<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.3137の一覧
[0] 東方よろず屋(東方シリーズ×銀魂)【完結】[白々燈](2008/08/26 23:12)
[1] 東方よろず屋 第一話「地震の時は机の下に隠れてやり過ごせ!!」[白々燈](2008/06/01 15:29)
[2] 東方よろず屋 第二話「教師の説明は異様に長いから眠くなる」[白々燈](2008/06/01 15:30)
[3] 東方よろず屋 第三話「花が咲くときは花粉症に気をつけろ!!」[白々燈](2008/06/23 21:27)
[4] 東方よろず屋 第四話「お酒は心の潤滑油って徳川家康が言ってたような気がするけどやっぱ気のせいだ」[白々燈](2008/06/05 17:49)
[5] 東方よろず屋 第五話「図書館に引きこもっても肝心なことはわからない」[白々燈](2008/06/12 00:00)
[6] 東方よろず屋 第六話「過剰なスピードの出しすぎは事故の元だから気をつけろ!!」[白々燈](2008/06/12 00:01)
[7] 東方よろず屋 第七話「有頂天って実は場所のことらしいが知る人は少ない」[白々燈](2008/06/13 22:09)
[8] 東方よろず屋 第八話「嫌よ嫌よも好きのうちなんて所詮妄言って誰かが言ってた」[白々燈](2008/06/20 23:23)
[9] 東方よろず屋 第九話「太陽と月と星に吼えてもただ虚しいだけである」[白々燈](2008/06/20 23:24)
[10] 東方よろず屋 第十話「中華って何気においしい料理が多いよね」[白々燈](2008/06/23 21:30)
[11] 東方よろず屋 第十一話「吸血鬼の飲む紅茶ってどんな味するのか気にならないこともない」[白々燈](2008/06/30 19:43)
[12] 東方よろず屋 第十二話「八目鰻におでんにロックンロールってもはや意味がわからねぇ!!」[白々燈](2008/06/30 19:44)
[13] 東方よろず屋 第十三話「狐は油揚げが好きだといわれるけど実はさほどでもないらしい」[白々燈](2008/06/30 19:46)
[14] 東方よろず屋 第十四話「幽霊と亡霊の違いがイマイチわからないがちゃんと違いがあるらしい」[白々燈](2008/07/06 18:52)
[15] 東方よろず屋 第十五話「幸せの青い鳥とか言うけど割りと結構見ること多い」[白々燈](2008/07/09 00:34)
[16] 東方よろず屋 第十六話「死神でもサボりたいときにはサボるものなのです」[白々燈](2008/07/23 22:54)
[17] 東方よろず屋 第十七話「氷の妖精と大妖精と破壊の権化」[白々燈](2008/07/23 22:57)
[18] 東方よろず屋 第十八話「梅雨の雨ほど気が滅入ることもない!!」[白々燈](2008/08/07 14:29)
[19] 東方よろず屋 第十九話「有頂天変~WONDERFUL HEAVEN」[白々燈](2008/08/09 23:39)
[20] 東方よろず屋 最終話「幼心地の有頂天」[白々燈](2008/08/17 18:46)
[21] 東方よろず屋 エピローグ「彼と彼女の”また会える日まで”」[白々燈](2008/08/24 01:34)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[3137] 東方よろず屋 第一話「地震の時は机の下に隠れてやり過ごせ!!」
Name: 白々燈◆7529948c ID:4e6b5716 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/06/01 15:29

 ※東方緋想天のネタバレがあります。ご注意ください。

 ありとあらゆる幻想が住まうこの幻想郷に銀時達が事故により来訪したその当日、彼らはワーハクタクの上白沢慧音が守る人里で生活することが決まった。
 もちろん、これは件の張本人、八雲紫が彼らの世界を見つけ出すまでの間の処置であり、そうなれば彼らは改めて自分達の世界に帰ることとなる。
 問題があるとすれば、銀時たちがいた世界を見つけ出すのが、はっきり言って絶望的な数値だという事実だろう。何しろ、件の張本人は、どうやら寝ぼけて能力を行使してしまったらしく、一体何処の世界とつないでしまったのかが皆目見当もつかないということ。
 世界とは、それこそ可能性の数だけ広がっている。あらゆる異世界、あらゆる時間軸、あらゆる世界軸を調べまわらなければならず、その数ははっきり言って無限といって差し支えはない。
 たとえるなら、銀河系の中から宇宙に漂う米粒を探すようなもの。一日どころか百年かかっても見つかるかどうかも不明。いくら妖怪たちの賢者と呼ばれ、境界を操る程度の能力を持つ彼女でさえ、こればかりはどうしようもなかった。
 さすがにばつが悪かったのか(どうかはちょっと疑問だが)、紫は銀時たちがいた世界を探してはくれるらしい。もっとも、彼女のことだから、マイペースに調べるんだろうが、それはもう彼女に任せるしかない。というか、むしろ彼女じゃないと無理だというのが現実なのである。


