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No.30788の一覧
[0] 御神と不破(とらハ3再構成)[しるうぃっしゅ](2013/02/21 22:48)
[1] 序章[しるうぃっしゅ](2011/12/07 20:12)
[2] 一章[しるうぃっしゅ](2011/12/12 19:53)
[3] 二章[しるうぃっしゅ](2011/12/16 22:08)
[4] 三章[しるうぃっしゅ](2011/12/23 00:29)
[5] 四章[しるうぃっしゅ](2011/12/23 00:39)
[6] 五章[しるうぃっしゅ](2011/12/28 17:57)
[7] 六章[しるうぃっしゅ](2012/01/09 13:32)
[8] 間章[しるうぃっしゅ](2012/01/09 13:33)
[9] 間章2[しるうぃっしゅ](2012/01/09 13:27)
[10] 七章[しるうぃっしゅ](2012/03/02 00:52)
[11] 八章[しるうぃっしゅ](2012/03/02 00:56)
[12] 九章[しるうぃっしゅ](2012/03/02 00:51)
[13] 断章[しるうぃっしゅ](2012/03/11 00:46)
[14] 間章3[しるうぃっしゅ](2012/03/11 01:30)
[15] 十章[しるうぃっしゅ](2012/06/16 23:58)
[16] 十一章[しるうぃっしゅ](2012/07/16 21:15)
[17] 十二章[しるうぃっしゅ](2012/08/02 23:26)
[18] 十三章[しるうぃっしゅ](2012/12/28 02:58)
[19] 十四章[しるうぃっしゅ](2012/12/28 03:06)
[20] 十五章[しるうぃっしゅ](2013/01/02 18:11)
[21] 十六章[しるうぃっしゅ](2012/12/31 08:55)
[22] 十七章   完[しるうぃっしゅ](2013/01/02 18:10)
[23] 断章②[しるうぃっしゅ](2013/02/21 21:56)
[24] 間章4[しるうぃっしゅ](2013/01/06 02:54)
[25] 間章5[しるうぃっしゅ](2013/01/09 21:32)
[26] 十八章 大怨霊編①[しるうぃっしゅ](2013/01/02 18:12)
[27] 十九章 大怨霊編②[しるうぃっしゅ](2013/01/06 02:53)
[28] 二十章 大怨霊編③[しるうぃっしゅ](2013/01/12 09:41)
[29] 二十一章 大怨霊編④[しるうぃっしゅ](2013/01/15 13:20)
[31] 二十二章 大怨霊編⑤[しるうぃっしゅ](2013/01/16 20:47)
[32] 二十三章 大怨霊編⑥[しるうぃっしゅ](2013/01/18 23:37)
[33] 二十四章 大怨霊編⑦[しるうぃっしゅ](2013/01/21 22:38)
[34] 二十五章 大怨霊編 完結[しるうぃっしゅ](2013/01/25 20:41)
[36] 間章0 御神と不破終焉の日[しるうぃっしゅ](2013/02/17 01:42)
[39] 間章6[しるうぃっしゅ](2013/02/21 22:12)
[40] 恭也の休日 殺音編①[しるうぃっしゅ](2014/07/24 13:13)
[41] 登場人物紹介[しるうぃっしゅ](2013/02/21 22:00)
[42] 旧作 御神と不破 一章 前編[しるうぃっしゅ](2012/03/02 01:02)
[43] 旧作 御神と不破 一章 中編[しるうぃっしゅ](2012/03/02 01:03)
[44] 旧作 御神と不破 一章 後編[しるうぃっしゅ](2012/03/02 01:04)
[45] 旧作 御神と不破 二章 美由希編 前編[しるうぃっしゅ](2012/03/11 00:53)
[47] 旧作 御神と不破 二章 美由希編 後編[しるうぃっしゅ](2012/03/11 00:55)
[48] 旧作 御神と不破 二章 恭也編 前編[しるうぃっしゅ](2012/03/11 01:02)
[49] 旧作 御神と不破 二章 恭也編 中編[しるうぃっしゅ](2012/03/11 01:00)
[50] 旧作 御神と不破 二章 恭也編 後編[しるうぃっしゅ](2012/03/11 01:02)
[51] 旧作 御神と不破 三章 前編[しるうぃっしゅ](2012/06/07 01:23)
[52] 旧作 御神と不破 三章 中編[しるうぃっしゅ](2012/06/07 01:29)
[53] 旧作 御神と不破 三章 後編[しるうぃっしゅ](2012/06/07 01:31)
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[30788] 二十三章 大怨霊編⑥
Name: しるうぃっしゅ◆be14bceb ID:c2de4e84 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/01/18 23:37








