Silent night
Holy night
配点(クリスマス)
諸君、と部屋に声が響いた。
男はシャンパンの入ったグラスを掲げ、声を張り上げる。
「ではこれよりパーティーを始める。皆楽しんでいってくれ」
「イー! イー!」
広いとはいえない室内には数十人の男女が集まり、幾つか設置されたテーブルを囲んでいた。
彼らの顔は晴れ晴れとし、妙にテンションが高い。
一見するとヤバい薬をキメているようにも見える。
「料理はクリスマス用料理本「餐と鳥煮て」を参考にしてみた」
「今日は「女性の為の恋愛講座番外編その二十一「旦那以外の子供を妊娠した時の上手な誤魔化し方」」をお送りするぞ☆」
「思い出すぜ。昔も清しこの夜を歌いながら戦場を駆けたもんだ。右も左もカップルだらけだったがな!」
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「折角だし、ナザレのイエスの話でもするか。つってもTsirhc関係はあんま詳しくないんだが」
「うーんと、俺も格言を一つ知ってるくらいだな。「人はパンのみにて生きるにあらず。ケーキも食べればいい」」
「弟子の隠してたケーキを食べた時のセリフだっけ」
「ご先祖様達も結構ノリで生きてるよな」
「何か違くね?」
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あるテーブルではリザードマンの青年が泣き崩れ、周囲の男どもが慰めていた。
「「貴方からは人の温もりを感じない」って自分、変温だし……」
「気にすんな。こっちなんかブランド物買わなかっただけで機嫌損ねたよ。この間別れて、今は女性不信気味だ。やっぱり男同士の方が気楽だな」
「ちょ、変な事を言うんじゃない。幾ら女に振られたからって男に走んな」
「俺の両親は両方男だけど、まあ、そういう愛の形もありなんじゃないか? 俺は御免だが」
「ふざけんな! 俺だって衆道は嫌だ!」
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「マドモアゼル・レアル√クリア! 続いて獅子王女√行ってみようか!」
伝纂器(PC)に向かいながら歓喜を叫ぶ青年。
傍らには「クリス増す~クリスちゃんが多すぎる~」というエロゲのパッケージが。
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「いい機会だから年末の有明イベントの打ち合わせしておこう」
「壁サークルは手分けしないと厳しいか。……談冗は俺が行く」
「チーム・ベラスケスの方は任せろ」
「越智先生の鶴姫本欲しいな。今回は島だった筈」
「クリスマス突発企画で描いてみたんだけど、ちょっと意見ちょうだい。「性~淫蕩聖夜~」っていうの」
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「先夜、「ちょっとサンタクロース倒してくる」って出て行った友人がまだ帰らないんだけど……」
「極東を一夜で駆け抜ける魔人相手に何と迂闊な……」
「あの赤い服は敵の返り血だともっぱらの噂だしな……」
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ある時、バタンと勢いよく扉が開け放たれ、大きく膨らんだ風呂敷を背負った男達が雪崩れ込んでる。
「売れ残りケーキ回収班、只今帰還!」
「おお、よく帰った! 見よ! この売れ残ったクリスマスケーキの数が我らの栄光の証だ!」
「へへへっ! 去年より増えてやがるぜ」
ひゃっほーい、というかけ声を上げ、一人の男が一ホール丸ごと掻っ込む。
「あめえ! あめえけど何かしょっぱい……」
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「禁教令が出て安心してたのに……おのれ松永・弾正! 爆発しろ!」
「えええ! 「・改宗に反対する」が正解かよ! 分かんねえよ!」
「特別ゲストとして三要先生にも来ていただきました」
「ひゅーひゅー!」
「な、何なんですか貴方達!」
「俺達は先生を名誉団員に推薦します! いつでも来て下さい!」
「教導院の前でマシュマロに苺の半裸のサンタがエロゲを配ってるらしいぞ!」
「ツリー爆破に行こうぜ!」
彼等はもはや統制を失い、集団の熱で動いていた。
この狂乱は夜が明けるまで続いたとか。
こいつらクリスマスどうするんですか? 的な感想があったので急遽執筆。
締切をはっきり決めると結構ネタが浮かぶもんだった。
それにしてもアニメの最終回も25日って空気読めすぎてて恐い。