 そんなわけで、銀時たちは人里でいつものように「よろず屋」を再開することを決め、慧音に用意してもらった家で寝たのが昨日のこと。
 さっそく、気分を一新してよろず屋を始めようという矢先に―――

 「……お~い、新八ぃ。二日酔いの薬……」
 「あ……頭がガンガンするアル」

 約二名が昨日の宴会で飲みすぎて二日酔いでダウンしていた。



 ■東方よろず屋■
 ■第一話「地震のときは机の下に隠れてやり過ごせ!!」■



 「だから言ったじゃないですか。昨日あんなに馬鹿みたいに飲んで」

 呆れたように新八が呟き、布団で横になっている二人に視線を向けた。
 銀時と神楽。二人はばっちり二日酔いでノックダウンし、まともに布団から出られない状態だったのである。まぁ、その辺りは彼と彼女に飲ませまくった鴉天狗と鬼にも責任はあるのかもしれないが、それはこの際おいておく。

 「し…仕方ねぇだろーが。お前、美少女の勧めるお酒にケチつけるのは男のやることじゃね……ウップ」
 「新八、わかってないアル。女には、避けられない戦いがあるヨ。あんなちびっ子に酒飲みごときで負けてられな……ウェ」
 「はいはい。吐くならトイレに行ってくださいよ。それから、銀さんはただでお酒が飲めるから浴びるほど飲んだだけでしょうが。
 それから神楽ちゃん。あれ無理だから。あの鬼の女の子の相手は無理だから。あの子、神楽ちゃんが酔いつぶれた後も、結局最後までがぶがぶ飲んでたし、あの宴会で一番飲んでたの、あの子だと思うよ」

 なんか適当な屁理屈をこねる二人に、新八はため息をつきながら刺のある言葉をつむぎだす。実際、昨日の宴会で酔いつぶれた神楽と銀時を背負って帰ったのは新八と、親切にも神楽を背負ってくれた慧音だ。
 その辺、少し反省しろというニュアンスが込められているんだろうが、あいにくこの二人はそんなこと聞きはしないのである。

 「しょうがない。この時間だったら、確か鈴仙ちゃんが薬を売りに来てるっていう話でしたから、二日酔いの薬貰ってきます」

 仕方がないと呟きながら、新八は定春をつれて新居を後にする。定春を連れて行ったのは、新八なりの配慮だ。これで定春が今の状態の二人にじゃれ付いたら、大きさが大きさだ。二人を圧殺しかねない。
 そんなわけで、新居には二日酔いに悩まされるマダオとチャイナが残されることになった。
 ずきずきガンガン、頭で鐘がなってるかのような痛みに耐えながら、ひとまず新八の帰りを待つ二人。

 そんなときに、トントンッと、来客を告げるノックが響いた。
 だがしかし、二人とも酷い二日酔いでまともに動けない。そんなわけで、銀時は神楽に一言。

 「おい、神楽。お前出ろって」
 「銀ちゃんこそ出るアル。ここ銀ちゃんの家ネ」
 「ばっかオメェ、ここは俺たちの家だろーが。新八がいないんだから、お前が出ろって」
 「冗談じゃないアル。こっちだって頭ガンガンしてるアルよ。たく、肝心なときに新八いないとか、マジ使えないアル。これだから新八は」

 自分が動きたくないもんだから、お互いに押し付けあう醜い二人。そしてさりげなく暴言を吐かれるこの場にはいない志村新八。ちなみに、この時にもしっかりとトントンッというノック音は続いており、気がつけばドンドンッという音に変わってきている。
 どっちも出る気がなく、二日酔いに悩まされた二人がとった行動は―――

