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No.30983の一覧
[0] 【習作 クロス】夢見の少女と医者見習い【H×H × ゆめにっき】[築](2011/12/26 12:25)
[1] ゆめのまえ[築](2011/12/26 12:26)
[2] ゆめ 1 や[築](2011/12/26 12:27)
[3] ゆめ 2 や[築](2011/12/26 12:28)
[4] ゆめ 3 や[築](2011/12/26 12:29)
[5] ゆめ 4 や[築](2011/12/26 12:29)
[6] ゆめ 5 や[築](2011/12/26 12:51)
[7] ゆめ 6 や[築](2011/12/26 12:58)
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[30983] ゆめ 6 や
Name: 築◆acd2306e ID:449d6c04 前を表示する
Date: 2011/12/26 12:58
「…隠してる情報を明かせば、俺の地位は保障してくれるんだろうな?」
 所長は顔を上げると、先程までの取り繕ったような敬語をかなぐり捨てて言った。
 「さぁて、な。アンタが洗い浚いぶち明けてくれるっつうんなら、考えないでもないけどよ。」
 隙は見せない、妥協しない、こちらの要求だけを高圧的に述べる。マフィアのような強い存在にへつらい、今の地位を保持してきたコイツみたいな人間には、それが一番効果的だ。

 「グッ…。いいだろう。」
 署長は苦虫を噛み潰したように顔を歪めたが、やがてその重い口を開いた。
 「……組長の死の前日、10月1日の事だ。公式に発表されている以外にも、その日、二人の組員が死亡している…。この事件の本当の第一と第二の犠牲者だ。」
 隠されていた二人の死者、ねぇ。署長はさらに言葉を繋いだ。
 「最初の犠牲者は下っ端構成員のセルシオ・マモーネ。組の資金を着服したのがばれ、見せしめとして拷問を受けている最中に死亡した。」
 
 「おいおい、ちょっと待てよ。そりゃただキツい拷問の末に死んだってだけじゃねえのか?」
 この事件とは何の関係も無いように思えるが…。
 「フン、アンタが聞きたいって言うから話してやってるんだぞ?俺だって最初、組長から話を聞いたときは、ただ組織内のトラブルを揉み消して欲しいだけなのかと思ったさ。」
 だが、と署長は続ける。
 「マモーネの直接の死因は、心因性のショック死。マモーネの死体には確かに拷問を受けた痕が有ったが、それは彼の死とは関係が無かったんだよ。」
…心因性のショック死?他の犠牲者は皆自殺によって亡くなっていたが…。

 「そして、次の犠牲者は組内で“くすぐり屋”のテッドと呼ばれていた男だ。“くすぐり屋”、つまり拷問役の事なんだが、マモーネへの拷問もコイツが行っていた。テッドが死んだのは、マモーネの死の同日夜。仲間との食事を終え店を出たときに、突然道路に身を投げ出し車に撥ねられた。まぁ、つまりは自殺だな。」
 言い終えると、署長は机から高級そうな葉巻を取り出す。咥えたそれに火を着け、大きく吸い込んで盛大に紫煙を吐き出した。

 「ふぅん、…しかしアンタは何でこの事を隠していたんだ?」
 「…言っただろ?生前の組長に頼まれていたのさ。この事は口外するな、とカネを握らされてね。」
 成程な、署長が事実を隠蔽しようとしていたのは、死んだ組長への義理立てと言うよりは、自身の汚職行為が白日の下に晒されるのを恐れて、ってとこだろう。
 だが、気になるのは組長の行動だ。
 「なぜ組長はそんな事をアンタに頼んだんだ?そりゃ拷問を行っていたって事が公然と明かされれば、世間は良い顔はしねぇだろう。しかし海千山千のマフィアのボスが、今更その程度を恐れるか?そんなのは鼻たらしたガキでも知ってる、暗黙の常識だぜ?」

 俺の疑問に署長が答える。
 「ああ、もちろん組長はそんな事を恐れていたんじゃないだろうさ。…テッドが死んだ後の、ヤツとの会談のときの事だ。」
 署長は何故か、窓辺に行き分厚いカーテンを閉めた後、そのときの事を思い出すように語り始めた。
 
 ―その日の組長は様子がおかしかった。いつもの裏社会の大物然とした居住まいは無く、酷く疲れた顔をしていたよ。まるで施設に放り込まれてるジィさんみたいにしょぼくれて、傍目には実年齢より10歳は年老いて見えた。そして、虚ろな目でこう言うのさ。…アイツがずっと俺を見てる、ってな。
 俺はヤツに、一体何を言ってるんだと聞いたさ。だが、その説明は支離滅裂だ。アイツの存在を世間にバラしたらきっと消されるだの、寝たらアイツがやって来るだの、窓からこっちを見てるだの…てんでバラバラな事を言っていて、まるで末期のジャンキーか分裂病患者のようだった。
 しかしその滅茶苦茶な話を何とか整理して行く内に、ヤツの恐れてるものが何なのか分かった。…ガキさ。あの男が恐れていたのは小さな10歳くらいの少女だと言うんだ。お笑いだろう?
 訳が分からん、といった顔だな、ハンターさん。説明してやろう。
 そもそも会談の前に組長は俺に2回、電話を掛けて来ていた。最初の用件は、死んだマモーネが連れていた10歳くらいの迷子のメスガキを探せ、と言う物。まぁ、結局そんな人物は見つからなかったんだが…。
 そして、テッドが死んでから掛かって来た2回目の電話。…今思うとあの時既に組長はおかしかったな。その電話で組長はこう言ったんだ。“俺に取り憑いている幽霊を逮捕してくれ”―。俺は何かの冗談だと思っていたんだがね…。
 そう、組長が結局なにを恐れていたかと言うと、小さいガキの幽霊だったのさ。マフィアの親分がそこら辺のガキのようにオバケを怖がっていたんだよ。マモーネが連れていた少女は幽霊で、それがマモーネを殺し、テッドを殺し、そして自分も殺されるんだ、とね。
 
