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No.31826の一覧
[0] アーマード・コア4 Tower of Raven(完結)[小薮譲治](2012/04/29 03:01)
[1] Tower of Raven Chapter One: Tower of London ravens are lost or fly away(前編)[小薮譲治](2012/03/09 19:46)
[2] Tower of Raven Chapter One: Tower of London ravens are lost or fly away(後編)[小薮譲治](2012/03/09 19:51)
[3] Tower of Raven Chapter Two:A Pocket Full of Rye(前編)[小薮譲治](2012/03/10 12:37)
[4] Tower of Raven Chapter Two:A Pocket Full of Rye(後編)[小薮譲治](2012/03/15 02:09)
[5] Tower of Raven Chapter Final:Marche au supplice[小薮譲治](2012/04/29 03:00)
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[31826] Tower of Raven Chapter Two:A Pocket Full of Rye(前編)
Name: 小薮譲治◆caea31fe ID:dfd83558 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/10 12:37



「古い戦士。政治的な利用価値しかない、非力なネクスト。この時はまだ、誰もがそう思っていた。……私を含めて」 
ー伝説のレイヴンについて問われた際のエミール・グスタフの述懐より引用




 国家解体戦争は、企業の勝利で終わった。むろん、勝利に終わったからといって、潜在的な火種は、いくらもある。

 AMSやIRS、アクチュエーター複雑系などは、既に広く知られた技術であり、ネクスト以外にも、その気になれば導入が可能な代物である。だが、ただ一つ、なにもかもが謎の技術がある。

 それが、コジマ粒子だ。ネクストの力の源泉であり、その高機動を推力、そして空気抵抗の低減という車輪の両輪をもってカバーするハードウェア。

 各企業は、その技術がともかくほしい。だが、その技術は独占されている。
北欧のアクアビットと、オーメル・サイエンス、そして北米のレイレナード。
同じく巨大企業であるグローバルアーマメンツ(GA)やBFF、ローゼンタールは保有しておらず、いずれもそれらの企業に頼ることとなる。




 これが、潜在的な戦乱の火種であった。




 そうして、最強の兵器たるネクストを用いない、管理経済戦争が始まった。

奇しくも、その前後に「伝説のレイヴン」はホワイトアフリカの英雄「アマジーグ」と、GAの裏切りの聖女「メノ・ルー」を撃破し、この戦乱の引き金を引いた。

 この戦争は当初はうまく行っていた。制御された通常兵力による、生活圏や、お互いの本社をねらわない、という暗黙の了解のもとの、人類もっとも理性ある戦争ともいえた。
ある誤算、BFFとローゼンタール、そしてオーメルの、民族主義に起因する深刻かつ、古く、根深い対立が、破局を招くまでは。






Tower of Raven Chapter2
 ーA Pocket Full of Ryeー






「レイレナード本社防衛任務」

 今日も、同じ指令が降りてくる。言い換えれば、これは近傍の航空基地でアラート待機だ。
10分待機で、何か異変があればコクピットに走り、即座に機を出す。そういった任務を負っていた。

 ネクストの使い方とは、思えん、とアンジェに言ったところ、笑って言われたものである。

「世界を破滅させたいなら、そう言えばいい」

 そう、ネクストが本格的な戦闘をすば、それは即座に世界の破滅、という言葉と直結する。
ネクスト戦力は存在するだけで汚染をする。
さらに言えば、その機動力をもって攻撃に用いる、ということがネクストの最大の「戦略的価値」であり、有用性でもある。

 その意味において、このようにネクストを張り付けている、のは本来誤りである。
防衛に向かない、という言葉そのものが空虚である。防衛した土地を汚染する兵器を運用する時点で、何かが間違っているのだ。
かつて、迎撃兵器で核を搭載するプランを持った対空ミサイルというものがあったが、結局核搭載型は使われないままであった。
当然である。迎撃に成功しても、汚染されては意味がないのだ。
防衛するのは、使うに値する土地のみであり、ネクストを使ってもいいのは、捨ててもいい土地だけだ。

 そういう良識が、この当時の企業には有った。
それは、無制限な浪費と破壊が国家の破滅を招いた、との共通認識があったからであろう。

 その良識の結果、彼は航空基地に張り付けられている。
しかし、それはレイレナードの健全さがさせていることであり、なおかつ敵対はしていても、同じく北米に居るGAがそれを破らないだけの良識があった、と言うことだ。

