※東方緋想天のネタバレがあります。ご注意ください 「うーん」 非常に唐突ではあるが、稗田阿求は気難しげに唸っていた。 理由は眼前に立っているお隣さん、よろず屋銀ちゃんとか看板が立っているお店……というより一軒家。 ここには先日から、ちょっと特殊な場所から幻想郷に迷い込んだ三人と一匹が生活しており、阿求はうろうろうろうろとせわしなく動いている。 理由はなんてことはない。昨日の一件が全ての原因であった。 実を言うと、昨日そのよろず屋のメンバーが妖怪退治の依頼を受けたらしく、よりにもよってその妖怪があの風見幽香。 花を操る妖怪で、幻想郷においてもトップクラスの実力と危険性を孕んだ存在で、人間なんかが到底叶うような存在ではない。 おもしろ半分で送り出し、まぁせいぜい注意書き見てとっとと帰ってくるだろうことを予想していた。 ……いたのだけれど、もし、あの注意書き無視して決闘なんぞやらかして命を落とされた日には眼も当てられないというか、さすがに罪悪感を感じるというものだ。 つまりこれは様子見。ちゃんと無事に帰ってきているかどうかの確認である。 「……よし」 意を決して、阿求はよろず屋の玄関に手をかけて、こっそりとドアを開ける。そこには――― 「おーい、ゆうかりん。お茶たのむわぁ」 「はいはい。そうよねぇ、ジャンプ読むので忙しいものねぇ、銀時は」 「定春~、お手あるよ」 「わん♪」 ズドムッ!! 「総領娘様!? ちょっ、大丈夫ですか!!?」 「大丈夫よ、衣玖。痛いけど気持ちいいから」 「大丈夫なんですかそれっ!!?」 ―――ステキなカオスが広がっていらっしゃいました。 ジャンプ片手に幻想郷最強クラスの妖怪にお茶を頼む銀時。 そんでもってそんな彼の言葉に嫌味言いながらもお茶を用意する幽香。 芸の練習らしきことをやっている神楽だがしかし、定春のお手……もといメガトンパンチは天子の顔面に直撃し、そんな天子の様子を見によろず屋に訪れ、今は彼女の身を案じる竜宮の使いの永江衣玖。 そんな彼女の言葉にも危険な香りが漂う天子のドM発言にツッコミを入れる衣玖さん。 まさしくカオスッ!! もとい混沌。 そんな光景を視界に納め、阿求は朝日のように爽やかな微笑を浮かべ。 ぴしゃりと、ドアを閉じた。 何も見ていない。何も見ていません。見ていないったら見ていない。 心の中で暗示のように自分に言い聞かせる。あまりのカオスぶりに思考が微妙に混乱中。 よし、音もなく、すばやく、忍びのようにこの場から立ち去ろう。そう決めてくるりと180度回れ右をして――― 「あれ? 阿求ちゃん。どうしたの、こんなところで?」 気配がまったくなかった買い物帰りの地味眼鏡にとっつかまりました。オウ、シット。 さすがは地味めがね。真後ろにいても気づかねぇこの空気ぶり。 地味メガネ固有スキル。 気配遮断・EX―――新八特有のスキルというより存在感の無さ。その空気ぶりは眼も当てられず、近くにいても認識できないこともある。ツッコミ時のみ、このスキルは無効になる。さすが地味メガネ。 「ってちょっと待てぇぇぇえぇぇえええええ!! 何だ今のわけのわからん説明はァァァアアアア!!!?」 「新八君、誰にツッコミいれてるの?」 ■東方よろず屋■ ■第四話「お酒は心の潤滑油って徳川家康が言ってたような気がするけどやっぱ気のせいだ」■ 「ひ、引き分けた!? 彼女にですか!!?」 時間は緩やかに午後。昨日の依頼が一体どういうことになったのかを問うてみると、そんな言葉が返ってきた。 勝ったわけではないが、人間が彼女に引き分ける。 それだけでも信じられない事実であり、阿求を驚かせるが、銀時はやる気無く言葉をつむぐ。 「引き分けたッつっても、俺が勝負うやむやにしたまま帰っただけですよー? あのまんま続けてたら、間違いなくやられてたと思うがね、俺は」 「だとしても、凄いことですよ。意外ですね、弾幕勝負強かったんだ、銀さんって」 そんな阿求の感心したような言葉に、ぱちくりと眼を瞬かせる銀時と幽香。 