 「…まぁ、結局組長の言う通りになっちまったんだけどな。……。…俺が話せることは以上だ。」
 そう言って、署長は話を締めくくった。
 …幽霊、ねぇ。心霊現象はその大半が、一般人が念能力を誤認した物、らしいが…。ハンター協会がこの事件を念能力者による犯行と断定したのは、何処からかこの情報を入手した為だろうな。

 さて、もうここで得るものは無さそうだ。引き上げることにするか、と俺はマドツキに声を掛ける。
 「おいマドツキ。そろそろ起きろよ。次行くぞ~。」
 少し目を離すと、コイツはすぐに寝てしまうようだ。マドツキの肩を叩いていると、そんな俺に向かって署長が再び声を掛けてくる。
 「…なぁ、ハンターさん。そのお嬢ちゃんはアンタの娘さんかい?」

 「…俺はそんなトシじゃねーっての。コイツはただのま…。いや、成り行きで面倒見てるだけだ。」
 …俺は、俺は迷子という言葉を言えなかった。連想してしまったからだ。先程の署長の話に出てきた、迷子の少女の幽霊。それとマドツキを、俺は心の中で結びつけてしまっていた。

 俺の答えを聞いた署長は、今度は眠気まなこのマドツキに向かって言った。
 「…そうか。…なぁ、嬢ちゃん。アンタは、ちゃんと生きてるよな?幽霊なんかじゃないよな?」
 普通に考えれば失礼な署長の言葉。だが、俺はその質問を遮ることができなかった。だって、署長のその質問は、俺が頭の片隅に抱いた疑問を代弁していたから。

 「……ちがう、よ?」
 急に声を掛けられたから驚いたのだろうか。マドツキが俺の足の陰に隠れながら、小さい声で答える。足からマドツキの体温が伝わって来た。
 ホラ、ほらな。こいつは幽霊なんかじゃねぇ。ましてや12人もの人間を殺した念能力者なんかでもねぇ。…温かいこいつが、臆病なこいつがそんなモノであるはずが無い。

 俺は署長に話の礼を言い、マドツキを連れて今度こそ部屋を後にしようと踵を返した。しかし、ノブに手を掛けた俺の背中に、声が投げかけられた。
 「…実を言うとな、俺も怖いんだよ。忘れられないんだ。あの時組長が言っていた言葉。窓からアイツが見てる、アイツが見てる、アイツが見てる…。」
 ぎょっとして振り向くと、署長の顔は蒼白で、葉巻を持つ手はぶるぶると震えていた。

 「恐ろしくて、本当は誰かに話したくて堪らなかった。けど、…組長は俺に話したから死んだんじゃないのか?…アンタに話を漏らしちまった俺も、殺されるのか?」
 そう言って署長は、整髪料でべったりと固められた頭を掻き毟る。…俺はそんな署長に声を返した。出来るだけ明るい風を装って。

 「ははっ、なぁにビビってんだよ署長サン。幽霊なんざ、いねぇよ。この事件には犯人が居る。ちゃんとした生身の人間のな。」
 俺がそう言うと、署長はぎこちなく顔を歪めた。…笑おうとしているのだろうが、全然そうは見えなかった。
 「そう、だよな。ハッ、ハハ。なぁ、ハンターさん。アンタには貴重な情報を呉れてやったんだ。ちゃんと犯人を捕まえてくれよ?…期待、してるぜ。」



 警察署を後にし、時刻は14時になろうか、というところ。思ったより時間を取られちまったな。本当は今日中に病院にも行きたかったんだが、この分だと難しそうである。
 とりあえずメシかな、と俺は隙あらば嘶こうとする自分のハラをさすりながら思った。そういや朝メシも食ってねぇしな。
 
 「なぁ、マドツキ。お前もハラ減っただろ?何食いたい?」
  道の両側に立ち並ぶ飲食店を物色しながら、俺はマドツキにも意見を伺う。するとマドツキは、こいつにしては珍しいほど元気に返してきた。
 「―っ!おこてい、おこていがいい!」
 「おこてい…?何だそりゃ…ああ、もしかしてお子様定食か?」
 俺が問い返すと、マドツキはコクコクと頷く。…昨日のアレそんなに気に入ったのかよ。旗が刺さったチャーハンに、スープとデザートが付いただけの代物なんだがな。

 しかしマドツキの期待に満ちた顔を見ると、もっと高級なところにしようぜ、とは言い出せず。俺とマドツキは冷たい秋風が吹く大通りを通り抜け、チープな大衆食堂へと歩を進める。
 道中、先刻の署長の言葉を思い返していた俺は、マドツキの温かい手を、ぎゅっと握った。


―――――――
は、話が遅々として進まないぜ!
もうしばらくこういった地味な展開が続くと思います。ゴメンナサイ
さくさく物語を展開させられる他の作者様の技量が妬ましい…



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