 翌日恭也は学校が終わってからすぐに八束神社へと足を向けた。直ぐといっても、一旦家に帰ってから着替えくらいはしている。そのまま来ようかとも思ったが、なのはを迎えにいくついでに家にも寄ったのだ。
 今日はなのはは学校の友人―――アリサの家に遊びに行ったらしく、神社には顔を出していない。
 なのは曰く、アリサに久遠のことを話したらやけに興奮していたという。確かに、久遠の可愛さは尋常ではない。つぶらな瞳といい、小さな体躯といい、ふかふかふさふさな体毛といい、全てが可愛い物好きにはたまらないだろう。
 もっとも幾らなのはの友達とはいえ、アリサ自身が久遠に懐かれるまで相当に時間はかかるというのは想像に難くない。

 恭也が八束神社に到着したのは午後五時を少し回った時間だった。特に急いだわけではないが、那美を待たせる訳にもいかないので自然と身体が急いでいたのかもしれない。
 境内を見渡してもまだ那美はきていなかった。相変わらず参拝客はおらず、閑散としている。那美は大丈夫だと言っていたが、鍛錬場所としてお世話になっている恭也としては本当に心配になってきた。
 
 那美が来るまで鍛錬でもしながら時間を潰そうとでも考えていたその時、チリンと鈴の音が鳴る。
 聞き覚えがあるその音色。最近良く耳にすることになった小さな小狐の首輪にかかっている古い鈴が起こす、どこか懐かしい透き通った音だ。

 鈴の音が鳴った方向を見てみれば、神社の床下の影から久遠が這い出してきたところだった。
 赤い夕陽が眩しかったのかつぶらな瞳を細めると、ぶるっと身体を震わせる。トコトコとゆっくりと久遠はベンチに座っている恭也へと近づいてくると、地面を蹴りつけ彼が座っている丁度隣へと降り立った。

「くぅん」

 かわいらしい鳴き声が久遠の口から漏れる。恭也は頭を軽く一撫ですると、久遠は気持ちよさそうに眼を閉じた。
 撫でられた久遠はそのまま恭也の横で寝転がると身体を丸くする。 
 鳥の鳴き声が聞こえる。風が吹き、木々を揺らし枝と葉が重なり音をたてた。
 誰もいない。久々に一人となれた時間。そして、一人の空間。

「―――ああ、平和だ」

 自然とそんな呟きが口から漏れた。
 寝ていた久遠がうっすらと眼を開けて、恭也の顔を見上げてくる。
 恭也はなんでもないというように、久遠の頭を撫でた。それで納得したのか久遠も再び眼を閉じ眠りに落ちる。
 騒がしい日々は嫌いではない。高町家に桃子がいて、フィアッセがいて、美由希がいて、なのはがいて、晶がいて、レンがいる。学校には忍がいて、赤星がいて、那美がいる。他にも殺音がいて、翼がいて―――それが高町恭也の日常だ。
 だが、偶にはこんななんでもない、平穏な時間も欲しいのだと恭也は思う。
 最近は特に色々と考えことが多かったため、恭也は珍しくも無の境地となって地平線の彼方に沈んでいく赤い太陽を黙って見つめている。
 
 特に周囲に意識を張り巡らしていたわけではなかったが、それでも無意識で八束神社の階段を上って来る気配を一つ感じ取っていた。
 その気配は若干慌ててるのか、急いで駆け上がってきている。いや、突如それが止まって、そこから動かない。
 ああ、と恭也は納得した。気配の主は間違いなく神咲那美。恐らく慌てているあまり、足を滑らせてかなにかをしてどこかを強打でもしたのだろう。下手をしたら階段から落ちることを考えたら不幸中の幸いなのだろうか。
  
 暫く経ってようやく動き出した気配が、階段をのぼりきり恭也の視界に到着した。
 気配察知の通りに、その気配は神咲那美その人であったが、涙目になっているのが一目で分かる。
 那美はベンチに座っている恭也に気がつくと急いで駆け寄ってきて息を乱しながらも頭を下げた。

「す、すみません。高町先輩。遅刻してしまいって……」
「いえ。俺も今さっき到着したばかりなので。たいした時間は経っていません」
「そ、そうですか?でも申し訳ないです」

 恭也の返答を聞いても、那美は何度も繰り返し頭を下げる。
 昨日自分から誘っておいて、遅刻してしまったのを心の底から申し訳ないと思っているからだ。恭也からしてみれば。特に時間を指定されたわけではないので、那美が遅刻したと思ってはいないのだが、やはりそれも彼女の性分なのだから仕方ないといえば仕方ない。

「……と、となり宜しいですか?」
「はい、どうぞ」

 那美が恭也の隣に座ろうとしたところ、既にそこには久遠が身体を丸めて寝転がっている。それを見た那美は、クスっと微笑を漏らし、久遠を抱き上げた。そのまま、久遠が寝転がっていた場所に腰をおろし、自分の膝に久遠を寝かせる。
 持ち上げられた拍子に一瞬眼を開けたが、那美だとわかるとそのままなすがままで、那美の膝で大人しくしているようだ。

