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No.31826の一覧
[0] アーマード・コア4 Tower of Raven(完結)[小薮譲治](2012/04/29 03:01)
[1] Tower of Raven Chapter One: Tower of London ravens are lost or fly away(前編)[小薮譲治](2012/03/09 19:46)
[2] Tower of Raven Chapter One: Tower of London ravens are lost or fly away(後編)[小薮譲治](2012/03/09 19:51)
[3] Tower of Raven Chapter Two:A Pocket Full of Rye(前編)[小薮譲治](2012/03/10 12:37)
[4] Tower of Raven Chapter Two:A Pocket Full of Rye(後編)[小薮譲治](2012/03/15 02:09)
[5] Tower of Raven Chapter Final:Marche au supplice[小薮譲治](2012/04/29 03:00)
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[31826] Tower of Raven Chapter Two:A Pocket Full of Rye(後編)
Name: 小薮譲治◆caea31fe ID:dfd83558 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/15 02:09
「俺は……粗製なんかじゃねぇ!GAのリンクス、ローディーだ!」

 発砲。勢いよく撃ち出された弾丸が敵の背に命中し、左肩の装甲と、フレア発射機を破壊し、残っていたフレアが燃え上がり、機を白く照らす。

 ふ、ふ、と荒く息を吐く。敵はこちらに向きなおり、ライフルを構え、後退しながら発砲。幾度もプライマルアーマーを貫通し、装甲に穴をうがつが、知ったことではない。

 左のミサイルを射出。当然かわされるが、タイミングをずらし、右のミサイルを発砲。即座にFCSをたたき落とし、さらに両腕のバズーカを発砲。予測される反撃に備え、バックブースタを即座にふかし距離を離す。
着地する寸前にサイドブースタを放出して、グレネードを回避する。爆炎が煉瓦色の機を、血のような赤に見せた。

 ローディーは血をコクピットにはき散らし、内部に備え付けられたモニタを真っ赤に染めるが、関係ない。敵は、かつてないほどクリアに見えている。

 左肩のミサイルを発射。だが、それを発射したとたんに迎撃され、左腕、頭部の装甲をずたずたに引き裂き、カメラの映像が乱れる。

「なかなかやる」

 笑い声。耳障りな笑い声。打ち消すために、再び両腕のバズーカを発砲。左腕が破裂し、コアの整波装置を破壊し、そこから大量のコジマ粒子が吹きあがる。
まるで噴煙のようだ。
 敵の頭部の装甲を吹き飛ばし、赤い複眼がぶわ、と一瞬波打つ。流血したかのよう。

「だが。……惜しいな」

 頭部に何かが突き刺さり、なにも見えなくなる。目を発作的に押さえ、悲鳴を血とともにはき散らす。くそ、カメラがやられた。

 レーダーが、ごく近傍に敵がいると知らせる。撃て、となにものかに命じられるまま、バズーカを発砲。

 腕が、砲口から戻ってくる爆炎でめくれあがり、装甲を破砕し、残存する弾薬に引火して吹き飛んだ。だが。

「ざまあ……みやがれ……!」

 この位置なら、コアに命中したはずだ。いや、命中しないはずはない。
相棒が、フィードバックが「教えて」くれている。敵はそこだ、と。俺をもっと使いこなしてくれ、と。相棒が訴えている。

「GAのリンクス。……いや、ローディー。お前はよくやった。だが、お別れだ」

 畜生、こんなところで終わるのか、せっかく、フィードバックとようやく一つになれたというのに。こんな、ところで。

 しかし、身構えているにもかかわらず、敵が、シュープリスが離れて行くのも同時にわかった。
しとめなくては、しとめなくては。そう考えて機を前進させようとするが、がくり、と膝をつく。いや、膝をついたのではない、膝から、脚部が折れたのだ。

 オリジナルのNo.1に、ともかくも肉薄したのだ。生きている理由はわからなかったが、しかし、彼は自称でも他称でも「粗製」と称されなくなる端緒をつかんだ。
 のちに、彼はこう呼ばれる。立志伝中の英雄と。嘲笑されていた男は、ハイピッチな恐怖の叫びを聞く側に変わったのだ。