 アラート。また戦闘機かなにかか、と毒づき、コクピットに向かう。

 だが、敵は戦闘機などでは、無かった。







「……本当に、やるんですか」

「くどいぞ、ローディー」

 その言葉を聞き、ローディーは唇をかみしめ、ヘルメットの顎紐を落ち着きなく触る。
レイレナード所有の空港を襲撃する。ノーマル程度しかいない、という、彼の実力と評価に見合った標的だ。
それを、彼は搭乗機「フィードバック」をオーバードブースタで巡航させながら聞く。
腕を武器で構成し、左右にはミサイルを背負った、赤茶けた色の乗機は平面で構成され、人間の体に煉瓦でできた装甲版を無造作に張り付けたような、という印象を与える、二脚型のACだ。
優美というよりは無骨、無骨と言うよりは不恰好。そしてその搭乗者が粗製であれば、なおさらその不恰好さが強調される。
しかも、GAの技術力の低さから、コジマ粒子関連技術は低レベルなままだ。下手をすれば、155mm砲弾を防げるかどうかすら怪しい。
一発目や二発目は何とかなるが、それ以降は、ということだ。

 これが、粗製。ネクストを相手取るなどと言えば、鼻で笑われる、GAの窮状の象徴。
ネクストに乗るに値しないAMS適正しかもたない、他の企業であれば、使い捨ての被検体で終わる、そんな存在が、彼、ローディーであった。
そのため、彼はノーマルを掃討する、という指令とともに、レイレナード本社近傍に殴り込みをかけているのである。
命知らずにも、だ。

「安心しろ。ネクストなんていない。適度に被害を与えりゃそれでいい。それしかできないんだから、ちゃんとやりゃあいいさ」

 慰めるような声。くそ、俺はリンクスのはずだ。
つよく、つよく、ローディーは唇をかむ。上あごが震えている。怒りのあまり、暴れ出したいくらいだ。
俺は、こんな扱いを受けるために、この今にも頭が割れそうな苦痛に耐えているんじゃないんだ、という憤りが、彼に唇をなお一層強く、噛ませる。

「オペレーター」

「何だ、ローディー」

「……いや、なんでもない」

 通信を切る。実力を証明できれば、それでいいのだ。

 空港が見える。
野戦ハンガーから、レーザーライフルと盾を持ったローゼンタールのノーマルと、スナイパーキャノンを背負ったBFF製のノーマルが飛び出し、こちらに盛んに弾丸と敵意を撃ちつけ、しかもその狙いは段々と正確になっていく。
回避起動をおりまぜ、必死に回避しようとするが、そのたびに強烈な頭痛と各方向にランダムにかかる強烈なGが、ローディーの意識を奪いかける。
それに耐えるために、わざわざ奥歯に装着するマウスピースまで使っているくらいだ。
もっと力があれば、裏切ったハイダ工廠にはあのアナトリアの傭兵が向かわなくても済んだし、そこでGAEに寝返った『ことになっている』メノ・ルーが死ななくても済んだ。

少なくとも、ローディーがメノ・ルーに殺されるだけで、済む。

 あの「聖女」が、どうして裏切ったことにならなければいけなかったのか。
それを、ローディーは知っている。アナトリアの傭兵は、ローディーではなかったのだ。

「畜生……」

 短く、つぶやく。ああ、くそめ。そう考えて、左のミサイルポッドを起動。ロックオン対象が複数白く表示され、FCSロック距離から、兵装のロック距離に切り替わるのを、じり、じり、と待つ。
BFFのノーマルの弾丸が何度か薄いコジマ粒子を貫通するが、機にはかろうじて命中しない。
右肩のあたりをひゅっ、という音をさせてすり抜けるのを聞き、ローディーは悲鳴をあげそうになった。
赤く表示が切り替わる。発砲。ミサイルが発射され、避けようとする敵機をとらえ、頭を吹き飛ばし、スナイパーキャノンに直撃し、破壊。
だが、油断した隙に、ローゼンタールのレーザー特有の装甲に熱量を与え、破壊する感触がぞわり、とする。
くそ、頭が。と考えて、腕のバズーカを発射。一撃で上半身を消滅させ、次段を砲のローディングシステムが送り込む。
それを幾度か繰り返すうち、防衛部隊の前哨は消滅していた。ミッション達成か、と考えたが、だが。

通信が入っている。接続されてはいたが、通信に気づいていなかったらしい。ずきん、と酷い頭痛がした。


「ローディー、逃げろ! お前じゃあ『絶対に』敵わん! すぐにだ!」

 そこには、あり得てはいけないものが立っていた。
だが、ローディーは必死に離脱を訴えるオペレーターに対する通信の接続自体をカット。

 黒いネクストだった。優美な曲線と、鋭角的なシルエットが共存する、フォーミュラーカーのような、アーマード・コア「ネクスト」だった。
BFF製のライフルと、機体の製造元と同じレイレナードの鋭角的なライフルと、左右の側面にミサイル攪乱用のフレア、そしてグレネードランチャー。そう。

 オリジナルリンクスの一人にして、最も戦果を上げ、ナンバー1になった「ベルリオーズ」とその搭乗機「シュープリス」だ。
赤いしたたりを垂らす断頭台のエンブレムが、まるでローディーの未来を象徴しているかのようだった。ここが、お前の最後だ、と。

