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No.33886の一覧
[0] 【ゼロ魔×封神演義】雪風と風の旅人[サイ・ナミカタ](2018/06/17 01:43)
[1] 【召喚事故、発生】~プロローグ~ 風の旅人、雪風と出会う事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 02:00)
[2] 【歴史の分岐点】第1話 雪風、使い魔を得るの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:52)
[3]    第2話 軍師、新たなる伝説と邂逅す[サイ・ナミカタ](2014/06/30 22:50)
[4]    第3話 軍師、異界の修行を見るの事[サイ・ナミカタ](2014/07/01 00:53)
[5]    第4話 動き出す歴史[サイ・ナミカタ](2014/07/01 00:54)
[6]    第5話 軍師、零と伝説に策を授けるの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:55)
[7] 【つかの間の平和】第6話 軍師の平和な学院生活[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:00)
[8]    第7話 伝説、嵐を巻き起こすの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:57)
[9] 【始まりの終わり】第8話 土くれ、学舎にて強襲す[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:58)
[10]    第9話 軍師、座して機を待つの事[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:07)
[11]    第10話 伝説と零、己の一端を知るの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:59)
[12]    第11話 黒幕達、地下と地上にて暗躍す[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:09)
[13] 【風の分岐】第12話 雪風は霧中を征き、軍師は炎を視る[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:09)
[14]    第13話 軍師、北花壇の主と相対す[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:03)
[15]    第14話 老戦士に幕は降り[サイ・ナミカタ](2013/03/24 19:47)
[16] 【導なき道より来たる者】第15話 閉じられた輪、その中で[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:05)
[17]    第16話 軍師、異界の始祖に誓う事[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:13)
[18]    第17話 巡る糸と、廻る光[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:13)
[19]    第18話 偶然と事故、その先で生まれし風[サイ・ナミカタ](2012/08/07 22:08)
[20] 【交わりし道が生んだ奇跡】第19話 伝説、新たな名を授かるの事[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:13)
[21]    第20話 最高 対 最強[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:06)
[22]    第21話 雪風、軍師へと挑むの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:07)
[23] 【宮中孤軍】第22話 鏡の国の姫君と掛け違いし者たち[サイ・ナミカタ](2012/08/02 23:25)
[24]    第23話 女王たるべき者への目覚め[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:16)
[25]    第24話 六芒星の風の顕現、そして伝説へ[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:17)
[26]    第25話 放置による代償、その果てに[サイ・ナミカタ](2012/10/06 15:34)
[27] 【過去視による弁済法】第26話 雪風、始まりの夢を見るの事[サイ・ナミカタ](2012/08/04 00:44)
[28]    第27話 雪風、幻夢の中に探すの事[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:18)
[29] 【継がれし血脈の絆】第28話 風と炎の前夜祭[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:19)
[30]    第29話 勇者と魔王の誕生祭[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:20)
[31]    第30話 研究者たちの晩餐会[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:20)
[32]    第31話 参加者たちの後夜祭[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:00)
[33] 【水精霊への誓い】第32話 仲間達、水精霊として集うの事[サイ・ナミカタ](2012/08/14 21:33)