 「は~い、居ませんよ~。居留守ですよ~」

 恐ろしく最悪な方法だった。何が最悪ってもういろんなところが。
 神楽の言葉に、ピタッとやんだノック。まさか本当にあれで帰ったのか? などと思う銀時だったが、二日酔いの彼は、まぁいいや。と、適当に考えることを断念。
 これで落ち着いて二日酔いと戦える。そんなことを思った刹那。
 銀時たちに用意された住居は、突然起こったマグニチュード8超えの大地震であっさりと潰れることとなった。









 無論、二日酔いでダウンしている二人もろとも。










 「ふぅ」

 小さく息を吐き、少女は満足そうに表情を綻ばせる。鮮やかな蒼の長い髪を掻きあげ、地面に突き刺していたオレンジ色の剣【緋想の剣】を抜いて直すと、眼前の廃墟となった建物に視線を向けた。
 そこだけが綺麗に倒壊しており、隣の住居にはまったく被害がない。まるで【そこだけに地震が起こった】ような現象による結果が、今まさに眼前に広がっている。
 比那名居天子(ひななゐてんし)。天界に住む天人くずれ。その能力は【大地を操る程度の能力】。地盤沈下や土砂崩れ、さらには局地的な地震すらも可能にするその能力を考えれば、この現状が誰の仕業かは想像することは容易だった。

 「まったく、失礼しちゃうわ」

 クスっと冷笑を浮かべて、瓦礫のほうに視線を向ける。人がわざわざ尋ねてきたというのに、堂々と居留守宣言。これにイラッと来た天子は、何の戸惑いもなく地震を起こして、銀時たちが居た住居を壊滅させたのである。
 まぁ、退屈で退屈で暇だったからという理由で、幻想郷では重大な役割を持つ博麗神社を倒壊させたり天候を操ったりなんていう異変を起こした彼女にしてみれば、何の変哲もない地上人の住居など考慮することもなかっただろう。
 末恐ろしい。我が侭ここに極まる。

 『ぶはっ!!』

 瓦礫から顔を出す二つの顔。その顔といえば当然、生き埋めになった銀時と神楽である。

 「何事!? ちょっと何事!! なんで家だけ倒壊してんの!? あの地震でなんで家だけ!? 今はやりの欠陥住宅ですかコノヤロー!!」

 あんまりの理不尽な展開に、銀時がツッコム。そして二日酔いには勝てないのか、その直後に神楽と共にグロッキー。「あー、駄目だ、頭イテェ」と完全にダウン。
 そんな二人に歩み寄る天子。瓦礫になかば挟まれたような状況の二人を別に助けるようなことはせず、ニコニコ顔で二人の前に立った。

 「こんにちわ、銀さん。神楽」

 なるべく優しそうに、しかし恐ろしいオーラを振りまきながら、二人に話しかける天子。そんな彼女の顔を、銀時は見た覚えがあった。そう、俗に言うキャバクラフェイス。
 ゾクリと背筋が凍るが、それよりも今は二日酔いの頭痛のほうがずっと痛い。……はずなんだけど、やっぱり目の前の美少女もかなり怖いわけで。

 「え~っと、誰だっけ?」

 が、残念ながら銀時は名前が思い出せなかった。そして放たれる恐ろしいほど鋭い蹴り。天子の放った蹴りは銀時の側頭部に命中し、「ぐはっ!?」という短い悲鳴を上げさせる結果となった。
 天人なのにに足癖悪いのはいいのか? イイのです。だって彼女は不良天人だから。

 「あー、悪かった。思い出した思い出した。てんこちゃんだったね。いやー、昨日はお世話になったね、てんこちゃん」

 鼻血垂らしながら言葉にした銀時に続いて襲ったのは踵落とし。寸分たがわず銀時の脳天に直撃し、何だか洒落にならない音と共に「アベシッ!!?」という短い悲鳴と共に瓦礫にキスすることになった坂田銀時。
 それにしてもこの天人、本気で足癖がワリィのである。