そんな二人を、怪訝そうに見つめるのは天子と衣玖の二人。今、阿求は何かおかしいことを言っただろうか? と、そういった疑問が顔に出ている。 「何勘違いしてるかしらねーが、俺はスペルカードもねぇし、弾幕だってはれねぇぞ。大体空飛べねぇし。昨日の決闘はガチンコの接近戦だったからな」 『はぁっ!!!?』 驚きの声が上がったのは、阿求、衣玖、天子の三人。 まぁ、その驚きも当然かもしれない。 幽香の身体能力はそもそも人間では到底届かない領域にある。そんな彼女に、弾幕勝負ではなく接近戦なんてまさしく自殺行為だ。 そう、勝てるはずが無い。三輪車でF1カーに勝てないのと同じように、人間では風見幽香を含む他の最強クラスの妖怪には勝てないのが道理だ。 そんな彼女に、接近戦で引き分けた。この事実は、弾幕勝負で引き分けたのとではわけが違う。 「ま、確かに銀時って人間離れしてるわよ、身体能力。その辺の妖怪じゃ銀時の相手にならないんじゃない? 接近戦限定だけど」 「おいおい、買いかぶりすぎだッツーの。もう妖怪相手に戦いませんよー、銀さんは」 幽香の言葉に、銀時は相変わらず気だるげな声で言葉を返す。 あいた口がふさがらないとはこのことか。接近戦で妖怪とタメをはれる人間なんて希少品以外の何者でもない。 あんまりな事実に思考がフリーズする三人。何しろ幻想郷最強クラスの妖怪のお墨付きだ。疑えというほうが無理というものである。 そんな三人の視線を無視し、再びジャンプを読み出すマダオ。「あー、卍解つかいてぇ」なんて口走ってるさなか、台所から顔を出す地味メガネこと志村新八。 「銀さーん。やっぱり今月マズイですよ」 「そっかー、やっぱこの歳でジャンプはマズイか」 「確かに、お前の作った飯はまずいアルネ」 「どっちも違ぇよ!! つか、まえにもやったんですけどこのやり取り!!? そうじゃなくて、今月の生活費ですよ」 見当ハズレの言葉に、新八はデジャヴを覚えながら問題を切り出してくる。そんな問題に耳を貸さず、相変わらずのマダオとチャイナ。 「はっ! そんな脅しになんか屈さないアルヨ! 食事の量は減らさねーかんな、新八」 「脅しじゃねぇよ!! 食えなくなるんだよ米すらも!! もともとろくにお金なかったのに、昨日の依頼だって結果が中途半端な上に依頼人が行方不明で結局タダ働きだったんだからァァアアアアア!!」 神楽の現実見てない言葉に新八が燃え盛る炎をバックに大音量で吼える。 一体どうやったらそんな大音量が出せるのか、あの幽香でさえ目を瞑って耳を押さえている。 突っ込むのはイイが新八、その音量は明らかに近所迷惑だ。 「……はぁ、しょうがないわね。明日、天界の桃持ってきてあげるわ。味の保障はしないけど」 「あ、ごめん天子ちゃん、ありがとう。明日から雑草すらご馳走になるところだったよ」 ……そんなにやばいのか? にこやかに言う新八の言葉に、そんなことを思った天子、衣玖、阿求、幽香の4人。見事なシンクロである。 「……私もお米、おすそ分けしましょうか?」 「……私も、お酒でよければ持ってきます」 「……そうね、私からも何か持ってきましょうか」 阿求、衣玖、そして幽香すらも哀れみの目を向けて新八に声をかける。 普段なら知らん振りをする幽香なのだが、今回ばかりは半分くらい自分が原因のところがあるのでさすがに罪悪感があるっぽい。主に依頼人の行方不明の部分辺り。 「あはは、やだなぁ皆。ありがたいけれど、それじゃまるで僕達貧乏みたいじゃないですか」 文字通り貧乏でしょうが。 そう喉まで上ってきた言葉を飲み込んだ。世の中言わないことのほうがいい時が多々存在するのである。今回はまさにそれだ。 そんな時、とんとんとなるノックの音。それに「はーい」といって玄関に向かう新八。 玄関を開けると、そこにはニコニコ笑顔の鴉天狗の姿があった。 「あれ? 文さん。こんにちわ」 「えぇ、こんにちわ新八君。あやややや、大所帯ですねぇ」 新八に軽い言葉を返し、中に上がりこむ文。 