「好き勝手にやってくれたな、GAのリンクス」

 ああ、くそ、逃げなくてはいけない。こんな相手に、俺が、俺のような粗製がかなうはずがない。だが、口は相反することを叫んでいた。

「どうした。……かかってこい! 相手になってやる!」

 オーバードブーストを起動。ミサイルを発射した。ローディーとフィードバックは、黒い騎士に向かって走り出す。それが、たとえ破滅であったとしても。




「どうした。……かかってこい! 相手になってやる!」

 その一言を発し、フィードバックはオーバードブースタを起動し、ミサイルを発砲してくる。
だが、シュープリスにとってみれば、白煙を引くミサイルなど、牽制にもならない。
ブースターの推力を通常通りに動かし、予測された軌道に沿ってす、と動かす。この手のミサイルは、派手に動けば、熱を検知してその分食らいついてくるのだ。

 そして、それで軌道を制限したつもりになっているのか、武器になった腕から、砲弾を放ってくる。
なんという浅はかさか。とほとんど絶望的な気分になりつつも、右腕のライフルでバズーカの弾丸を叩き落とす。
その爆炎を浴びたのは、発射したフィードバックであった。

「どうした」

 次は、空中で二発目を発射しようとしている。だが、これはクイックブーストで避け、グレネードランチャーを硬直したところに一発叩き込む。

「どうした」

 今度はバズーカでは有効打を与えられないと判断したのか、両肩のミサイルを放ってくる。
避けるのもいい加減面倒になってきたため、フレアを放出。熱源に釣られ、ミサイルが明後日の方向に飛んでいく。
そこに好機だと勘違いしたのか、一気に突っ込んで、そしてバズーカを発砲。
クイックブーストで砲弾を避け、いくつか連続でエネルギーを放出し、一気に後ろ側に回り込み、ライフルの弾丸をのろのろとこちらに機の正面を向けてくる敵機に叩き込み続け、発射できない位置に専位し続ける。
まさか、この程度で『かかってこい』と抜かしたのか、とベルリオーズは失望する。

 早く、このゴミの始末をつけてしまおう、とばかりにグレネードランチャーを起動。
背中に一発、二発と叩き込むと、フレームを覆っていた装甲が灼熱し、破壊され、そして平面的だった装甲面を波打たせ、破口を形作る。

 あまりに、弱い。あのアナトリアのリンクス、いや、あのレイヴンは、数々の戦果を挙げている。
AMS適性がパイロットとしての適性ではないことは、彼が証明してみせている。それだというのに、このリンクスは、なんだ。
まるで案山子ではないか。案山子の方がある程度は鳥よけになる。だが、これはうるさいだけだ。

 戦術も、ミサイルを牽制として使うのはいい。
だがそのタイミングがあまりにちぐはぐで、避けてください、と言わんばかりだ。仮に牽制として放つなら、二種を混合し、タイミングを外して放つべきであり、まるでなっていない。
しかも、大威力のバズーカを活用しきれず、硬直という隙があるのだから、ミサイルをその間に放って相手に撃たせないようにする、という工夫すら見られない。あまりに、未熟。
AMS適性が低く、これらのことができないのかもしれないが、あの機体は腕を武器にする、という負荷を低くする工夫をしているというのに、まるでそれを活かせていない。

「粗製め」

 ライフルを放ち、余りに弱いGAのリンクスが片膝をつくのを確認してから、蔑みを浴びせる。
退屈しのぎにもならないばかりか、真実、邪魔なだけだった。

 機をもとにもどそう。コジマ粒子をカットして、すぐ横をパスし、遠ざかっていくうちに、すさまじい衝撃が加わる。
ごっそりと装甲を持って行かれた感触が、した。

「俺は……粗製なんかじゃねぇ!GAのリンクス、ローディーだ!」

 通信。血交じりの怒りの声。ボロボロのGAのリンクス、いや「ローディー」は、立ち上がっていた。




 衝撃。膝を折る。ぐえ、という呻き声とともに血を吐き出す。頭が、割れそうだ。コネクタに手を伸ばし、AMSコネクタを引き抜こうと、もがく。
頭の中でムカデが100匹近く這いずり回っているような苦痛。

 だが、その苦痛よりも、耐えがたい言葉が、彼に浴びせかけられた。

「粗製め」

 手を、戻す。ムカデなんかではなかった。蛇だ。蛇が脳細胞をずるずるとすすっている。
立て。俺は立たなければならない、立って、戦わなければならない。しかし、IRSはもう無理だ、と訴え続けている。

 足に、力を入れる。立ち上がる。腕を、構えた。

 さらに頭痛がひどくなる。声にならない苦痛の叫びを上げ、そして。

「あ、あ」

 何かが、切れる。頭痛は、もうしなかった。





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