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No.31826の一覧
[0] アーマード・コア4 Tower of Raven(完結)[小薮譲治](2012/04/29 03:01)
[1] Tower of Raven Chapter One: Tower of London ravens are lost or fly away(前編)[小薮譲治](2012/03/09 19:46)
[2] Tower of Raven Chapter One: Tower of London ravens are lost or fly away(後編)[小薮譲治](2012/03/09 19:51)
[3] Tower of Raven Chapter Two:A Pocket Full of Rye(前編)[小薮譲治](2012/03/10 12:37)
[4] Tower of Raven Chapter Two:A Pocket Full of Rye(後編)[小薮譲治](2012/03/15 02:09)
[5] Tower of Raven Chapter Final:Marche au supplice[小薮譲治](2012/04/29 03:00)
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[31826] Tower of Raven Chapter One: Tower of London ravens are lost or fly away(後編)
Name: 小薮譲治◆caea31fe ID:7a4437bb 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/09 19:51
 ネクストのまとう、コジマ粒子の鎧、プライマルアーマーは、どの程度まで耐えられるのか、という問いがある。
きわめて高速に撃ち出される弾薬には、対応が難しい。これはプライマルアーマーに焼き尽くされる前に装甲に到達し、破壊をもたらす。
また、前後矛盾するようだが、大量の小口径の弾薬に撃ち据えられれば、プライマルアーマーとて耐えず、消滅する。

 では、完全に動作した場合、どうなるのか、といえば、核が炸裂したところで、機体を守る。
事実、国家解体戦争後に完全な不意打ちで核地雷による攻撃を受けた機体は、中破で収まっている。
いかに核兵器を撃ち込もうとも、しょせんは徒労なのだ。しかも、その時は未熟極まる操縦者が、熟練の兵士とレイヴンによってさんざんに攪乱された結果であった。
シュープリスは、違う。相手は熟練の兵士とレイヴンであったとしても、彼は熟達した操縦者だ。同じような相手を、何人も血祭りに上げている。

「……こんなものか」

 最後の抵抗とばかりに、RPGー27を持ち出して発砲している兵士をひきつぶし、野砲陣地を破壊し終わると、目の前に見える山岳地帯に機を進める。
そこにはいくつもの野戦ハンガーが慎重に偽装されていた。国家のノーマルが、そして取り逃した「レイヴン」が待っている。
野砲陣地に助けにこなかったのは「無駄」だ、と知っているからであり、殺意の振るいかたをよく知っている兵士であることがよみとれる。臆病故に手を出さないわけではないのだ。そして、彼らは当地のクルド人に大いに嫌われている。敵は一人だけではない。

 そんな彼らの、見え見えの罠だ。
だが、そんなものは圧倒的な力の前では無意味だし、彼らはよい「肉」を持っている。伝説とまでいわれるレイヴンだ。リンクスが食らいつかない理由はどこにもない。

「しかし、カラス食いか」

 侮蔑の言葉として用いられるカラス食い。だが、そのカラスはとびきり凶悪なカラス、レイヴンである。
白頭鷲をも襲い、血祭りに上げる力を持った鳥だ。

「……望むところだ」

 常になく、シュープリスは熱狂していた。最高の「ゲーム」なのだ。最強のレイヴン狩り、それが熱狂を伴わぬはずもない。

 オーバードブースタを起動。莫大なエネルギーが解放され、一気に増速。音を飛び越え、ライフルを構えた。ロックオンサイトのカーソルが白く点灯、ドンドン距離の数字を減らしていく。撒き餌だろう。だが。

 ロックオン・カーソルが赤くなる。即座に両手のライフルを発砲。前方11時にハルダウンしてこちらを狙うT-80がある。
それの砲塔を吹き飛ばし、3時の方向に居るメルカヴァMk2を消し飛ばし、オーバードブーストをカット。
クイックブーストを吹き付け、ピボットターン。通り過ぎた位置には、大量の戦車。M1A1、三菱90式、T-90、チャレンジャー、レオパルド2、数えきれない、古今の陸の王者たちがそろい踏みだった。だが。


 もう、王者の出る幕など無い。


 全ては、一瞬のうちに終わった。一発たりとも槍を放つこともなく、M1A1がガスタービンエンジンのタービンブレードをぶちまけ、三菱90式が前面装甲のほとんどを消滅させ、T-90は半分になり、チャレンジャーは砲塔が車体に溶接され、レオパルド2は盛んに噴煙をあげている。

「くだらない餌を」

 消滅した戦車部隊を狙っていた腕をおろし、あのプロトタイプネクストの「機能」さえ搭載されていれば、このような無駄弾を使わなくとも、と考え、らちもないことだ、首を振る。
いざとなれば、右腕部の格納にブレードを搭載してあるのだから。