「高町先輩は、やっぱり不思議な人ですね。久遠が誰かの隣で寝るなんて今までありませんでした。懐いてくれたのは私や薫ちゃんくらいです」
「昔から動物には懐かれやすい体質でして。そのせいかもしれません」
「そうなんですか?でも、きっとそれだけじゃないです」

 膝元の久遠の毛を撫でる那美の横顔を、夕陽が差し込み赤く染める。
 その姿はまるで久遠の姉のようにも見え―――母のようにも見えた。普段の穏やか那美の母性を際立たせている。

 昨日のさざなみ寮に帰る途中に那美から伝えられた、相談があるという話。
 それを切り出さない那美だったが、恭也はじっと待っている。那美の昨日の緊張具合から相当に重要な話だと薄々感づいていたからだ。
 二人がベンチに座ってから数分が経つ。やがて決心がついたのか、那美は久遠を撫でる手を止めた。

「―――高町先輩は、昨日言っていましたよね。幽霊を見たことがあるって」
「はい。随分と昔のことですが」
「―――そう、ですか」

 再び沈黙が支配する。
 話すのを戸惑っているというよりは、何から話せば良いのか整理がついていないという印象を恭也は感じた。
 那美は緊張でからからに渇いた口を、必死の思いで動かす。

「……死者の未練。悪意。妄執。そういった負の【ナニ】かを原動力としてこの世に彷徨う悪霊。幽霊。怨念。無害の霊もいますが、殆どのそういったモノは生きている人に何かしらの被害を出します。そういったこの世に在らざるモノを説得、もしくは祓うことによって、この世の生と死の境界を守る。それが―――私達【神咲】の一族です」

 途中何度も詰まりそうになりながらも、那美は最後まで一気に言い切った。
 恭也の反応が怖くて、横を見れない。恭也は幽霊を見たことがあるといった。だが、だからといって自分が霊能力者だと言って果たして信用してくれるだろうか。信じてくれるだろうか。
 漫画やアニメの世界でしか有り得ないことを、幾ら知り合いだからといって受け入れてくれるだろうか。不安で手が震える。そんな那美に対して恭也は―――。

「―――破魔真道剣術神咲一灯流でしたか。確か神咲さんのご実家は鹿児島の方でしたよね?」
「……っえ?」
「京都でしたら神咲楓月流。青森でしたら神咲真鳴流だったと思いますが」
「え?え?え?え?」
「どこか間違っていたところがありましたか?」
「―――っい、いえ。あ、あってます」

 まるでそれが常識のように至極あっさりと答えた。
 当然慌てるのは那美だ。決死の覚悟で語った己の秘密を、当たり前のように知っていたのだから。

 恭也が答えたように、この日本において最高最大最強を欲しい侭にしている退魔の一族。古くから警察や政府お抱えの祓い師として名が知れた家系だ。その中でも恭也が語った三つの流派。神咲一灯流、神咲楓月流、神咲真鳴流は神咲三流として称されていた。その中で神咲一灯流の本拠地は鹿児島。先日那美から聞いたように、実家は鹿児島ならば簡単に想像がついた。

「別に驚くことはありませんよ。退魔師としては神咲の一族の名前は知れ渡っています。前々から神咲の名が気になっていましたので那美さんがそうであっても特に驚くことではないかと」
「そ、そ、そ、そうですか?」
「はい。そうです」

 如何にも昔から知っていました的な雰囲気を醸しだしている恭也だったが、最近まで退魔の世界には全く我関せずだったことは秘密である。
 那美としては、恭也に話そうとすること全てが、予想を遥かに超えた返答ばかりで、既にこの時点で頭がオーバーヒート寸前の状況だった。それでも、まだ一番重要なことを話していないことを思い出し、何とか我を取り戻す。

「その……高町先輩に、お願いしたいことがありまして。無茶なお願いだと思っています。それでも、私にはもう高町先輩しか頼れる相手が……」
「はい。別に構いませんが」
「―――い、いえ。まだ何も言っていないのですけど」
「先日の葉弓さんの台詞ではありませんが、俺もそれなりに人を見る目はあるつもりです。その神咲さんが、俺にしか頼めないと仰られるならば、できればそれに答えたいと思います」

 かぁっと頬が熱くなった。そんな言葉をかけて貰えるとは夢にも思っていなかったのだ。
 那美がこれから話そうとすることは厄介事だ。那美のことを神咲一族と知っているのだからそれがわからないはずがない。
 それなのに、恭也には一片の迷いもなかった。嘘偽りもない。本当に自分よりたった二歳しか違わないのだろうか。まるで父親のような安心感、温かみ―――傍にいてそんな安らげる気持ちになれる。
 
「あの、高町先輩は【祟り】ってご存知でしょうか?」
「……それは人間以上の存在による災いとか、そういった意味合いでしょうか」
「いえ、私が指している【祟り】とは、そうじゃないんです」
「では、もしかして大怨霊と呼ばれる悪霊のことですか?」
「―――っ!?」

