※東方緋想天のネタバレがあります。ご注意ください。 今回オリキャラに準ずるキャラクターが登場するのでお気をつけください。 あと今回ちょっとネタがバッチイかも知れないのでお気をつけください。 空は今日も快晴である。これほどまでに快晴な日に、いささか珍しいものを感じながら彼と彼女は道を歩いている。 よろず屋を束ねると見せかけて、実は一番役に立っていなかったりする坂田銀時と。 最近よろず屋に住み着いた、優しいけれども不幸の塊の青い鳥の妖怪、アオ。 「あ~、駄目。銀さん二日酔いが酷いの。やっぱ、アオアオだけで行ってくんない?」 「そらあかんでぇ、銀さん。ウチも銀さん休ませたいんは山々なんやけど、これも仕事やからなぁ」 顔を真っ青にし、今にも嘔吐物をぶちまけそうなほど顔色の悪い銀時の言葉に、アオは少々申し訳なさそうに言う。 今、二人は仕事のために紅魔館近くの湖に向かう途中で、依頼内容は忘れてきた釣り道具を取りにいって欲しいというものだった。 それぐらい自分で行けよ。などと思った銀時だったが、こちらの世界は妖怪が居る分、安全が保障されているというわけでもなく、銀時が思う以上に危険なことでもある。 ただ内容自体は簡単ではあったので、二日酔いの銀時と、その付き添いとしてアオがこの仕事を分担することになったのだ。 ちなみに、他のメンバーは別の依頼を受けてそちらのほうで忙しいのである。 「銀さんはもー少しお酒の量を考えんとあかんで? そんなやから二日酔いで次の日キツクなるんやんか」 「なーにーもーきーこーえーねー。そしてやかましいっつーの。思春期の子供持ったお母さんですかコノヤロー」 銀時を思っての忠告であったのだが、銀時は耳を貸さず、そんな彼を視界に納めてアオは小さくため息をつく。早くも苦労人という役職が板についてきたようだ。 そんなやり取りをしている間に件の場所に到着したらしい。目の前にはそれなりの大きさになる湖が広がっており、その向こうには紅魔館が見える。 ようやく到着した。そうアオが思った瞬間、銀時が急に駆け出した。 なんだかんだでやる気があったらしい。そのことにちょっと安堵し、銀時のことを少し見直そうと思った瞬間。 「おぼろろろろろろろろろろろ~~~~~~~~~」 湖で盛大に嘔吐する銀時に、思わずずっこけるアオであった。 ■東方よろず屋■ ■第十七話「氷の妖精と大妖精と破壊の権化」■ 「ろろろろろろろ~~~~~~~~~」 「銀ちゃーん」 「ろろろろろろろろろろろろろろ~~~~~~~~」 「銀ちゃ~ん」 「ろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ~~~~~~~~~」 「銀ちゃんってば~~~~。ていうか長すぎやろ。そろそろ血反吐でてまうで?」 湖に色々口からぶちまけてる銀時を後ろから呆れたように見つめながら、アオは彼に語りかける。 この湖に二人がついてからはや30分。アオは依頼をこなそうと辺りを探し回っていたものの、肝心の銀時は最初の場所からまったく動かずにナニを吐き出していた。 断続的にこの調子である。というかそろそろ本気で胃液どころか水分が足りなくて干からびそうだ。 そうなる前に是非とも病院にいってほしい。無いけど。 「ばかやろうアオアオ。銀さんはなぁ、吐けば吐くたびにパワーアップしていくんだよ? 倍の倍更に倍って寸法よ。ほら、アレだ。 ジャングルの王者ターちゃんで主人公がパワーアップするあのパワーアップ方法と似たようなもんぼろろろろろろろろろろろろろ~~~~~~」 「ごめん。とりあえずどこから突っ込んだらええのかわからへんけど……アンタ、それマジで言うとるん?」 