 「銀さん。私の名前は比那名居天子です。てんこじゃ無いですから」

 前髪を掴んで顔を持ち上げ、なんかもう血だらけの銀時ににこやかに、しかし青筋を浮かべながら言葉にする天子。てんこちゃん発言がよっぽど気に障ったらしい。目が激しく笑ってない。

 「はいー、スイマセンッシター。でもね、銀さん二日酔いで頭痛いんですー。お願いだから、そっとしといてくれませんかね?」
 「大丈夫、きっと私の踵落としで痛みがプラマイゼロになってるはずよ。よかったわね、私がサド気質で」
 「いや、痛みが倍増しただけだから。銀さんマゾの気質ないからねー、天子ちゃん」

 朦朧とする意識の中、一応そんな主張をしてみるものの、バッサリとめちゃくちゃな論理で踏み倒されそうになる。あ、ヤベ。血がたんねぇ。なんて思いはしたが、現状はまったくといっていいほど好転しちゃいないのである。

 「せっかくお客が来たというのに、堂々と居留守宣言はどうかと思うなぁ。おかげでついカッとなって 私の大地を操る能力で家を潰しちゃったじゃない」
 「ってオィィィィィイイイ!! あの地震お前の仕業かいっ!!」

 聞き逃せない発言を前に坂田銀時血まみれで復活。傍目から見ればかなりホラーな光景だが、当の銀時はそんなことを気にする暇もない。何しろ頭の痛みも二日酔いの苦しみも一発で吹き飛んでしまった。血だらけだけど。
 一方、そんな銀時に臆することもなく天子は少し頬を膨らませて。

 「だって、あったまに来たんだもん」
 「もんじゃねぇぇぇぇええええ!! お前、語尾可愛くすれば許してもらえると思ってんじゃねぇぞコンチクショー!! どぉすんのコレ!? 一日たたずで家が潰れるとかどうすんのこれぇぇぇえ!!?」

 プリプリ怒ってみせる天子だが、生憎銀時の怒りのボルテージはとどまるところを知らない。いや、まぁいきなりそんな理由で家を壊されたらそりゃ怒るだろうけど。
 が、やっぱりそんな銀時に動じない天人くずれ。肝が据わってるんだか、それともただ単に鈍いのか。

 「大丈夫よ。私が天人たちに言ってちゃんと直させるから」

 あっけらかんと言う。んな無茶な!? とは思うが、実際彼女は天界での権力はそれなりに高く、他の天人に家を修復させる命令などお手の物なのである。そんな様子に気が抜けたのか、銀時は小さくため息をつきながら後頭部を掻く。どうやら何を言っても無駄なのだということを悟ったらしい。こうなったらおとなしく用件だけを聞いてとっとと追っ払おうと心に決めて―――

 「って、オィィィィィイイイイイイイ!! 家が無いんですけどどういう状況だぁぁぁぁぁぁぁああああ!!?」

 鈴仙をつれて戻ってきた新八の魂の絶叫(ツッコミ)が、人間の里中に響き渡ったのである。
 ちなみに、近くにいた鈴仙がその割れんばかりの音量に耳を押さえて気絶したことをこの際追記しておく。


 ■■■■■


 「んで、話って?」

 鈴仙から二日酔いの薬を貰って動けるようになり、天子が天界の天人に家の建て直しを命令したところで、疲れたように、銀時は目の前の少女に言葉を投げかけた。ここは幻想郷には珍しい西洋風のカフェ。そこの外の席で、銀時、神楽、新八、そして一日足らずで家を倒壊させた張本人、比那名居天子が座っている。ちなみに、定春は神楽の席の足元で丸まって欠伸をしていた。

 「これよ」

 そういって天子が三人に見せたのは、一枚の新聞広告。文々。新聞という名が打たれており、その一面には大きく、「人里になんでも依頼を引き受けてくれるよろず屋が開業」という見出しで記事が書かれていた。

 「あぁ、これ文さんの新聞じゃないですか。まさかもう新聞にして宣伝してくれてるなんて」

 これは新八の弁。昨日の夜の宴会の折、銀時や新八が自分達が向こうの世界でなにをやっていたかというのを一同に聞かせていて、コチラの世界でもそれを生業にしていくつもりだという話をした。そこで鴉天狗の新聞記者、射命丸文が新聞の記事にもなりますし、宣伝もかねてどうでしょう? なんていう話を持ち出したのである。
 まさかもう発刊したとは……幻想郷最速の二つ名は伊達じゃないらしい。