 本当に吃驚した様子の那美が、呆けたように恭也へと向き直る。
 一体今日だけで自分は恭也に何度驚かされているのか、数えるのも馬鹿らしくなるほどだ。
 大怨霊とはそこまで有名な名称ではない。神咲一族では、三百年前に現れた存在は【祟り狐】。それより以前に存在したであろう怨霊のことを大怨霊と呼んでいる。詳しく調べていなかったら、那美とて大怨霊という言葉は知らなかっただろう。

「はい……三百年前に神咲の手によって封印された悪霊。日本全国の神社仏閣を破壊尽くした歴史上最大の霊障事件。【祟り狐】と呼ばれた存在が―――この子なんです」

 膝元で寝ている久遠を撫でながら、那美は語った。

「いえ、正確には少し違いますね。久遠に取り付いた悪霊。世界を呪い、人を憎み―――数百年の悪意の結晶。大怨霊と呼ばれる怨念に乗り移られたのが久遠です」

 肺の中の空気を搾り出すように、震える身体を無理矢理に意思の力で抑え付けながら那美は続ける。

「今から十年程前に久遠の中に封印された大怨霊は復活しました。その時には、神咲三流のみならず、数多の傍流亜流含めたその名を日本に轟かす退魔師が集まり対抗しました。その数は優に百を超えていたんです」
「百人、ですか」
「はい。結果は―――何とか再度封印はできました。但し、百人以上いた退魔師の殆どが引退に追い込まれるほどの被害を被ったんです」

 歴史に名を残す大怨霊を相手にするのだ。相当に優秀な霊能力者があつまったのだろう。
 それなのに倒すことはできなかった。神咲一族でさえ封印という措置をとるしかないほどに―――。

「その封印も―――もう長くは持ちません。近いうちに久遠の中に封じられた大怨霊は目覚めてしまいます。そうなったならば、かつての悪夢【祟り狐】として、久遠は破壊の限りを尽くしてしまいます。でも―――」

 ぎゅっと唇を噛み締める。

「私は、私は―――久遠を信じています。私と一緒に十年を過ごしてきた久遠を、友達を信じているんです。今度の久遠は、絶対に大怨霊に負けないって。【祟り狐】になんか戻らないって。久遠は、本当は誰よりも純粋で、優しくて―――命の大切さを知っている子です」
「……」
「―――だから高町先輩にお願いがあるんです。少しの間だけでもいいんです。私がどうしても久遠の傍に居られない時は、高町先輩が一緒にいていただけませんか?」
「傍にいるだけでいいんですか?」
「はい。久遠がこんなに懐いたのは高町先輩となのはちゃん以外これまでいませんでした。当然ですよね―――さざなみ寮にくるまで神咲の家にいた久遠は、多くの人の憎悪をぶつけられてきたんです。人に懐くはずがありません」

 視線に悲哀を乗せて、久遠を見つめ続ける那美に、恭也は何もいえなかった。
 普段の彼女とは思えない、神咲那美という少女はとてつもない何かを背負っている。

「逃げるようにさざなみ寮にきました。でも、やっぱり久遠は他の人に懐かなくて―――でも、諦めれなくて。久遠の心の闇を振り払おうと必死で。誰にも、誰にも頼れなくて―――」

 ポタリと何かが滴り落ちる音が恭也の耳に届く。
 堪えきれなくなった涙が、那美の両目から零れ落ちていた。

「だから、久遠がなのはちゃんと高町先輩に懐いてくれたのが嬉しくて―――。お願いです、高町先輩。封印が解けるまででいいんです。久遠のことを、お願いします」
「―――わかりました。出来得る限り、ご協力します」

 恭也の返答を聞き、バッと顔を上げた那美は、暫く呆然としていて―――ようやく恭也の答えを理解できたのか、涙を流しながら笑顔を浮かべた。それは不思議なほどに、恭也の心に強く残される、とても美しい笑顔だった。

 暫く見詰め合っていた二人だったが、自分が涙を流していることに気づいた那美は、顔を赤くする。ベンチから慌てて立ち上がると目元を手の甲で拭った。
   
「あ、あの……高町先輩有難うございました!!その、またお話に付き合ってください」

 それだけ口早に言い切ると、八束神社の階段の方へ走っていき、そのまま逃げるように姿を消していった。
 泣き顔を見られてしまったのが恥ずかしかったのだろう。恭也自身も気持ちはわからないでもない。もし他の人の前で泣いてしまったら、できれば逃げ去りたいと思ってしまうはずだ。
 