銀時の弁明じみた言葉にも、今度ばかりはアオの視線も冷たい。絶対零度もかくやといわんばかりに冷徹な視線が、未だに嘔吐する銀時を見下ろしている。 こんな一場面を見ると、彼女も根っこのほうはちゃんと妖怪してるんだと思わせるような視線だったりするが、場合が場合なだけに実にしまらねぇのである。 「銀さ~ん!! アオちゃ~ん!!」 「銀ちゃ~ん!! パシリー!!」 「あ、新八君に神楽ちゃん」 背後のほうから声が聞こえ、そちらのほうにアオが振り向けば新八と定春に乗った神楽がこちらに向かっているところだった。 そこで、はて? と、アオは銀時の嘔吐音をBGMに首をかしげた。 彼らは幽香と天子、そしてあの妖精三人組と一緒に別の依頼についていたはずなのである。どうしてこんなところにいるのだろうという思考に行き着いたところで、アオ前に二人と一匹が到着した。 「どうしたん? あっちの依頼は?」 「あぁ、あっちはある程度めどが立って幽香さん達だけで何とかなりそうだったから。ちょっと心配になってこっちにきたんだけど……」 「こっち来て正解だったみたいアルな」 そして新たに向けられる二対の冷ややかな眼光。それは寸分違わず、未だに湖で遠慮なくブツを吐き出しているよろず屋の主に向けられているわけで。 この場に幽香がいたら、間違いなく銀時をそのブツが浮かんだ湖に蹴落としていたことだろう。何しろ生粋のいじめっ子。つまりドS(サド)だし。 「ねぇねぇ新八、パシリ。今すぐに銀ちゃんそこの湖に蹴落としてもいいアルか?」 「いや駄目だろ。銀さん悲惨なことになるから。色々」 ここにも地味に毒を吐くサド属性少女が眼鏡にツッコミをいれられていたりするが、それはさておき。 「はぁ~、しゃあないなぁ。あとはウチがやっとくから、新八君たちは銀さんを……って、殺気!!?」 言いかけた言葉を遮り、アオはそれを敏感に感じ取って体を動かしていた。 二人を突き飛ばし、自身も転がるようにその場から離れる。瞬間、コンマ数秒の刹那の間をおいて、巨大な氷の弾丸が三人がいた場所を貫いていた。 アオは姉から厳しい特訓やら苛めやら暇つぶしやらを散々受け、更には持ち前の不幸体質もあって何度も生死の境をさまよった経験がある。 そういったせいか、彼女は意外と自身に対する悪意やら敵意にはひどく敏感だった。今回はその恩恵といえよう。 では、彼女、ひいては彼らに敵意を向けたのは誰なのか? 弾丸が飛来してきた方角に、つまりは上空に視線を向ける。その場所には――― 「アタイの縄張りで、随分好き勝手してくれるじゃない」 怒りという感情を秘め、新八たちを見下ろす青の衣装に身を包んだ氷の妖精の姿がそこにあった。 肌がぴりぴりとする。アオ自身が持つ敵意に反応する自身の体は、的確に目の前の妖精がこちらに敵意を向けていることがよくわかった。 一体なん――― 「ろろろろろろろろろ~~~~~~~」 『ごめんなさい』 でかは、考えるまでも無く、間違いなく銀時の『アレ』である。そんなわけで、常識人二人はすぐさま頭を下げた。 イヤだって、誰だって人の生活圏にあんなことされれば激怒すること間違いないのである。 というか銀時。そろそろマジで体中の水分が湖の中に抜けていったんじゃなかろうかといわんばかりである。 その件のよろず屋トップといえば、ようやく少し落ち着いたらしい。彼は気だるそうに上空を見上げ、そして一言。 「あれ? 幼女が空を飛んでいる?」 「銀さん。こっちの世界じゃ幼女が空飛ぶことなんて珍しくないですから」 状況をまったくもって理解してない上司の言葉に、新八がため息つきながらツッコミをいれ、この状況をどうしようかと真剣に考える。 