 だが、くだらない餌ではあったが、一つの魚は釣れた。逆間接機でマシンガンと肩にマイクロミサイルをこれでもかと搭載した機体だ。左腕には、ブレードが搭載されている。

 大鴉のエンブレム。やつだ。EYEタイプと言われる、青いモノアイがぎらぎらと光る機体だ。
こちらも、複眼の焦点を合わせ、赤い光を放つ。見合っていたのは、ほんの一瞬だろう。だが、ほとんど数日にも感じるほど、長く経ったように錯覚する。

「レイヴン。……その伝説、今日で終わらせてやる!」

 クイックブーストで一気に機体を離し、ライフルを構える。敵はブースト炎をふかすと、ミサイルを発射。
だが、それは空中で炸裂し、煙幕を生成する。白燐弾だ。カメラアイが敵機を見失い、レーダーの反応も芳しくない。
しかし、弾着警告が聞こえる。敵はマズルファイアだけを見せながら、急速に移動。弾丸を放っても、その瞬間がわかっていたかのように、通常のACよりも高くジャンプ。FCSの補正が正常に動作しない。しかも、このACは対空機関砲とは違い、対ネクスト用に最適化された弾薬を使用しているらしい。コジマ粒子ががり、がり、と削れていく。ならば。

 背中のグレネードランチャー、OGOTOの砲身を立ち上げ、下に向けて放つ。

 爆炎が機体を焼き、コジマ粒子の鎧がめくれあがり、はじけ、消滅。だが、煙幕も、また晴れた。

「捕えた」

 ぐっと踏みこみ、敵機がブレードを向けて前進するのをとらえ、発砲する。だが。おかしい。

 幾らなんでも、機動が直線的すぎる。真っ直ぐに、まるで狙ってくれ、と言わんばかりにこちらに迫っている。
ベルリオーズに悪寒が走った。ただちにクイックブーストを連続で吹かし、急速離脱。
コクピットブロックがぽっかり空いた敵機は1㎞ほどブーストをふかしたまま走り去り、そして。

 猛烈な、爆風。放射線、熱線の爆撃。粉じんと大地がめくれあがり、消滅。パターンと規模からいって、アメリカ軍が保有していた核砲弾である、とIRSが伝えてくる。

「やられた」

 くそっ、何という事だ。二度も、二度もしてやられた。
あのレイヴン、どの機体も手足のように操るというのに、機体の扱いは消耗品だ。信じられない。そうベルリオーズは毒づく。

「やられた……!」

 あの男は、強い。伝説と呼ばれるのはわかる。いや、そんな生半なものではない。やつは、神話時代の最強の『戦士』だ。

 このネクストに乗っていなければ、ベルリオーズすら、危うい。いや、ノーマルに乗っていれば、瞬く間に殺されただろう。
やつは、相手にしない、という事を徹底的に選んでいる。

 とはいえ、奴は追いかけなくてはならない。ネクストの足ならば、すぐに追いつける。

 だが、そうもいきそうもないのが、現実であった。あの山は、既にトルコ軍SASの巣だ。容赦なく核砲弾すら使ってくる連中である。どのような手段を取ってくるか、見当もつかない。

「……聞こえるか、ベルリオーズ」

 通信が回復。そして、オペレーターの声が聞こえる。撃墜された輸送機に乗っていたのだ。歯の根を食いしばり、声を出している。

「やられた……SAS旅団の連中に囲まれている……火炎放射器までもってやがる。俺を焼き殺すつもりだ。
せっかく、レイレナードに就職して、勝ったと思ったんだがなあ……」

「……」

 絶句。助けに行くべきか、と考え、しかし、やめた。

「……俺は、コジマ粒子に汚染されてまで、生きて居たくない……バカなことを考えるなよ。ああ畜生、焼かれるのも、嫌だな……」

「……わかっている。……逃げられないのか」

「……足が……潰れっちまってる。クソ痛い。銃もねえ……通信を切る。作戦目標を達成しろ、奴を殺せ。
俺のように。絶対にだ。お前なら……やってくれる。ああ畜生、怖い」



 通信が、途絶。その寸前に、絶叫が聞こえた。



「レイヴン。トルコ軍もちだから存分にぶっ壊しても消費してもいいわよ」

 混信した無線の中から、その『レイヴン』のオペレーターの声を聞き、ベルリオーズは怒りをたぎらせる。
迫撃砲の大量の弾薬を浴び、対戦車地雷を何度も踏み潰し、慎重に構築されたトーチカとロケット砲群を消し飛ばしてなお、あの男とSASはあきらめない。
目の前に、タンク型のACがある。大量のグレネードを搭載し、つるべ打ちにするためだ。いくつもの弾薬を浴びせかけてくる敵機をのそれを避け、キャタピラを破壊し、腕を壊し、装甲をはじき、そして頭部を消し飛ばした。
そして、止めを刺す。そのために前進した。