 完全に那美の姿と気配が消えた後、恭也はため息をつきながら空を見上げた。数分程度しかたっていないと思ったが、先程より陽が傾いていた。思った以上に話し込んでいたらしい。
 しかし―――那美の話を聞くに、どうやら大怨霊は想像以上の怪物のようだ。
 神咲一族の総戦力。それだけの戦力を持ってしてようやく封印することができたという。しかも、そのほとんどが引退に追い込まれる。一体どれほどの戦闘力を誇るのか、不謹慎ながら少しだけ見てみたいと思ってしまうのは、強者を求める剣士としての性かもしれない。

「……きょ……うや……」
「―――?」

 この場には恭也以外の人間はいなかった。それは完全に、完璧に間違いない。恭也の気配察知を潜り抜けることができる相手ならば話は別だが、そんな相手がこの場にいる可能性は限りなく低い。多少驚いていたところ、何故かグンっと膝に体重がのっかかる。あまりに突然すぎるその出来事に久遠が膝に乗ってきたのかと思って、視線を膝に向けた。

 するとそこには―――少女が居た。恭也の膝を跨ぐように、年齢にして十歳程度だろうか。白と赤を基本とした巫女服。また巫女服かと思わなくもない恭也ではあったが、それがやけに似合っている。金色―――いや、狐色とでもいえばいいのか、綺麗な長い髪。そんな髪の間からヒョコっとでている二つの耳。ただの耳ではない。人間とは違った獣耳。狐耳と言った方が正しいのかもしれない。さらには腰の少し下から出ている尻尾。
 そんな可愛らしい少女が恭也の膝に跨って上目遣いで恭也を見つめていたのだ。

「……幻覚、か」

 疲れているのかと、恭也は眼をつぶって右手の親指と人差し指で軽く瞼の上から揉み解している。そのついでに深く息を吸い、そして吐く。深呼吸を繰り返し、冷静さを取り戻す。
 十数秒たってようやく眼を開けた。するとそこには―――。

「……?」

 やはり見間違いではなかったようで、狐耳の少女がいた。
 恭也がなにをやっているのか理解できないのか、首を傾けている。
 冷静沈着を体現している恭也ではあるが―――突然、見知らぬ少女が膝の上に跨っていたら流石に固まった。しかもただの少女ではない。巫女服姿で、獣耳。尻尾まで生えている。果たしてそんな少女を膝に乗せて見詰め合っている光景を見られたらどうなるだろうか。間違いなく人生が終わる―――色んな意味で。

「あー、その。キミは?」
「……?」

 とりあえず他の人間に見られる前に人生最大の窮地を乗り越えようと、恭也は少女に質問をする。しかし、少女は首を捻るだけだ。言葉が通じていないというよりも、何故そんなことを聞くのだろう、そんな様子にも見て取れた。

「……くおん……」
「―――なっ」

 そして少女の発した言葉に驚愕した。いや、待てと恭也が周囲を見渡してみると、今の今まで隣にいた筈の久遠の姿がなくなっている。先程那美が慌てて去っていったときもついていっていなかったのは間違いない。
 それからどこかへ行ってしまったということもないだろう。それだったら鈴が鳴って気づいたはずなのだから―――。

「―――そうだ。鈴、だ」
「……?」

 もし本当に目の前の少女が久遠だったならば首に鈴が―――。

「―――鈴が、あるな」

 少女の首には久遠と全く同じ鈴がついていた。
 これは信じられないことだが、信じるしかないのかと今日一番深いため息をつく。一体どれだけ幸せが逃げていっているのだろうと心底恭也はそう思った。
 
 改めて恭也は膝に乗っている久遠をよく見てみる。しかし、何度見ても久遠の姿は変化することはなかった。
 もしかしたらコスプレでもしているのかと、恭也は久遠の耳を触ってみる。

「……ん……やぁ……」

 なにやら柔らかいのか、硬いのかいまいちはっきりとしない触感が手に伝わってきた。だが、手からは久遠の体温を感じる。間違いなく作り物ではないことを恭也は確認できた。
 一方久遠はくすぐったかったのか、眼を細め、身体をよじる。とても十歳程度の少女とは思えない色っぽい声をあげたので、突然耳を触られた久遠以上に恭也の方が吃驚してしまった。

「すまん。不躾だったな。久遠―――でいいのか?」
「……うん……」

 どうやら間違いなく、目の前の狐耳少女は―――久遠のようだ。
 こんな有り得ない事が起きるのだろうかと、様々な疑問が頭の中に湧き上がって来る。
 だが、恭也はそれらの疑問をとりあえず、片隅に置いておき、無理矢理に納得することにした。

 ―――久遠は、そういうモノなんだ。

 何せ、この街は異常だ。異質で異端で異様な都市なのだ。
 もはや残り僅かとなった御神の剣士。世紀の歌姫。神才の申し子。夜の一族に自動人形。霊能力者に、寿司屋の息子―――はあまり関係ないかもしれない。伝説にも名を残す猫神。それに付き従う暗殺集団北斗。永全不動八門最強の剣士に、永全不動八門にて黄金世代と呼ばれる少女。人と闇夜の世界を守護する最後の砦達。
 それらに比べたら子狐が、人間に化けるくらいどうだというのだ。