まぁ、彼女がそういうのも無理は無いかもしれない。何しろ、メンツがメンツである。 「どうした、ブンブン。依頼でも持ってきたのか?」 「いえいえ、違いますよ。……って、なんですかそのあだ名」 ジャンプ読んでる銀時の言葉に軽やかに言葉を返そうとして、なんか妙な名前で呼ばれたことに引っかかる文。 銀時に視線を向けてみるが、相変わらずジャンプを熟読中。 「今考えた。どうだ? プリチーでキュートだろーが。あだ名だから字数少ないし呼びやすいし」 「いやいやいや、プリチーでもキュートでもないですから。オマケに字数多くなってますから。ていうか何? 呼びやすいって私の名前そんなに呼びにくいんですか?」 冷や汗垂らしながら言葉にする。そんな彼女の言葉に、銀時は相変わらずジャンプに視線を向けている。 だれている。だれまくっている。こんなんでお客が来るのだろうかと思うほどにだれている。 「呼びやすいだろーが。文って呼ぶよりブンブンってほうが呼びやすいんですよ銀さんは。なぁブンブン。あれ、もしかしてブンブンは気に入らなかったか? そうなのかブンブン?」 「ブンブンって連呼しないでください!! なんか私ハエみたいじゃないですかそれじゃあ!!」 ダンッと銀時がいる机を叩く。そんな彼女の肩にポンッと手を置くニッコニコ笑顔の風見幽香。 「落ち着きなさいブンブン。貴方天狗でしょう。もう少し冷静になりなさいってばブンブン」 「だからブンブン言うなって言ってるでしょう!! 何これ、嫌がらせ!!?」 いい感じに弄られる鴉天狗。ガミガミと口論に発展した銀時周辺を視界に納め、阿求は冷や汗流しながらその光景を見守っていた。 いや、幽香相手に引き分けたって言う辺りから只者じゃないとは思ってはいたものの、銀時がこんなに性格の図太い奴だとは思わなかった。 ここまで妖怪相手に暴言……というか、妖怪をおちょくる人間も珍しいかもしれない。 それにしても、なんだろうこの混沌とした空間。 人間3、妖怪3、宇宙人1、天人1、犬(?)1と、明らかに人外のほうが多いこの状況。 「はいはい二人とも。嫌がらせはその辺にしといて。それで文さん、今日はどうしてここに?」 「あ、そうでしたそうでした。実はですね、萃香さんと一緒にお酒飲むことになったんですけど、帰りに通りかかったものだから銀さん達にも聞いとこうと思いまして。萃香さんなら拒まないでしょうし、人数は多いほうがいいですからね」 新八の言葉に、文はここに来た経緯を説明する。まぁ通りがかったということだから、たまたまということになるんだろうが、丁度人数もそれなりにこの場にいる。 もっとも、タダで酒が飲めるということなんで、銀時がそれを拒むはずも無いんだが。 「イイですよー別に。どうせなら家でやんない? こんぐらいの人数なら、うちでも十分だろ。酒が切れても買いに行けるし」 「了解。それじゃ、あとで萃香さんと一緒にこっち来ますね」 「え? まさか、私もそのメンツに入ってるんですか?」 二人のやり取りを聞いて、まさか……と内心思いながら聞く阿求。そんな彼女の言葉に、眼をぱちくりとさせる銀時と文、そして幽香の三人。 「当たり前だろーが、あっきゅん。あれだぞ? お酒は心の潤滑油って徳川家康がいってたような気もするけど……やっぱ気のせいだわ」 「気のせい!? 気のせいなのに偉そうに語っちゃったの!!? というかもしかしてそのあっきゅんって私のあだ名ですか!!?」 えらそうに語っておきながら、やっぱ気のせいとかほざく銀時に飛ぶ阿求のツッコミ。そしてやっぱりそのあだ名は看過できないのか、ツッコミついでにそんな言葉も混ざってしまう。 そんな彼女の言葉に、なんの戸惑いも無く頷く坂田銀時。 ……あぁ、駄目だ。眩暈がしてきた。と、くらっと倒れそうになる阿求。 「それでは、私たちも一度戻りましょうか。総領娘様。お酒とか持ってこないといけないですし」 「そうね。それじゃ、銀さん。私たち一度戻るわね」 そういってよろず屋を一旦後にする天子と衣玖。