 「じゃあ、なんだ? 依頼でも持ってきたのか?」
 「いいえ。……うーん、でも依頼といえば依頼かもねぇ」

 銀時の言葉に、天子はそういって言葉を濁す。その言葉の真意が読み込めず、イマイチよくわからないといった顔をするよろず屋メンバー。
 そんな一同の表情に満足しながら、天子はクスっと笑ってそして一言。

 「私もよろず屋で雇ってもらえないかしら? それが私の「依頼」よ」

 なんて、そんな一言を放っていたのである。
 たっぷり沈黙する一同。そいて大体20秒ぐらいたった頃、銀時が迷惑そうな顔をしてはぁ……とため息をつく。

 「お前ばっかじゃねぇの。人の家壊すような奴雇うわけねーだろーが。寝言は寝てから言え、てんこ」

 ゴズッ!! という鈍い音。致命的な一言を吐いた銀時の頭を、天子は要石を持って思いっきり強打した。先が尖ってるもんだからばっちりと刺さる要石。どくどくぴゅーぴゅーと頭から血が吹き上がる銀時に向かって、ニッコリと目の笑ってない笑顔を浮かべる天人くずれ。

 「銀さん!! 銀さぁぁぁぁん!! ちょ、何してるんですか天子ちゃん!! 明らかに致命傷なんですけどこの傷!!?」
 「雇って、も・ら・え・な・い・か・し・ら?」
 「聞けぇ!! このクソアマァァァァアアアアア!!!」

 新八の発言を綺麗に無視し、もう一度、アクセントを強めてニコニコ笑顔でのたまう天子。そんな彼女に過激な発言でツッコミを入れる新八。そしてクソアマ発言をした新八にも、要石を投げつけてノックダウン。鼻血を吹き上げ、きりもみしながら吹っ飛ぶ地味めがね。

 「えーっとですね、天子ちゃん。ひとまず理由を聞いていいですかね?」

 下手に出ながら、とりあえず頭に刺さった要石をはずす銀時。なんだかんだでものすごく頑丈な男である。そんな銀時の様子に多少驚きながら「あなた頑丈ねぇ」なんて呆れたように口にしてから、天子は心底憂鬱そうに言葉をつむぐ。

 「だって、天界にいても暇なんだもの。博麗神社の宴会は週に一回だし、普段は本当にやることがないのよ。それなら、面白おかしいあなた達と一緒にいたほうが有意義だと思っただけよ。ほら、ここの地理には詳しくないでしょ? 私がいればその辺りはカバーできるし、この世界の者が一人ぐらいいたほうが、都合がいいと思うのだけど。どうかしら、悪くはないと思うけど?」

 そういって、彼女は紅茶を口に含む。
 それは、天子にとっては紛れもない事実だ。天界という場所はとにかく退屈な場所で、天人でありながら自分に正直で我侭な天子には苦痛な場所なのである。それなら、このおかしな面子の手伝いをするほうがよっぽど面白そうだと、ただそれだけの話だ。
 長い年月を生きると、暇であるということはそれだけで苦痛になる。そういった場合、時を重ねた妖怪や天人は、「いかに」面白くあるかという過程を楽しむようになる。

 「……断ったら、どうするアルか?」
 「あの家を直すの止める。直っててももう一回ぶっ壊すわ」

 神楽の言葉にもにべもない。しかも真顔。要するに、はじめッから銀時たちに拒否権なんてないわけで。そんな天子の言葉に、銀時は「仕方ねぇ」なんて呟いて、チョコパフェをぱっくりと食う。

 「わーったよ。うちで雇ってやる。ただし、給料なんてでねーし、しっかり働いてもらうかんな」
 「OK、私は退屈しなければそれでいいのよ。交渉成立ね」

 銀時のやけくそ気味な言葉に、天子は満足そうにうなずいて、手を差し出す。

 「では、あらためまして。比那名居天子よ、これからよろしく」
 「へーへー。坂田銀時、趣味はジャンプ読むことで好きなものは甘いもの、歳は秘密っつーことで。よろしく」
 「オィィイイ!!? なんだその合コンみたいな自己紹介ぃぃぃぃ!!?」