「ああ、そう考えたら本当にたいした問題ではないな」
「……?」  
「いや、何でもない。気にするな」
「……うん」

 【妖狐】という妖怪の一種だろうかと恭也は久遠の正体にあたりをつける。
 恐らくは日本で鬼と並んでメジャーな妖怪の一種だろう。長く生き続けた狐が、特殊な異能を持った結果人にも変化できるようにもなるという。
 成る程、と納得する。だからこそ、【祟り狐】と呼ばれるようになったのかと。

「その姿はよく変化するのか?」
「……ううん……」

 今までただの子狐として関わっていた久遠が何故突然、この状態を見せてきたのか不思議に思った恭也が問い掛ける。
 それに、首を振る久遠は、潤んだ瞳でさらに恭也に密着してきた。最近はやけに女性と密着する機会が多いと少しだけ内心で焦っていた。勿論、久遠は見かけはまだ十歳程度の少女なのだが―――何故か異常なまでに怪しい色香を漂わせている。

「……それなら、何故突然?」
「……わから、ない……くおんの、なかの……もうひとりの、くおんが……」

 両手の手の平を胸に当てる。久遠の言うとおり、彼女自身理解できていなかった。
 この変化した姿を人に見せることは那美に禁止されていたのだ。海鳴に来て以来、誰一人としてこの姿を見せた者はいなかった。
 だが、心の奥底で【何か】がざわめいている。久遠に封印された、黒い感情の塊が―――雄叫びをあげていた。
 心臓が痛いほどに胸をたたいてくる。そのまま破裂してしまうのではないかと、久遠は錯覚を感じた。
 身体中の血管を駆け巡るのは、果たしてなんという感情なのだろうか。

 憎悪。悪意。殺意。怨恨。嫉妬。そしてそれ以上の―――歓喜。 

「……きょう、やぁ……」

 幼い体躯。熱い吐息。沸騰寸前の体温。妖しい香り。潤んだ瞳。 
 
 久遠の恭也を呼ぶ声がやけに弱弱しい。
 遂には彼の胸元に収まる形となった久遠が、恭也の服を力いっぱい握り締め、その強さゆえに指が白くなっている。
 引き寄せ、求め、二度と離すまいというように頬を胸にこすり付けてきた。
 肩が小さく震える。顔を胸に押し付けてきているので、恭也からは、今の久遠の表情は見て取ることが出来ない。
 
 視覚がもたらすのは、幼くも【女】を感じさせる丸みを帯びた体躯。
 嗅覚がもたらすのは、懐かしき悪意の香り。
 聴覚がもたらすのは、熱を持った呼吸。
 触覚がもたらすのは、破裂せんばかりの鼓動と柔らかな感触。

 久遠ではない【ナニ】かが、訴えてきている。叫んでいる。
 私はココにいるぞ、と。明確な意思と、悪意を見せ付けてきている。
 
 身体中の感覚が。第六感が。意思の奥底に閉じ込めた悪意の結晶が、声なき声をあげていた。
 
 バチリと恭也の視界に黒い稲妻が弾け、乱れ飛んだ。
 これは、この既視感は―――。

「す、すみません。高町先輩。あの、久遠を見ませんでし―――」

 ピシリと空気が凍った。
 久遠に意識の大半を持っていかれていた恭也はこの神社に人が近づいてきているのに気づいていなかった。その人物は那美だったのが不幸中の幸いだったのだろうか。
 潤んだ瞳で拙いながらも恭也の名前を連発して、頬を胸にこすり付けることに夢中な久遠は、那美に全く気づいていなかった。
 恭也はギギギっと錆びた機械のように首を那美の方へと向ける。那美は恭也と久遠の繰り広げている妖しい世界に固まってしまっているようだ。
 さて、どんな言い訳をしようかと、頭脳をフル回転。しかし、まともな言い訳を思いつくことはなかった。恭也からしてみればむしろ、この状況でどう言い訳をすれば打開できるのか神に聞いてみたいほどだ。

「く、久遠―――な、なにやってるのー!?うらやま―――じゃなかった、高町先輩に迷惑かけちゃ駄目でしょー!?」

 砂埃が巻き起こるほどの速度で駆け寄ってきた那美が、相変わらずべったりとくっついている久遠を引き剥がす。
 頬を擦りつける事に夢中になっていたせいか、あっさりと引き剥がされた久遠が残念そうに、眉を顰めた。

「……な、み?」
「久遠、今日はもう帰るからね。早く変化といて」
「……うん」

 ポンっと音が鳴ったかと思えば、久遠の姿は何時もと同じ子狐の姿に戻っていた。
 おお、本当に変化するのかと興味深そうに子狐になった久遠を見る恭也だったが、そんな子狐久遠を抱いて那美が頭を下げてきた。