「撤退しろ、だと?」

 噴煙をあげるローディーの搭乗機を振り返り、ここで始末をしてしまった方がいい、と訴えるリンクスとしての本能を振り切り、オーバードブーストを起動。

「そうだ、ベルリオーズ。そいつを殺してしまえば、取り返しがつかなくなる」

「……わからないでもない。通信をモニターしていた限りでは、本来ノーマルのみが狙いだったようだが」

「その通りだ。GAの作戦立案者は、おそらくこちらに対して脅しをかけるだけのつもりだったはずだ。今頃青くなってるだろうよ」

「こちらの首脳陣も、か」

「当たり前だ。いかにGAがリンクスをあまり抱えていないといっても、その後ろにいるオーメルとローゼンタールは違う……なんだ?」

 通信が切れる。それと同時に、オーバードブーストをカットしてから、速度が落ちきったのを確認し、コジマ粒子の散布をやめ、通常のブースターを使って巡航する。

「どうした、なにがあった」

「……畜生、オーメルのくそユダヤの豚どもめ、BFFの……」

「BFFがどうした。オーメルが嫌いだからって、ユダヤの豚呼ばわりは……」

「そんなもので足りるか! くそ、信じられん……オーメルとローゼンタールの脳足りんどもめ、とんでもないことをしやがった!」

 機を、停止させる。まさか。

「まさか、BFFの本社をやったというのか」

「大当たりだ。クソッ、おまえの言ったとおりだ、アナトリアの時代遅れは殺しておくべきだったよ! なんてやつだ。とんでもない奴だ。もう世界は終わりだ!」

 オーバードブーストを起動しようとして、手を、戻す。

 大変なことになった。管理経済戦争は、もう、終わるだろう。レイレナードは、理性の蓋を吹き飛ばすしかなくなってしまった。
通常兵力をBFFに依存していたレイレナードには、もう道は一つしか、なくなってしまったのだ。

 すなわち、リンクスとネクストを投入し、すべてを破壊する、ということだ。

 歴史には、いくつもの転換点が存在する。ただ一人で歴史を変えたものなど、そうはいない。
意志と志向は一人の物であっても、それを実行するのは、多くの有象無象だ。

 だが、彼、レイヴンは違う。

 かつての敵の機体と同じく、流線型をしたレイレナードの標準機に、ブレードとライフル、グレネードランチャーにミサイルを持たせた機をオーバードブーストで巡航させつつ、空母、戦艦、巡洋艦、駆逐艦、ありとあらゆる艦が悪意をこめ、発砲を続けているのをみる。
だが、それらすべては無意味だ。

 ただ、一つ、ただ一つの艦こそが、彼の目が捜し求めているものだ。優美な船、戦場に似つかわしくないそれを、だ。

 そう、その名も、BFF本社「クイーンズランス」という。
豪華客船であり、BFFが簒奪したイングランドの女王の槍、という皮肉な名を持ち、その皮肉がゆえに使われている船だ。

 邪魔くさい空母にグレネードをたたき込み、まっぷたつにたたき折り、ミサイルを盛んに打ち上げるイージス巡洋艦をすれ違いざまにブレードで両断し、ついに。

 とらえた。

 あちこちから、絶叫が聞こえる。
銃弾がありとあらゆる場所から、己に飛来する。それを、レイヴンは悲鳴ととらえた。目の前に飛びかかろうとするBFFのノーマルACをとらえ、それにブレードを突き立て、発振させ続けたまま、白い船に叩き付け、爆炎とともにかえして、やる。

 お前たちが破滅させた者たちの声を、とくと聞かせてやる。

 そして、目の前に居る呆然とした男の目をしっか、と見ながらその美しい白に、ブレードを突き立てた。

 赤熱、蒸発、消滅。ただの一撃では沈まず、何度も切り刻み、今までの「恩」をたっぷりと返す。守りたかったものも、そしてレイヴンの己の翼で飛ぶ自由も、そして、外に出ていこうという活力も、すべてを穢した企業に。