「とった……!」

 ライフルを構え、発砲しようとするが、しかし。
 敵の背中の砲が、せり上がり、発砲。それをスローモーションのように、見る。狙え。
これが当たれば、まずい。FCSをカット。腕をAMSでダイレクトコントロール。
右腕のライフルの引き金を引き、発砲。電気信管に通電し、炸薬が炸裂。BFF製の精密なライフルから撃ちだされた弾丸が回転し、敵の弾丸にめり込み、はじけ、そして炸裂。思った通り、核砲弾だ。
してやったぞ、と思った瞬間に、敵は脱出ハンドルを引いたのか、外に飛び出している。
殺す、絶対に殺してやる。その憎悪をベルリオーズは発砲という形で発散しようとする。だが。

 後方から、衝撃。一人の男が、中指を立ててこちらにシャイターンめ!と怒鳴っている。

「邪魔を」

 クイックターン。FCS抜きのダイレクトで、引き金を、引いた。

「するな」

 消滅。



「満足したかしら」

 その、敵のオペレーターの声が、ベルリオーズの耳に、届いた。

 答えは、返さない。目の前に、答えが、居た。


 それは、通称、アンファングと呼ばれる機体だった。
 赤いモノアイが、ぎらり、と光る。平面で構成された機体に、ライフル、ブレード、グレネード、ミサイルを搭載した、いわゆる標準型。
銀色に塗装された機体の中で、左肩の黒い大鴉だけが、羽ばたいている。

があ、という鳴き声が、聞こえた。

「レイヴン」

 殺してやる。

 どちらともなく、ブーストダッシュを開始。シュープリスはライフルを構えた。ほぼ同時に、相手もライフルを、構える。そして、はぜた。

 プライマルアーマーは完全に動作し、いくつかの貫通した弾丸を除けば、まるでダメージはない。対して、敵は幾度も装甲に命中弾が当たる。
だが。残弾が減っていく。あと、1マガジンほどしか、残弾がない。ならば。

 ライフルを、パージ。代わりに右腕にブレードが装備される。だが、相手は乗ってこない。左腕にも装備しているライフルで応射するが、こちらは待てば、勝てるのにもかかわらず、相手は手を出してこない。だが。

 敵は、グレネードを展開。そしてそのまま、足元に放ち、勢いよく上昇。レーザー発振前のコイルの鳴く音をとらえ、こちらもブレードを展開。
機体同士が衝突し。相互に腕をぶつけ、みし、みし、と音を立てる。敵のブレードはこちらの胸部装甲の一部を溶かし、消える。
が、逃す気はない。ぐ、と腕を倒し、敵のコアの一部を溶融させる。そこには、コクピットハッチの開閉ラッチがある。
クイックブーストを吐きかけ、離脱。

 これで、奴は逃げられない。

 ライフルを発砲し、頭部のカメラアイを吹き飛ばす。グレネードで右腕を、ブレードで左足を。
それでもなお、こちらにブレードを振ろう、と必死に機体をブースターで浮かし、挑みかかる。だが。

 ベルリオーズは、ライフルを引きつけ、腕を前に突き出した。
 敵のコアに、突き刺さる感触。コアを破壊し、びくり、とアンファングは一瞬震え、そして、二度とは動かなくなった。

「は……は……」





 目標X-Ray、沈黙。




落日、それは赤い光のみをシュープリスとアンファングに落としていた。






 ほどなく、国家解体戦争は終結を迎えた。一か月。一か月で2000年以上続いた、国家という機構が、この世界から消滅した。
そして、その地位に、企業が収まった。

 かつて『人間』であった人々は『コロニー』で糧食を得るための労働にのみ従事し、希望の、絶望も、抱かぬよう、そして殺さぬよう、企業に飼われていた。まさしく、それは家畜であった。

 ゆっくりと、世界は死んでいく。地球で逼塞し、ただ生きるだけ。それが、この世界の『現実』だったのだ。


 一つのニュースが、一時期周囲の耳目を集めた。

イェルネフェルト博士。AMS関連技術の開発者の一人が、死んだ、ということだ。
彼らの『コロニー』はアナトリアといい、その死に伴って、多数の技術者が流出。アスピナに逃げ込んだことにより、彼らは生きる糧を失い、死ぬのを待つばかりであった。

技術の独自性を失い、そして死ぬ彼らに、一つの希望の星が現れた。

『伝説のレイヴン』

 彼は、アナトリアの被験体であり、最低限のAMS適正しか持たない、非力、いや、すでにリンクスと名乗ることすら許されぬ『粗製』と呼ぶにふさわしい、正真正銘のゴミであり、クズであった。
存在しているだけの置物ではなかったのは、政治的な利用価値だけはあったからだが。



 だが、ただ一人、ベルリオーズの見方は違った。





「奴は優秀な戦士だ。……生かしておくべきではない。奴を殺すべきだ。今すぐにでも」





 そう、言った。のちに、彼の見方は正しかったことが、証明されたのは、皮肉であった。



Chapter One: Tower of London ravens are lost or fly away -End-



Next Chapter: A Pocket Full of Rye

Sing a Song of sixpence,
A pocket full of rye,
Four and twenty blackbirds
Baked in a pie.



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