「高町先輩、あの―――このことは内密にお願いできますか?」
「……ええ。勿論です」
「有難うございます。それでは今日はこれで失礼します」

 慌てて久遠を抱いた那美が再び去っていった。幸いにも那美の恭也を見る眼は、変な人を見る眼ではなく、普段通りだったことに安堵した。
 もしこれが美由希だったら、凄い目で見られたことに想像は難くない。

「しかし、今の感覚は。まさか、な―――」
「ふむ。剣士殿はろりこんというやつだったか。それならば我によくじょーしないのも無理はない」
「―――っな!?」

 ベンチの後ろ。大きな木の幹にもたれかかるようにして、気配を感じさせないまま空がいた。
 厭らしいほどの笑みを浮かべ、空は恭也へと近づいてくると、隣に腰を下ろす。

「いやいや。全く剣士殿も人が悪い。あのような少女に言い寄られて、コーフンしてしまったのか?」
「……何のことでしょうか」
「くっふっふ。まぁ、そういうことにしておこう。それに恐らくそなたがあの狐に感じていたのは―――同族意識」
「……」
「そなたとあやつ。この世界にただ二人だけの―――」

 ドクンドクンっと心臓が脈動を早くする。
 緊張ではなく、空の発言が的を射ていただけに―――。
 深層意識が、心が、魂が、それら全てが久遠を求めている。いや、正確には―――。
 
「果てさて、あの子狐が先代の大怨霊の器か。三百年前に比べれば随分と可愛らしくなったものだ。それでも尋常ではないほどの、怪物よ」
「生憎と俺には久遠の力が理解できませんでしたが……」
「封印がされておるからそれは仕方あるまい。だが、封印から解放されれば嫌でもわかるぞ?」
「―――あまり体感したくはありませんね」

 ふぅっと息を吐く恭也は、姿が見えなくなった久遠を思い出す。
 見かけからは想像できないが、封印が解かれた時には一体どんな状態になるのか。想像もできない。巨大な狐の怪物にでもなってしまうのか。それとも他の空想上の怪物のような姿になってしまうのか。
 だが、一応は三百年前から【祟り狐】と呼ばれているのだから、見掛けは狐に見えるのだろう。 

「ああ、それはそうと―――そなた、随分と厄介な女に付け狙われているようだが。一体何をやらかしたのだ?」
「俺を狙っている女性ですか……」
「心当たりがありすぎて誰かわからないとか言わぬよな?」
「―――俺をなんだと思っているんです」
「いやいや。骸も随分と女性関係には苦労していたようだぞ?故にあやつに似たそなたも相当に苦労しているのではと予想は簡単につくのだが。先程の少女にも言い寄られるくらいであるしな」
「……くっ」

 見られてはいけない人に見られてしまったことに歯噛みする。
 やはり年上の女性とは相性が悪い。空は年上も年上。超が十個くらいつく年上の女性だろうが。

「今何か不埒なことを考えておったな?」
「いえ、特には」

 そして、やけに鋭い。じとーとした視線がツンツンと横を向いた恭也の頬に突き刺さってきた。
 恭也も視線をあわせないようにすることで、自分の思っていたことを悟られないようにするが、恐らく無駄だろう。
 こういった時の女性の勘の鋭さは異常なのだから。

「まぁ、よい。それであの化け物はどうするつもりだ?」
「―――この地に、まだ居ますか?」
「嫌というほど感じるぞ―――あの、怪物の気配を。未来視の魔人、どこかは分からぬが確実にいる。しかもあやつが【視】ているのはそなただ、剣士殿」
「ええ、わかっています」

「全く、珍しいにもほどがある。世界が滅びても、眉一つ動かさぬであろうあの怪物が―――ただ一人の人間を気にかける。これはどういうことか」
「俺が聞きたいくらいです。何か有効な手段とかはあるんですか?」
「常に注意を払っておくしかあるまい。流石の我も完全な状態でなければ【アレ】と戦うには分が悪い。ある意味大怨霊より厄介な相手といっても過言ではないぞ」

 空は若干不機嫌そうに鼻を鳴らす。
 彼女は認めていた。あの化け物の強さを、恐ろしさを。完全な状態でなければ勝負にもならないということも。
 もし仮に―――封印を解き全力で戦ったとすれば、命と引き換えにだが殺しきる自信はある。だが、恐らくこの海鳴という地は百年は草木も生えぬ死の大地へと変貌するだろう。
 空とて自分の命と引き換えにまでして、未来視の魔人と戦う理由もない。彼女は確かに昔と比べると穏やかになりはしたが―――それでも、魔獣だ。現在存在している、日本を滅ぼしかけた最古の妖怪の一匹だ。人間相手にそこまでの義理はない。しかし、果たして目の前の剣士がそれを望んだらどうするだろうか。全てを投げ打ってでも頂上決戦を開始してしまうかもしれない。あくまでも、【かも】ではあるが、そんな想像をした空は薄く笑った。