[34]    第33話 伝説、剣を掲げ誓うの事[サイ・ナミカタ](2012/08/18 00:02)
[35]    第34話 水精霊団、暗号名を検討するの事[サイ・ナミカタ](2012/08/18 00:03)
[36] 【狂王、世界盤を造る】第35話 交差する歴史の大いなる胎動[サイ・ナミカタ](2012/08/18 00:05)
[37]    第36話 軍師と雪風、鎖にて囚われるの事[サイ・ナミカタ](2012/11/04 22:01)
[38] 【最初の冒険】第37話 団長は葛藤し、軍師は教導す[サイ・ナミカタ](2012/08/19 11:29)
[39]    第38話 水精霊団、廃村にて奮闘するの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:31)
[40]    第39話 雪風と軍師と時をかける妖精[サイ・ナミカタ](2013/04/20 22:17)
[41] 【現在重なる過去】第40話 伝説、大空のサムライに誓う事[サイ・ナミカタ](2013/04/20 22:18)
[42]    第41話 軍師、はじまりを語るの事[サイ・ナミカタ](2012/08/25 22:04)
[43]    第42話 最初の五人、夢に集いて語るの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:38)
[44]    第43話 微熱は取り纏め、炎蛇は分析す[サイ・ナミカタ](2014/06/29 14:41)
[45]    第44話 伝説、大空を飛ぶの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:43)
[46] 【限界大戦】第45話 輪の内に集いし者たち[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:47)
[47]    第46話 祝賀と再会と狂乱の宴[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:47)
[48]    第47話 炎の勇者と閃光が巻き起こす風[サイ・ナミカタ](2012/09/12 01:23)
[49]    第48話 ふたつの風と越えるべき壁[サイ・ナミカタ](2012/09/16 22:04)
[50]    第49話 烈風と軍師の邂逅、その序曲[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:00)
[51] 【伝説と神話の戦い】第50話 軍師 対 烈風 -INTO THE TORNADO-[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:01)
[52]    第51話 軍師 対 烈風 -INTERMISSION-[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:54)
[53]    第52話 軍師 対 烈風 -BATTLE OVER-[サイ・ナミカタ](2012/09/22 22:20)
[54]    第53話 歴史の重圧 -REVOLUTION START-[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:01)
[55] 【それぞれの選択】第54話 学者達、新たな道を見出すの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 20:01)
[56]    第55話 時の流れの中を歩む者たち[サイ・ナミカタ](2012/10/08 20:04)
[57]    第56話 雪風と人形、夢幻の中で邂逅するの事[サイ・ナミカタ](2012/10/28 13:29)
[58]    第57話 雪風、物語の外に見出すの事[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:40)
[59]    第58話 雪風、古き道を知り立ちすくむ事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:02)
[60] 【指輪易姓革命START】第59話 理解不理解、盤上の世界[サイ・ナミカタ](2012/10/20 02:37)
[61]    第60話 成り終えし者と始まる者[サイ・ナミカタ](2012/10/20 00:08)
[62]    第61話 新たな伝説枢軸の始まり[サイ・ナミカタ](2012/10/20 13:54)
[63]    第62話 空の王権の滑落と水の王権の継承[サイ・ナミカタ](2012/10/25 23:26)
[64] 【新たなる風の予兆】第63話 軍師、未来を見据え動くの事[サイ・ナミカタ](2012/10/28 21:05)
[65]    第64話 若人の悩みと先達の思惑[サイ・ナミカタ](2012/10/28 20:01)
[66]    第65話 雪風と軍師と騎士団長[サイ・ナミカタ](2012/10/28 20:58)
[67]    第66話 古兵と鏡姫と暗殺者[サイ・ナミカタ](2013/03/24 20:00)
[68]    第67話 策謀家、過去を顧みて鎮めるの事[サイ・ナミカタ](2012/11/18 12:08)
[69] 【火炎と大地の狂想曲】第68話 微熱、燃え上がる炎を纏うの事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:02)
[70]    第69話 雪風、その資質を示すの事[サイ・ナミカタ](2013/01/26 21:14)
[71]    第70話 軍師は外へと誘い、雪風は内へ誓う事[サイ・ナミカタ](2013/01/26 21:10)
[72]    第71話 女史、輪の内に思いを馳せるの事[サイ・ナミカタ](2013/01/26 21:11)
[73] 【異界に立てられし道標】第72話 灰を被るは激流、泥埋もれしは鳥の骨[サイ・ナミカタ](2013/01/27 23:01)
