいぶん遠くまで行ってしまった。けれど、その紅い背中をハッキリと覚えている。
過去と向き合う勇気をくれた人。
いつかまた会う日を思い、期待する。どのような形でその時が訪れるのか。その“未来”はどんなものなのだろうか。
“明日”がこれほどまでに待ち遠しく感じられるのは初めてだ。
「……ありがとう。必ずまた会いましょう、ゼロ」
荒野の果てを見つめながら、呟くようにそう言った。
そしてまた、彼もいつか記憶を取り戻せるようにと、レヴィアタンは静かに願った。
―――― * * * ――――
「ごめんね……ダーリン……」
エル・クラージュのコアユニットからしょぼくれた声が聞こえる。その主はレルピィだった。
「なにが?」
「『なにが』……って私のためにいろいろ苦労かけさせちゃったでしょ……」
敵により封印されてしまったことを、正直申し訳なく思っていた。とは言え、仕方のない事だったとゼロは笑う。
「なに、問題ないさ。結局はこうして全て丸く収まって…おまけにこんな物まで手に入ったしな」
そう言って、エル・クラージュの車体を優しく叩く。
ふとゼロは気づく。そう言えば、レルピィも先ほどのレヴィアタンとの遣り取りを見ていた筈だ。いつもの彼女ならば、即座に飛んで耳元で喚き散らしていただろう。それをしなかったのは、そうした「申し訳ない」という思いが理由だったのかもしれない。
自分が人質のように扱われたことで、反省しているようだ。
「もし、そうなら」と考え、ゼロは溜息を吐いた。
「あのな、レルピィ」
「………何?」
半ば呆れたような声で名を呼ばれ、おそるおそる問い返す。
だが、ゼロは優しい声で諭すように言う。
「お前が俺にとって必要だからこそ、俺は見捨てなかったんだ。お前はそれに対して感謝してもいいが、見当違いな反省なんかするなよ。そんなことされちゃ、毎度毎度助けてもらってる俺は、頭が上がらないっての」
「……ダーリン………」
「いつも通りのお前でいてくれよ。一日いなかっただけで、だいぶ調子が狂ったんだぜ?」
そう言って明るく笑いかけるゼロ。レルピィはその言葉に、心の奥がじんと温まるのを感じた。
そして、気を取り直したのか、一際明るい声を返す。
「うん……ありがとう、ダーリン! やっぱり愛してるぅ!」
そう言ってエル・クラージュを更に加速させる。
慌てて、振り落とされないようにハンドルを握るゼロ。だが、それにも構わず、レルピィは加速した。異常なほどの加速力で。
「ぬぉっ……ちょっ待て! 待てって!」
「――――そんなわけで私と言う者がいることだし! あんな女に二度と誑かされないでよね!」
「お前っ!? ……なんだかんだで怒って…んのか……って! ……ちょぉ!?」
嬉しさからか、嫉妬心からか。危なっかしく蛇行しながら進んでゆくレルピィ。
舞い上がる砂埃と、風を切る轟音の中、ゼロは情けない声を上げながら必死にしがみつくだけで精一杯だった。
……ええ、間違いないわ
“私”の気持ちは本物よ
彼を愛する想いも
焦がれる想いも
慕う想いも
人の手により生まれた存在
だけど
この感情は
組み込まれたプログラム以上に
――――厄介だわ
NEXT STAGE
デンジャラス・デイ