説得でもするべきだろうか? いや、この考えは即座に否定する。もしも同じ状況に立たされたとき、自分はどうするだろうか? 結論、間違いなく怒る。そりゃもう徹底的に。 「こうなったら弾幕勝負でたたき伏せるしかないアル!! 行けパシリ!! 君に決めた!!」 妙案といわんばかりに、どこぞの何とかモンスターの主人公風に神楽がズビシッと氷の妖精を指差した。 その顔にはなんでだか自信満々の表情が張り付き、実に楽しげだったのだが……。 「……あの、神楽ちゃん。ウチが空を飛べへんこと忘れとらへん?」 そんな、アオのつめたーい言葉で、ピタリとその動きが硬直したのであった。 そうなのである。確かに、アオ自身は幻想郷の住人であり、スペルカードも一応三枚ほど所持していたりもする。 が、しかし。弾幕勝負とはつまるところ、空中戦が基本であり空という空間を縦横無尽に駆け巡る回避手段があってこその決闘方法なのである。 もちろん、格闘を含めた変則的なスペルカードルールが無いわけでもないが、それでも「飛翔」という行為は重要なファクターである。 つまり、生まれつき翼が不自由で空を飛べない彼女には、弾幕勝負は土台無理な話なのである。せっかくのスペルカードもこれでは宝の持ち腐れだ。 そんなわけで、ゆっくりと神楽はアオに視線を向け、そして一言。 「ケッ! マジ使えないアルこの鳥。飛べるようになってから出直すアル」 「オィィィィ!! 言葉が辛辣すぎるんですけど!? 本人目の前にして言う台詞じゃないんですけどぉぉぉぉぉ!!?」 唾のオマケつきで放たれた辛辣なその言葉に、はたから見ていた新八が的確にツッコミ、神楽の言葉にトラウマを抉られて「うぐっ!?」とうめいて眩暈を起こすアオ。 そんな光景を見下ろしながら、とりあえず名乗るタイミングも攻撃するタイミングも完璧に逃してしまった氷の妖精チルノは、眼下のカオス空間に硬直するばかり。 そんなチルノの肩を、ポンッと叩くだれか。そちらにチルノが振り向けば、割と長い付き合いになる名も無き大妖精がおどおどした様子でそこにいた。 「やめてあげようよ。あの男の人はただ気分が悪かっただけなんだろうし、それにちゃんと謝ってるから……」 「冗談じゃないよ。とりあえずあの男だけは絶対に許さないんだから」 眼下にいる銀時を睨みつけながら、チルノは語る。今にも凄惨な表情から憎悪が噴出しそうなほど、彼女の怒りはとても深いのだが……。 (じゃあ何で最初ッからあっち狙わなかったんだろう?) そんな疑問があったので、大妖精は緊迫した空気には感じられず、小さくため息をつくのであった。 その緊迫した空気がもてない原因は、下でちょっとしたミニコントを展開しているメンツにも原因があるのだろうが。 さて、この状況をどうしようかと大妖精は考える。そもそも、彼女はそういった争いごとといった類のことが苦手である。やりすぎるチルノを何かと止めるのも大方彼女の仕事だ。 だがしかし、現状はどうだろう? チルノがこうなったら、熱された鉄が長い間熱を持つのと同じように、怒りは早々には収まるまい。氷精の癖に。 かといって、確かにあの下のメンバーが悪いのは間違いない。何しろ、湖の一部がステキに変な色に濁ってるし。 「大体ここはアタイのテリトリーなの。言い換えればここはアタイたちの家に他ならないのにさ、こんな仕打ちされて耐えられるのアンタは!!?」 「そ、それはそうだけどぉ」 これはヤバイ。この妖精、今回はマジで許す気が無いらしい。大声を張り上げ、傍らにたたずむ大妖精に罵声を浴びせかける。 さすがにこれにはおびえるように肩を震わせ、大妖精は少し涙目で曖昧に言葉を返す。 このチルノという妖精。他の妖精と比べると大きすぎる力を持つ。