[74]    第73話 険しき旅路と、その先に在る光[サイ・ナミカタ](2013/01/27 23:01)
[75]    第74話 水精霊団、竜に乗り南征するの事[サイ・ナミカタ](2013/02/17 23:48)
[76]    第75話 教師たち、空の星を見て思う事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:03)
[77] 【今此所に在る理由】第76話 伝説と零、月明かりの下で惑う事[サイ・ナミカタ](2013/04/13 23:29)
[78]    第77話 水精霊団、黒船と邂逅するの事[サイ・ナミカタ](2013/03/17 20:06)
[79]    第78話 軍師と王子と大陸に吹く風[サイ・ナミカタ](2013/03/13 00:53)
[80]    第79話 王子と伝説と仕掛けられた罠[サイ・ナミカタ](2013/03/23 20:15)
[81]    第80話 其処に顕在せし罪と罰[サイ・ナミカタ](2013/03/24 19:49)
[82] 【それぞれの現在・過去・未来】第81話 帰還、ひとつの終わりと新たなる始まり[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:03)
[83]    第82話 眠りし炎、新たな道を切り開くの事[サイ・ナミカタ](2013/04/20 22:19)
[84]    第83話 偉大なる魔道士、異界の技に触れるの事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 01:55)
[85]    第84話 伝説、交差せし扉を開くの事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 01:54)
[86]    第85話 そして伝説は始まった(改)[サイ・ナミカタ](2018/06/17 01:42)
[87] 【風吹く夜に、水の誓いを】第86話 伝説、星の海で叫ぶの事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 02:12)
[88]    第87話 避けえぬ戦争の烽火[サイ・ナミカタ](2013/06/13 01:58)
[89]    第88話 白百合の開花と背負うべき者の覚悟[サイ・ナミカタ](2013/07/07 20:59)
[90]    第89話 ユグドラシル戦役 ―イントロダクション―[サイ・ナミカタ](2013/09/22 01:01)
[91]    第90話 ユグドラシル戦役 ―閃光・爆音・そして―[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:04)
[92]    第91話 ユグドラシル戦役 ―終結―[サイ・ナミカタ](2014/05/11 23:56)
[93] 【ガリア王家の家庭の事情】第92話 雪風、潮風により導かれるの事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 20:19)
[94]    第93話 鏡の国の姫君、踊る人形を欲するの事[サイ・ナミカタ](2014/06/13 23:44)
[95]    第94話 賭博場の攻防 ―神経衰弱―[サイ・ナミカタ](2014/07/01 09:39)
[96]    第95話 鏡姫、闇の中へ続く道を見出すの事[サイ・ナミカタ](2015/07/12 23:00)
[97]    第96話 嵐と共に……[サイ・ナミカタ](2015/07/20 23:54)
[98]    第97話 交差する杖に垂れし毒 - BRAIN CONTROL -[サイ・ナミカタ](2016/09/25 21:09)
[99]    第98話 虚無の証明 - BLACK BOX -[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:42)
[100] 【王女の選択】第99話 伝説、不死鳥と共に起つの事[サイ・ナミカタ](2017/01/08 02:09)
[101]    第100話 鏡と氷のゼルプスト[サイ・ナミカタ](2017/01/08 02:14)
[102]    第101話 最初の人[サイ・ナミカタ](2017/01/08 17:42)
[103]    第102話 始祖と雪風と鏡姫[サイ・ナミカタ](2017/01/22 23:14)
[104]    第103話 六千年の妄執-悪魔の因子-[サイ・ナミカタ](2017/02/16 23:00)
[105] 【王政府攻略】第104話 王族たちの憂鬱[サイ・ナミカタ](2017/03/06 22:52)
[106]    第105話 王女たちの懊悩[サイ・ナミカタ](2017/03/28 23:10)
[107]    第106話 聖職者たちの明暗[サイ・ナミカタ](2017/05/20 17:54)
[108] 【追憶の夢迷宮】第107話 伝説と零、異郷の地に惑うの事[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:46)
[109]    第108話 風の妖精と始まりの魔法使い[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:47)
[110]    第109話 始祖と零と約束の大地[サイ・ナミカタ](2017/06/09 00:54)
[111]    第110話 崩れ去る虚飾、進み始めた時代[サイ・ナミカタ](2017/10/28 06:35)
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[33886] 【召喚事故、発生】~プロローグ~ 風の旅人、雪風と出会う事
Name: サイ・ナミカタ◆e661ea84 ID:d8504b8d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/06/13 02:00
 ――少女は、絶望していた。