 彼は、ただ一人で歴史を変え、破滅への門を開いた。BFFの本社を沈めた、ということは、そういうことだ。その重さに思わず震え、にやり、とレイヴンは笑った。数々の戦場で失った仲間たちが、企業の賢人気取りたちを待っているのだから。

 そして、彼への依頼によって破滅への門を開いたのにも関わらず、ローゼンタールとオーメルは歓喜の渦のただ中にあった。

 民族の悲願が果たされた。大陸に手を出す、二枚舌の紳士を自称するクズをぶち殺したのだ、と。
我らが血を吐き、殺しあい、子を、親を、父祖を失ってきた元凶の息の根を、ついに止められたのだと。

 だが、その歓喜は、じきに悲鳴に変わった。

 BFFの通常兵力を失ったレイレナード陣営の、ネクストによる同時攻撃。それは苛烈を極めた。

 意図的に穀倉地帯を襲い、大地を汚染し、本社に対して襲撃を加え、機能を麻痺させ。今までは控えられ、行われてこなかった、ネクストによる攻撃が、はじまった。

 かつて国家に降り注いだ悪意が、かつての味方、GA、オーメル、ローゼンタールに襲いかかったのだ。




 ベルリーオーズは、ローゼンタールが出資していたコロニーの防衛についているノーマルACを排除し、道を開く。彼は、目を背けたくなるような光景が展開されているのを、しかし見つめ続けていた。

 黒い、芋虫のような大型の兵器が、摩天楼につっこんでいく。

 あれの名前は、ジェットという。都市圏の蹂躙にのみ、主眼を置いた兵器だ。
超大型のレーザーブレードが発振、形成され、都市を切り刻み、そこにいた人々をキャタピラで挽きつぶし、一つのコロニーを、どんどんがれきの山に変えた。

「……」

 あれの乗員は、BFFより選抜されている、という。
もっとも適任である、という理屈によって、彼らは投入され、逃げ惑う人々を踏み潰し、蹂躙しているのにもかかわらず、歓呼の叫びをあげていた。

「復讐戦……いや、怨念返しか」

 ひどく、空しかった。だが、このコロニーを消さねば、こちらのコロニーが、やられる。そういう理屈で、破壊を行っていることも、それの片棒を担いでいることも。

 企業の理想を、他のリンクスほど、信じこんでいた訳ではない。しかし、理性の存在は、どこかで信じていた。それを汚されたのだ。

「……あのレイヴンは、どうしているだろうか」

 そうつぶやき、じっ、とコロニーが地図から消えるのを、ベルリオーズは見つめていた。





 BFF本社「クイーンズランス」の撃沈。
これが、インテリオルが早期に脱落した管理経済戦争という、理性ある全面戦争から、ある戦争への転換点である、とされている。

そう「リンクス戦争」への、転換点である。

 この戦争では企業本社や生活圏への攻撃が行われた。そうして、多くのコロニーが地球上から姿を丸ごと消し、各企業はその怒りでさらに多くの犠牲を求め。

 かくして、地球はコジマ粒子で汚染され尽くし『終わった』のだ。

Tower of Raven Chapter2 ーA Pocket Full of Ryeー End

 如何に戦争が高度化しようと、それに対してゲリラ戦がいくら行われようと、必要なものは、一つだけだ。

 そう、決戦である。それが、戦争の帰趨を決める。

 その決戦にレイレナード陣営は四機のネクストを投入した。だが、そのすべてを撃破しうる、最強のジョーカーカードがオーメル陣営には、居た。

 伝説の、レイヴン。古い戦士、政治的なカードとしての意味しかなかったはずの彼は、最高の戦力として、ベルリオーズの前に、立ちふさがる。予想通りに。

 鴉が、再びがあ、と鳴いた。

Next Chapter -Marche au supplice-


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