「さて、そろそろ剣士殿は帰宅する時間ではないか?あまり遅くなると家の者に心配をかけるぞ」
「ええ、そうですね。空さんもお気をつけて」
「くっふっふ。心遣いに感謝しよう」

 何時もと同じ様に恭也は階段を降り、空は国守山に向かって歩いていく。
 森を通り抜けて一体どこに行っているのだろうと毎回気になる恭也だったが、まさか尾行するわけにもいかないので、何時か話して貰おうと心に決める。
 時計を見てみると時間は大体六時を示している。もっと時間が過ぎているかと思っていたがなんだかんだで一時間程度の出来事だったのかと、恭也にとっては多少意外であった。
 もっともこれ以上時間を費やしてしまっていたら、晩御飯に遅れる可能性もあったので、恭也としてみれば助かったのも事実だ。折角レンや晶に作ってもらっているのだから、遅れては申し訳がない。

 多少早歩きで帰宅していたかいがあってか、気がついたときには翠屋の前まで到着していた。
 既に太陽は完全に落ちているので、薄暗い空間に、翠屋の窓から光っている人工の灯りが眩しく光っている。
 今日も人手は足りているということは前もって知らされているので、わざわざ寄らなくてもいいかと、恭也はそのまま翠屋を通り過ぎる。それにタイミングを合わせるかのように、翠屋のドアが開き―――。

「あら、恭也さんじゃないですか。こんばんは」
「―――っと。こんばんは、葉弓さん」

 カランカランと鐘の音がなって翠屋のドアが閉じる。そこから出て来たのは神咲葉弓だった。いや、その後ろにもう一人女性が連れ立っている。
 葉弓より幾分かは幼く見える。といっても、恭也よりは年齢的な面でみれば恐らくは年上だろう。雲ひとつない青空のように澄み渡った青髪。ショートカットとミディアムの丁度中間くらいの長さだ。温和な葉弓の雰囲気に比べれば、少し勝気な空気を纏っている。

「昨日はお世話になりました。翠屋に案内していただけて本当に助かりました」
「いえ。こちらこそ翠屋であんなにお土産を購入していただいて感謝の言葉もありません」
「いえいえ。さざなみ寮のみんなが喜んでいました。だから今日も買いに来たんですよ」

 クスっと葉弓は手に持っていた紙の菓子箱を恭也に見せる。
 どうやら昨日に引き続いて、今日も翠屋で買い物をして貰えたようで、恭也が頭を下げた。 

「葉弓さん。この人は?」

 恭也と葉弓の会話が一段落したところを見計らって、彼女の背後にいた女性が声をかけてくる。

「あ、ごめんなさい。こちらこの翠屋の店長さんの息子さんで、那美ちゃんのお友達の恭也さん」
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。高町恭也と申します」
「翠屋の!?それに那美ちゃんの友達―――それは失礼しました。うちは【神咲楓】と言います。那美ちゃんと仲良くしてもろうて、感謝しとります」

 神咲楓という名前を聞いて、恭也の僅かに眉が動いた。
 京都を本拠地とした破魔真道剣術神咲楓月流の最年少正統伝承者。この地に訪れるであろう三人の神咲一族の一人。
 隙のない身のこなし。細身ではあるが鍛えこまれているのが一目でわかる肉体。抜き身の刀のように研ぎ澄まされた雰囲気。そのどれもが一流の域。美由希でも勝てるかどうか、判断が難しい。一言でいうならば―――達人。

「いえ。俺だけではなく、妹も神咲さんにはお世話になっていますし」
「葉弓さんの言うとおり礼儀正しい人ですね」

 恭也は何故自分に楓が微妙に敬語を使ってくるのかわからなかった。
 その謎は実は簡単なことだ。恭也は現在私服。つまり、恭也の大人びていて、老成した雰囲気から、楓は恭也が自分よりも年上だと思ってしまったということだ。確かに恭也は制服さえ着ていなければ、二十代半ばに見える外見だ。
 別に老けているというわけではなく、単純に大人っぽく見えるというだけだ。
 勿論楓も恭也のことは聞いてはいるが―――那美の友達である美由希の兄と教えられたため、そのような勘違いを起こしてしまっていた。
 もっともその誤解も直ぐにとけることになる。その勘違いを知ったとき、楓は恥ずかしさのあまりにさざなみ寮の床を転がりまわったという。

 そしてこれより三日後―――神咲一族最強の祓い師、神咲薫が海鳴に来訪。
 【祟り狐】久遠との最後の決戦が、幕を開ける。
  








-----atogaki-----
楓さんの活躍は次話からです。本当に活躍するかは―――(ちらっ
ちょっと短いですが@2話で大怨霊編多分終了です。 


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