無論、妖怪と比べるなんておこがましいにもほどがあるが、それでも下手な人間よりはよっぽど強かろう。 ……まぁ、非常に残念な頭の持ち主ではあるが。⑨は伊達じゃないのである。 『家』 そして、その単語に敏感に反応したのは、下でコントのような掛け合いをしていた新八、神楽、そしてアオである。 チルノをどうにかして撃退しようと考えていたこの三人は、上で聞こえていた怒鳴り声とその内容を聞き、態度を一変させて銀時を冷ややかに見つめていたりする。 「銀さん、アンタ最悪ですね。人の家でゲ○するなんて」 「マジ外道アル。いっぺんあの妖精にボッコボコにされたほうがいいアル」 「そやね。もういっそのことそこの濁ったとこの水飲み干したほうがええんとちゃうか?」 「ワンっ!!」 「ちょっとぉぉぉぉぉ!!? 何でいきなりそんなに辛辣なの!? 銀さん何かした!?」 いきなり四面楚歌状態に陥った銀時が、たまらず大声で反論する。何しろ、さっきまで比較的味方だったメンツがいきなり敵に回ったのである。 銀時にしてみればたまったものではなかっただろう。何しろ、定春までもが同意するかのように一声鳴く始末。 銀時が声を大にして反論する中、アオが深いため息をついて銀時の体を回し、背中を押すように銀時を歩かせる。 「お、おいおい」 「ええから、ちゃんと銀さんの口から謝らんと。ワザとや無いにせよ、人の家で吐いてもうたんは事実なんやから」 ほらほらと、アオは銀時の背中を押して歩かせる。 いい加減、銀時を孤立させるのも寝覚めが悪いと思っての行動であり、彼女もこの湖があの妖精の家になっているなど思いもよらなかったのだ。 銀時に非が無いわけではないが、だからといってここまで一方的に集中放火するようなことでもないように思う。 だから、ここで銀時に謝らせて、あとは何とか話し合いで解決しようと、アオはそう考えていたのだが……。 「―――禁忌『レーヴァテイン』!!」 刹那、赤光と爆炎が世界を包んだ。 「あぁぁぁいきゃんふらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっっっ!!!!?」 吹き上がる爆炎。煌々たる灼熱に灯った魔剣の一撃は、辺りを根こそぎ薙ぎ払い、大地を蒸発させ、近隣の森の一部を容赦なく焼き斬った!! そんな某腹ペコ騎士王の聖剣クラスの一撃を受け、アオはこれまた盛大に吹っ飛んだ。そう、吹っ飛んだ。大地にたたきつけられバウンドして空高く、真上に吹っ飛んだ。 キラーンなんて擬音が聞こえてきそうなほどに、意味不明な悲鳴を上げて綺麗に星になったアオ。 そして大地には、このスペルカードによる被害で生み出された生々しい傷跡がくっきりと残っている。 森の一部が一直線に、根こそぎ荒野になった傷跡。上空から見れば線によって表される被害範囲は、これまた結構深刻だったりする。 そんな光景を、ぽかんとした表情で見つめているチルノと大妖精。 それも無理らしからぬことだろう。罵声を浴びせようと思った瞬間、数コンマあとには見るも無残な戦後のような惨状が残っただけなのだから。 いや、ほらだって。あの銀髪天然パーマも巻き添え食って黒焦げになってるし。 「銀さぁぁぁぁん!!? アオちゃぁぁぁぁぁん!!? ちょ、ナニコレ!! 何だこれ!!? 一体何事ですかぁぁぁぁ!!?」 「うぉぉぉ!? 凄いアル!!? まるでミサイル乱れ打ちしたような惨状アルね!!」 新八と神楽が突然の事態に大声でそんな言葉をつむぎだす。中身は決定的に違っていたが、それはそれでまぁ仕方が無いことなのかもしれない。 ワン、と定春が一声鳴いて駆け出していく。