その後に続くように、幽香もよろず屋の玄関に向かった。 「私も一旦帰るわ。何か持ってきてあげるから、おとなしく待ってなさい」 「へーへー。いってらっしゃい、ゆうかりん」 幽香が退出し、その言葉に銀時が気だるそうに言葉にする。 それにしてもこの男、幽香にすら妙なあだ名をつけている辺り、本気で命知らずなのかもしれない。 あとに残されたのはよろず屋メンバーと稗田阿求に射命丸文。時刻はとっくに夕方。窓から入り込む夕日をバックに、文はクスリと笑って大きめの窓に腰掛ける。 「それじゃ、またあとで。楽しく飲みましょう、銀さん」 「う~い。後でな、ブンブン」 「だからブンブンは止めてくださいってば」 ブンブン発言に情けなく項垂れる鴉天狗。そんな様子の彼女にも気にも留めない銀時だったが、やがて文は笑顔を浮かべて「それでは」といって、黒い翼を羽ばたかせて飛び去っていく。 考えてみれば、不思議なものだと思う。あそこまで親しげな幽香もそうだし、変なあだ名で呼ばれながらも、なんだかんだで楽しそうな文もそうだ。 二人とも妖怪で、それも相当な力を持った強者だ。そんな彼女達が、どうしてこのやる気の無い男といてなんだかんだと楽しそうなのか。とりあえず天子は置いておく。あれは遠慮なく銀時殴るし。楽しそうという点では共通しているが。 「ほれ、あっきゅんも用事あるんだったら一旦帰ったほうがいいぞ。さわがしくなりそうだからな」 そんなことを言いながら、銀時は阿求に言葉をかける。 考えてもわからない。もとより妖怪の考えなんて自分にはわからない。 まぁいいや。といい加減に自己完結させて、阿求はコクリと頷く。 「わかりました。どうせですし、おすそ分け分のお米も持ってきますよ」 「おう、頼むわ」 まったく、視線ぐらいこっちに向けろというのに、この男は。 そんなことを思いながらよろず屋を後にして、お米のほかに何を持って行こうか思案する。 そこで、自分が意外にもその小宴会を楽しみにしていることに気がついて、その子とを不思議に思いながら阿求は自宅に戻っていった。 そうして、彼女は眼を覚ました。 頭がずきずきして、まぶたを開けると、そこには地獄が広がっていた。 もう既に酔いつぶれたらしい新八、天子、神楽が無造作に床に転がっており、未だに飲み続けている妖怪組。 萃香が衣玖にお酒を進め、それにお礼を述べながらお酒を煽る衣玖。 反対に幽香にお酒を勧めているのは文で、随分会話に花が咲いているらしい。 もぞもぞと動くと、自分に毛布がかけられていることに気がついて、隣を見ると酒を手に持った銀時が座っていた。 「おっと、起こしちまったか?」 「いえ、頭痛くて起きただけですから。この毛布は?」 「俺がさっきかけといたんだよ。風引かれると寝覚めワリィからな」 そんなことをぼんやりと答えながら、銀時は目の前の光景に視線を向けていた。 相変わらず飲み合っている妖怪たち。一体どこにそんなアルコールを入れる場所があるのか、衰える様子は見受けられない。 「……飲みますねぇ、皆さん」 「まぁな。神楽の奴が対抗心燃やしてがぶがぶ飲んでたがあっという間につぶれたし、俺もちょっとアブねぇからこっちに避難してきたんだよ」 銀時の言葉に、確かに。と頷く阿求。 ただでさえ鬼や天狗は酒豪なのだから、人間の銀時が彼女達にまともに付き合っていたらさすがに酔いつぶれるだろう。 避難、というわりにはちびちびとお酒を飲んでいる銀時。一体どのあたりが避難なのだろうとか思わなくも無いが、阿求はそれを口にはしなかった。 「……ねぇ、銀さん」 「あん?」 「怖くは無いんですか? 彼女達は妖怪で、幽香さんは人を食べます。それ以前に大抵の妖怪は人間では敵わないほど強力なのに」 本当はそんなことを口にするつもりは無かったのだが、ついつい言葉にしてしまう。お酒を飲んだということもあったのだろう。口が少し軽くなっていることを自覚する。 そんな阿求の言葉に、銀時は後頭部をがりがりとかきながら、静かに言葉にする。 