ただの出鱈目か
秘めし願望か
配点(夢)
航空戦艦の舳先でマクデブルクの戦況を確認していた前田・利家はふと、胸騒ぎを覚えて視線を上に向けた。
夜の空に星とは異なる十の輝きがあった。
揺らぎ、風切り音を纏って近付いてくるそれが自身への攻撃だと気付いた直後、利家は舳先から身を躍らせていた。退路がそこしかなかったのだ。
一瞬遅れて飛来物は轟音と共に甲板に突き刺さる。
更に、狙われたのは利家だけではなかった。
加賀百万Gによって呼び出した独逸傭兵団の一部、武神にも似た白骨の大型人形が真っ二つに断ち割られた。
……これは。
崩れながら地面に沈んでいく骨人形のすぐそばに着地した利家は、攻撃の正体を正確に見極める事が出来た。
投擲用の短槍だ。
槍本体は飾り気のない無骨なデザインだが、柄の部分に黒い布が巻かれ、その隙間から光が無数の欠片となって散っていく。
……聖術の術式契約書。対霊効果かな。
そしてもう一つ。
槍は斜めに地面に刺さっている。つまりどの方角から飛んできたのか推測出来るのだが、
……どうやら、敵を連れて来てしまったみたいだ。
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「六天魔軍もどうという事はないな。森・蘭丸にでも譲ったらどうだ?」
程なくして敵が南から現れた。一人の男だ。
肩口で切り揃えた金髪は汗で肌に張り付き、呼吸は幾らか乱れている。
それでも力のある視線は真っ直ぐに利家を見据えていた。
歩きながらK.P.A.Italiaの制服を脱ぎ捨て、代わりにM.H.R.R.の制服を羽織る。
「フィレンツェ教導院のフェルディナンドだ。オクタヴィオ・ピッコローミニを襲名して転校してきた」
「……トスカーナの大公が何の用だい?」
「K.P.A.Italiaはアルブレヒト・ヴァレンシュタインの歴史再現に対して異議とやり直しを申し立てる。既に改派領邦、仏蘭西、英国、瑞典、阿蘭陀などから承認を貰っている」
●
言葉を並べながら、ピッコローミニは内心に激しい焦りを抱いていた。
この一件に関して内外に対してかなりごり押しをした。平時なら他国との関係を考慮して決して出来ない強引な交渉だ。
それでも十分とは言えないが、今行動する必要がある。
今のうちに戦力を削っておかなければK.P.A.Italiaの衰退は止められない。
そして何より、目の前の男が気に入らない。
「五大頂(フェンフト・ライトハメル)だか何だか知らないが、我が先祖、“コンドッティエーレ”フランチェスコ・スフォルツァを差し置いて傭兵王を名乗るとは片腹痛い!」
「傭兵王は聖譜記述に示されている事だよ。それにマクデブルクの掠奪の時点でヴァレンシュタインは健在だ」
「獅子王グスタフ・アドルフも既に戦死しているんだ。貴様も大人しく消え去れ」
ピッコローミニの背後の空間が波紋のように震え、そこから黒の槍旗を飾った槍が突き出す。
「そして俺は瑞典のレンナート・トルステンソンを叩きのめし、三征西班牙に奪われたミラノに凱旋するのだ! はーはっはっはっは!」
『さんしたー』
「駄目だよ、まっちゃん。いくら本当の事でも簡単に口にしちゃ」
高笑いするピッコローミニに対して利家の妻であるまつが毒舌を吐き、利家が窘める。
その挑発とも言える物言いと余裕の態度にピッコローミニは怒りを覚えるが、
「――百合花ぁ!」
「げふぁっ!」
背中に衝撃を受け、そのまま意識を刈り取られて勢いよく吹っ飛ばされた。
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ピッコローミニをぶっ飛ばしたのは利家と同じく五大頂の四、佐々・成政。
「槍向けられてたから攻撃したが、今のは敵でいいんだよな、トシ?」
「ああうん。ナイスだよ、ナっちゃん」
ピッコローミニは瓦礫に頭から突っ込み、尻をこちらに向けている。
「改派の奴か?」
「一応旧派だね。ヴァレンシュタイン暗殺に関わった一人と言われているけど」
「なら放っとくか。もうすぐこの辺りは竜脈炉で消える事だしよ」
「僕はどっちでもいいよ。もうじき各国への根回しも完了するだろうし、「厳島撃沈の混乱による情報伝達ミス」を口実にした無茶ももう出来ないだろうね。ここを生き延びても襲名解除だよ」
話し合いながら二人はマクデブルクから離脱する。
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それからピッコローミニはK.P.A.Italiaの抵抗派に回収されるまで埋もれたままだった。
名:オクタヴィオ・ピッコローミニ
属:A.H.R.R.S.
役:対ヴァレンシュタイン
種:全方位武術師
特:色々残念
スフォルツァ家とメディチ家が合わさり最強に見える。
Twelveや新伯林のネタがあったり、中々愉快な夢だったなぁ。
なおこれにてネタ切れ。