そちらのほうに視線を向ければ、日傘を片手に、鋭い眼光を携えた一人の少女の姿。 薄い金髪のセミロングだが、髪の一部をサイドにまとめてあげており、その瞳はルビーのような真紅。歪な形をした七色のダイヤ形の翼。 「定春のお友達を、銀時をいじめる奴は許さないんだから」 「フ、フランちゃん!? そ、それにレミリアちゃんや咲夜さんまで!?」 その人物の姿を認めて、新八は心底驚いたように言葉をつむぎだしていた。 確かに、その日傘を差した人物はフランドール・スカーレットその人だ。その傍らには、確かに彼女の姉である日傘をさしたレミリアの姿と、従者たる咲夜の姿も見て取れた。 どうやらよろず屋にこれから向かうところだったらしく、今回はあのフランも一緒だったようである。 「フラン、銀時まで巻き添え食ってるじゃない。ちゃんと手加減しないと」 「あー、そうだね。ごめんなさい、お姉さま」 「個人的には妹様のアレ食らって原型をとどめていること自体に驚きですが」 それぞれ実にいい加減な意見を述べ、咲夜がもっともらしいことを呟いていたりする。 そしてその言葉の直後、ムクリと起き上がる黒焦げになった坂田銀時。この時点で、咲夜の驚きは臨界点を突破したといってもいいだろう。 というか、ほとんど炭の状態で平然と立ち上がらないでいただきたい。ぶっちゃけかなり怖い。 「あ、銀時~!やっほー!!」 そしてそんなホラーな銀時に、のんきに言葉を掛けるフランドール・スカーレット。さすがは悪魔の妹。精神的にかなり図太い。情緒不安定だが。 「やっほーじゃねぇぇぇぇぇ!!! 何してんの!? 何してくれてんの!? 何してくれちゃってんのっ!!? 危うく死ぬところだったじゃん!!」 「……普通死んでるわよ」 至極まっとうな反論が口を衝いて出て、銀時は盛大に怒っていたりするのだが、これまたレミリアのまっとうな意見が飛び出て少し押し黙る。 まぁそれも当然か。普通ならフランの手加減無しのレーヴァテインの一撃なんて、人間が生き延びれるような代物ではない。というかむしろ、食らえばどんな生き物とて灰すら残るまい。 某12の命を持った大英雄ですらも少なくとも10以上の命はまとめて殺しつくせちゃうようなトンでも破壊力なのである。 例えるなら、虚化した一護の全力月牙天衝。 例えるなら、全力全開殺傷設定スターライトブレイカー。 例えるなら、スーパーサイヤ人状態の元気玉。 例えるなら、某腹ペコ騎士王の聖剣とか、某慢心王の乖離剣。 例えるなら、ファイ○ルファン○ジーシリーズの隠し召喚獣。 例えるなら、ガン○ムDXのツインサテライトキャノン。 例えるなら、新ゲッ○ーのストナーサンシャイン。 例えるなら、イデ○ンの最終兵器イデ○ンガン。 フランの全力全壊(誤字にあらず)のレーヴァテインは要するに、ニュアンス的にはそんな感じなのである。 後半かなり誇張気味な気もするが、そんなもんを人間の身で受けて平然と反論する銀時はある意味貴重な存在である。 というか、本当に人間止めてるのかもしれない。と、最近のレミリアはちょっと思うようになったりする。 パッパッと汚れを祓うようにするしぐさをすると、外側にこびりついた炭が落ちていき、元の銀時の姿を徐々に取り戻していく。 マジで人間止めてるのかもしれない、この男。ギャグ補正、侮りがたし。 その時、ずしゃっと銀時の傍に何か落ちてくる。 ピクピクと痙攣し、全身ズタボロになったアオが、青い顔をしながら半なき状態で空から降ってきた。 今まで落ちてこなかったとか、どれだけ空に停滞していたのだろう? 心なしかかなり寒そうだったりする。 「あかんなぁ、ウチ今夢を見とったんや。