「別に、思いっきり化け物ッてんならともかく、ああいう外見なら怖いとはおもわねぇよ。妖怪だからって、そいつの全部を否定することもねぇだろ。話せば案外いい奴なのかもしれねぇし、そうじゃないのかもしれねぇ。 あんまりご大層な御託並べられるほど人間出来てるわけじゃねぇけど、難しいこと考えたってしかたねぇだろ。もちろん、俺は食べられるの嫌だから、そうなったら必死になって抵抗するだろうし。 まぁなんつーか、……正直な話、そのへんは特に考えてもねぇんだわ」 「……いいんですか、そんなんで?」 あんまりな返答に思わず冷や汗を流す。ここまで危機感がかけてるのもどうなんだろうと、ちょっと思う。 しかし、妖怪だからってそいつの全部を否定することも無い。なんというか、その辺りはなんだかこの男らしいような気がする。 「いいんだよ。正直考えるのもめんどくせぇよ、んなもん」 要約するとそういうこと。銀時らしいといえばそうだろうし、なんともやる気のない返答がまさしく彼の性格を代弁しているような気さえする。 呆れた……というか、よくそんなんで妖怪と仲良くできるものだとある意味感心する。 いや、もしかしたらそういう性格だからこそ……なのかもしれないが。まぁ一つ確かなことは。 「変な人」 そう、変な奴という事実だけ。 「おいおい。こっちの連中は本当、人をなんだと思ってんですかね? ゆうかりんにも言われましたよ、それ?」 「あらら、幽香さんと同じ意見とは。じゃあやっぱり変な人なんですよ、銀さんは」 「おーい。頼むから歯に衣着せろオメェら。銀さんヘコムぞ? マジでヘコムよ?」 阿求の言葉にむすっとした顔のまま、グイッとお酒を煽る銀時。 拗ねたということがわかったので、それがなんだかおかしくてくすくすと笑ってしまう。 そんな阿求を憮然とした表情で見据えるが、「銀さーん、お酌しますよー」なんていう文の声でそちらのほうに視線を向ける銀時。 「まぁ、いいさ。あんたはもう寝てろよあっきゅん。飲みすぎは体に毒だぞー」 「それはこっちの台詞ですから。早く行ってきてくださいよ。ちゃんと寝てますから」 くすくすと笑って銀時を見送り、阿求は静かに眼を閉じる。 なんというか、やる気なくて、駄目人間で、何にも考えてなくて、明らかに好意を持てるようなところなんて無いのに、話していると不思議といやな気分はしてこない。 あ、そういえば……と、阿求はくすくすと笑った。 いつの間にか、あっきゅんなんていう変なあだ名で呼ばれても嫌悪感を抱いていない自分がいて、それをおかしく思いながら、まどろみの中に落ちていく。 毛布あったかいなぁなんて思ったのが最後の思考。きっと眼を覚ましたら凄い二日酔いに悩まされるんだろうけれど、それでもいいや。なんて、阿求は不思議と思ってしまった。 ちなみに翌日、昨日の宴会に参加した萃香以外の全員が二日酔いでぶっ倒れて、一日中まともに動けなかったのだが、これはこの際おいておこう。 ■あとがき■ こんにちわ、作者です。ギャグと宣言しておきながら結局最後はちょっとしんみりな話になってしまった…。 うん、力不足ここにきわまる。書きたかったものからどんどんずれていってこうなった罠。 銀さんがわりとあだ名で呼ばせまくってるのは、一番あだ名で名前呼びそうな人だから。 おかげでいろんな人があだ名で呼ばれてます。天子だって最初はてんことかよんでたし。 言うと殴られるんで言ってないですけど、この話の銀さん。 ちなみに、文のブンブンは自分や弟がよく使ってます。ブンブンかわいいよブンブン。 さて、今回はいかがだったでしょうか? 銀さんの強さはあくまで白兵戦でしか発揮できないので、単純な実力勝負なら東方側が強いと思ってます。個人的に。 難しい理屈こねるよりは、タダなんとなくで深くは考えないのが銀さんだと思う。…どうだろう? 違うかな? わかんないわw 最後のほうの銀さんの台詞にはイマイチ自信なし^^; それでは、今回はこの辺で。