 春の使い魔召喚の儀。それは神聖にして絶対のもの。生涯の『パートナー』たりえる存在を呼び出し、それが持つ性質を見て、進むべき専門課程を決定する――いわば今後の進路を左右する大切な場で真の名前を用いなかった、その報いがコレなのか。この世界の『始祖』は、どこまでわたしに試練を与えれば気が済むのだろう。


 ――彼は、困惑していた。目に映る……今の自分を取り巻く環境に。

 抜けるような青い空と、広く豊かな草原。それはいい。周囲にいるまだ子供といってもよい年齢の人間たちと、見たこともない妖(あやかし)ども。そして己の目の前に立つ、氷のような瞳の内に深く暗い絶望の色を宿す青い髪の少女についても、まあ後で考えればいいだろう。だが……。

「何故に、わしだけがここにおるのかのう……」

 ……しかし、その疑問に答えてくれる者はなく。

「おいおい、雪風のタバサが平民を呼び出したぞ!」

「まさか、召喚に失敗したのか?」

「彼女はトライアングルだよ? ありえないだろ。ゼロのルイズならともかく」

「ちょっと! わたしならってどういう意味よ!!」

 自身以上に困惑した声が響くのみであった。が、ほんの少しだけ状況を判断するに足る発言があったのは確かである。

 まずひとつ。彼らに『雪風のタバサ』と呼ばれている者が、自分をこの地へ連れてきたのであろうということ。

 ふたつ。その際に、何らかの手違いがあり――何故か、自分『だけ』がここへ引き寄せられてしまったのであろうということ。

 そして最後に。目の前にいる、小柄で痩せた少女こそが『雪風のタバサ』。つまり、自分をこのような状態にした本人であろうということ。

 だが、推測のみで判断すべきことではない。まずは、この異常事態を生み出した原因と思われる者に確認を取るべきだろう。そう判断し、彼は口を開いた。


 ――男性は、狼狽していた。

 毎年春……フェオの月に行われる<使い魔召喚の儀>。それは、このトリステイン国立魔法学院において、2年生へと進級するために必要な試験にして、神聖な儀式である。男性――この儀式における、監督責任者『炎蛇』のコルベールの記憶においても、また、過去の歴史を鑑みてもありえない『事故』を目の前に、彼は激しく混乱してしまった。

 この事故を起こした少女は、非常に優秀な生徒である。そんな彼女が、まさか取り扱いの簡単な汎用魔法のひとつである<サモン・サーヴァント>を失敗することなどありえない。いや、実際失敗ではないのだろう、なにせ『呼ばれた者』が目の前にいるのだから。

 では、いったい何をして彼をここまで困惑させているのか。それは<召喚>された者が人間だということだ。<サモン・サーヴァント>は、使い魔をこの世界の何処かから呼び出す魔法。しかし、人間が呼び出された例など過去にない。

 それだけならばまだいい……いや、よくはないのだが。タバサの前にいる少年――年の頃は、おそらく15~6といったところであろう彼の服装は、あきらかに自国の民が身に着けるようなものではなかった。純白の布を頭に巻き、橙色の――国内では見たこともない造形の胴衣を着ており、さらには濃紺のローブ、ともマントとも言えるような、これまた不可思議な造りの外套を身に纏っている。

 周囲にいる生徒達は呼び出された少年をひと目見ただけで『平民』と断じてしまったようだが、それは彼が『杖』を手に持っていない、ただそれだけの理由だろう。だが、コルベールの目から見るに、少なくともただの平民ではないように思えたのだ。もしも呼ばれたかの少年が異国の貴族であったなら、最悪国際問題に発展しかねない。

 それに。今のところ、かの少年に敵意――周囲の者たちに対し、何らかの抵抗をしようといった雰囲気はない。しかし、状況の推移によってはどうなるかわからない。だから、コルベールは事態に介入すべく動いた。


 ――少年は、少女に問うた。

「雪風のタバサ……と、申したか? わしをこの地へ呼び出したのは、おぬしで間違いないかの?」

 少女は少年の声を聞き、コクリ……と、小さく頭を縦に振った。

 頭痛がする。おそらくは、自分だけが強制的に引っ張り出されたせいだろう。頭を振りながら、少年はさらに質問を続けた。

「なるほど。で、いかなる理由でわしを……」

 ――が、その言葉は最後まで紡がれることなく、他の声に遮られた。

「お話中のところ申し訳ありません……私はジャン・コルベール。二つ名は『炎蛇』。このトリステイン魔法学院で教師を務めている者です。ミスタ、えー、大変失礼ですが、お名前を伺ってよろしいでしょうか?」

 真っ黒な長衣に木の棒を持った、年齢の割に頭髪のやや寂しげな男が声をかけてきた。おそらく、この場の責任者的存在なのであろう。少年は、そう判断し――改めて『観察』を始めた。

 この人物は、周りにいる子供達と異なり、柔らかな空気を醸し出してはいるものの……それ以外の全て――たとえば移動のための動作ひとつとっても全く隙がない上に、さらに周囲の者たちに一切それを悟らせていない。この者に、武術の心得があるのは間違いなさそうだ。それも、ほぼ確実に実戦の経験がある。

 今のところ、彼らに敵意はないようだが……『半身』から引き剥がされ、見知らぬ土地へ連れてこられた今、自分にどれほどのことが可能なのか判断がつかない。ならば、こちらから攻撃を仕掛けたりするのは愚の骨頂であろう。まずは、情報を集めることから始めなければならぬ。瞬きするほどの間で、そこまで検討を行うに至った少年は、大人しく問いかけに答えることにした。

 名前……か。いくつかの名を持つ自分だが、今この状態で名乗るのならば、これが最も適切であろう。


「わしの名は『太公望』呂望(たいこうぼう・りょぼう)。太公望と呼ぶがよい」


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