なんか、ソラねぇちゃんに焼き鳥にされて食べられる夢を見たような気がするわぁ」 かなり憔悴しきった様子で、アオはそんな風に言葉をつむいでいた。 そんな彼女を、ついつい痛ましそうに見つめる新八。夢の内容があんまりだったからか。それともそれは俗に言う走馬灯だろ!? とツッコミを入れるべきか悩んでいるのか。 まぁ、それはこの際おいておき、フランはそのアオの姿を認めると、ゆっくりと歩みを進め、アオを見下ろした。 「わかった? 定春のお友達に手を出したら、今度は殺しちゃうよ?」 「だぁぁぁ!! ストップ!! ストォォォォップ!! 違うんだよフランちゃん!! その子はウチに新しく入ってきた従業員なんだ!!」 今にもアオを殺しそうなフランの状態に気がついたか、今度ばかりは新八が慌てて止める。 その言葉がよほど意外だったのか、フランもレミリアもきょとんとした表情を浮かべ、新八に視線を向けたあと、そのまま定春に視線を向けた。 「そうなの? 定春?」 「ワン!」 フランの言葉に、元気よく定春が肯定する。こういったとき、知性がそれなりに高い定春は絶対的な証言者となりうる。 ……まぁ、なかなかに腹黒い一面を盛っていたりするが、少なくともフランは疑わないだろう。 「うーんと、ごめんね? なんか勘違いだったみたい」 「あ、あははははは。か、勘違いかぁ。そらよかったわぁ」 フランの申し訳なさそうな謝罪の言葉に、アオは顔を引きつらせながら言葉をつむぎ、乾いた笑い声を上げながら先ほどのスペルカードによって生まれた惨状を見渡した。 (……よく生きとったな、自分) 手放しで自分を褒めてあげたくなった。いやだって、生きてること自体がまさに奇跡なのである。 まぁ、体はズタボロな上にほとんど動かせないけど。 さすがは不幸体質といったところだろうか? いや、不幸体質にそぐわぬ幸運振りというべきなのだろうか? いや、レーヴァテインの直撃を食らうこと自体が不運で、それを食らってズタボロになりながらも何とか生き残った幸運。 相対的にみればプラマイゼロ……ややマイナス寄りといったところか。 「定春~、パシリを背中に乗せてあげるとイイね。それとフラン、よくやったアル」 「いや怒れよ! 今のどのへんがよくやったんだよ!!」 そしていつものやり取りに発展するよろず屋メンバー。そんなやり取りを、上空から見下ろして、完璧に存在を忘れ去られたっぽい妖精二人。 プルプルと体を震わせ、無視されている怒りがこみ上げてきて、それは今まさに臨界点を突破した。 「ふざもがっ!?」 「し~!! チルノちゃん静かにっ!!!! まずいってば、相手がまずいってば!!」 怒鳴り散らそうとした刹那、大妖精がチルノの口を塞ぎ、あわててその場から離れていく。 未だに怒り覚めやらぬ親友を何とか抑えながら、大妖精はこれからのことについて本気で頭を悩ませるのであった。 ■あとがき■ どうも、最近暑いですね。こんばんわ、白々燈です。 今回、自分でもちょっとどうかと思うネタばかりですが、皆さんが不快にならないか正直心配で仕方がありません。いかがだったでしょうか? 最近の出来事。 先日、ようやくFateの格闘ゲームをプレイしました。持ちキャラはアサシンとランサーです。 対人戦は負け続きですねぇ、うまく勝てません。 あと最近になってようやくニトロロワイヤルを購入。現在の持ちキャラはアナザーブラッドですね。弟が沙耶使ってます。というか、セイバーの約束された勝利の剣のヒット数とダメに吹いた私はおかしいでしょうか? それにしても最近本当に暑いですね。おかげで執筆がなかなか思うように進みません。気だるくて。 暑さはマジで敵です。こっちの地域本当に暑くてたまりません。 それでは、今回はこの辺で。