 互いの自己紹介をして握手した二人に…というよりもむしろ銀時に、即座に復活する地味めがねこと志村新八。さすがよろず屋メンバー純ツッコミ担当。ツッコム場所があったらたとえ傷を負っていようとツッコミをいれずにはいられないらしい。ある意味コイツも銀時並みに頑丈である。

 「えっと、それじゃあ次は僕か。僕は志村新八。これからよろしくお願いします」
 「神楽ネ。よろしくアルよ」
 「えぇ、これからよろしく、先輩方」

 くすくすと笑いながら、二人の自己紹介に応える。多少…というかかなり性格に難はあるが、その笑顔はとても可愛らしかった。
 まぁ、この濃いメンツに、また濃いのが混ざったところで、これ以上どうにかなるものでもないだろうと自己完結。そもそも、このよろず屋のトップがどうしようもないぐうたら野郎なのだし、今更駄目人間が増えたところで何か変わるわけでもないだろう。

 「あ、そうだったそうだった。よろしくね、定春」

 思い出したように席を立ち、神楽の足元で丸まっていた定春に言葉をかけて。

 「わん♪」

 バックリと食われた。それも顔面から。
 頭がすっぽりと定春の口の中へ。当の定春は尻尾を振っている辺り、やっぱりじゃれついているだけなのかもしれない。

 「あれ? なんか暗くなったわ。常闇の妖怪でも襲来したのかしら?」
 「何落ち着いてんの天子ちゃんッ!! 食べられてる!! 食べられてるから!!」

 常闇の妖怪ルーミアでも襲撃したのか? なんて疑問に思っている天子に、新八の気が気でないツッコミが飛ぶ。というか、この光景を新八も神楽も見たことがあった。
 なんというか、主に銀時が交通事故にあって記憶喪失になったときみたいに。

 「あら、そうなの? でも大丈夫よ。天人って体が頑丈なの。あぁ、でも―――なんだか気持ちよくなってきたわ。痛みでどこか登っていけそう……」
 「大丈夫じゃねぇじゃねぇかぁぁぁあああああ!! そして、登るなぁぁぁああ!! 登ったら間違いなく天国に直行じゃボケェェエエエエエエ!!!」

 言ってる傍から血をだらだらと流す天子に鋭い切れのある新八のツッコミが入り、それから慌てて助けに入る。さすがは新八。ツッコミという一点だけ見れば間違いなく一流である。
 それにしても、ナイフすら刺さらない天子の体に傷を付けられるとか、どれだけ顎の力強いんですか定春さん?

 「定春!! 噛むの止めて!! 死ぬから!! 天子ちゃん死んじゃうから!! 神楽ちゃんも早く止めて!!」
 「大丈夫よ新八。天人はね、ほぼ不老不死なの。だから邪魔しないで、私の中で何か目覚めそうなの」
 「目覚めるなぁぁぁあああ!! 目覚めたとしてもいいもの目覚めないから!! 明らかにマゾの気質が目覚めようとしてるから!! ていうかS(サド)にM(マゾ)ってどういうハイブリットヒューマンだアンタァァァアアアアアアアアア!!?」

 必死に止めに入る新八。止めに入りながらもそのツッコミの切れは未だに健在。定春の中で「はぁぁぁぁあ」なんて心底悦に入った吐息を漏らす天人くずれ。一方の神楽は酢昆布を口にし、完璧に無視を決め込んでいて、銀時はそんな様子の面々をみて小さくため息。
 どうやら、こっちの世界でもいつもみたいに、……いや、いつも以上に騒がしくなりそうだなんて思いながら、やっぱり助けには入らず、その光景をチョコパフェをぱくつきながらぼんやりと考えるのであった。


 ■あとがき■

 第一話、いかがだったでしょうか? 作者です。
 今回色々書いてみましたが、イマイチ納得のいかない結果に。ご都合主義ばっかりだし、大丈夫かなぁ、自分。
 とりあえず、今回緋想天新キャラの天子さんが大暴れしてます。自分の中じゃ、彼女はこんなイメージですがどうだろうか?
 とにかく、皆さんが楽しく読んでくだされば、それで満足です。

 意見、感想、指摘など遠慮なくどうぞ。
 それでは、今回はこの辺で。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.02813982963562